Привет!
(プリビェット!/ やあ!)
こんにちは、トモヒトです!!
コロナウイルスの影響が続いていますね。いつになったら、感染を恐れて行動しなくても済む社会がやってくるのでしょうね…。
さて皆さん、子どものころに「てぶくろ」っていう童話を読んだことはありませんか?
実はこの絵本の題材となったお話は、ウクライナ民話なのですね~~!!
元々あった民話に挿絵を描いたのが、ジョン・バーニンガムというイングランド生まれの作家・イラストレーターなのでした。
驚きました?笑笑
さて本日のテーマは「お土産」ということですが、今回は、ウクライナの書店で購入した大量の本たちをご紹介します!
書物からは、その読者の頭の中身を覗くことができると思います。手元にある本たちはウクライナで発刊される書物のうちのごく一部に過ぎませんが、この記事を通して、現地のウクライナ人たちがどんな本を読み、どんなことを考えているのかについて、想像するきっかけを提供できればと思います。
____________________
目次
- Україна~Все, що робить нас українцями~(ウクライナ~私たちをウクライナ人たらしめる、そのすべて~)
- Історичний атлас україни і сусідніх земель(ウクライナの歴史的版図と隣国の土地)
- Визволення Маріуполя ~Liberation of Mariupol~(マリウポリの解放)
- Євромайдан~звичайні герої~(ユーロマイダン~名もなき英雄たち~)
- Сучасний словник ~англо український українсько англійський~(現代英ウ・ウ英辞書)
- Як козаки україну боронили(コサックはいかにしてウクライナを守護したか)
- Микола Пимоненко~книга листівок~(ムィコーラ・プィモネンコ~ポストカード集~)
- Велич Карпат(カルパチア山脈の雄姿)
- Українська БАЙКА(ウクライナ寓話集)
____________________
Україна~Все, що робить нас українцями~(ウクライナ~私たちをウクライナ人たらしめる、そのすべて~)
この本は、ウクライナという国の歴史や文化について、ウクライナの起源であるキエフ・ルーシ、神話、ピサンカなどのキリスト教関連文化、土着の民謡、ウクライナ料理のレシピ、伝統衣装ヴィシヴァンカに至るまで、ウクライナを形容するためのおよそすべての語彙が詰まっていると言えます。
今までウクライナについて勉強してきて実感したことのひとつに、ウクライナの歴史は「被」支配の歴史であるということがあります。土地を侵された経験のない日本に住む我々には理解し辛いですが、自国の文化や独立性が他国によって脅かされるような歴史を背負う民族は、相対的に自国の独自性・独立性を自他に対して強調するのですね。ウクライナ人の強烈な愛国心を感じられるこの本は、そうした背景を象徴しているのではないでしょうか。
ちなみに、ウクライナの概観については、私自身で別のはてなブログに記事としてまとめましたので、時間のある方は是非ご覧ください(以下のリンクから飛べます)。バルカン研究会という、これも同じく東京外大のサークルが運営するブログになります。
https://tufsbalken.hatenablog.jp/entry/2020/05/30/232852
Історичний атлас україни і сусідніх земель(ウクライナの歴史的版図と隣国の土地)
実はウクライナ留学のプログラムには僕意外にも3人くらいの外大生が参加していたのですが、この本は、その参加者のなかにいた大学院生の方に勧められて購入を決意した本です。
この本には古代から現代のクリミア併合に至るまで、ウクライナの歴史地図が極めて詳細に描かれており、将来ウクライナを勉強するならこの本は買っておいて損はない!と言われたのです。
上記二点の本は、いずれも表紙が見えるようにして特に大きく売り出されていたものです。一般の消費者に向けて、です。
なんというか、自国に対するウクライナ人の堅固な責任感みたいなものを感じます…。日本人の一般的な感覚とは、趣を異にするように思います。
Визволення Маріуполя ~Liberation of Mariupol~(マリウポリの解放)
クリミア併合は知っている方が多いかと思いますが、ウクライナ東部紛争に関しては知名度があまり高くないのでは?と思います。ロシアの軍事支援を受ける親露派武装集団と親ウクライナ政府派が、クリミア併合とほぼ時期を同じくしてウクライナ東部(ドネツク州・ルハンスク州)の地域で内戦を起こしました。この本は、主要な戦線のひとつであるドネツク州のマリウポリという街での紛争劇を描いています。
一つ重要なことは、この本にはウクライナ語のテキストに加え、英語訳されたテキストが掲載されているということです。つまり、「ウクライナ国外の読者」を想定している、ということです。
実はこの本は、私が留学に行ったリヴィウ市で偶然開かれていた本のバザールのような市場で購入しました。ブースの売り子の方は、この本に興味を示した私が日本人であると知ると、強く購入を進めてきました。それは、単なる商売根性から来るものではないと、私は思うのです。
余談ですが、在日ウクライナ人の、アンドリー・ナザレンコという論客がいます。彼の著作で、日本についてウクライナ語で書いたと思われる本も同じブースに陳列されていました。彼はいわゆる右派であり、ウクライナ危機に類比して日本の安全保障に関して警告を発しています。日本人はもしかすると、国際基準とは安全保障に関する意識レベルが違うのではないか、という心象を、私は常々抱いているところです。
Євромайдан~звичайні герої~(ユーロマイダン~名もなき英雄たち~)
日本ではその名を覚えている人も少なくなってしまいましたが、ウクライナでは今なお非常にホットな単語が、「ユーロマイダン」です。
2014年、親露の方針へ傾いたヤヌコヴィッチ政権に対し、ウクライナ人ジャーナリストがFacebookで抗議集会を呼び掛けたのをきっかけとして、キエフの独立広場(マイダン広場)において、死傷者を出す暴動が引き起こされました。
本のテーマは、マイダン革命(ユーロマイダン)を、その一般の参加者の視点から描く、というものです。
ユーロマイダンに関する本は、かなりたくさん陳列されていたと記憶しています。ユーロマイダンは、ウクライナ国民の心に、未だに深い爪痕を残しているのです。
Сучасний словник ~англо український українсько англійський~(現代英ウ・ウ英辞書)
言語を学ぶとき、日本語との直接対応の辞書が見つかればいいのですが、マイナー言語の場合、それが存在しない場合があります。そうした場合、別の巨大言語を媒介として意味を掴むしかないのです。ウクライナ語の場合が、そうです(笑)
本当はロシア語との対応辞書が良かったのですが、ウクライナ人は基本的にロシア語ができるので、そんな辞書が売っている訳はないのですね(笑)意外な盲点でした。
あまり出来がいいとは言えないのですが(研究社の露和辞典がハイクオリティすぎる)、今は、ウクライナ語を調べる時には活躍してもらっています。
Як козаки україну боронили(コサックはいかにしてウクライナを守護したか)
読者の関心が本屋の陳列棚に反映されるとしたら、ひと昔もふた昔も前の存在であるのに今なお国民の関心の第一線をゆくコサックがどれほどウクライナ人の精神的支柱となっているのか、その奥深さに舌を巻くところです。ウクライナにおけるコサックほど、日本における武士が大きな精神的重要性をもっているとは思えません。
コサックがどんな存在なのかについては、同ブログの記事(下記リンクから飛べます)にまとめましたので、そちらを参照頂ければと思います。
「アソコに住んでた人たちのお話」
https://tufs-russialove.hatenablog.com/entry/2020/05/12/212426
Микола Пимоненко~книга листівок~(ムィコーラ・プィモネンコ~ポストカード集~)
ウクライナ出身の画家で、ムィコーラ・プィモネンコという人物がいます。日本にいるときからムィコーラのことは知っていたのですが、偶然にも現地でポストカード集を見つけたので、少ない持ち金をはたいて購入しました。
「ムィコーラ」は、ロシア語名ではニコライです。彼はキエフに生まれ、生涯を通してウクライナの人々の日常生活を描きました。私のお気に入りの絵が、こちらの「キリスト降誕祭の占い」です。
感傷的なことを言うと、私はこの絵をきっかけにウクライナを愛するようになったのかもしれません。素朴な原風景のようなこの情景に、展覧会でいつまでも食い入るように見入っていたことを覚えています。
ちなみに、作家のゴーゴリはウクライナ人です。歴史的に長くロシアに支配されてきているので「ウクライナ出身」ということが強調される例は少ないですが、意外と多くの知識人・教養人がウクライナから輩出されています。
Велич Карпат(カルパチア山脈の雄姿)
ウクライナ西南部に、カルパチア山脈というウクライナにおいてクリミア山系以外では唯一の山岳地帯があります。Закарпаття(ザカルパッチャ。カルパチアの向こう、という意味)と呼ばれる地域です。本を開いて写真を見るにつけ、非常に美しい自然が広がっているようですね。
独自の文化が涵養されているようで、私も留学中に是非行ってみたいと思っていたのですが、ついぞ行けませんでした。クリミアと同様、ウクライナ人にとっては保養地のようになっているようです。まるで日本人が富士山を愛でるように、ウクライナ人はカルパチアを心の中に生かしているのでしょうか。
Українська БАЙКА(ウクライナ寓話集)
この掌に収まってしまう大きさ、可愛らしいですよね。購入動機としてはインテリア趣味の方が大きく影響していると思いますが、れっきとした寓話集であり、百弱のウクライナの寓話が収録されています。
ロシアやウクライナの詩人の作品集や日本の俳句集なども同じ陳列棚に置いてありました。文学はやはりロシアと同じで、愛されているようです。
戯れに、この中の一編を日本語へ訳してみました。おそらく日本初となる翻訳だと思います。日本ではとっても有名な「てぶくろ;Рукавичка」と同様に、広く知れ渡りますように…(笑)
*テキストがかなり古い文体である上に、まだまだウクライナ語能力が拙いので、誤訳がおおいに考えられます。すみません。
〇“Українська БАЙКА”より
「恩知らずの馬」ヴォロディムィル・サミィレンコ(1864~1925)(“НЕВДЯЧНИЙ КІНЬ”, Володимир Самійленко)
ある御者が、トロイカ*を牽かせようと、荒っぽく馬を引っ張りこんでいました。
すると通りがかりの紳士が言いました。
「もうちょっと優しくしてあげなさい」
紳士はその馬にクツワをあてがいながら、馬に質問し始めました。
「トロイカを先頭で牽いたことはあるか?馬具はついていたか?何をつけていた?」
と優しく聞きました。
高価な手綱を取り付けました。
「何もつけていない手でムチをもっていたのか?手袋はもっていたのか?」
と声をかけました。
しかし、馬は恩知らずでした。それか、もしかすると、愚かだったのかもしれません。なぜって、馬は男の優しい言葉に、あしらうように返事をしたからです。
「あなたのお言葉は、それは心地よく響きました、まるで上質なツィンバロム*のようでした。でも、クツワをつける前に質問して頂ければよかったのに。
私は、高かろうと安かろうと、手綱は皆太いことを知っています。ベルベットがついていたり、ベルトがついていたりするのかどうか知りませんが。あと、ムチが例外なく痛むものであることも知っています。あなたの掌に握られたって、それは同じことですよ」
そしてさらに続けました。
「私は何か運んでいるみたいですが、こうなったらもう、先頭にも端っこにも、トロイカには戻りませんよ」
*トロイカ:3頭立ての馬車
*ツィンバロム:枠に弦に張った弦をたたいて音を出す打弦楽器
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
さて、お付き合いいただきありがとうございました。少々脈絡のない徒然草になってしまいましたが、以上で終わります。
この“Українська БАЙКА”の仲間の本で、“УКРАЇНСЬКІ НАРОДНІ ПІСНІ”(ウクライナ民謡)という本と“ЧАРИ НОЧІ Українська любовна лірика”(夜の魔法 ウクライナ恋愛詩)という本ももっているので、気が向いたら翻訳させて頂きます!
それではПока!
トモヒト
*今日のロシア語*
Украинская книга(ウクライーンスカヤ ク二―ガ)
意味:ウクライナ語書籍
читать(チタ―チ)
意味:読む