東京外国語大学ロシアサークルЛЮБОВЬ(リュボーフィ)のブログ

「未知なる魅惑の国」であるロシアならではの文化から、留学や旅行のこと、東京外国語大学でのキャンパスライフのことまで。このブログでは、東京外国語大学のロシアが大好きな学生たちが様々なテーマに沿って日替わりで記事を書いていきます。ЛЮБОВЬ(リュボーフィ)とは、ロシア語で「愛」を意味します。

ソ連映画『カーニバル・ナイト』の魅力に迫る!

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プリヴェット!(こんにちは!)国際社会学部4年のももです。今日は、私のお気に入りのソ連映画『Карнивальная ночь(カーニバル・ナイト)』(邦題:すべてを5分で)を紹介したいと思います。ロシアでは大みそかに放送される定番の映画だそうで、思いっきり季節外れになるんですけどご容赦ください(笑)。

 

〇 あらすじ

新年を間近にひかえたソ連のある町の文化会館では、多くの人々が大みそかのパーティーの準備をしていた。主人公のレーナはこのパーティーのまとめ役。しかし、新しく来た頭の固いオグルツォフ館長の命令で、パーティーを真面目で厳粛なものにしなければいけなくなってしまう。例えば、学者による40分のスピーチを入れたり、バレエダンサーの衣装を素足が出ないものにしたり…。このままではつまらないパーティーになると感じたレーナは、館長を出し抜いて皆が楽しめるパーティーにするため、彼女に想いを寄せる技術士グリーシャと奔走する。

 

〇 見どころ

この作品の見どころはやはり、頭の固い役人を出し抜いて一杯食わせていく、というコメディ部分の痛快さにあると思います。この映画が作られたのは1956年の「雪どけ」の時代。スターリンが死亡し、それまで押さえつけられていた表現の自由に、少し寛容が認められた時代です。古い時代の官僚への風刺が詰まったこの映画は、当時の人々の心情を表すものだったのでしょう。古い時代が終わって新しい時代の夜が明ける、新年のお祝いのカーニバルはその隠喩のようにも感じます。

また、ダンスや歌の、ミュージカル部分も見どころの一つです。特に年が明ける5分前にレーナが歌うシーンは、明るく可愛らしく、彼女の魅力が詰まった歌です。クリスマスの飾りで彩られた画面の華やかさと相まって、聞くとハッピーな気分になれること間違いなしです!

最後に、主人公レーナについても言わせてください。彼女はパーティーを盛り上げるために皆を引っ張っていく、行動力のある女性です。しっかり者で、皆の支柱のような存在ですが同時に、小悪魔的かわいらしさも持ち合わせています。チャーミングな笑顔で頼まれたら断れない。そんな雰囲気を持ったレーナに、登場人物だけでなく視聴者も虜になっていきます。そんな彼女を見るためだけでも、この映画を見る価値があります。YouTubeで英語の字幕ですが無料公開しているのでぜひ!

 

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〇 監督エリダール・リャザーノフについて

この映画の監督は、エリダール・リャザーノフ。本作品がデビュー作です。彼はロマンチック・コメディを得意とした映画監督であり、脚本家でした。本作品以外にも多くの有名な映画を手掛けており、『Ирония судьбы, ≪С легким паром!≫』(運命の皮肉、あるいはいいお湯を)が代表作。この作品もまた、ロシアの大みそかの定番映画となっています。ちなみに、この「運命の皮肉、あるいはいいお湯を」には、監督自身の登場シーンもあります。

 

〇 ソ連映画について

1920年代から1980年代、ソ連の社会主義体制の下で作られた映画がソ連映画と呼ばれています。ソ連時代、映画は社会主義の思想を宣伝するためものでしたが、それだけでなく、芸術性の高い素晴らしい作品を生み出すことも重要視されていました。また、制作者たちは権力によって厳しく管理されていたにもかかわらず、映画作品によって全体主義体制への隠れた抵抗を示しました。一方、国家から支給されていた潤沢な予算が、制作者たちの高い芸術性への探求を可能にしたことも確かです。ひとくちにソ連映画と言っても、第二次世界大戦期から冷戦期、「雪どけ」というさまざまな時代を反映して作られ、多様性に満ちています。現在映画会社モスフィルムによってYouTube上で多くの作品が無料公開されているので、ぜひ多くの人に見てほしいと思います。私のおすすめは、アンドレイ・タルコフスキー監督の『惑星ソラリス』です。それでは、パカ~(じゃあね)!

 

文責:もも

 

《参考文献》

ネーヤ・ゾールカヤ著、扇千恵訳『ソヴェート映画史 七つの時代』