東京外国語大学ロシアサークルЛЮБОВЬ(リュボーフィ)のブログ

「未知なる魅惑の国」であるロシアならではの文化から、留学や旅行のこと、東京外国語大学でのキャンパスライフのことまで。このブログでは、東京外国語大学のロシアが大好きな学生たちが様々なテーマに沿って日替わりで記事を書いていきます。ЛЮБОВЬ(リュボーフィ)とは、ロシア語で「愛」を意味します。

色んな形のロシアビジネス

今日は、ロシアビジネスについて、様々な事例を紹介していきます。

ロシアビジネス、、??といってもピンと来る人はそう多くないかと思います。

ロシアと言えば、スケート・ロシア文学・バレエなど、こうしたソフト面のイメージが強いと思います。これらのロシアのソフトカルチャーは、実績を残していることから、日本でも有名です。

一方で、よりハード面でビジネスについて考えてみると、ロシアに進出している日本企業は目立たない現状です。しかし、あまり知られていないかと思いますが、実は面白そうな日露ビジネスの事例はたくさんあります!今回は、「モノ」ではなく、「物流」「エネルギー」「投資」といったもっと広い範囲で、日露ビジネスを取り上げていきます!

 

事例①シベリア鉄道を用いた日本~欧州の輸送サービス

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この事業は、国土交通省・ロシア鉄道が主導となって、様々な物流会社が関わっている輸送サービス事業です。日本海を経てまずは船でロシアの港までモノを運び、その後、ロシアを横断するシベリア鉄道を用いて一直線で欧州まで運ぼう!という事業です。海上輸送と航空輸送に続く第3の輸送手段の選択肢として、シベリア鉄道が注目されているんです。初めてこれを聞いた時は驚きでした。私もシベリア鉄道に乗ってロシアを横断することが目標なので、この輸送サービスでついでに運んでもらえないかな~とか少し思いました。

この輸送サービスでは、日本の港は伏木・富山港が玄関口となっており、ロシアの港はウラジオストク自由港が玄関口となっています。実は私の地元は富山県で、富山県ウラジオストクと友好提携を結んでいるので、こんなに嬉しいことはないなあと思います。ウラジオストクも富山も地方都市で人口が少ない現状ですが、これをきっかけに、両国の交流活性化・地域活性化に繋がってほしいなあと思います!

この輸送サービスによってリードタイム(輸送日数)が大幅に短縮されたという効果があったそうです。こうした新しいアプローチ方法により、日本からロシア、さらには欧州への国際物流がよりスピーディーになっていくんですね!

 

 

ここまで「物流」の観点から見た事例を紹介しましたが、次はロシアの経済構造の中でも多くの割合を占める“アレ”に関するビジネスを取り上げます。

 

 

事例②ヤマルLNGプロジェクト

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THE・ロシア経済の象徴であるエネルギービジネスの象徴です。とはいえ、この事業はこれまでの伝統的なロシアエネルギービジネスとは違い、新しい形となっています。このプロジェクトで作られるエネルギーは、石油ではなくLNG(液化天然ガス)です。LNGは石油より環境負荷が少なく、埋蔵量も豊富なことから、石油に次ぐ主力エネルギーとして注目されています。

しかし、技術面での課題があります。資源に乏しい島国の日本では、LNG産出地からパイプラインを引くことが難しいため、輸送は船が担いますが、この際にガスを液化する技術が必要となります。さらに、目的地に着いたら燃料として使用するために再ガス化する技術も必要です。また、このプロジェクトのLNG産出地は、ロシアのヤマル半島です。「ヤマル」は現地語で「最果て」と呼ばれるほどの極寒地に位置しており、その北極海域は全面氷に覆われて、通常の船では通行することができません。輸送の際には砕氷船という特別な技術を用いた船で氷を割りながらLNGを運んでいかなければなりません。こうした課題に、ロシア企業と日本企業が協働して取り組んでいます。こうすることで、日本は安定的なエネルギー供給を実現でき、ロシアも自国のビジネスを拡大することができています。

 

しかし、資源価格が低迷し脱炭素化社会が進んでいる現在、ロシアはこれからもエネルギーだけに経済を頼っていては成長が見込めません。そこで注目したいのが、アグリビジネスです。

 

 

事例③野菜温室栽培事業・エバーグリーン

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日本企業が野菜栽培用の温室プラントを建設し、それを日露ジョイントベンチャーが運営しています。ロシアは実は小麦の輸出量が世界最大になった年もあるほど農業が盛んな国でした。しかし、その理由は国土の広さに起因するものであると考えられ、農業生産性は低い水準にあります。つまり、国土の広さに占める収穫高は少ないということであり、この原因は技術力の低さであるといえます。そこで、日本企業が温室プラントを建設することで、農業生産性の向上に貢献しているのです。

温室はロシアの東方のハバロフスクにあります。ハバロフスクをはじめとした東方地域は優先的経済発展区域(TOR)に設定されており、TORに進出した企業は税制の優遇などを受けることができます。このような制度により、日本企業のロシア進出の動きが促進されています。

企業だけでなく、政府・国としてもこうした動きを促進している傾向にあります。農林水産省は、8項目の日露経済協力プランの一環として、ロシア極東の農業及び水産業の生産性向上に係る日露共同プロジェクトを発表し、様々な取り組みを主導しています。

このように、お互いの利益が最大化されるようなプロジェクトにより、日露双方の持続可能な経済発展を実現することが理想的だなあと思います。

 

以上3つの日露ビジネスの事例は、どれもユニークな事例で、ビジネスには様々な形があるのだと実感しました。他にも面白そうなロシアビジネスはたくさんあるので、皆さんも探してみてください!

 

文責:Na

 

*今日のロシア語*

бизнес(ビズニェス)

 意味:ビジネス

энергии(エニェルギー)

 意味:エネルギー

сельское хозяйство(スェーリスカエ ハジャーイストゥヴァ)

 意味:農業

 

〈参考文献〉

国土交通省HP「シベリア鉄道の利用促進」

https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/seisakutokatsu_freight_tk1_000140.html

農林水産省HP「ロシア極東等農林水産業プラットフォーム」

https://www.maff.go.jp/j/kokusai/kokkyo/food_value_chain/russia.html#japa-russia%20project

日本貿易振興機構HP「日系野菜工場が最優秀商品賞を受賞、規模さらに拡大へ」

https://www.jetro.go.jp/biznews/2019/01/83d7c9629b23993e.html