東京外国語大学ロシアサークルЛЮБОВЬ(リュボーフィ)のブログ

「未知なる魅惑の国」であるロシアならではの文化から、留学や旅行のこと、東京外国語大学でのキャンパスライフのことまで。このブログでは、東京外国語大学のロシアが大好きな学生たちが様々なテーマに沿って日替わりで記事を書いていきます。ЛЮБОВЬ(リュボーフィ)とは、ロシア語で「愛」を意味します。

亡命ロシアと雑誌

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1924年から1939年にかけてフランス・パリで出版されていた、«Иллюстрированная Россия»「挿絵入りロシア」という雑誌に興味がある。

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1930年第1号(出典http://librarium.fr/ru

1920~1930年代は、ロシア革命によって多数のロシア人が国外に亡命した時期で、そのために海外では数多くのロシア語雑誌が発行された。このあたりの出版事情については、諫早勇一「ロシア人たちのベルリン 革命と大量亡命の時代」(東洋書店、2014年)に詳しい。

この本を見つけた前か後か忘れたが、ゼミでソ連の雑誌について調べていた頃、http://librarium.fr/ru という、亡命ロシア人によって出版されたロシア語雑誌のアーカイブを見つけたため、「亡命ロシア人の出版したロシア語雑誌」というものに興味が湧いた。冒頭で紹介した「挿絵入りロシア」を見つけたのも、このサイトからである。もちろん欠号はあるものの、主にベルリンやパリ(他にはハルビンやリガ、ベオグラード、ロシアのものもある)で発行された雑誌をかなりの数読むことができる。

 

「挿絵入りロシア」の魅力は、なんといってもイラストや写真がたくさんあることだ。当時の記事や写真、イラストから、何かわかることはないか、あわよくば卒論に繋げられないか、と思っている。ソ連を風刺したイラストが描かれたページ、女性のためのページ、ファッション特集(パリのモード)、子供のためのページ…などなど、沢山の特集ページがあるのもこの雑誌の魅力である。

 

 

この雑誌に限らず、雑誌には当時の世相を表すたくさんの情報が詰まっている。記事だけではなく、表紙や広告からもさまざまなことが読み取れるはず…。莫大な量の大衆雑誌を収集した大宅壮一は「つまらん本ほどいいんだ。或いは一時大衆の間に壓倒的に受けて、今はもうゴミダメの中にあるようなものがいいんだな。そういうものがネタになるからね」[1]と語っているが、本当にその通りだと思う。雑誌は多くの可能性を秘めている。

 

[1] 近藤日出造「僕の診断書・13 大宅壮一」『中央公論』70(4)1955, p225.

 

ロシアの亡命文化(特に出版関係)を知りたい方へ おすすめの本・サイト

(ブログ的に分量が足りないのでおすすめの本・サイトを紹介することでごまかすことにしました!!!下に挙げるものはあくまで私が知っている範囲のものです)

 

・Литературная Энциклопедия Русского Зарубежья 1918-1940 Периодика и Литературные Центры. Москва РОССПЭН.2000.

(↑超最強の事典(というか書誌?)。1918年~1940年にかけてロシア国外で出版されたロシア語の定期刊行物について、かなり詳しい説明がなされている。外大に所蔵あり)

 

・桑野隆監修・若林悠著『風刺画とアネクドートが描いたロシア革命』現代書館, 2017年.

(↑『挿絵入りロシア』について取り上げている日本で唯一の本なのでは??『挿絵入りロシア』という雑誌のタイトルは、この本で書かれていた訳語を使わせていただきました。ロシア革命前後のロシア(主にソ連)を、風刺画(マンガを含む)やアネクドートから眺めてみよう、というとてもユニークな本)

 

・諫早勇一『ロシア人たちのベルリン 革命と大量亡命の時代』東洋書店, 2014年.

(↑タイトルの通り、ロシア革命後のベルリンにおけるロシア文化(生活・出版・芸術・その他)について取り上げている本。初期の亡命の歴史を知るのにも非常に役に立つ。外大に所蔵はあるけれど大体それは私の手元にあります…)

 

・沢田和彦『白系ロシア人と日本文化』成文社, 2007年.

(↑ハルビンで出版されていた週刊の絵入り文芸雑誌『ルベージュ』の中で、日本に焦点が当てられた記事について特に取り上げている)

 

・生田美智子「日本統治下ハルビンにおける「二つのロシア」 : ソビエトロシアと亡命ロシア」『言語文化研究』35, 2009年, 179-197頁.

・生田美智子「ハルビンにおける二つのロシア」, 『満州の中のロシア:境界の流動性と人的ネットワーク』, 成文社, 2012, 19-65頁.

・中嶋毅「ハルビンのロシア人社会」『講座スラブ・ユーラシア学』3, 講談社, 2008年, 266-294頁.

(↑満州のロシア人社会はとても不思議な環境にあったので、調べてみるととても面白いと思うのですが…複雑すぎて私は諦めてしまいました泣)

 

http://www.emigrantica.ru/item/rubezh-kharbin-19261945#общее-описание-издания   

(亡命者の定期刊行物についての事典的サイト。 最終閲覧日2021/5/10)

http://librarium.fr/ru/magazines/frontier  

(亡命雑誌のアーカイブ。«Рубеж», «Иллюстрированная Россия», «Жаръ-Птица», «Новая Нива»など多くの雑誌を読むことができる。 最終閲覧日2021/5/10)

 

文責:R

 

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