東京外国語大学ロシアサークルЛЮБОВЬ(リュボーフィ)のブログ

「未知なる魅惑の国」であるロシアならではの文化から、留学や旅行のこと、東京外国語大学でのキャンパスライフのことまで。このブログでは、東京外国語大学のロシアが大好きな学生たちが様々なテーマに沿って日替わりで記事を書いていきます。ЛЮБОВЬ(リュボーフィ)とは、ロシア語で「愛」を意味します。

ロシア(&ソビエト)児童文学の紹介

ロシア文学は難しい!

と、ロシア地域専攻&活字中毒者の私でさえ、思います。

人名を覚えにくいのもそうですが、特にドストエフスキーなんかは、やけに難解な言い回しが多かったり、一人ひとりの台詞が長かったり…。

 

読んでみよう!と意気込んでみたものの、挫折してしまった方も多いのではないでしょうか?(私も『白痴』を上巻の途中でぶん投げています…。)

 

また、現代文学も、古典を踏まえて書かれていることが多いため、ある程度ロシア文学についての知識がないと面白さを感じられないように思います。(私の頭がポンコツなために理解できないだけかもしれませんが…)

 

でも!ロシアに興味を抱いたからには、やっぱりロシア文学にも挑戦してみたい!…ですよね?

 

それほど難しくない作品を読みたいと思っている(であろう)あなたのために、今回はロシア文学の中でも比較的ハードルが低いのではないかと思われる、ロシア(&ソビエト)の児童文学を紹介いたします!なお、これらの本は絵本ではありません。

 

① エルショーフ(浦雅春訳)「イワンとふしぎなこうま」、岩波少年文庫

イワンとふしぎなこうま (岩波少年文庫)

イワンとふしぎなこうま (岩波少年文庫)

 

ピョートル・パーヴロヴィチ・エルショーフ(1815~1869)による作品です。

日本では、「せむしの子馬」というタイトルの方が有名かと思います。

なんと、エルショーフは大学在学中にこの作品を執筆しました!自分とほぼ同じ年齢の時にエルショーフはこれを書いていた、という事実に衝撃を受けてしまいます。天才ですね…。

「イワンとふしぎなこうま」は、国民詩人であるプーシキンに高く評価され、すぐに単行本化されたそうですから[1]、本当にすごいですよね…!

 

どんなお話?

主人公は、イワンという名の少年で、彼は三人兄弟の末っ子です。

イワンは、「ドラえもん」におけるのび太のような子どもです!要するに、一人では何もできないダメダメ人間なのです。しかし!のび太ドラえもんがいるように、イワンにも「こうまくん」という味方がいます[2]

彼は、物語の冒頭ではごく普通に兄弟たちと共に暮らしているのですが、ひょんなことから、(こうまくんと共に)数々の冒険を経験することになります。冒頭では考えつかないようなラストが待っていますから、是非読んでみてください^^

 

ストーリー自体も面白いのですが、主人公イワンの性格、そして彼とこうまくんとの友情、といった精神的側面においても非常に魅力的なので、大人が読んでも楽しめるはずです。

 

[1] 『ロシア児童文学史vol.2』、「カスチョール」第三十号p106より。

[2]ドラえもん」を例にとった解説が、浦雅春訳の「イワンとふしぎなこうま」(岩波少年文庫)の訳者解説にてなされています。

 

② パジョーフ(佐野朝子訳)「石の花」、岩波少年文庫 

石の花 (岩波少年文庫 (3111))

石の花 (岩波少年文庫 (3111))

 

パーヴェル・ペトローヴィチ・バジョーフ(1879~1950)によるこの作品は、ウラル地方の民話を基にした短編集です。ソ連時代に書かれた作品ですが、特にソ連色は帯びていないように思います。が、富を求めない人々が報われる話が多い気がするので、少しは影響を受けているのかもしれません。(とはいえ、「貧乏だけど幸せ」というお話は昔話全般においてよくあるような気がします。)

 

いずれの作品も、ウラル地方の銅山が舞台となっています。基本的には、そこで働く人たちについてのお話なのですが、毎回、そこでちょっとした不思議な出来事が起こります。

ちょっとした不思議な出来事とは、なんでしょうか…? 

…詳細は是非ご自身でお確かめください。(と言ってあらすじを書くことから逃げてみる←)

 

私は読書感想文を書くことが死ぬほど下手で、この作品の良さを一ミリほどしかお伝えすることができないのですが、とても素敵な作品なので、是非読んでみてください!

 

 

【おまけ】

 次に紹介する作品を私は読んでいないため、おすすめはできないのですが、「まだまだこんな本もあるよ」ということだけお伝えします。

 

トルストイ「イワンのばか」(岩波少年文庫

・マルシャーク「森は生きている」(岩波少年文庫

・ノーソフ「ビーチャと学校友だち」(いくつかの出版社から出ています。1976年の田中泰子訳は学習研究社より。)

 

翻訳されている作品は他にも数多く存在するのですが、全集の中に収められているものが多く、また、相当昔に訳されたものが殆どであるため、書店に行ってロシア(ソビエト)児童文学を入手することはとても困難です。おそらく「イワンのばか」と「森は生きている」くらいしか見当たらないのではないでしょうか…。

 

英米児童文学だけじゃなくて他の国々の児童文学も取り入れて~!と日本の児童書の現状に嘆きつつ、今日の記事を終えることにします。

それではпока!(パカー/さようなら!)

 

 

文責:R

 

 

*今日のロシア語*

конёк (カニョーク)

 意味:子馬(馬(конь)の指小形)

горбунок(ガルブノーク)

 意味:горбун(こぶのある動物)の指小形

Конёк-горбунок(カニョーク・ガルブノーク)

 意味:エルショーフの小説の原題。「せむしの子馬」の方が直訳に近い。