東京外国語大学ロシアサークルЛЮБОВЬ(リュボーフィ)のブログ

「未知なる魅惑の国」であるロシアならではの文化から、留学や旅行のこと、東京外国語大学でのキャンパスライフのことまで。このブログでは、東京外国語大学のロシアが大好きな学生たちが様々なテーマに沿って日替わりで記事を書いていきます。ЛЮБОВЬ(リュボーフィ)とは、ロシア語で「愛」を意味します。

生ける屍 やっぱりすごいよ トルストイ

Здравствуйте! なつほです。

 

今回はロシア語劇団コンツェルトさんとのコラボ企画ということで、「生ける屍」についてのお話です。

 

先日の「トルストイに脱帽!『カフカースのとりこ』」(トルストイに脱帽!『カフカースのとりこ』 - 東京外国語大学ロシアサークルЛЮБОВЬ(リュボーフィ)のブログ) でも触れられていましたが、トルストイの作品には生や死についての描写が多いです。どんな読者を想定した作品でも彼の死生観が反映されており、私のような時代もバックグラウンドも年齢も違う読者であっても、作品を読んだ後に生死や、生死への意識に直結する宗教観について考えさせられます。死生観だけではなくて、道義や正義、愛、魂、性など、トルストイの作品にはたくさんのテーマがあり、読むたびに新しい解釈が生まれたり、逆に自分の考えが揺らいだり、疑問を抱いたり、発見があったりして面白いです。

まあ、特に長編小説になると、一回で読んだだけでは全然わからないんですけどね。笑 あと訳が難しいので日本語弱者の私は国語辞典を引っ張りだして読みます。笑

何回か読み直して、書評や訳者のあとがきを参考にしながらじっくり作品を理解をしていくこともロシア文学作品の大きな魅力ですよね!

 

作品を理解する上ではロシア正教や土着の価値観も大切です。

しかし、何というか、宗教って作品当時のロシア人の価値観を醸成するものではあるけれど、やっぱり理性なんだなと思うことがしばしばあります。

ロシア文学の登場人物って、ときどき嫌悪感を抱くほど人間くさいキャラがいませんか?宗教うんぬんよりも人間としてどうよ…。とか、きっとこの登場人物とは絶対にわかり合えない!とか、なんでそんなに悲観的なの?とか、それは正教的道義に背くでしょ?とか、、でも全然共感できない強烈なキャラが作品の肝なのだと思います。そんなキャラの根っこにも宗教や信仰から生まれる価値観を持っています。直接的でなくとも、きっと作者の宗教観に基づいたメッセージが登場人物の言動にによって伝えられているはず。

「生ける屍」の主人公フェージャも、その愚直さ故に苦しみを抱えています。現代よりもロシア正教が生活の規範として強く意識されていた時代。正直、もっとしっかりしろよ!と思う部分もあります。でも作品を読む、もしくはコンツェルトさんの公演を観れば、彼の苦しみに共感(同情?)すると思います。

理性と感情の矛盾、社会規範と自己の乖離、理想と現実など、私たちが無意識に目をそむけている何かを登場人物や文字を通して伝えてくれるトルストイの世界に皆さんもはまってみましょう!

 

「生ける屍」は1910年にトルストイが亡くなった後に発表されました。つまり遺作です。発表される前は「屍」というタイトルだったそうですよ。物語の内容を知ると「生ける」がついた方がしっくりくるな~という感想を持ちました。

 

有名な作家である森鴎外は1911年12月1日発行の「椋鳥通信」でこの戯曲を紹介しているそうです。「生ける屍」は発表されてすぐに大成功をおさめて、ロシア国内以外にもベルリンやパリでも上演されています。鴎外が得意とするドイツ語の記事でもこの戯曲は取り上げられていたのでしょうね。

 

100年以上も前の作品ですが、とても面白いです。ぜひ公演を観てみてください!

それでは!

До свидания!

 

文責:なつほ

 

トルストイに脱帽!『カフカースのとりこ』

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Здравствуйте (ズドラーストヴィチェ)! こんにちは!

ロシア専攻3年の芝元です。

 

つい先日、一緒に暮らしているおばあちゃんから「コンビニで売ってるこれ美味しかったからあなたの分も買ってきたよ〜」と言われました。

 

貰ったのは、な、なんとジョージア料理のシュクメルリ。

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「これ!ジョージア料理だよ!」と言うと「へぇ〜、ジョージアの!知らなかった!」といった反応が返ってきました。

 

ジョージア料理が私達にとって身近な料理となる日はそう遠く無いような予感。

 

また、以前「スッキリ」を見ていた時もジョージアが特集されていたり、SNSで駐日ジョージア大使の方の投稿が結構な頻度で回ってくるようになったりしていて「ジョージアが流行ってきている!」と感じています。

 

そんな巷で噂のジョージアは「コーカサス(カフカース)」と呼ばれる地方に存在し、アゼルバイジャンアルメニアと共に「コーカサス三国」とも言われています。

 

コーカサス(カフカース)には豊かな自然や美味しいご飯、美しい建物などの魅力がたくさん詰まっています。そのため、コーカサス(カフカース)の「とりこ」だという人は多いと思います。実際に、大学の知り合いでコーカサス(カフカース)好きはいっぱいいます。

 

ここで問題です!(唐突)
みんな大好きコーカサス(カフカース)ですが、そこで1851年から1854年まで砲兵下士官として従軍していた超有名なロシアの作家は誰だか知っていますか?

 

…正解はトルストイです!

 

ちなみにトルストイは12月25.26.27日にコンツェルトさんが行う本公演『生ける屍』の作者ですね✨

 

そこで本日はトルストイの中短編集カフカースのとりこ』(青木明子さん訳、ナターリヤ・チャルーシナさん挿絵)について書いていこうと思います!

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この小説は合計で15本の短編・中編小説から成っています。

 

具体的には「ロシアの農村のくらしや動植物の不思議な力を驚きの目をもって見つめた短編」と「カフカース(コーカサス)での従軍体験をもとに書かれた中編」と裏表紙に記載されています。

 

いかんせん中短編集(しかも最も短いお話はなんと2ページ!)なので、内容にはあまり触れず、全てのお話を読んで私が感じたトルストイの特徴について述べさせていただきたいと思います。

 

※ちなみにトルストイの作品を読むのはこれが初めてです。ご理解のほどよろしくお願いします!

 

①超優れた観察眼

どのお話も描写がびっっっっくりするほど細かくてトルストイの物の捉え方の凄さが伝わってきました。

例えば1番目のお話「ブーリカとミリトン(ある士官の話)」では初めに小型猟犬(モルダーシュカ)のブーリカについて説明があります。

 

モルダーシュカという犬は、たいてい上あごより下あごのほうが長く、上の歯が下の歯に隠れるものだが、ブーリカの場合は下あごが極端に突き出ていて、上と下の歯の間に指が一本入るほどだった。顔の幅が広く、大きな黒い目がキラキラ光り、白い歯と牙をいつもむきだしにしていたので、黒人の顔に似ていた。おとなしくて、人を咬むことはなかったが、とても力が強く、いったん食いついたらけっして放さない。何かに飛びかかると、歯ではさんで締めつけて、ぼろきれのようにぶら下がったものだ。そうなるともう、ダニのようで、どうやっても引き離せなかった。(9,10ページより引用)

 

とにかく凄くないですか!?これを読んだ途端、私の頭の中にとてもはっきりとした輪郭のブーリカが現れました。しかも、静止画でなく、動き回っているブーリカが。

 

恐るべしトルストイ

 

それに加えて、ワードセンスがさすがだなと思いました。私だったら引っ付いていることをわかりやすく表すのに「ダニのように」なんて言い方は思いつきません。

恐るべしトルストイ。(2回目)
並外れた観察眼を持っているからこそ、出来る技なのでしょう。

 

このように、どのお話でもトルストイのユニークで美しい表現であらゆるものが描写されていて、文章を読むのがとても楽しかったです。

 

さらに、モノの説明のために結構な頻度で数字が使われており、トルストイの観察力の高さが伝わってきました。

 

例えば「チェリョームハ」というお話に

 

このチェリョームハは低木ではなく、幹の直径が十五センチ近くあり、高さが八メートル以上もある高木だった。(36ページより引用)

 

という描写があります。

 

他にも、40ページから始まる「蚕を飼う」というお話の中で以下の文章があります。

 

卵は濃い灰色で、とても小さく、その四グラムほどのなかに、数えてみると、五八三五粒あった。(40ページより引用)

 

これらのような、数字を用いた詳細な描写がいくつも出てきます。
このことからもトルストイが並外れた観察眼を持っていたことが伺えます。

 

恐るべしトルストイ。(3回目)

 

②「生」と「死」

この小説は、動物や植物にフォーカスしたお話が多いのですが、その中でトルストイがそれらの「生」や「死」に着眼した描写が沢山あるように感じました。

 

これはトルストイが生きた時代背景や、歩んできた道に影響を受けているのでしょうか。

 

トルストイについて詳しく調べたことがないので、理由はわかりませんが、今度調べてみたいです。

 

長々と書いてしまいましたが、以上が『カフカースのとりこ』を読んで個人的に思ったトルストイの特徴です。

 

この機会にもっともっとトルストイを読みたい!と思いました✨

 

みなさんもぜひトルストイの文章を読んでみてはいかがでしょうか。

 

また、12月のコンツェルトさんの本公演もぜひ観に行ってみてください☺️

 

それでは!Пока (パカー)!

 

文責:芝元さや香

 

【参考文献】
トルストイ, 青木明子訳, ナターリヤ・チャルーシナ絵 (2009)『カフカースのとりこ』群像社

 

◆コンツェルト本公演「生ける屍」について◆
ロシア語劇団コンツェルトは創立50周年を迎える歴史ある演劇サークルで、早稲田大学東京外国語大学お茶の水女子大学等様々な大学の学生が集まって構成されています。普段は早稲田大学戸山キャンパスで週2,3回のペースでお稽古をしているそうです。

記念すべき50回目の今年の本公演ではトルストイ原作『生ける屍 «Живой Труп»』を上演されます。ぜひあなたも足を運んで、ロシア語劇の魅力を堪能してくださいね!(席数の残りわずかだそうですので、お早めに!)

●日程:12月25日(金)〜27日(日)

公式HPやSNSでも日々のお稽古の様子や公演情報を掲載されています!要チェック!

コンツェルト公式HP:https://www.kontsert.jp

Twitterhttps://twitter.com/theatrekontsert

Instagramhttps://www.instagram.com/theatrekontsert/

Faceook:https://www.facebook.com/theatrekontsert

 

現代とは全然違う!19世紀ロシアの離婚制度

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こんにちは。ももです。最近、さすがにロシア文学を読んだことがなさすぎると気づいて、薄い本から読み始めています。今はトゥルゲーネフの『初恋』を読んでいるのですが、読み始めてもう一週間、まだ半分にも達していません(笑)。

 

今月は、コンツェルトさんとの合同企画ということで、戯曲『生ける屍』についての記事を書いていきたいと思います。

まずはみなさん、『生ける屍』のあらすじを読んでみてください。↓

 

≪あらすじ≫

“放蕩を繰り返し身を持ち崩すフェージャ、そんな夫の帰りを待つリーザ、リーザを密かに想うカレーニン

フェージャはそんな彼の想いを知っていて、自分が彼らの邪魔になるまいとますます放蕩に明け暮れる。

一方でカレーニンはリーザとの結婚を望みフェージャとリーザの離婚手続きに奔走するが、フェージャとの友情の間で葛藤する。

当時のロシアでは離婚は困難なことだった。彼らが結婚することを望むフェージャは、夫である自分が死んだことを偽装しリーザを未亡人にすることで彼らを結婚させようとするが・・・”

 -ロシア語劇団コンツェルトのホームページより

 

あらすじを読むと、フェージャめんどくさい奴だなあとか、リーザは結局どっちが好きなの?といったことがいろいろ気になりますが、それは本編を見てのお楽しみということで・・・。

今日は、「当時のロシアでは離婚は困難なことだった」という文に注目して、当時離婚することがどのくらい難しかったのかを考えてみたいと思います。

 

この問題を考えるにあたり、17世紀から20世紀初頭までのロシア帝国時代、主な私法の根拠となった『民法集成』を参考にしています。

 

結婚制度の伝統と変遷

中世ロシア(9世紀から16世紀ごろまで)では親同士が子どもの婚約を決めることが少なくなかったそうです。それが変わったのが18世紀でした。ピョートル大帝が西欧化政策の一環として、「婚約をして6週間以内に結婚式を挙げよ」という勅令を出し、許嫁方式を廃止したのです。また、この時に婚約破棄の自由も認められました。

※ちなみに西欧では、婚姻は宗教的儀礼でありつつも婚姻関係の締結は当事者間の合意に基づいて行われていました。16世紀ごろからプロテスタント主義の影響で、婚姻を民事的な契約であるとする考えが強くなっていったそうです。

さらに、18世紀後半、エカチェリーナ2世が出した勅令でも、理知的な愛情に基づく夫婦のかたちが定められています。このようにして、ロシアでも婚姻が当人たちの自由意思に基づくものへと変わっていきました。

 

極めて厳しい条件に置かれた離婚制度

しかし結婚が有効なものであると認められるには、双方の意思のほかに正教会の承認、つまり教会での婚姻儀礼が必要でした。当時のロシアでは教会が戸籍管理をしていて、信者の生没や婚姻の登録、離婚の審判を行っていたからです。

教会での儀礼を経て結婚が成立するという考えはそれ以前からありましたが、実際にきちんと制度として整備されていったのは18世紀後半から19世紀にかけてでした。特に離婚については時代によって実態が異なっていたようです。16~17世紀においては、婚姻を解消する理由が見当たらない場合でも、夫婦の合意があれば離婚が認められていました。比較的簡単に離婚が成立したようですね。まあ、現代の私たちからすれば当たり前に感じるのですが・・・。しかし1850年に確定された教会裁判所の規定では、

1.他方配偶者の姦通、

2.他方配偶者の婚姻生活の不能

3.他方配偶者が身分の剥奪をともなう刑罰を受けたとき、

4.他方配偶者が行方不明のとき

といった状況でしか離婚が認められないようになりました。また、当人たちの合意のみでは離婚することができず、必ず裁判を行わなければなりませんでした。

このように厳しい条件が敷かれた背景には、“19世紀前半になって教会制度の整備が進んで正教会が信徒の婚姻統制に自信を深めたこと、そしてウィーン体制下のロシアというこの時代特有の事情によって増幅された正教会の宗教的な純化志向があった”とされています。教義上離婚が許されないカトリックでは代替措置として別居の制度がありましたが、正教会はこのような措置を持っていませんでした。

 

社会の変化とそれに伴う法律の変化、しかし・・・。

1861年、ロシアに農奴解放令が出されました。農奴解放とは、移動の自由がなく、領主である貴族に従属していた農民が、身分的には自由になったことです。土地を買い取るためにそのまま領主に従属せざるを得なかった者もいますが、村を離れて都市の労働者になる者もいました。こうしてロシア社会に大きな変化が起こり、同時に家庭内の問題(児童虐待、同性愛、家庭内暴力など)が顕在化していきました。それらを解決するため家族法改革が行われました。これによって婚姻・離婚制度がどうなったか見ていきましょう。

 

〇 結婚制度

民共通(どの宗教を信じる人にも適用される)の規定は一つにまとめられ、細かい制約は各宗派、例えば正教徒、ユダヤ教カトリックムスリムなどでそれぞれ異なっています。例えば、重婚の禁止はキリスト教徒にのみ適用され、ムスリムには適用されない、正教徒とカトリックキリスト教徒以外との婚姻が認められないがプロテスタントムスリムユダヤ教徒との結婚が認められるなど。このように、信仰による婚姻の制約がある一方、身分の相違は婚姻の妨げにはなりませんでした。

 

〇 別居制度・離婚制度

前述したように、当時問題となっていた家庭内暴力の解決法として夫婦の別居が合法化されました。しかし、別居も夫婦の合意だけでは成立せず、民事裁判所で「配偶者または子に対する残虐な扱い」等が証明されなければいけませんでした。それに伴い、離婚に関する法律にもいくつか変更が加えられました。新たな離婚の条件のひとつに「配偶者の生命もしくは健康に危険を及ぼすような残虐な扱い」があったことからも、当時のロシアで家庭内暴力の問題が深刻だったことがうかがえます。こうして19世紀後半から20世紀にかけて離婚の条件が少し拡大されましたが、裁判が必須だったこと、姦通や暴力の証明が容易ではなかったことから、離婚するのはかなり困難だったようです。実際に1913年の正教徒の離婚件数は9850万人あたり3791件(0.0038%)ととても低かったというデータもあります。(現在のロシアではおよそ47%)。このように、離婚を無理やり押さえつけた結果、私生児が増え、多くの子が劣悪な環境で死亡してしまうという社会問題も発生していました。

 

誰が為の救済策か−再婚

再婚に関して正教では、80歳未満ならば三度までは結婚が許されるとしています。また再婚に関して、1867~1877年のロシア全体で、初婚者同士の結婚が全結婚数の約76%を占めていたというデータがあります。これはつまり、全体の24%はどちらかが再婚者であることを示しています。意外と多いように感じませんか?

このことから、おそらく当時のロシアでは、配偶者が死んでしまった時などに再婚することはそれほど困難ではなかったけれども、互いが健全であるのに夫婦間の不仲などを理由に離婚することは極めて難しかったのではないでしょうか。

 

 

以上、今回は、当時の社会でどのくらい離婚が難しかったのかについて考えてみました。個人的に現代との価値観の違いは物語を読んでいて気になっていた部分だったので、詳しく知れてよかったです。ロシアだけでなく、日本やヨーロッパでも当時は結婚生活に伴う苦労が現代より大きかったのだろうなと感じます。みなさんもぜひこのことを念頭に物語を見てみてください!きっとより内容を理解しやすくなると思います。ではでは!

 

 文責:もも

 

【参考文献】

高橋一彦『近代ロシアの家族法―その構造と変容―』

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscfh/26/0/26_118/_pdf/-char/ja

佐藤雄亮『前期レフ・トルストイの生活と創作―「内なる女性像」から生じた問題とその解決を中心にー』

file:///C:/Users/bhoom/Downloads/Honbun-7246.pdf

『西洋結婚史』 http://www.town1.jp/dousuru/kankon/seiyou/seiyou1.htm

 

 

◆コンツェルト本公演「生ける屍」について◆
ロシア語劇団コンツェルトは創立50周年を迎える歴史ある演劇サークルで、早稲田大学東京外国語大学お茶の水女子大学等様々な大学の学生が集まって構成されています。普段は早稲田大学戸山キャンパスで週2,3回のペースでお稽古をしているそうです。

記念すべき50回目の今年の本公演ではトルストイ原作『生ける屍 «Живой Труп»』を上演されます。ぜひあなたも足を運んで、ロシア語劇の魅力を堪能してくださいね!(席数の残りわずかだそうですので、お早めに!)

●日程:12月25日(金)〜27日(日)

公式HPやSNSでも日々のお稽古の様子や公演情報を掲載されています!要チェック!

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完全初心者向け ロシア戯曲のススメ

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東京外大ロシア語科の一年生の語学の授業では、入学したばかりの私たちがロシアの文化に馴染みやすいように、先生が様々な芸術や文学について時々紹介してくれます。

先生の話を聞いているうちに、ロシアの文化に惹かれてこの大学に入ったものの、ロシアの文学については全然知らないことに気づいた私。

よし、とりあえず有名な文学作品を片っ端から読んでみよう!

しかし、ロシア文学はおろか、昔の外国の作家が書いた本を読むのに当時の私はほとんど馴れておらず…

書店に駆け込むと、ドストエフスキートルストイ、トゥルゲーネフなど、なんだか凄そうな名前が並ぶロシア文学コーナーで「一番薄いしすぐ読めるんじゃね」という理由だけで、中を全く見ずに買ったのがロシアの作家チェーホフの書いた『かもめ』でした。

 

以下、チェーホフ『かもめ』神西清訳の引用です(青字:私の心の声)

 

第一幕

ソーリン家の領地内の廃園の一部。広い並木道が、観客席から庭の奥のほうへ走って、湖に通じているのだが、家庭劇のため急設された仮舞台にふさがれて、湖はまったく見えない。仮舞台の左右に灌木かんぼくの茂み。椅子いすが数脚、小テーブルが一つ。

 

(…ん、なんか演劇の話かな)

 

日がいま沈んだばかり。幕のおりている仮舞台の上には、ヤーコフほか下男たちがいて、咳せきばらいや槌つち音が聞える。散歩がえりのマーシャとメドヴェージェンコ、左手から登場。 

 

(…幕のおりている仮舞台?マーシャとメドヴェージェンコ左手から登場?)

 

メドヴェージェンコ「あなたは、いつ見ても黒い服ですね。どういうわけです?」

マーシャ「わが人生の喪服なの。あたし、不仕合せな女ですもの。」

メドヴェージェンコ「なぜです? (考えこんで)わからんですなあ。(略)」

 

(…おお、セリフ形式? しかも「わが人生の喪服」って何…。)

 

青空文庫で全文読むことができます(若干文体が古いですが)

アントン・チェーホフ「かもめ」神西清

https://www.aozora.gr.jp/cards/001155/files/51860_41507.html

 

おそらく演劇をやっている人や文学に明るい人にとっては、この心の声が全く共感できない、というか「戯曲も読んだことねえのかよ」って感じだと思うのですが。

 

チェーホフ『かもめ』は、このような文体でずっと綴られていきます。これが戯曲です。当時の私は、一般的な小説のスタイルと全然違うことに異物感のようなものを感じてしまい、初め10ページあたりで何かを悟ると、スッと本を閉じました。(次に本を開いたのは2年後。)

 

こんな浅学な私ですが、3年生になった今ではロシア文学のゼミに所属するくらいには、いくつか作品を読んでいます。

そして今回、ロシア語劇団コンツェルトさんがロシアの文豪レフ・トルストイ原作の『生ける屍』という作品(これも戯曲!)を上演されるということで、これを機に「戯曲とはなんぞや問題」を解決しようと決意しました。

 

「戯曲」と聞いて実はいまいちピンときていない皆さん、ここで一緒にロシアの作家たちが残した作品を例に、戯曲について見てみましょう!

 

戯曲と小説、何が違うの?

どちらも文学の中のジャンルの一つであることには変わりないのですが、異なる特徴がいくつかあるようです。

 

辞書の定義ではこうあります。

小説:作者の構想を通じて、人物や事件、人間社会を描き出そうとする、話の筋をもった散文体の作品。

戯曲:演劇の脚本・台本。人物の会話や独白、ト書きなどを通じて物語を展開する。また、そのような形式で書かれた文学作品。

 

なるほど、わからん。ト書きってなんやねん。

 

もっと噛み砕いて言うと、小説は「会話文」「地の文」(会話以外の説明や叙述の文)で構成されます。散文というのは私たちが普段使っているごく普通の文章のことで、一方で詩や俳句などの言葉のリズムがある文章を韻文といいます。

 

一方、戯曲は、演劇として演じられることを前提に(←ここが重要)登場人物による「セリフ」と登場人物の所作や舞台装置の動き(音響、照明なども含む)を事務的に記した「ト書き」で構成されます。

作家の腕の見せどころでもある状況説明や心理描写は、小説の場合は地の文でなされることが多いですが、戯曲では基本的にセリフト書きによってやや婉曲的に表現されます。

 

ほうほう… だから戯曲は、読み馴れていない人には難しいと感じがちなのかも。

 

なんとなーく、小説と戯曲の違いがわかりましたか?

 

なぜ作家が戯曲を書くの?脚本家の仕事じゃない?

先ほど、戯曲は「演劇として演じられることを前提に」書かれたものだと言いましたが、これはどういう意味でしょう?

 

チェーホフは言わずと知れた超有名なロシアの劇作家で、『かもめ』の他に『桜の園』『ワーニャおじさん』『三人姉妹』など数々の作品を残しています。

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出典:https://meigenkakugen.net/アントン・チェーホフ/

彼の作品は、最近の映画やドラマによくあるような、大きな事件が連発するといった波乱万丈な展開はあまり見られませんが、個人の内面を静かにじっくりえぐっていくような言葉の選びがとても魅力的です。

日本でもしばしば彼の戯曲をもとにした舞台が上演されているので、演劇が好きな方はチェーホフの名前は知っているんじゃないでしょうか?

 

実は有名なロシアの文豪の中でも、小説だけでなく戯曲を残した作家はたくさんいます。

例)ゴーゴリ『検察官』、トゥルゲーネフ『村のひと月』、ゴーリキーどん底』、トルストイ『生ける屍』など

とくにロシアでは古くから演劇が人々の間で親しまれていたという背景もあり、戯曲は演劇と切って離せないものでありながら、文学全般との親和性も非常に高いんですね。

 

これは私の推測ですが、戯曲には、作家自身がこの話を舞台上で見てみたいと思って自主的に書くパターンと、演出家や舞台監督など第三者が腕利きの作家に頼んで書いてもらうパターンがあるのではないかと思います。たぶん。

いずれにせよ、作家は常に舞台上での見え方を想像しながら書いているので、演劇ならではいくらかの制約があります。 (まあ、実際に舞台化する場合に、演出家さんがどこまで原作のト書きを忠実に再現するかはその時々によるのかなと思いますが。)

 

そりゃそうか… 戯曲に「右手よりマーシャ空を飛んで登場」とか書かれてるわけないよなあ。

 

ちなみに、戯曲というとシェークスピアなどちょっと古いイメージがあるかもしれませんが、実は今でも戯曲を書く「劇作家」という職業があります。一般的な小説を書く小説家やドラマや映画の脚本を書く脚本家と兼ねている人も多くいます。

 

映画やドラマの脚本と戯曲の違いは厳密に定義されている訳ではありませんが、戯曲は脚本・台本に比べて文学性が高く、芸術的に独立したジャンルと言えるそうです。(戯曲とは - コトバンクより)

これはおそらく純文学と大衆文学の違いのようなものでしょうかね。

 

戯曲をただ読むだけって面白いの?

さあ戯曲を読んでみようと手にとっても、「左手から〇〇登場」「幕が降りる」なんて書かれていても、役者でもなければ演出家でもない自分がこれを読んでいいのか…という小さな葛藤に駆られます。

 

答えは正直わかりません。私も初めは演劇をやってる人ならきっと面白いんだろうな〜と感じながら読んでいました。

なんていうとこの記事の意義がなくなりそうですが、私なりにいい方法を見つけたのでここで紹介しようと思います。

 

それは、演じている役者になったつもりで声に出して読むということです。

 

えぇ… 恥ずかしい。

 

でも、そもそも戯曲は演劇になることを前提に作られているので、登場人物の喜怒哀楽がセリフの中ににふんだんに現れている上に、セリフの一つ一つの言葉のリズムも基本的にすごく整っているんです。

確かにちょっと恥ずかしいですが、声に出して朗読することで、紙の中の言葉が生き生きとしてくる気がします。めちゃおすすめです。(私は一人で登場人物全員を兼役してブツブツ喋りながら読んでいるので、あなたもきっと大丈夫です。なにが。)

 

また、演劇は見ているお客さんに楽しんでもらわなくては、継続して上演していくことができません。ですから、今でも書店で売られている戯曲はどれも多くの人に長年愛された名作揃いなんですね!

本を読むのは好きだけど戯曲はなんとなく遠ざけていた皆さん、偉大なる劇作家が書いた戯曲の名作を数百円で買えるってけっこうすごいことだと思いませんか? 思ってください。

 

もちろん、読んだ戯曲の実際の演劇を見るのもおすすめです。(番宣の無理矢理感!)

全編ロシア語での演劇に挑戦されているロシア語劇団コンツェルトさんが、今年12月にトルストイ『生ける屍』を上演されます。外国作品の演劇はもちろん翻訳版もいいのですが、オリジナルの言語だからこそ表現できる奥深さもあるのではないかと思います。席の予約はすでに始まっていますので、観劇したい方はお早めに!

 

それでは、ここまでお読みくださってありがとうございました。

ぜひあなたも、ロシアの作品に限らずとも、作家たちの残した戯曲の世界を堪能してみてくださいね!

 

文責:りお

 

*今日のロシア語*

пьеса(ピイェーサ)

 意味:戯曲

 

【参考文献】

沼野充義、望月哲男、池田嘉郎編『ロシア文化辞典』丸善出版株式会社.

・井上優「今日、戯曲を読むとは?」明治大学(最終アクセス2020/11/23)

https://m-repo.lib.meiji.ac.jp/dspace/bitstream/10291/18820/1/bungeikenkyu_132_29.pdf

・戯曲を読む会ネットワーク 戯曲について。(最終アクセス2020/11/23)

https://gikyoku.club/about-play/

 

◆コンツェルト本公演「生ける屍」について◆
ロシア語劇団コンツェルトは創立50周年を迎える歴史ある演劇サークルで、早稲田大学東京外国語大学お茶の水女子大学等様々な大学の学生が集まって構成されています。普段は早稲田大学戸山キャンパスで週2,3回のペースでお稽古をしているそうです。

記念すべき50回目の今年の本公演ではトルストイ原作『生ける屍 «Живой Труп»』を上演されます。ぜひあなたも足を運んで、ロシア語劇の魅力を堪能してくださいね!

●日程:12月25日(金)〜27日(日)

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それは無念か信念か。 文豪たちの遺稿

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Привет(プリビェット/こんにちは)!最近、自分が競歩に向いていることに気付いたУです!

今回は『生ける屍』にちなんで、文豪たちの遺稿・未完成の作品についてお話ししたいと思います!

ご一読いただけると幸いです!

 

※遺稿とは

遺稿とは「未発表のまま死後に残された原稿」のことです。未発表になった理由は、書ききれなかった、書きたくなかった、書くのをやめた…とさまざま。しかし、そうして今語られる理由も推測に過ぎず、真相は永遠に謎のままということも往々にしてあるようです。私は縄文時代で諦めた日本史のまとめノートを3冊所有しています。


芥川龍之介(1892-1927)『歯車』(1927) 

 『羅生門』や『蜘蛛の糸』などで知られる芥川には数々の遺稿があります。『歯車』は、晩年に書かれたもので、第一章だけが生前に発表されました。芥川を自殺へと追いつめたとされる幻想が織り込まれており、同時代の作家たちが数ある芥川の作品の中でも傑作であると評したとされています。すごい世界。

作中、主人公の「僕」がトルストイの”Polikouchka”(«Поликушка»)を読み、「この小説の主人公は虚栄心や病的傾向や名誉心の入り交つた、複雑な性格の持ち主だつた。しかも彼の一生の悲喜劇は多少の修正を加へさへすれば、僕の一生のカリカテユアだつた。」などという場面が出てきます。«Поликушка»は日本語の翻訳がないので、英訳版を読んだのでしょうか?あと個人的には精神的に不安定な時はロシア文学は読まない方がいいと思いました。

ちなみにトルストイは犬好き(ボルゾイの愛育家)ですが、芥川は死の直前までは大の犬嫌いだったそうです。

 

太宰治(1909-1948)『グッド・バイ』(1948)

『グッド・バイ』は太宰治の代表作『人間失格』と合わせて刊行された未完成の短編です。『人間失格』はその連載最終回の直前に太宰が自殺したため、遺稿に近いものと言えるかもしれません。

『グッド・バイ』の主人公・田島は田舎に妻子ある身ながら、東京で単身、闇商売をしながらたくさんの愛人を養っていましたが、ある日一念発起して足を洗い、妻子と東京で暮らそうと決意します。そこである美人に女房役を依頼し、愛人たちと円滑に別れようとするが…というところで絶筆となっています。そんなバカな!ここからじゃん!

作品冒頭、田島が同僚から「まさか、お前、死ぬ気じゃないだろうな。実に、心配になって来た。女に惚られて、死ぬというのは、これは悲劇じゃない、喜劇だ。いや、ファース(茶番)というものだ。滑稽の極だね。」という言葉をかけられる場面があります。

もつれた女性関係の末に愛人と入水自殺(推定)しながら、遺書には妻に向けて「お前を誰よりも愛してゐました」と遺した(とされる)太宰がそれを書くのか!と思わずツッコみたくなります。

 

宮沢賢治(1896-1933)『銀河鉄道の夜』(未定稿)

ここらで自殺していない文豪を。今回取り上げた『銀河鉄道の夜』の他にも『風の又三郎』や『セロ弾きのゴーシュ』など、宮沢賢治の代表作は生前には世に出ることのなかったものばかりです。なんか悔しい!

銀河鉄道の夜』は未定稿のまま残された作品で、研究者によってさまざまな解釈がなされいています。かの有名な「雨ニモマケズ」も遺品の手帳から発見されたもので、この作品では文字の書き損じ(?)が一つの論点になっているそうです。ロシア語の筆記体だとどうなるんだ…と研究者でもないのに気が遠くなりました。(わからない方は「ロシア語 筆記体」で検索してみてください。私は留学先で教室番号のメモが読めず路頭に迷いました。)

 

フョードル・ドフトエフスキー(1821-1881)『カラマーゾフの兄弟』(1880)

罪と罰』『白痴』『悪霊』など重めのタイトルの傑作達で知られるロシア文学界の巨匠、ドストエフスキーの最後の長編小説です。この作品は生前に刊行されているため遺稿ではありませんし、物語も終わっているため完結作品として知られています。しかし、実は当初は現在刊行されている一部とその13年後を描いた二部の二部構成の予定だっため、未完成とも言える作品です。

 

ニコライ・ゴーゴリ(1809-1852)『死せる魂』(1842)

『鼻』(めっちゃ面白いし、これ書けるゴーゴリすげぇ!って作品です。おすすめ)や『狂人日記』などで知られるゴーゴリの長編小説です。今回の当初のテーマである『生ける屍』と対のようなタイトルですが、何ら関係はありません。これも『カラマーゾフの兄弟』と同様、二部構成の一部のみが完成したものです。

 


いかがでしたか?作品に触れる時、その制作背景や年代に触れるのも面白いかもしれません。未完の作品に関しては、他の小説家が想像して完結編を書いたものもあります。遺稿・未完成だからこその楽しみ方で味わうのもまた一興ですね。

 

今回は文豪たちのトンデモエピソードが楽しくて長くなってしまいました!お付き合いいただきありがとうございます。

 

秋も深まりいよいよ冬がやってきます。お体に気をつけて!
以上、Уでした!

 

文責:У

 

*今日のロシア語*

『生ける屍』Живой труп(ジーボイ トュループ)

『死せる魂』Мёртвые души(ミョールトヴィエ ドゥーシィ)


【参考文献】

蔡暉映(2008)「成長物語としての『銀河鉄道の夜』 : ジョバンニとカムパネルラ」比較文学・文化論集 (25), 22-37, 東京大学比較文学・文化研究会.

齋藤繁(2013)「芥川龍之介「歯車」の暗号」弘前学院大学社会福祉学部研究紀要 (13), 15-36,
弘前学院大学社会福祉学部.

鈴木聡(2008)「亀山郁夫著 『ドストエフスキー―謎とちから』 文春新書 」総合文化研究(Trans-Cultural Studies) (11), 151-159, 東京外国語大学総合文化研究所.

入沢康夫(2010)『宮沢賢治の「ヒドリ」か「ヒデリ」の論争』書肆山田.

新潮社「太宰治『グッド・バイ』」(https://www.shinchosha.co.jp/book/100608/)

 

◆コンツェルト本公演「生ける屍」について◆
ロシア語劇団コンツェルトは創立50周年を迎える歴史ある演劇サークルで、早稲田大学東京外国語大学お茶の水女子大学等様々な大学の学生が集まって構成されています。普段は早稲田大学戸山キャンパスで週2,3回のペースでお稽古をしているそうです。

記念すべき50回目の今年の本公演ではトルストイ原作『生ける屍 «Живой Труп»』を上演されます。ぜひあなたも足を運んで、ロシア語劇の魅力を堪能してくださいね!

●日程:12月25日(金)〜27日(日)

公式HPやSNSでも日々のお稽古の様子や公演情報を掲載されています!要チェック!

コンツェルト公式HP:https://www.kontsert.jp

Twitterhttps://twitter.com/theatrekontsert

Instagramhttps://www.instagram.com/theatrekontsert/

Faceook:https://www.facebook.com/theatrekontsert

 

ロシア語劇団コンツェルト団員インタビュー【すずねさん&Mさん編】

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Привет!(こんにちは) リュボーフィ3年のおとはです。

ロシア語劇団コンツェルトのインタビューシリーズで、今回は早稲田大学文学部2年生で趣味は演劇鑑賞というすずねさんと、東京外国語大学国際社会学部2年生、フィギュアスケート鑑賞が好きなMさんにインタビューをしました。

 

―今日はインタビューを受けてくださりありがとうございます!早速ですが、すずねさんとMさんがロシア語劇団コンツェルトに入団したきっかけは何だったのでしょうか?

すずね:もともと、高校の頃に演劇をやっていて演劇が好きでした。それに加え、大学に入りロシア文学の作品に興味を持ちはじめ、演劇とロシア文学どちらにも関われるコンツェルトに入団しました。

 M :大学に入り、ロシア関連のサークルに入りたいと思っていたところ、ロシア語劇団コンツェルトを見つけ、入団を決めました。

 

―では次に、コンツェルト内での役職を、その役職の魅力と併せて教えてください。

すずね:私は舞台監督と舞台美術の仕事をしています。舞台監督は小屋入り(公演を行う際に公演直前・公演中の劇場で活動する期間)になると、全責任を負って仕事ができる点に面白さがあります。舞台美術は、舞台空間をデザインして、それらを構築するために必要なものを作ったり、買ってきたりすることが仕事です。設計図通りにものを作れた時の達成感が舞台美術の面白さだと思います。 

 M :私は字幕をやっています。具体的にはロシア語での演劇に日本語字幕をつけることです。字幕は、ロシア語が分からない観客の方と役者とを繋ぐ役割をしていて、間に立って観客の方の理解をいかに助けられるかが、一つの魅力だと感じています。

 

―では、これまでのコンツェルトの公演で最も思い出深い演目とその理由を教えてください。

 M :私は去年の本公演でやったヴィクトル・ペレ-ヴィンの『世捨て男と六本指』という作品が一番思い出に残っています。この作品は、SFディストピアチックでありながらコメディ要素も感じられるという作風に面白みを感じたというのもあるのですが、それだけでなく、この作品はコンツェルトのOBOGの方にも出演して頂き、存在感の大きさに感銘を受けたということも大きな理由です。また、照明や音響、演出、役者という全ての要素が合わさってできた時の相乗効果に感動しました。総合芸術たる演劇という感覚を味わえたことがすごく思い出に残っています。

すずね:私は今年の新人公演で行った『桜の園』が一番思い出深いと思っています。私自身、この公演ではじめて役者として出演したのですが、そこで演劇の楽しさを再確認しました。その公演ではヤネフスカヤという役を演じたのですが、ロシア語を話しながら演技をすること、また、ZOOM演劇だったため、カメラを見ながら演技をする必要があるということもとても難しかったです。

 

―ありがとうございます。お二人とも深い思い入れを持って演劇に携わっているのですね。それでは次にロシア文学に興味を持ったきっかけ、また好きなロシア文学作品を一押しポイントとともに教えてください。

すずね:私は『オネーギン』をきっかけにロシア文学に興味を持ち始めました。その中でも、タチアナが手紙を書くシーンで感情があふれ出す場面があるのですが、そのシーンに感動し心を動かされたことが印象的で、最も好きな作品となっています。

 M :私は『美しい子ども』というアンソロジーの中に入っていたウリツカヤの短編をきっかけにロシア文学に興味を持ちました。ロシア文学の中でも現代ものが好きで、一番好きな作品はやはりウリツカヤの『ソーネチカ』という作品です。ウリツカヤの作風が好きで、この『ソーネチカ』の作品はロシア文学に興味が無い人でも気軽に読めるという点で私はすごくおすすめです。

 

―お二人のおすすめ作品、ぜひ読んでみたいと思います。それでは、コンツェルトのお話に戻って、12月の本公演『生ける屍』の見どころを教えてください。 

 M :この作品は「どのように人を愛するのか」「どのように愛を示せば良いのか」というテーマが隠されている作品です。全ての人が考えさせられるこの問いが、私は一番の見どころであり、考えどころでもあると思います。

すずね:見どころはたくさんあるのですが、やはり一番の見どころは役者の演技だと思います。言葉では表せない本当に素晴らしい演技がみられるので、是非本番観て頂ければと思います。

  

―では少し本公演から離れますが、コンツェルトに入って良かった点は何ですか?

すずね:ロシア語演劇の練習風景が見られるのが、本当に楽しいです。お客さんになると、基本的に演劇の結果しか見られないのですが、役者がどのように考え演技をしているのかなどをみられるのがすごく魅力的です。 

 M :私は二つあります。一つはロシア語に触れる機会が増えることです。もう一つは、演劇が作られる過程がみられるという点です。特に、一つの目標に向かって全員が進んでいき、段々と完成されていくのをみるのは、達成感を感じる瞬間でもあります。

 

―確かに演劇が作られていく過程をみることはお客さんにはできないので、貴重な体験になりますね。では次に、私たちリュボーフィの記事の中でお気に入りの記事などがありましたら教えて頂きたいです。

 M :私は「とある島からはじまる東西冷戦in my mind」という記事が面白かったです。その中の見出しでの言葉遣いが面白かったのと、内容も共感できる部分が多かったからです。具体的に共感できた点は、日本で考えられているロシアと、ロシア人が思うロシアには違いがあるということです。このことは、私がロシア語を勉強し始めるきっかけにもなったので、とてもこの記事に共感することができました。

とある島から始まる東西冷戦 in my mind - 東京外国語大学ロシアサークルЛЮБОВЬ(リュボーフィ)のブログ

すずね:面白かった記事はたくさんあるのですが、その中でも一番のお気に入りは「ロシア語の食品パッケージ」という記事です。企画的にも斬新で面白いなと感じました。このような企画ができるリュボーフィはすごいと思いました。

ロシア語の食品パッケージを見てみよう - 東京外国語大学ロシアサークルЛЮБОВЬ(リュボーフィ)のブログ

 

―ありがとうございます。では最後にインタビュー記事を読んでくださる方へのメッセージをお願いします! 

 M ロシア文学を難しいと思われている方でも、演劇だとまた違った印象を受けられると思うので、是非コンツェルトの12月の本公演観に来てください!

すずね:12月の本公演は、役者も脚本も舞台美術も音響照明も素晴らしい舞台を行うので、是非観に来てください!よろしくお願いします!

  

すずねさん、Mさんインタビューを受けてくださりありがとうございました!役者だけでなく、全ての人の努力があってこそ、公演が成り立っているのだと感じました。

とても面白いお話を聞くことができ、12月の本公演が待ち遠しくなりましたね。

 

文責:おとは

 

◆コンツェルト本公演「生ける屍」について◆
ロシア語劇団コンツェルトは創立50周年を迎える歴史ある演劇サークルで、早稲田大学東京外国語大学お茶の水女子大学等様々な大学の学生が集まって構成されています。普段は早稲田大学戸山キャンパスで週2,3回のペースでお稽古をしているそうです。

記念すべき50回目の今年の本公演ではトルストイ原作『生ける屍 «Живой Труп»』を上演されます。ぜひあなたも足を運んで、ロシア語劇の魅力を堪能してくださいね!

●日程:12月25日(金)〜27日(日)

公式HPやSNSでも日々のお稽古の様子や公演情報を掲載されています!要チェック!

コンツェルト公式HP:https://www.kontsert.jp

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ロシア語劇団コンツェルト団員インタビュー【三輪さん編】

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Здравствуйте (ズドラーストヴィチェ)!こんにちは!

東京外国語大学ロシア専攻3年の芝元です!

 

リュボーフィは、12月25日(金), 26日(土), 27(日)にトルストイ原作の『生ける屍』を上演するロシア語劇団コンツェルトを応援しよう!ということで、今月コンツェルトさんとのコラボ企画を絶賛実施中です。このコラボでは12月の本公演の魅力を皆さんにお伝えしたいと思います。

 

今回、私は早稲田大学1年の三輪さんにインタビューをさせていただきました。

三輪さんとはインタビューで初めてお話をさせていただいたのですが、とても魅力的で素敵な方でした!この記事にはそんな三輪さんの良さが詰まっていると思うので、ぜひ最後までお読みください!

 

【三輪さんについて】

早稲田大学法学部の1年生で、今年の春にロシア語劇団コンツェルトに入団。今年の12月の本公演『生ける屍』では主人公のフェージャを演じます。高校では文芸部に所属しており、演劇はコンツェルトに入団してから始めたそうです。

 

 

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練習風景の写真① 右が三輪さん

-初めまして!今日はよろしくお願いします!では早速ですが、ロシアに興味を持ったきっかけを教えてください。

とあるアニメでロシア民謡の「カチューシャ」という曲がかかっている時があって、それを聞いて、歌えるようになるうちに興味を持ちました。

 

-なるほど!法学部でロシアに興味があるとなると、ロシア語を第二外国語として学んでいるのですか。

そうですね。文法の授業が週に2回でネイティブの授業が週に1回あります。この前の授業では形容詞の短語尾を学びました。

 

-法学部でロシア語選択というのは珍しいですか。

珍しいですね。早稲田大学では第二外国語によってクラスが作られるのですが、中国語とかはクラスが9つあるって聞きますけど、ロシア語は1つしかないです。

 

-そうなんですか!ところで、今回の作品『生ける屍』は「裁判」がキーポイントになってくると耳にしたことがあり、法律の知識が役に立つのではないかなと思ったんですけど、実際のところはどうですか。

ぎりぎりネタバレにならないラインで話すと、この作品では結婚制度とか離婚の話の中で裁判が起きるんですね。現代の家族法の知識と当時のロシアの家族,結婚,離婚の法律が全然違ったりして、そこの比較も出来て面白いです。

 

-法律を学んでいるからこそ、また違った楽しみ方が出来ていいですね

 

-次にロシア語劇団コンツェルトに入団した理由を教えてください。

Twitterの新歓の情報を見てコンツェルトを知りました。確か4月の末に、新歓公演をYouTube Liveでやられていたんですね。それを見させていただいたのですが、その時の演出のセンスがあまりにも刺さってしまって、「これ入るしかないわ」って思いました

 

-そうだったんですね!では次に、コンツェルトでの役職を教えていただきたいです!

コンツェルトでは役者をやらせていただいております。今回の本公演では、主演をやらせていただきます。

 

-主人公を演じることが決まった時の心境を教えてください。

求められている答えと違うかもしれませんが、一番は「やっぱりな」と思いました。今回、公演で『生ける屍』をやるということがキャスト発表の前に決まっていたんですね。なので、作品が決まってからワークショップを何回かやって配役決定に至るっていう流れでした。そのワークショップの中で自分も何役かやらせていただきましたが、一番やり易かったのが主人公のフェージャ(フョードル・ワシーリエヴィチ・プロターソフ)だったので、ここらへんになるんだろうな、と思っていました。

 

-それは何だか運命的ですね。フェージャのこういうところ良いな、嫌だなっていうのはありますか。

嫌だなって思うけど、そこが良いっていうのはありますね。憎めないやつなんですよ。フェージャは色々な悪い人間と関わっていって、そのコミュニティに良くも悪くも溶け込んじゃうんですよね。本当であればそんなところにいるはずの人間じゃないのに、その場所でしか生きられないと思ってしまうフェージャがある意味可愛いなって思いますね。生きもがいてるなって。

 

-フェージャがどうなってしまうのかとても気になります…!

 

-また、実は今回主演を務められる三輪さんの魅力を知りたくて、練習風景の動画を拝見させていただいたのですが、本当にびっくりしました。狂気じみてる感じがめちゃくちゃ出ていて、数分の動画を見ただけなのにとてもゾワッとしました。表情の作り方とか臨場感が溢れる感じが凄いと思ったのですが、そのためになにか工夫をしていることはありますか。

自分が狂気じみた演技をする時に気を付けているのは「呼吸」ですかね。呼吸を意図的に速くして、過呼吸の手前みたいな状態にして演技しています。映像でわかるかはわからないんですけど、芝元さんがご覧になった動画で演じていたシーンでは凄い過呼吸になって顔が真っ赤になっちゃったんですよね。

 

-す、凄い!家ではどのように「狂気」を出す練習をしているんですか

目をかっぴらいたりする練習をしています。他の団員の皆さんは狂気とは程遠い優しい方が多いので、そういうところだったら自分も戦えるのかなと思って、そこは磨くようにしてます。

 

-流石です。狂気じみている役って結構難しいと思うのですが、感情移入はどのようにやられていますか。

まずは脚本を頂いて、演出家さんと色々とお話をして、どういった人物なのかしっかりと理解したうえで、あとはもう自己暗示ですね。目をつぶって「自分はそういうキャラクターだ」って思ったり、唱えたりしながら、自分の中にもう1人自分を作るみたいなことをします。

 

-凄くかっこいいですね!ところで、練習していてどこが難しいですか。

まず練習をする前に自分で脚本を読んで、その部分を1人で練習してから劇団の練習に行くんですけれども、自分と演出家さんの間に解釈の違いというものがあるんですね。「この場面でフェージャはこういう感情を持っているはずだ」と思って稽古に行って、「それちょっと違う」って言われると直すのが難しいです。

 

-解釈が違う時は演出家さんの指示に従うのが主ですか?

そうですね。演出家は神様なのであらがうことは許されません!

 

-名言ですね!

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練習風景の写真②

-次に、コンツェルトの公演で最も思い出深い演目を教えていただきたいです。

7月の終わり頃に新入生公演でやらせていただいたチェーホフの「タバコの害について」という作品がやっぱり思い出深いです。自分が出演したというのも一つなんですけど、実は「タバコの害について」は1人の人間を4人で演じるっていう作品だったんですね。つまり、4人1役っていう。その特殊な状況で演技をして演劇を作っていくというのはなかなか思い出深かったです。

 

-それはユニークですね!その「タバコの害について」が1作目で、今回が2作目の出演作品だと思うのですが、自分の中の心の変化といいますか、何か違いはありますか。

1作目はzoom上での演劇だったのですが、zoomって胸から上しか映らないじゃないですか。だから、やっぱり実際の舞台に立って演技をするってなると、身体全体の演技が要求されてくるので、例えばzoomだと手や足をブラブラさせていても大丈夫ですが、そこら辺の甘えが通用しないと思うと気を引き締めなきゃなと思うようになりました。

 

-なるほど!1年のうちからオンラインとオフライン、どちらも経験できるというのは貴重ですね。

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練習風景の写真③

-『生ける屍』の三輪さんだけが知っている見どころを教えてください。

私だけが知っているかどうかはちょっとわからないんですけれども、私が演じるフェージャというキャラクターは言ってしまえば、家庭を捨てて放蕩の限りを尽くす、今風に言えばダメ夫なんですけれども、ダメ夫はダメ夫なりの心の中の葛藤がありまして、その葛藤を抱えながら色々な悪い人間のコミュニティに入っていくんですね。そこで自分の内面からも崩れていって、外面からも崩されていきます。なんというか趣味は悪いですが、人の壊れていく過程を生々しく観るっていうのが見どころかなと思います。

 

-なんだか現代社会を生きる私達にも通じるものがありそうですね。

 

-話が変わりますが、好きなロシア文学についてお聞かせください。

あまりロシア文学を沢山読んでいたわけではないので、有名どころになってしまうのですがドストエフスキーの『罪と罰が好きですね。

 

-『罪と罰』ですか!難しいとよく聞くのでまだ手を出せていません。

確かに簡単では無かったです。今回の『生ける屍』を書いたのはトルストイですが、『罪と罰』を書いたドストエフスキーは割と民衆を主人公や登場人物においた作品が多いので、ロシア貴族社会を想像するよりは民衆社会を想像するほうがとっつきやすいのではないかなと思うのでお勧めです。

 

-わかりました。今度読んでみたいと思います。

 

-次に、もしよろしければロシアサークルのブログ記事で最も面白いと思ったものを教えてください。

『可愛い女』についての記事が面白かったです。

嬉しくて悲しくて愛しい物語『可愛い女』 - 東京外国語大学ロシアサークルЛЮБОВЬ(リュボーフィ)のブログ

特に妄想パートの部分が面白くて、結構大きな声で笑いながら読ませていただきました。それと、この記事を読んでいて、主人公のオーレニカと役者は似ているところがあるなと思いました。オーレニカって夫に合わせて自分の趣向とか主張が変わるキャラクターじゃないですか。それってある意味その時々に求められている人になりきる、つまり全く別の人間になるっていうのは役者のやっていることと似ているのかなと思いながら読ませていただきました。

-えええ、嬉しいです。役者視点の感想は貴重すぎます。ありがとうございます!

 

-最後にインタビュー記事を読んでくだっている方々にメッセージをお願いします。

インタビューを読んでくださり、みなさま誠にありがとうございます。今回私たちが行う本公演『生ける屍』はロシアのことを全く知らない方から「ロシア大好き!」という方まで幅広く楽しめる内容となっております。私が言うのはなんですが、色々な要素が詰まっていてかなり面白いものになるかなと思っております。団員一同みなさまに楽しんでいただけるよう、全力で準備しておりますので、ぜひお越しください。また、この機会を設けてくださったリュボーフィさんのこともどうぞよろしくお願いいたします。

 

三輪さん本当にありがとうございました!作品を観るのがとても楽しみになりました!

12月の公演が成功することを心から祈っております!

 

文責:芝元さや香

(インタビュー実施日:2020年11月4日)

 

◆コンツェルト本公演「生ける屍」について◆
ロシア語劇団コンツェルトは創立50周年を迎える歴史ある演劇サークルで、早稲田大学東京外国語大学お茶の水女子大学等様々な大学の学生が集まって構成されています。普段は早稲田大学戸山キャンパスで週2,3回のペースでお稽古をしているそうです。

記念すべき50回目の今年の本公演ではトルストイ原作『生ける屍 «Живой Труп»』を上演されます。ぜひあなたも足を運んで、ロシア語劇の魅力を堪能してくださいね!

●日程:12月25日(金)〜27日(日)

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