東京外国語大学ロシアサークルЛЮБОВЬ(リュボーフィ)のブログ

「未知なる魅惑の国」であるロシアならではの文化から、留学や旅行のこと、東京外国語大学でのキャンパスライフのことまで。このブログでは、東京外国語大学のロシアが大好きな学生たちが様々なテーマに沿って日替わりで記事を書いていきます。ЛЮБОВЬ(リュボーフィ)とは、ロシア語で「愛」を意味します。

ロシア語劇インタビュー(舞台監督編)

ロシア語劇インタビュー(舞台監督編)

東京外国語大学の学園祭『外語祭』では各言語を専攻する学生のうち、2年生が全編外国語で劇をする『語劇』という目玉イベントがあります。

今回のインタビュー企画では、当サークル所属のロシア語専攻の学生が、この語劇で

「舞台監督」を務めたロシア語専攻の学生にお話を聞きました!

 

インタビュイー:青木優太(あおき ゆうた)さん。※以下敬称略

今年の外語祭ロシア語劇では舞台監督を務める。外大ロシア語劇サークル「コンツェルト」に一年次より所属。同サークルにて役者、舞台監督の経験あり。

好きなロシア語は Скажите (スカジーチェ): 「教えてください」

これを言うとみんな振り向いてくれるから。

嫌いなロシア語はрежиссёр(レジショール):「舞台監督」

発音しにくい。今回の語劇で苦労したのもあって、人生においてできるだけ口に出したくないから、とのこと。

 

インタビュアー:真部友希子(まなべ ゆきこ)。今回のロシア語劇では役者を務める。

 

 

真部:それでは早速始めていきたいと思います。まずは舞台監督の仕事内容について教えてください。

 

青木:舞台監督って基本的に作品のことについては口出さないんだよ。舞台監督っていうと一番偉いように聞こえるけど、僕の考えでは一番偉いのは演出なんだよね。演出は作品全体を元の台本含めどう解釈するか決める権限を持ってる。作品を作るうえで映画監督みたいなことをするのは演出。舞台監督はあくまで色んな事務的な役割っていうか、例えば、役者とか照明、音響の人がこの日に誰が来るのか把握したり、スケジュールを組んだり、当日の予定表を作ったり、この道具をいつ作るかとか決めたり、そういう仕事をしてます。

 

真部:それは過去に舞台監督を務めたときも今回も同じ仕事内容ですか?

 

青木:そうそう、今回もそんな感じで仕事内容はまったく変わらない。あと大事なのはブレーキってとこかな。

 

ゆきこ:ブレーキ?

 

青木:劇を車に例えると、演出はアクセル。劇という名の車を前に進める。しかし同時に「あれもやりたいこれもやりたい」と演出が暴走するのでは全てが崩壊するでしょ?なのでそれにブレーキをかけるのが舞台監督なの。演出が「あの場面はもっとこうしたい」とか「あの人の喋り方は手直ししたい」とか言い出しても、「いや、スケジュール上はこれ以上無理ですよ」と。要望を突っぱねて全体のスケジュールを守らせるのも役目なんだよね。

 

真部:なるほど、舞台監督にブレーキの役割があるというのは意外でしたね。それにしても二度目の舞台監督ということで、私たちにしたらとても心強い。

 

青木:いえいえいえ(笑)もういろんな人が助けてくれて頑張ってるって感じなんで。

 

真部:舞台監督は裏方を統括する役割だと思うんですけど、舞台をどう見せるかについてこだわったポイント、込めた思いなどあれば教えてください。

 

青木:舞台をどう見せるか、音響とか照明、これもやっぱり演出が全部解釈することなんで僕は口を出してないんだけど、ただやっぱり、僕もわかる範囲でいうと、音響も照明もかなり計算された感じかな。この音で状況が一変して、この音と照明でどういう景観なのかを表現して、あと役者たちへの合図にもなるじゃん。一個一個の音響・照明が色んな意味を持ってる。それはお客さんからどう見えるかにもつながるし、劇を成功させるための号令にもなってる。一個一個の音響・照明が、舞台をよりよく見せるための計算されたものである、ってことを頭に置いておくとより良い感じに見えるかもしれない。ちょっと答えになってるかわからないけど。

 

真部:いやいや、これは劇の本質だし、お客さんが見てるものって実はそこから計算されてるんだってことはすごく大事だと思う。

じゃあ、舞台監督をやるうえで特に気を付けていることはありますか?

 

青木:さっき舞台監督で一番大事なこととして言った、時間日程をひたすら調整するのが、やっぱり一番大変な仕事です。ここをおろそかにすると練習がうまい具合に進まないし、本番のクオリティが落ちてしまう。うまく日程を調整できるか、把握できるかっていうのが、直接劇の成功につながる。そういう意外と重大な指名を負ってるんだよね。ちゃんと割り振りをするのが大変かな。

 

真部:そうですよね。それをやっている所ってみんな見てないけど、練習がいつも行われてるのは日程調整がないとできるわけないもんね。

 

青木:そうそうそう、スケジュールがちゃんとしてないとみんな崩壊しちゃうし。

 

真部:そうよね。まさに縁の下の力持ちっていいますか…。じゃあ今一番大変なのは色んな人との日程調整ですか?

 

青木:そうだね。それがほぼ唯一の舞台監督の仕事だと思ってる。

真部:舞台監督の仕事の大変さを乗り越えるために、どういう風にしているかあれば教えてください。

 

青木:まずね、自分自身のスケジュール管理をすること。コンツェルトの舞台監督をやったときにその重要性を改めて知ったから。まず自分から。自分がそういうのができてないと、周りに気配りや調整ができないから。まず自分自身を律する。そんな感じかな。

 

真部:たしかに自分のことができてないと、周りの人にも気を回せないっていうのは、自戒の意味を込めてすごく納得…(笑) では、苦労することがある一方でやりがいを感じる瞬間などあれば教えてください。

 

青木:やっぱり、練習がうまくいったときだよね。というか、練習でここはこうした方がいいよねっていうのが見つかったとき。粗が見つかるっていうことは、それだけその点が改善されたってことだよね。ホール練で改善点が見つかったときは、まんま本番と似た状況で、まだ改善できるところを今改善したって目に見えるじゃん。だから、よりクオリティが上がったってのを実感できる。

 

真部:そうか、そういう見方もあるのか。練習がうまくいったとき嬉しくなるっていうのは、今回役者をやってる私も感じることなんだけど、改善点が明確になった瞬間にも喜びを感じるのはすごくいいなと思って。私は、ここ改善した方がいいよねって言われると、「あ、また自分に欠陥があったな」って気づいちゃって逆に落ち込んじゃう。けど、そういう逆の見方もあるんだなって知って嬉しかったです。

 

青木:そうそう、だからね、それがあるってことはより良い結果になったってことだから、全然気にすることはない。

 

真部:舞台監督はプラス思考ですね!

 

青木:そうですね(笑)

 

真部:はい、じゃあ次の質問!語劇を作りあげていくうえで、裏方のみなさんのみならず、演出や役者とのつながりも必要になってくると思いますが、各役職との交流で印象に残ったエピソードはありますか?

青木:そうね、印象に残ったエピソードか…。やっぱどうしても演劇に関してはみんな素人なわけじゃん、僕も素人なんだけど。まあ少しコンツェルトにいたから多少はみんなより知識があるってぐらいなんだけど。「あ、みんな演劇のために頑張ってるな」って、いろんな連絡をしてて思うわけだよ。日々の連絡で「この日来れる?」とか、「こんな衣装調達しました~」とか、ここってこうじゃないかなって相談受けたり。僕も含め素人なんだけれども、努力して完成に導こうとしてる、その瞬間かな。

 

真部:日々のやり取り連絡から喜びを見出してるっていうのが、舞台監督ならではの場所、みんな頑張ってる様子を見て喜べるっていうのは、それだけみんなに気を配って様子を見てるってことだと思うので。話を聞いていて、舞台監督の努力をひしひしと感じました。

 

それでは、舞台監督の立場から見たこの作品の魅力をお願いします。

 

青木:これは演出に感謝したいことだけど、多分今回見に来る人のほとんどの人はソログープっていうこの作者を知らないと思うんだよね。僕も知らないですよ、はっきり言って(笑)

やっぱり高校や大学で歴史を学んでいるとね、歴史に埋もれちゃう人っているわけだよ、どうしても、実在してるんだけど。だから、ソログープをあんまり有名じゃないっていうのは失礼かもしれないけど、なかなか日本で知られてない、劇といえばチェーホフとかになっちゃうんだけど、チェーホフも素晴らしい劇作家ではあるんだけど、敢えてこのソログープっていう人を選んだ。これで少しでも多くの人に、こういう作家もいたんだって知ってもらえる機会となる、そのこと自体に感動してるかもしれない。

 

真部:そこまで深いことを考えていたなんて…私も感動した。たしかに、世界史で習うのってほんの一握りの人間だけ。文学者でもすごくヒットした一部の人たちだけ。やっぱり芸術家も本当はもっとたくさんいるはずで。ソログープだって作品は残ってるのにあんまり知られてない。ロシア語劇を通してロシアの作品に触れてもらうとしたら、まだ魅力をみんなに知ってもらってないような人を敢えて出すっていうのはすごく良いことだと思う。

 

青木:そうですよね。僕ははっきり言って文学そこまで好きかって聞かれたら「うん」って言えないんだけど。作品の解釈も、作品全部読み終わってもポカ―ンとしてる。結局何だったん?みたいなそういうレベルの僕でも、「歴史を発掘した」とまで言うのは僭越かもしれないけど、新しい作品をいろんな人に知ってもらえる機会をつくった。ってのがやっぱり、素直に感動しますね。

 

真部:作品を選んだ以上、その作品を紹介する役割を私たち語劇関係者は担ってるんだなってことを改めて実感して思い出した。「歴史を発掘した」って言葉がすごく印象的。

ということで、最後に一言お願いします!

青木:はい。まあいろいろ大変なこともありましたが、何とか悔いのないように、あと一か月ぐらい、磨きをかけていきたいです!悔いのないようにします!

 

 

舞台監督の青木優太さん、ありがとうございました!
ロシア語劇『死の勝利』は11月19日(土)13:00~13:50

プロメテウスホールにて上演されます!ぜひ見に来てください!

 

次回はロシア語劇インタビュー(字幕リーダー編)です!お楽しみに~!