東京外国語大学ロシアサークルЛЮБОВЬ(リュボーフィ)のブログ

「未知なる魅惑の国」であるロシアならではの文化から、留学や旅行のこと、東京外国語大学でのキャンパスライフのことまで。このブログでは、東京外国語大学のロシアが大好きな学生たちが様々なテーマに沿って日替わりで記事を書いていきます。ЛЮБОВЬ(リュボーフィ)とは、ロシア語で「愛」を意味します。

個人的にオススメなロシア文学を紹介します

 こんにちは。国際社会学部4年のRです。ひょっとしたら今回が最後のブログになるかもしれません。

 今日はロシア文学の紹介です!私は文学を専攻していたわけではありませんし、それほど数多く読んでいるわけでもないのですが、「これは読んでよかったな」と個人的に感じた作品を3点ご紹介します。

 

1. ウリツカヤ『それぞれの少女時代』

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『それぞれの少女時代』は、スターリン時代末期を生きる少女たちが、女同士の嫉妬や憧れを抱きつつ、性の目覚めを経験していく物語です。繋がりを持つ6つの短編が、年月や登場人物の視点を変えて描かれています。冒頭は、夫の子を産んだにも関わらず、夫から別の男の子どもを産んだと勘違いされたショックで精神を病んでしまった女性とその家族の物語。この女性の産んだ双子がその後のストーリーにおける主要な人物であり、この双子の少女たちとそのクラスメイトの物語が繰り広げられていきます。

この本に出てくる少女たちは、元気で、好奇心が旺盛で、無邪気で、そして残酷。子どもが無垢で汚れのない存在だという考えは単なる大人たちの理想にすぎないということを、多くの人は、自分の胸に手を当てて考えてみるとよく分かるのではないでしょうか?

少なくとも女性読者であれば、一度は自分が感じたことのある感情を、ウリツカヤがこれほどまでに美しく的確に表していることに驚き、さらに、この感情が国や民族を越えて普遍的に存在しているものなのだということにも驚くと思います。

他にもウリツカヤの作品では『子供時代』や『女が嘘をつくとき』も読んだことがあるのですが、こちらもおすすめです!

 

ものが互いを引きつけあうこの「愛の吸引力」は、目に見えないながらとても強かったので、暖炉の熱のように外に流れだし、しっかり少女たちの心をとらえて放さず、少女たちに何かをさせようとしていた。でもそれが何なのかはわからなかった。

 (リュドミラ・ウリツカヤ(沼野恭子訳)『それぞれの少女時代』群像社、2006年、147-147頁)

 

 

2.ドストエフスキー『罪と罰』

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少なくとも名前だけは誰でも知っている名作だと思います。殺人を犯した主人公・ラスコーリニコフが、自分の行為についてひたすら考えに考える小説ですね。

私がこれを読んだのは大学1年の時のことなので細かいことはあまり覚えていないのですが、下巻で主人公が変化していくさまに読んでいてとても心動かされた思い出があります(詳しくはぜひ自分で確かめてほしいです!)。

ドストエフスキーが伝えたいことの芯というのでしょうか、思想の根源のようなものが垣間見える作品だと思います。主人公の心情描写がひたすら長いですが、逆にあまり登場人物が多くないので読みやすいと感じるかも?

 

「お立ちなさい!(中略)いますぐ外へ行って、十字路に立ち、ひざまずいて、あなたがけがした大地に接吻しなさい、それから世界中の人々に対して、四方に向っておじぎをして、大声で≪わたしが殺しました!≫というのです。そしたら神さまがまたあなたに生命を授けてくださるでしょう。行きますか?行きますか?」

 (フョードル・ドストエフスキー(工藤精一郎訳)『罪と罰(下)』新潮文庫、1987年、307頁)

 

 

3.ソルジェニーツィン『イワン・デニーソヴィチの一日』

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こちらは、ソ連のスターリン時代における、強制収容所での囚人の一日が描かれた小説です。(作中で想定されている時代は、最初に紹介した『それぞれの少女時代』とけっこう近いかもしれません。)タイトルの通り、イワン・デニーソヴィチという名の主人公が起床から就寝するまでの、ごくありふれた日常―それは非常に過酷なものですが―が描かれています。寒い、まともに食料はない、人権もない、ないない尽くしなのですが、なぜか悲壮感はあまり感じません。不思議な読後感を得られます。

作者のソルジェニーツィンは収容所で生活した経験があり、そのため非常に細かくリアルな描写が特徴的となっています。なお、ソルジェニーツィンは後にノーベル文学賞を受賞しています。

 

 

 

 いかがでしたか。作者も時代もバラバラにご紹介しましたが、どの作品も読んでよかったなと思えたものです。興味を持ったら是非手に取ってみてください!

 

文責:R

 

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