東京外国語大学ロシアサークルЛЮБОВЬ(リュボーフィ)のブログ

「未知なる魅惑の国」であるロシアならではの文化から、留学や旅行のこと、東京外国語大学でのキャンパスライフのことまで。このブログでは、東京外国語大学のロシアが大好きな学生たちが様々なテーマに沿って日替わりで記事を書いていきます。ЛЮБОВЬ(リュボーフィ)とは、ロシア語で「愛」を意味します。

「苦しみに心砕けても この街の愛は優しい」 愛と苦しみの20年を描くソ連映画

Здравствуйте!(ズドラーストヴィチェ/こんにちは)

 

8月もそろそろ終わってしまいますね。ちなみに私は今月中にやる予定だったことが全然終わっていないので「こんなはずでは…」と唸っております。思ったより残り時間が少ないという事実、信じたくないですね~。

 

さて、今回はソ連の映画『モスクワは涙を信じない』(原題: «Москва слезам не верит(マスクヴァー スリザーム ニ ヴィェーリト)»を紹介したいと思います!

ちなみにこの映画の製作会社の「モスフィルム」«Мосфильм»には公式YouTubeチャンネルがあり、『モスクワは涙を信じない』や『アンナ・カレーニナ』、『戦争と平和』などをはじめ、膨大な量の映画が無料で全編視聴できるようになっています(!)

気になる方は調べてみてください。(とはいえ日本語字幕はなさそうなので、日本語字幕で楽しみたいのならレンタルショップなどで借りるか買うかすることをお勧めします。)

映画の題名となっている「モスクワは涙を信じない」という言葉はロシアのことわざです。(以前の記事で触れられていました!)

ロシア語のことわざ - 東京外国語大学ロシアサークルЛЮБОВЬ(リュボーフィ)のブログ

「お涙頂戴や泣き落とし戦術にはかからない」という意味だそうです。シビアですね。

 

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あらすじ

この作品は2部構成となっており、1958年とその20年後のモスクワを舞台とし、人間模様の変遷を描いています。

 

第1部

主人公であるカーチャは工場で働くとともに勉学にも励んでおり、大学進学を目指しています。ある時友人であり同僚のリューダは上流階級の男性と出会うために、自身らを「大学教員の娘」であると偽ってパーティーを開きます。

カーチャはこれをきっかけにテレビ局勤めのルドルフと結ばれ、子供を身ごもります。

 

しかしある時カーチャの勤める工場がテレビ取材を受けたことによりルドルフに「大学教員の娘である」という嘘が露見し、ルドルフの母からの反対もあり別れを切り出されます。

 

その後カーチャは娘のサーシャを産み、シングルマザーとなります。

 

第2部

20年経ち、カーチャは工場長として指導者の地位につくようになります。ある時電車でゴーシャという男に出会い、次第に心惹かれていきます。

 

カーチャと娘のサーシャ、ゴーシャは長い時間一緒に過ごすようになりますが、突然彼女たちの家にルドルフが訪れます。

それに腹を立てたゴーシャは家を出ていってしまいますが、彼女の友人たちの尽力により和解し、再び幸せな家庭を築いていきます。

 

知っていたらより楽しめるかも(?)豆知識たち

*ロシアの遊び「ゴロトキ」

第1部でルドルフとカーチャが公園で話をするシーンがありますが、この公園ではロシアの伝統的な遊び«Городки(ゴロトキ)» が行われています。「ゴロトキ」とは簡単に言えば的あてゲームです。まず短い棒を組んで大砲や井戸などを模した「標的」を作り、離れた場所から長い棒を投げて標的を崩していくというものです。

…と文章で説明しても分かりづらいので、実際にプレーしている様子を紹介します

 

www.youtube.com

「ゴロトキ」は19世紀初めには既に存在していたようで、近年は世界選手権も行われているそうです!

映画で出てくるのはほんの数秒ですが、是非注目してみてください。

 

*ロシアの結婚式「ゴーリカ!」って?

劇中で結婚式の様子が描かれていましたが、このシーンでは «Горько!(ゴーリカ/苦いぞ!)»という台詞が連呼されています。結婚式でそんなこと言うの?となりますが、これは結婚式で新郎新婦がキスするのをせがむ掛け声で「酒が苦いからキスで甘くしてくれ!」という意味を持ちます。(これについてはご存じの方も多いかもしれませんね。)

 

*女性の労働状況

この映画では女性がメインの登場人物であるために強調されて見えるのかもしれませんが、作中ではかなりの頻度で女性の働く姿が見られます。当時のソ連では女性の就業率が高く、ことにロシアでは1945年以降、全就業者のうち50%以上が女性でした。女性が多数を占める分野として顕著だったのは医師(全体の3/4)、教師(全体の2/3)、技師(全体の1/2)でした。

ただしソ連の女性は肉体労働に従事する割合が他国よりも高く、労働条件も劣悪だったようです。

さらに第2部ではカーチャが工場長として働く姿が描かれていますが、こちらについても女性が指導者的役割につくことがあったそうです。

 

これについては「夫の賃金だけでは生活が難しい」「『専業主婦は悪である』という宣伝」などにより、女性が働かざるを得なかったという事情も関係してくるようです。

 

*主題歌«Александра»について

この作品には«Александра(アレクサンドラ)»という素敵な曲が映画の最初と最後に挿入されています。

ちなみに題名の「アレクサンドラ」はカーチャの娘である「サーシャ」の正式な名前です。

 

この曲を歌っているのはセルゲイ・ニキーチンさんと妻のタチアーナ・ニキティナさんですが、彼らはなんと物理学者(!)で、歌手業と研究を両立していたそう。多才ですね~!

 


 

私がこの映画を見たのはレポートのためだったのですが、ロシアの文化や社会について知ることができるだけでなく、お話自体もとても面白かったのでお得な気分を味わっていました(笑)

今回のあらすじでは主にカーチャについて紹介しましたが、彼女以外の登場人物のエピソードも必見です!

興味のある方はぜひ観てみてくださいね!

 

それでは、До свидания!(ダ スヴィダーニャ/さようなら)

 

 

文責:Ах

 

 

【参考】

『岩波ロシア語辞典』岩波書店

『ロシア文化事典』丸善出版

五十嵐徳子「旧ソ連の共和国で大量の専業主婦は誕生するのか」『比較経済研究』

宇多文雄「ソビエト女性の政治的地位」『ソ連・東欧学会年報』

 

*今日のロシア語*

слеза (スリザー)

 意味:涙(主に複数形 «слёзы(スリョーズィ)»が用いられる)

верить(ヴィエーリチ)

 意味:確信する、信じる

 

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