東京外国語大学ロシアサークルЛЮБОВЬ(リュボーフィ)のブログ

「未知なる魅惑の国」であるロシアならではの文化から、留学や旅行のこと、東京外国語大学でのキャンパスライフのことまで。このブログでは、東京外国語大学のロシアが大好きな学生たちが様々なテーマに沿って日替わりで記事を書いていきます。ЛЮБОВЬ(リュボーフィ)とは、ロシア語で「愛」を意味します。

東京外大生にインタビュー!第6弾【中国語科編】〈後編〉

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中国語科Tさんへのインタビュー

 

↓前編はこちらよりどうぞ

tufs-russialove.hatenablog.com

 

【留学編】

―留学はどちらへ行かれましたか?また、中国語圏に旅行をしたことはありますか。

三年次の秋から約半年間、北京の清華大学へ留学しました。派遣留学ではなく、休学留学で、自分で奨学金を取って行きました。1月に、再び中国に戻るつもりで日本に一時帰国したのですが、コロナウイルスの影響でそのまま留学終了となってしまいました。

 

清華大学のキャンパスは規模がとても大きく、キャンパス内に3、4階建ての食堂が7〜8個あったり、銀行の支店があったり、寮が留学生用だけで23棟あったり、小学校や中学校が併設されていたりと、その大きさには愕然としました。

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また、留学中に、ハルビンという街へ旅行に行きました。ハルビンは、中国の北端に位置する黒竜江省の省会(日本でいう県庁所在地のようなところ)です。

そのほか、二年生の時に台湾へ旅行したこともあります。

 

―外大と提携を結んでいる派遣先の大学ではなく、あえて清華大学を選んだのはなぜでしょうか?

まず、清華大学は経済学の分野において有名なので、経済を学びたい自分にとって魅力的だったということが大きな要因としてあります。加えて、この大学が理系分野に強いということも選んだ理由の一つです。実際に、留学先では経済学の授業やコンピュータ関連の授業を取りました。

自分の取った奨学金が語学留学を許さないタイプのものだったこともあり、基本的に学部の授業を取っていました。語学の授業もいくつかは取りましたが。

 

―学部の授業を中心に取っていたのですね!すごいです…!語学留学ではないのですね。留学してよかったと思う点は何ですか?

やはり、外大では学べないことが学べた点です。特にコンピュータ系の授業は外大では殆どないので。

あとは、現地に実際に行かないと分からないことを知ることができたという点でしょうか。やっぱり、本で読んだり人から話を聞いたりするのと、実際に自分の目で見て確かめるのとでは違いますね。例えば、留学前は中国の建物の耐久性に若干の不安を抱いていましたが、実際に行ってみて、「あ、意外と丈夫なんだ」と思ったりしました(笑)

また、よかったかどうかはわかりませんが、キャッシュレスが進んだ社会で生活したことで、「日本もいずれこうなるのかな」というイメージを持つことができました。

 

―確かに、中国ではキャッシュレスが進んでいますよね!実際に中国で暮らしてみてどうでしたか?本当に現金は全然使わないのでしょうか。

本当に、現金を使う機会は全くと言っていいほどなかったです。携帯さえあれば何でもできました。とはいえ、それは裏返せば携帯がないと何もできないということでもあります。充電がなくなると困るので、モバイルバッテリーを持ち歩いている人が多かったです。余談ですが、ハルビンへ旅行に行った時、寒さでバッテリーがやられるのか、すぐに電源が落ちてしまい困りました。

 

―寒さでバッテリーがやられるのは寒冷地あるあるですね(笑)

実際、現地の人はどうしているんでしょうね。寒冷地仕様の携帯なんかがあるのでしょうか…。

また、せっかくなので、ここでハルビンについての話もお聞きしたいと思います!

ハルビンはかなり北京から離れていますが、ハルビンへ旅行したのはなぜですか

一度、遠い所へ旅行してみたかったというのが大きいです。とはいえ、北京から遠く離れた町はたくさんあるわけですが、その中でもハルビンを選んだのは、大学で仲良くなった友達が黒竜江省の出身で、彼からよく話を聞く機会があり、興味を持っていたからです。

 

―そうなんですね!ハルビンに実際に行ってみてどうでしたか?

行ったのが1月だったこともあり、とにかく寒かったです。夜はマイナス30度にもなりました。

町並みで特徴的だったのが、ロシア風の聖堂や建物があちこちにあったことです。

 

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聖ソフィア聖堂(めっちゃロシア~~!!)

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阿列克謝耶夫教堂(聖アレクセーエフ教会)

また、雪まつり(氷雪大世界)をやっていて、それもとても綺麗でした。博物館なども訪れましたが、そこではシベリア鉄道に関する資料やかつて貼られていたであろうロシア語のポスターなどが展示されていました。

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氷像の写真。綺麗ですね!!

―へえ…!ロシアの面影が残っているんですね。

(19世紀末~20世紀初頭の清末期に列強諸国が次々に中国へ進出するなかで、ロシアは万里の長城以北を勢力圏としていました。清はロシアに対し、1896年の露清条約で東清鉄道の敷設権を認めています。条約締結後、この地域においてロシアは鉄道の敷設や町の建設を行い、ハルビンがその中心都市となりました。また、ロシア革命の際にハルビンへ亡命したロシア人も多く存在しました。)

 

とはいえ、今は、ロシア人はほとんど住んでいないんですよね。

(のちほど調べたところ、「ロシア人は満州国崩壊後もしばらくハルビンに暮らしていたが、1954年本国への帰還を許され、ほとんどがソ連に戻った」とのことです。「地球の歩き方 2019~20 大連 瀋陽 ハルビン 中国東北地方の自然と文化」p233参照。)

そうですね。今となっては、残っているのは建物くらいなのかなと思います。

探せばあるのかもしれませんが、ロシア料理店も見かけませんでした。ハルビンへ行く電車で乗り合わせた人たちにハルビンのおすすめの料理を聞きましたが、東北料理をすすめられましたし…。(インタビュー後に執筆者が調べたところ、ロシア料理店は何軒か存在するようです。)

 

そういえば、日本ではまず見られない光景だと思いますが、中国の列車で向かい合わせの席に乗ると、乗り合わせた人たちと見ず知らず人同士の場合であっても一緒に会話をします。新幹線や飛行機のような目的地への到着が速い交通機関だとまた異なるのかもしれませんが、なにせ列車の場合北京からハルビンまでは片道15時間かかるので・・・。

 

―面白いですね!15時間ずっと喋っていたのですか?どのような話をしましたか。

基本ずっと喋っていたと思います。互いのことについてあれこれ話したり聞いたりするのが普通だと思いますが、自分の場合、日本人ということで珍しがられ、色んなことをたくさん聞かれました。自分は彼らにハルビンのおすすめの観光スポットなどを聞きました。

また、かなり厚着をしていったつもりだったのですが、電車の中で「ハルビンの寒さをなめてる」とさんざんダメだしされました(笑)実際彼らの言う通り、とても寒かったです…。

 

―マイナス30度は激寒です…。

 

―留学全体を通して、関わった現地の人々の印象を教えてください。

現地の人たちは基本優しかったです。困ったことやわからないことがあったらまずは周りの人に助けを求めるという感じでした。僕も沢山助けてもらいましたし、逆に尋ねられることもありました。

ただ、お店の人は結構無愛想なことが多く、要は自然体なだけなのですが、日本の雰囲気に慣れているとちょっとびっくりするかもしれません。また、中国の方と話している時に相手が聞き取れないと、あぁ?」と結構大きめな声で聞かれます。日本の文化で考えると喧嘩腰に聞こえてしまいますが、単に「なんて言ったの?」と聞いているだけなので、あらかじめ知っておくと怖がらずに済むかもしれません。

 

―お店の人が無愛想なのは、ロシアも似ています(笑)

治安に関してはどうでしたか?

治安は僕が訪れた北京、ハルビンに関してはとても良くて、夜出歩いていても怖いと感じることはありませんでした。多少は警戒したほうがいいですが、荷物や財布が取られる心配は特になさそうでした。

 

【中国について知ろう編】

―中国地域を勉強する最初の一冊となるようなおすすめの本を教えてください。

地域基礎(一年次に行われる必修の授業。専攻地域に関する基礎知識を学ぶ)で使ったテキストですが、「はじめて出会う中国」(有斐閣アルマ)は分かりやすくていいなと感じました。

はじめて出会う中国 (有斐閣アルマ)

はじめて出会う中国 (有斐閣アルマ)

  • 発売日: 2013/05/30
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

―中国地域の音楽や絵画、文学、映画、アニメで有名なものはありますか?

あまり深くは知りませんが、Jay Chou周杰倫という人の音楽は友達がハマっていました。

文学で言うと、劉慈欣の三体」というSF小説が大人気になったそうです。日本語版も出ているのですが、かなり分厚いので手を出すかまだ躊躇しています。

三体

三体

 

(↑確かに長いです。Ⅰ巻、Ⅱ巻(上)、Ⅱ巻(下)の全3冊のようです。)

 

―著名人といえばどのような方がいますか?

アリババの馬雲やテンセントの馬化騰のような大企業の社長は有名ですね。

网红(ワンホン)と呼ばれる中国のネットインフルエンサーも有名だと思います。李佳琦という人は聞いたことがあります。

 

―近年の中国の政治・経済の状況をTさんはどう見ていますか。

経済のことで言うと、数年前から中国は「新常態」と呼ばれる安定成長の時期に入っており、それ以前のG D P2桁成長ではなく5〜6%程度での安定的な成長期に入っています。

 

特に最近の話ですと、コロナの発生地と考えられている場所であり、またそこから比較的早く回復した中国ですが、工場に関していえばまだそこまで復旧していないらしいです。

中国の政策はややもすれば強引になってしまうところがあり、その一例として都市や幹線道路の封鎖がありましたが、その影響で故郷から工場のある街へ行くことができなくなってしまった人が多く出たみたいです。コロナが流行った2月ごろはちょうど中国の旧正月の時期と重なっていて、多くの人が出稼ぎから故郷に戻ったタイミングだったためこのようなことが起こったようです。

 

ざっくりとですが、現在、中国当局は「民衆の不満に対するコントロール」を強く意識してやっているように思います。例えばコロナに関しては、当初は中国政府に対して国民の不満が高まりましたが、その後の対応によって、「武漢の政策はイマイチだったけれども、中国政府はうまくやった」という印象を与えたと個人的には感じました。

資本主義経済を取り入れ、もはや当初の共産主義社会主義的な思想の土台が失われてしまったため、国民を共産党につなぎとめることに必死なようです。とはいえ、留学中に現地の人々と接した限りでは、「なんだかんだ安定して経済成長を遂げているし、まあ、このままでいいか」という風に現在の状況を捉えている人が多いと感じました。

 

ソ連の場合は社会主義が立ち行かなくなって結局崩壊してしまったので、経済のあり方は変わったとはいえまだ続いている中国がすごいなあと思っています(笑)

でも、そのお話を聞く限り、しばらく中国の体制は変わらなさそうですね。

そうですね。周りを見る限り、当局に反感を持っているような人はいませんでした。逆に、熱狂的に共産党を支持しているという印象も受けませんでしたが。

 

―そうなんですね。実際の現地の様子をお聞きすることが出来てとても興味深いです。

 

本日はインタビューにお付き合いいただき本当にありがとうございました!中国語科についての話、外大での授業の話、留学の話、どれも聞いていてとても楽しかったです!

 

文責:R

(インタビュー実施日:2020年9月21日)