Здравствуйте(こんにちは)!東京外国語大学3年のももです。
今回私が紹介するのは、『戦争は女の顔をしていない』という本です。この本を選んだ理由は、私が大学に入って初めて読んだロシア関連の本で、すごく印象に残っているからです。この本を原作として日本で漫画化もされているので、タイトルを聞いたことがある人も多いかもしれません。ネット上で公開されている話もあるので、興味がある人はぜひ読んでみてください!
著者について
この本の著者はスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ、ベラルーシ出身のジャーナリスト・作家です。彼女の作品は、女性や子ども、チェルノブイリ原発事故の被害者といった社会的に圧迫されやすい立場の人々の声をまとめた形式で、どちらかといえばドキュメンタリー作品に近いかもしれません。しかしその文学的価値が高く評価され、2015年にノーベル文学賞を受賞しました。
ソ連時代や社会主義体制の負の側面を描く彼女の作品は、反ソ連的、反愛国的だとしてベラルーシ国内で出版が禁止されていた過去があります。彼女自身、国内の出版統制を逃れるためヨーロッパで活動していたこともあります。(最近話題になっているベラルーシの大統領選挙の騒動でも、反政権派として事情聴取が行われました。早く情勢が落ち着くことを祈るばかりです・・・。)
2016年に来日した際には東京外国語大学にて名誉博士号を授与されました。
作品について
『戦争は女の顔をしていない』は第二次世界大戦時ソ連軍に従軍した女性たち500人以上の証言がまとめられたものです。第二次世界大戦時ソ連では、100万人以上の女性たちが従軍し、国を守るために戦いました。しかし戦後彼女たちは世間から白い目で見られ、その経験を語ることはできませんでした。このような一種のタブーであった女性兵のエピソードや戦争の負の側面を描いたこの作品は、それまで英雄物語としてしか描かれなかった第二次世界大戦のイメージを覆すものとして、当初出版することができませんでした。
この本で描かれているエピソードは様々で、狙撃兵やパイロットもいれば洗濯係や看護婦として戦争に行った人もいます。敵兵への憎しみや残酷な場面、祖国愛、戦場での恋など、生々しい話もあります。
私が驚いたことは、彼女たちの多くが自ら志願して戦場へ向かったことです。自分も国を守るために戦わなければいけないという使命感で、女友達大勢で直談判しに行ったというエピソードがあって、現代日本で暮らしている自分との感覚の違いに驚かされました。
また、国を守るために戦争に行ったにもかかわらず、戦後も世間から(場合によっては家族からも)冷たい目で見られた彼女たちの話は、読んでいて胸が苦しくなります。戦後女性たちが戦争の記憶を語ろうとすると「それは違う、これだから女は」と口を挟む男性の声も描かれていて、彼女たちの声がどのように社会の片隅に追いやられてきたのかが顕になります。
ですが、全てが暗い話ではなく、行軍中にみた美しい景色や、家族の親愛、友達同士の他愛もない会話といった美しい記憶や小さなエピソードも描いているところがよりリアルだなと感じました。
私が印象に残っているのは、配給された砂糖を食べずにとっておいて前髪を固めるのに使ったという話や、おさげを切られるのが嫌で泣いたという話です。こういう小さな記憶も含めて、戦争という極限状態での人間の感情がすべて詰め込まれているのがこの作品の魅力だと私は思います。
以上、今日の文学作品の紹介でした。この作品には、女性ならではの感性と苦しみ、生と死、社会主義体制、人々の記憶をどう描くかなど様々なテーマが含まれていて、私では全然魅力を語りきることができなかったのですが、絶対に心に残る作品だと思うので、ぜひ一度読んでみてほしいです!
ちなみに、
去年ベラルーシに行ったとき、現地の学生にこの作品のことを伝えようとしたのですが、ロシア語で「ヴァイナー(戦争)・・・」しか言えず、『戦争と平和』だと勘違いされたことを思い出しました(笑)。正しい原題は「У войны не женское лицо(ウ・ヴァイヌィ・ニェ・ジェンスカエ・リツォー)」です。覚えておきましょう(笑)
文責:もも
*今日のロシア語*
коса(カサー)
意味:お下げ髪、大鎌など
герой(ゲローイ)
意味:英雄