東京外国語大学ロシアサークルЛЮБОВЬ(リュボーフィ)のブログ

「未知なる魅惑の国」であるロシアならではの文化から、留学や旅行のこと、東京外国語大学でのキャンパスライフのことまで。このブログでは、東京外国語大学のロシアが大好きな学生たちが様々なテーマに沿って日替わりで記事を書いていきます。ЛЮБОВЬ(リュボーフィ)とは、ロシア語で「愛」を意味します。

東京外大生にインタビュー!第3弾【ポルトガル語科編】〈前編〉

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ポルトガル語科北川さんへのインタビュー

 

Всем  привет(フセム プリヴィエート/皆さんこんにちは)!

東京外大ロシア語専攻3年のりおです。

 

今回は、東京外大ポルトガル語専攻をつい先月卒業された北川さんにインタビューをさせていただきました!北川さんは、私と同じ高校の先輩でもあり、私の外大受験の際にはしばしば勉強法や外大受験のアドバイスをいただきました。そうしたご縁があり、大学入学後も親しくしていただいています。

 

北川さんについて 2016年4月に東京外国語大学言語文化学部ポルトガル語科に入学。3年次秋から約1年間ポルトガルへ留学。今年(2020年)9月に卒業。趣味はサッカー観戦。サッカーが人気なポルトガルでは試合の審判の仕事をしながら現地の人と親交を深めたそうです。

 

ポルトガル語科について外大生の間では「ポル科」と省略して呼ばれることもあるポルトガル語科。北川さんの学年の場合は、言語文化学部と国際社会学部合わせて21名で、男女比は半々ほど。(女子が学生全体の約三分の二を占める東京外大ではやや珍しいです。)仲が良く、和気あいあいとした雰囲気だそうです。

 

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写真左が北川さん。留学されていたコインブラ大学の卒業を祝うお祭り「ケイマ・ダシュ・フィータシュ」(「リボン焼き」の意)の様子で、各学部のイメージカラーのリボンを焼くそうです。


【大学生活】−ポルトガル語科で過ごした4年半を振り返って

りお:今日はインタビューを受けてくださってありがとうございます!では早速、大学入学から現在に至るまで、大学4年半を振り返ってみてどうですか?

北川:いえいえ〜。そうだな、初めは実はスペイン語志望で、センター試験の結果を受けてポルトガル語に出願することにしたんだけど、結局この選択でよかったってのが一番の感想。おおむね満足できる4年半だった。俺の語科は、勉強に熱心な人も多くて仲がいいし、人数も21人で多すぎずちょうどいいし、みんなお酒飲んだりするの好きだから(笑) あと、地元(北海道)を離れて東京に出てきたのも、今振り返るといい選択だったかも。

りお:たしかに、地方に比べて東京って色んな人がいて色んなチャンスが転がってるから、自分の活動の幅も広がりますよね。北川先輩といえば、やっぱりポルトガル愛がとても強い印象があります。

北川:そう?(笑) 実はポルトガル語って、ロマンス語インド・ヨーロッパ語族イタリック語派ラテン・ファリスク語群に属する言語のうち、ラテン語の口語である俗ラテン語に起源をもつ言語の総称)の中でも独特の体系を持っている部分があってさ。ポルトガルだけじゃなくて南米のブラジル、アジア、アフリカの一部でも話されてる言語なんだ。その幅広さが魅力でもありちょっと厄介な点でもあるんだよね。

りお:ふむふむ。

 

【語学の授業】−ポルトガル語の地域による違い

りお外大でのポルトガル語の授業ってどうやって進むんですか?

北川ポルトガル語科は週5コマ中3コマが文法、2コマがネイティヴの会話の授業だよ。

りお:ロシ科(ロシア語科)と比べると会話が多いですね。ちなみにロシ科は、やっぱり文法の授業が中心で、ネイティヴの授業は1年生は週1回、2年生は週2回。それも会話というよりやっぱり発音と文法の復習と講読(長文テクストの翻訳)みたいな感じでした。

北川:そうか、ロシ科に比べると一年の時の会話の授業が週2っていうのは多いほうなのか。あとさっきも少し話したけど、ポルトガル語って言っても、ブラジルとポルトガルで話されてるものがかなり違うんだよね。

りお:文法語法や語彙について地域的な違いがあるってことですか?

北川:そうだね。例えばポルトガルで話されるそれの方が文法的に複雑な点が多かったりする。でも、それぞれの地域の人々が自分の話すポルトガル語にプライドを持ってると思う。

りお:ほ〜、なるほど。外大では専攻地域によって分けて教えられたりするんですか?

北川ポルトガルポルトガル語かブラジルのポルトガル語か、どちらもネイティヴの先生がいらっしゃるから会話の授業では分けて教えられるよ。国社(国際社会学部)は初めに地域を選ぶから自動的に決まるけど、言文(言語文化学部)は入学後に選べる。俺は言文で、ポルトガルポルトガル語を選択したよ。でも今は、例えば西南ヨーロッパ地域で入った国社の学生がブラジル人の先生のポルトガル語の授業を受けるってのもできるらしいよ。

りお:なるほど。

北川:俺個人の意見では、ポルトガルポルトガル語もブラジルのポルトガル語もどっちもやるに越したことはないと思うけど…留学や旅行で行きたい地域や自分が研究したい地域に応じて選ぶのがいいかな。同じポルトガル語なのに、地域が違えば全然通じないってこともあるよ。りおの専攻してるロシアって国土めちゃくちゃ広いからロシア語にも地域差があるんじゃない?

りお:そうですね〜、ロシア語はロシア以外にも旧ソ連の国で今でも広く話されています。でも方言はあまりないって聞きますね。(後日調べたところ、ロシア語と別の言語が話されている地域では両者の語彙が混ざることはあるが、ロシア語自体の訛りや方言はほとんどないらしいです。)

北川:へー、そうなんだ。やっぱりポルトガル語スペイン語は、話されている地域による方言や文法の違いが大きいのが特徴だから、そこもしっかり勉強しなきゃいけないと思うよ。でもやっぱブラジルの方がマジョリティだから、ポルトガルポルトガル語をやってる俺は、他のポルトガル語学習者からすると変人に思われることもある(笑)

りお:全然いいじゃないですか!

 

ポルトガル留学】−充実した留学生活 

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北川さんが留学されていたコインブラ大学。1290年設立で、「コインブラ大学−アルタとソフィア」として大学の建造物群他が世界遺産に登録されています。

りお:北川先輩は派遣留学(外大が交換留学協定を結んでいる大学への留学)ポルトガルコインブラ大学に一年間通われていたんですね。

北川:そう。派遣留学のメリットの一つとしては、やっぱり留学のための奨学金を貰いやすいことかな。あと外国人向けの語学の授業だけじゃなくて、正規学生と同じ授業を取りやすいのも良かった。自分の興味ある言語学についても現地の大学で勉強できたよ。あと現地の料理とお酒も美味しかった。生活費も安いし。

りお:いいですね〜!

 

北川:料理だと、俺が一番気に入ったポルトガル料理は「レイタオン」っていう仔豚の丸焼き。これこれ。(料理の写真を見せてもらう)

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ジューシーで柔らかな肉と薄くてパリパリの皮の組み合わせが最高で、胡椒の入ったスパイシーなソースもとても美味しいそうです。メアリャーダという名前の街が本場。

りお:おいしそ〜!ポルトガルに行ったらぜひ試してみたいです。

 

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さらに紹介していただいたポルトガルB級グルメ「フランセジーニャ」。フランス人の女の子という意味で、ステーキ、ソーセージのサンドイッチの上にチーズと卵を乗せて、オーブンで焼いたヘビー級。

 

北川:あとね、留学中にポルトガル国内を旅行したのもいい思い出だな。

りお:どんなところに行かれたんですか?

北川:レンタカーを借りて、数時間かけて色んな街に行ったよ。海岸沿いのリゾート地だとカジノみたいに楽しめるところもあるし、名物も土地によって色々だし。ポルトガルって言っても北部と南部で文化や風習は結構違うんだよね。

りお:ほうほう。先輩が旅行で訪れた先で印象に残ってる場所はありますか?

北川:そうだな、エヴォラっていう町にある「骨の教会」かな。ポルトガルでは、1960年代まで餓死者が出るような貧しい町だったんだけど、今は景色が綺麗なことで有名なんだよ。「骨の教会」は日本人が見るとかなり衝撃的かもしれないね。病気や戦争で亡くなった人々の本物の骨で壁一面が埋め尽くされてるんだよ。

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5000体の人骨で埋め尽くされたエヴォラ骸骨礼拝堂
(出典:http://karapaia.com/archives/52078061.html

 

ポルトガル人ってどんな人たち?】−意外と日本人と似てる?

りおポルトガル人の国民性というと、何か思いつきますか?

北川:大きく括るのはあまり良くないかもしれないけど、ステレオタイプ的ないわゆるラテン系って感じではないと思う。思慮深い人もいるし、日本人に似たところもあるかな。日本人に比べれば時間にルーズな人もいるけど、意外と真面目で内気だったり人見知りだったりする。仲良くなるとテンション高いけどね。

りお:なるほど〜!ちょっと予想外ですね。

北川:俺が留学に行って現地の人と馴染みやすかったのはそういう理由もあるのかも。そういえば現地でサッカーの審判の仕事をしてた時に、ポルトガル人の審判友達が初めは大人しかったんだけど、一緒に試合をこなしていくうちにだんだん打ち解けてきてさ。試合の帰りの車の中ではノリノリの曲流してクラクション鳴らしたりして、お祭り騒ぎみたいになったこともあった(笑)

 

りおポルトガルで人気のスポーツといえば、やっぱりサッカーですかね?

北川そうだね、サッカーはよくテレビニュースでも流れてる。他はバスケとかハンドボール、あとマラソンとか競歩も有名だよ。ポルトガル人はあまり平均身長が高くないから、陸上でいうと長距離の持久力系が強いのは、日本とも似てるところかもね。

りお:へ〜、そうなんですね。

北川ポルトガルバカンスの文化があるから、夏は家族でビーチに行って2週間くらい過ごすこともある。サーフィンなんかも、大西洋に面したポルトガルの西海岸は波が高くて有名なんだよ。

りお:サーフィン!気持ち良さそうですね。

 

ポルトガルとブラジルの関係】−旧宗主国と植民地のいま

りお現在のブラジルとポルトガルの国間の関係はどうですか?歴史的にはポルトガル人が南米に進出して植民地化していきましたが…。

北川:今は完全にブラジルの方が国力や経済力では優るじゃん?だけどポルトガル人は自国の歴史を大切していて、そこに誇りを持ってるから、どちらかというと伝統的な規範とかを大事にするんじゃないかな。高校の世界史でも習うように、イエズス会は当時勢いのあったポルトガルを後ろ盾にしていたし、大航海時代の海外進出もポルトガル国王の支援があってこそだったし。

りお:そういえばそうでしたね。

北川:今では「ポルトガル語圏諸国共同体」ってのがあって、その首脳会談をやってたりするから両国の関係性はそれなりに続いてるよ。やっぱり歴史的背景があるから、協力することはもちろんあるし、文化面でも似てるところが多いと思う。ブラジルはアフリカから来た奴隷の文化とヨーロッパの文化と先住民の文化が入り混ざってるイメージ。ポルトガルはヨーロッパの国であることがベースで、アフリカやブラジルの文化が少し入り混じるって感じかな。

りお:なるほど〜。勉強になります。

 

☆次回!ポルトガル語科後編!

―北川さんが「4年前に戻れるなら教えてあげたいなあ」と語るポルトガル語勉強法とは?

―コロナ禍でも活動の輪を広げる学生団体“Estudamos Português!”のお話、さらにポルトガルとロシアの関係についての考察も⁉︎

明日更新です!お見逃しなく〜!

 

文責:りお

(インタビュー実施日:2020年8月3日)

 

 ↓後編はこちら

tufs-russialove.hatenablog.com