東京外国語大学ロシアサークルЛЮБОВЬ(リュボーフィ)のブログ

「未知なる魅惑の国」であるロシアならではの文化から、留学や旅行のこと、東京外国語大学でのキャンパスライフのことまで。このブログでは、東京外国語大学のロシアが大好きな学生たちが様々なテーマに沿って日替わりで記事を書いていきます。ЛЮБОВЬ(リュボーフィ)とは、ロシア語で「愛」を意味します。

ロシア演劇を見に行こう

Здравствуйте!(ズドラーストヴイチェ)(こんにちは!)国社一年のOCです。初の単独記事がまさかの年内最後の記事となり緊張しておりますが暖かい目で見守ってください。

私事ですが2021年の締めとなる今月はロシア語のテストがあり、この記事を書き、また兼サー先のロシア語劇団のセリフ覚えをしたりとまさにロシア漬けの一か月となっています。

 

 今日のテーマはロシアの演劇です。簡単にロシア演劇について話した後、実際に日本でロシア演劇を見られるところを紹介させていただきます。

 

ロシア演劇について

ロシアは非常に演劇が盛んな国でして、モスクワのマールイ劇場をはじめ有名な劇場がありますし、世界の演劇に影響を与えたスタニスラフスキーシステムもロシアで生まれたものです。

有名劇作家チェーホフはもちろん、ロシアを代表する文豪であるトルストイやドストエフスキーも戯曲を残しています。またそのほかにも19世紀にはゴーゴリやオストロフスキー、ソ連時代にもヴァムピーロフやガーリンが優れた戯曲を書きました。彼らの戯曲は日本語訳されているものも多く、書店や図書館で手に入れて読むこともできます。しかしせっかくの戯曲ですからやはり自分と同じ空間で、そして自分の目の前で上演されるのを見たほうが楽しめると思います。日本でもよく商業演劇でチェーホフなどが扱われていますが、その多くは日本語で上演されています。もちろん日本語でも素晴らしい翻訳者の方々が訳しているので楽しむことができますが翻訳作品では原語のよさを完全に維持することは難しいです。

たとえばгуба(グバー)というロシア語の単語があります。これは唇という意味の単語で、そして同時に俗語で営倉という意味の単語でもあります。ある戯曲では、この単語を唇の意味で使い恋人にキスをしようとした女性と、その恋人でгубаを俗語の意味でとってしまった元軍人の男性とのすれ違いを描いた場面があります。日本語訳では唇、営倉の上にカタカナで「グバー」とルビがふってあり、この台本を使ったとしたら演技するうえでかなり不自然なやり取りになるでしょう。字幕でこうなっているぶんにはいいのですが、やはり役者は原語で演じているほうが自然かつ作者が本来みせたかったものを観客に伝えられると思います。

 

ロシア語で演劇が見られる場所

ここまでロシアは演劇が盛んですぐれた戯曲がたくさんあること、そして原語であるロシア語で演じられているのを見るほうがいいということを話してきました。ここからは私たち東京外国語大学に関連するものでロシア語でロシア演劇をみることができる機会を二つ紹介します。

 

①外語祭

一つ目は外語祭です。東京外国語大学では毎年二年生が外語祭で各国の言語による劇を公演しており、ロシア語劇もその一つです。今年はチェーホフ「桜の園」、去年はヴァムピーロフの「六月の別れ」を上演しました。演出も役者もスタッフもすべて学生が分担し、半年以上かけて準備した結果を11月の外語祭でみることができます。ロシア語劇は人気であり、今年も発売開始から一日あまりでチケットが完売しました。来年もロシア語劇はやる予定であり、芸術監督兼演出家や舞台監督などはすでに決まっており、少しずつ準備は始まっています。

(ロシア語科の2年生が今年上演した「桜の園」は12/28現在YouTube上で視聴可能です!)

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②コンツェルトの公演

もう一つはロシア語劇団コンツェルトの公演です。早稲田大学と東京外国語大学の学生が中心のインカレサークルであるコンツェルトは、毎年夏と冬の二回公演を行っています。1971年の発足以来沼野充義先生、沼野恭子先生、亀山郁夫先生などのロシア文学研究者も所属していたコンツェルトは昨年の50周年本公演でトルストイの「生ける屍」を上演し、今年度冬の本公演ではアレクサンドル・ガーリン「夜明けの星たち」を上演する予定です。ちなみにこれを書いている私も「夜明けの星たち」に出演します。

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(稽古の様子)

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日本にいながらロシア語で演じられるロシア演劇に触れられる機会は多くはなく、また上記のものはいずれも日本語字幕付きですのでロシア語がわからなくても生のロシア語劇を楽しむことができます。少しでもロシアの演劇に興味をもっていただき、こういった劇に足を運んでいただけると幸いです。

 

これが今年最後の記事になります。2021年もЛЮБОВЬ(リュボーフィ)の記事を読んでいただきありがとうございました。

С наступаушим новым годом!!(ス ナストゥパーユシム ノーヴィム ゴーダム)

皆さまよいお年を!

 

文責:OC

 

今日のロシア語

спектакль (スペクタークリ)

意味:演劇

новый год (ノーヴイ ゴート)

意味:新年

インペリアルポーセリン〜〜ティーカップは北欧だけじゃない!

Добрый день! (ドーブルィ ヂェーニ:こんにちは) 国社1年のTTです。ロシア語の試験が終わったにも関わらず一か月後にロシア語の学年末試験がある事に怯えています。常にロシア語に触れ続けなくちゃいけない…ってコト?!

 

今回僕が紹介するのはティータイムに欠かせない”アレ”についてです。

イギリスといえばウェッジウッド、デンマークといえばロイヤルコペンハーゲン、フィンランドといえばアラビア、ドイツといえばマイセン。

 

キリル文字表記ではИмператорский фарфоровый завод(インペラータルスキイ ファルフォーラヴァイ ザヴォート:皇帝の陶磁器工場)です。

 

ここまで来たらわかると思います!そう、インペリアルポーセリンです。

 

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エルミタージュにも専用の一画がある程度には有名なこの陶磁器メーカー、知らない方もいるでしょうし、歴史をざっくりと解説したいと思います。

 

18世紀以前の欧州において陶磁器の製法は知られておらず、ドイツ人錬金術師のヨハン・フリードリッヒ・ベトガーが製法を見つけた事からドイツのマイセン工場でこの甘美なる秘密を幽閉しました。

 

エカチェリーナ2世に次いで有名な女帝のエリザヴェータが1744年に王室の為にサンクトペテルブルクの郊外に陶磁器の窯を作らせました。そこではドミートリー・ヴィノグラードフという製法を見つけたロシア人が磁器工場の指揮を行っていたそうです。

 

その数十年後、エカチェリーナ2世はこの工場で作られる陶磁器を愛用すると共に、文化的側面からも後援していました。この時代に磁器工場は2つの役割を持っており、一つはロシアの装飾美術の最先端を表現する事と、もう一つは収入源としての磁器工場でした。そして彼女の息子であるパーヴェル1世もクリスマスやイースターといった催し事で用いていてインペリアルポーセレンは隆盛を誇っていました。

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アレクサンドル1世の時代となると、度重なる戦争から発展のペースが落ちます。しかし陶磁器における金の使用率が増え、そんな中でも皿にロシア軍の兵士の絵を描くなどして様々な種類の陶磁器が生まれました。ニコライ1世の時代でも引き続きインペリアルポーセリンの磁器を宮廷で使い続けており、1844年には100周年を記念して博物館が作られる程の規模になったのは驚きです。第一次世界大戦中は芸術的な磁器製品は最低限に抑えられ、前線の兵士の為のイースターエッグを作る程度でした。

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しかし1917年の十月革命を経ると、彼らの陶磁器は豪華絢爛なものから質素で共産主義を体現するものへと変更することを余儀なくされました。名前もロモノソフ磁器工場へと変え、陶器の人形を作る事が増える中、第二次世界大戦を経てかの有名な「コバルト・ネット磁器」がこの磁器工場の代名詞として世に出て、今も専売しています。

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ソ連崩壊後は帝国磁器工場(インペリアルポーセリン)へと名称を戻し、19世紀の作品を作り直したりする中で、今はタチヤーナ・トゥイレヴィ―チという女性に率いられ現代的な陶磁器も作っています。

 

 

 

大まかな歴史がわかった時点で次は陶磁器自体を見ていきましょう。先日銀座にある輸入食器専門店のル・ノーブルさんに行ってきて、写真を撮らせて頂きました!

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手前に見えるのはナネルリна Нерли)というデザインのマグ&ソーサラーセットです。マグカップに描かれているのはネルリ河畔にある生神女庇護聖堂です。

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これらのティーカップ/マグカップ&ソーサラーセットはバレエコレクションです。バレリーナ、バレリーノには特にオススメのセットです!

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これら3つはクリスマスぽいマグ&ソーサーですね。今買ってもな..と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、ロシアのクリスマスは1月7日なのでまだまだ使えます!!

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最後は定番のコバルト・ネットです。青とピンクの二種類あり、ティーカップ、ソーサー、ポットなど一式揃っているので統一するにはぴったりです!

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東京の実店舗でインペリアルポーセリンが買えるお店はル・ノーブルさんだけですので、未だにクリスマスプレゼントに迷っている方がいらしたら是非とも足を運んでみてください!(筆者はお店の回し者では無いですw)

 

以上、インペリアルポーセリンについての紹介でした!私も実際に足を運んで購買意欲がかなり高まりました。社会に出てこれを買える金銭的余裕ができたら買おうと思います…!



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今日のロシア語

чайник(チャーイニク)意味:ティーポット

чашка(チャーシカ)意味:ティーカップ


文責:TT

 

参考: https://www.ipm-jsc.com/about-ipm/history-of-the-manufactory/

          https://www.le-noble.com/d/s/sm.php?mk=138 

くるみ割り人形

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Здравствуйте! (ズドラーストヴイチェ)(こんにちは!)

言文3年の長谷川公樹です!

 

早くも12月も半ばになり、クリスマスが近づいてきましたね。

世界の劇場には、クリスマスになると盛んに上演される演目があります。

バレエ「くるみ割り人形」です!

チャイコフスキー三大バレエの1つで、冬の風物詩として知られています。

 

<あらすじ>

第一幕

舞台は、シュタールバウム家のクリスマス・イヴ。多くの客人たちを呼び、クリスマス・パーティーが催されている。そこで、少女マーシャ(クララという名前も一般的ですが、今回はロシア版に合わせてマーシャで統一)は、名付け親のドロッセルマイヤーから、くるみ割り人形をプレゼントされる。

その日の真夜中、マーシャはくるみ割り人形のことが気になって寝付けない。12時の鐘が鳴ると、ドロッセルマイヤーの魔法によって、不思議なことが起こり始める。クリスマスツリーがどんどん大きくなり、マーシャは小さくなって、おもちゃの世界に入ってしまう。そこでは、くるみ割り人形率いるおもちゃの兵隊と、ネズミの群が戦いを始める。最後に、くるみ割り人形はネズミの王様に倒されそうになってしまうが、危機一髪のところでマーシャがくるみ割り人形を救う。すると、くるみ割り人形は、美しい王子に変身し、マーシャにお礼を言う。そして、2人は雪の精たちが舞う銀世界を通って、お菓子の国へ向かう。

 

第二幕

マーシャたちは、お菓子の国へ到着するが、そこに、再びネズミたちが追撃してくる。今度は、王子がネズミの王様を見事成敗する。

すると、世界各国の人形たちが現れ、次々に踊りを披露する。最後に、王子とマーシャは2人で華やかに踊る。

気づくと、マーシャは自分のベッドで目を覚ましていた。素晴らしい夢から覚めたマーシャは、くるみ割り人形をしっかりと抱きしめる。

 

 

この作品は、少女マーシャが、くるみ割り人形と旅する夢を経て、成長する姿を描いた物語です。

チャイコフスキーの名曲に合わせて展開される、小さい子供から大人まで楽しめるストーリーと、華やかで多彩な踊りの数々が魅力です。

 

この作品は、チャイコフスキーが「白鳥の湖」「眠れる森の美女」に続いて最後に作曲した全幕バレエで、1892年に現在のマリインスキー劇場で初演されました。

 

実は、サンクトペテルブルグのワガノワ・バレエ・アカデミーとマリインスキー・バレエ団によるワイノーネン版「くるみ割り人形」がなんとYouTubeで全編観れます!

Tchaikovsky - The Nutcracker, Ballet in two acts | Mariinsky Theatre (HD 1080p) - YouTube (YouTubeのページに飛ぶと観れます)

こちらのワイノーネン版は、初演されてから85年以上経過した現在でもマリインスキーで上演されている超人気演目で、癖のない正統派演出は、「くるみ割り人形」のスタンダードと言えます。

 

<みどころ>

ここからは、「くるみ割り人形」のみどころを6箇所ご紹介していきます。せっかくなので、次は、ボリショイ・バレエ団のグリゴローヴィッチ版「くるみ割り人形」の映像を使ってご紹介していきます。

 

ひとつ目は、クリスマスツリーが大きくなる場面です。ドロッセルマイヤーの魔力の大きさと、どんどん自分が小さくなって、おもちゃの世界に引き込まれていくマーシャの不安でいっぱいな気持ちが、チャイコフスキーの音楽に詰まっています。素晴らしい音楽に加えて、舞台装置の大転換の見せ場の一つでもあります。

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ふたつ目は、マーシャが王子に変身したくるみ割り人形と出会う場面。少女マーシャが、精神的に成長を遂げるとともに、お菓子の国への旅に出発するときめきが、弾けるようなチャイコフスキーの音楽とともに、表現されています。

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この場面はシンプルなパ・ド・ドゥ(2人の踊り)でまとめることが主流ですが、このグリゴローヴィッチ版では、バックにいろんな人形を配列させ、その手前で王子に勢いのある跳躍をさせることで、チャイコフスキーのスケール感と釣り合いのとれた迫力のある振り付けとなっています。特に[1:00〜]のパートが秀逸です。

 

三つ目は、「雪片のワルツ」です。児童合唱団の歌声が加わったとても幻想的な音楽に乗せて、雪の精たちが踊る場面です。そして、何より高度な群舞の精度が求められる場面でもあります。ここでダンサーたちがどれくらいラインを揃えられるかで、そのカンパニー全体の実力が分かってしまいます。

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四つ目は、「花のワルツ」です。この場面は、まず音楽が超有名です。誰しも街のどこかで耳にしたことがある旋律だと思います。コンサートでも、バレエ抜きでオケが独立した一つの曲として演奏することも多くあります。

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この場面も、雪片のワルツ同様に、高い水準の群舞の踊りが求められます。ただし、雪片のワルツは基本女性のみですが、花のワルツは男女のカップルたちによって踊られます。このグリゴローヴィッチ版では、男性の逞しい群舞のパート[2:07〜]を強調してある点が特徴的です。

 

五つ目は、お菓子の国で披露される各国の踊りです。スペイン(チョコレート)、アラビア(コーヒー)、中国(お茶)、ロシア(トレパック)、フランス(葦笛)と、個性豊かな踊りが次々と繰り広げます(バレエ用語で、「ディベルティスマン」)。

では、その中からロシアの踊りを見てみましょう。

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民族色を全面に出した衣装と、愉快な音楽、そしておもちゃという設定に因んだ角ばった手足の使い方が特徴です。

 

最後は、マーシャと王子のグラン・パ・ド・ドゥ(2人の踊り)です。

グラン・パ・ド・ドゥは、クラシック・バレエ作品の中では、最大の見せ場となる主役の2人による踊りです。10分程に及ぶ場面ですが、その中でも「金平糖の精の踊り」と呼ばれるマーシャの単独パートが重要です。

※元々は、マーシャではなく金平糖の精というキャラクターが踊っていたことから、このように呼ばれている。なお、現在でも、イギリスを中心に、一部の演出では、マーシャではなく金平糖の精が踊っている。

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まずは、聞き馴染みのある曲だ!ということではありませんか?この曲も、色々なCMに使われている古今東西に及ぶ名曲です。

この動画で踊っているのは、現在のモスクワで最高にキュートなマーシャを演じられるプリマの1人、アンナ・ニクーリナです。往年のボリショイの大スター、マクシーモワ仕込みの、可憐で伸びやかなマーシャを演じてくれます。静かな曲ではありますが、非常に繊細で高度なテクニックを長時間求められるので、主役のダンサーにとっては最も重要な場面です。

 

 

では、今回の記事を読んで、生で観たくなったそこのあなた!まだ間に合います。

都内にお住まいの方にお勧めの公演は、新国立劇場の「くるみ割り人形」です。

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12/18(土)〜1/3(月)まで毎週末上演しています。新国立劇場は、世界屈指の精度を誇る群舞による「雪片のワルツ」や「花のワルツ」がみどころだと思います。

 

 

では、地方にお住まいの読者の方、年末は地元に帰られる方は….?こちらも、観るチャンスがあります!今年は、東京バレエ団が、東海地方から西日本にかけて、全国8都市で「くるみ割り人形」を上演します。ロシアの工房で製作された美しく温かみのある舞台装置や、ロシア系の演出、高い技術力を誇る実力派ダンサーたちによる個性豊かなお菓子やおもちゃの踊りがみどころです。

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長くなってしまいましたが、今回の記事を読んで、「くるみ割り人形」を観に行ってみたくなってもらえれば幸いです。

 

では、いつか読者のみなさんと劇場でお会いできる日が来るのを楽しみに待ってます!До встречи(ダ フストレーチ)!(またお会いしましょう!)

 

 

文責:長谷川公樹

 

今日のロシア語

щелкунчик(シェルクーンチク)

意味:くるみ割り人形

вальс снежных хлопьев(ワリス スネージュヌイフ フローピエフ)

意味:雪片のワルツ

вальс цветов(ワリス ツヴェトフ)

意味:花のワルツ

ロシア人芸術家も出展!現代アートの芸術祭 〜いちはらアート×ミックス2020+ 訪問レポ〜

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皆さん、こんにちは! 東京外国語大学ロシア語科4年のりおです。

今回は、千葉県市原市で開催中の野外アートフェスティバル「房総里山芸術祭 いちはらアート×ミックス2020+」の訪問レポートを綴ろうと思います。このアートフェスでは、日本だけでなく世界各国の現代アーティストが市原市の美しい自然と昔ながらの人々の暮らしを背景に作品を展開しています。なんとロシアからも現代アーティストが参加し、それぞれユニークな作品を見せてくれました! 私はツアーに参加し、総合ディレクターを務めていらっしゃる北川フラムさんや、ロシア現代美術にお詳しい鴻野わか菜先生(早稲田大学)から直接お話を聞くことができました☺️

 

いちはらアート×ミックス2020+って?

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(出典:https://www.city.ichihara.chiba.jp/article?articleId=616e844d119a202b42518621

このアートフェスティバルは、2014年から「中房総国際芸術祭」として始まり、コロナによる開催延期を乗り越えて今回で第三回目を迎えました。舞台となっている市原市は、千葉県の中央に位置する工業が盛んな都市で、約27万の人々が暮らしています。美しい田園風景や古来から守られてきた里山が広がり、今回初めて市原を訪れた私にとってもどこか懐かしい感じがする町でした。

「いちはらアート×ミックス2020+」は、市原市の歴史、文化、自然、人々の暮らしなど様々な資源を現代アートと融合することで、より魅力的な「いちはら」を再発見しようというコンセプトになっています。なんと17の国・地域から71組ものアーティストが参加し、思い思いの方法でそれぞれ素敵な作品を展開していました! まさに町おこしとアートの化学反応が楽しめる芸術祭です。

ホームページはこちら

ichihara-artmix.jp

総合ディレクター北川フラム氏による紹介

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動画をご覧いただければわかるように、都心からそれほど遠くないとは思えないほど、ほんとうに自然が豊かで昔ながらの人々の暮らしを体感できる地域でした!

 

ロシア人アーティストが見る日本とは?

ツアーで芸術祭を巡る中で気に入った作品はいくつもありましたが、本記事ではロシア人アーティストの作品に絞って数点を紹介します! 私なりの感想や解釈も併せていますが、アートの解釈は人それぞれなのでぜひ実際に訪れて見ていただければと思います😊

 

① アレクサンドル・ポノマリョフ(1957-)

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《Questions of Evolution −進化の問題−》

「進化」がテーマとなっている本作品は、猿人から現代人への「人類の進化」、そして手押し車から機関車への「動力の進化」を重ねています。作品の全体像を撮影することができなかったので写真はその一部ですが、写っている機関車はなんと1950年代まで実際に使われていたものなんです。

尽きることのない人間の想像力とさらなる技術発展への野望を感じるインスタレーションですね! 作品を見ていると、蒸気機関車がシュッシューと音を出して今にも走り出しそうな気がしました。

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機関車内部の様子

このように機関車に乗り込み、機関室の中を見ることもできます! 機関車本体のゴツゴツした重厚感や錆びついたパイプに歴史を感じました。

作家のポノマリョフは、美術学校卒業後は海に憧れて航海士となり、海を主題とする作品を制作してきました。彼はインタビューで「機械は土地の人々の生活を反映している」と語っています。この作品は小湊鉄道五井機関地区に展示されており、ここが芸術祭の出発点となっています。

 

② ターニャ・バダニナ(1955-)

ポノマリョフと同世代の芸術家ターニャ・バダニナの作品を二つ紹介します。

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《門》(出典:https://ichihara-artmix.jp/artist/2260

この作品は、小湊鉄道五井駅のホームに設置されています。《門》と題されていますが、この扉は天国や天空に続いているそうです。作品だよと言われなければ気づかずに通り過ぎてしまいそうですが、改めてよく見ていると、「なんで駅のホームに門なんだろう?」「なんで白?」といった疑問がたくさん浮かんできます。なんだか神聖で優しい感じがして、とても好きな作品でした。

 

バダニナの作品をもう一つ。

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《翼》

実は、一昨年、市原市の市原湖畔美術館にてロシア現代アートの美術展が開催されました。本作はそこで披露されたバダニナのインスタレーション作品で、現在も同美術館に展示されています。

インタビューにて、バダニナは「翼のオブジェは人々の夢みる力、時間と空間の克服、現実からの飛翔の象徴です」と語りました。翼というモチーフに空高く飛び立とうとしている人々の夢を重ねているとは素敵ですね! 本作は、日本らしい素材である「竹」と「和紙」を用いて制作しているそうで、丁寧かつシステマティックに作られている印象を受けました。

 

③ レオニート・チシコフ(1953-)

チシコフもまた、ポノマリョフ、バダニナと同じ時代を生きてきた芸術家です。

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《7つの月を探す旅 第二の駅(村上氏の最後の飛行 あるいは月行きの列車を待ちながら)》

宇宙飛行士が駅のホームのベンチに座っている!?   なんて可愛いのでしょう! 上総村上駅に展示されている本作は、小湊鉄道の七つの駅に展開されるインスタレーション連作のうちの一つです。小湊鉄道を銀河鉄道に見立て、月と宇宙を主題にさまざまな作品を展示しています。

本作は芸術祭のシンボルのような作品なので訪問する前からウェブページなどでよく見ていましたが、本物を目の前にした時は心が高揚しました! この駅から始まる新たな旅…新たな出会い…妄想が膨らみます。

 

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切符売り場には「TICKETS TO THE MOON(月行きの切符はこちら)」と書かれたネオンサインがあります。なんだかワクワクしますね!

チシコフは日本文学・文化に造詣が深く、過去には松尾芭蕉や種田山頭火に捧げた作品を制作しています。彼の今後の創作もとても楽しみですね。

 

④ ウラジーミル・ナセトキン(1954-)

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《空を見よ、自分を見よ》

最後は、ウラジーミル・ナセトキンの作品を紹介します。市原湖畔美術館の野外に設置されており、鑑賞者が作品の中に入ることができる体験型の大きなインスタレーションです。

中に入ると簡単な迷路のような構造になっており、進みながら鏡に自分の姿を見たり、天井や壁の隙間から空や緑を覗くことができます。また、ナセトキンが「聖なる空間」と呼ぶスペースには鑑賞者は入ることができませんが、小窓からそのスペースを覗き込むと鏡張りの床に映る「空」が見えてきます。

私は、この作品自体が人の心を表しているように感じました。ふとしたとき、空を見上げて自分の心の様子を確かめるという経験は世界中のあらゆる人に共通するものかもしれないなと思いました。

 

まとめ

ここまで、ロシア人アーティスト4名の作品を紹介してきましたが、いかがでしたか?

実は、今回紹介した芸術家たちが生まれ育ったソ連では、政府による文化統制のため自由な創作や展示が厳しく制限されていました。そのような社会背景を知ると、より一層面白く、そして深くアートを堪能することができると思います。

 

私は卒論でロシアの現代美術について研究しているので、その一環で今回の芸術祭を訪れました。しかし、たくさんの素敵な作品に出会い、市原の自然や街並みに癒されて、思いがけなく満喫してしまいました! 全ての作品を見ることはできなかったので、時間があればまたいつか訪れたいと思います。

アートは、やっぱり自分の目で見て感じることが一番! 「いちはらアート×ミックス2020+」の開催は12月26日までですので、興味のある方はぜひ訪れてみてくださいね😃

 

文責:りお

 

参考文献

『房総里山芸術祭 いちはら×アートミックス2020+』(展覧会カタログ)美術出版社、2021年。

『夢みる力−未来への飛翔 ロシア現代アートの世界』(展覧会カタログ)市原湖畔美術館、2019年。

 

*今日のロシア語*

фестиваль искусств(フェスティヴァーリ イスクーストフ)

意味:芸術祭

произведение(プライズヴェヂェーニエ)

意味:作品

 

大統領の新年の挨拶

師走を迎えた皆様いかがお過ごしでしょうか、国際社会学部3年のりんです。

今年は良い一年にできましたか?年始の目標は達成できましたか?え、できてない?

そんな皆様にさる方からご挨拶があるそうです、何でしょうね。

なんと!ロシア連邦大統領から新年のメッセージが届きました!これは嬉しい、早速見ていきましょう!

 

ロシアでは国家元首が新年を前に国民へ挨拶を述べる習慣があります。古くは1941年にソ連中央執行委員会議長であるミハイル・カリーニンがラジオ放送で行ったものであり、その後少しの中断を経て1970年ブレジネフ書記長がテレビ演説を行うようになりました。

 

このスピーチは時々の情況や発話人によって性格が異なり、詳細な年次報告のようだったり家族と共に出演したりバリエーション豊かです。1999年の12月31日には正午にエリツィン大統領が新年の祝福と共に自らの辞任を国民に伝え、その夜には後継者であるプーチン大統領の演説も放送されました。

 

スピーチの後にはスパスカヤ塔の鐘が鳴り国歌が流れます。

ロシアは余りにも広くタイムゾーンもたくさんあるため演説は12月中に録画するとのこと。プーチン大統領は背景や場所を変えることがあります。時にはモスクワを出ることもあるそうで2013年にはハバロフスクまで出向きました。

6分間続いた2020年-2021年のスピーチは今までで最長となり視聴率も10%を超えました。

ここで昨年の新年あいさつをちょっと見ていきたいと思います。

 

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簡単にまとめると…動画では第二次世界大戦の対独戦勝75周年記念を祝ったことなども語られていますがやはり一番の話題は新型コロナウイルスのパンデミックについてです。ロシアは甚大な被害を被りプーチン大統領も国家に降りかかった困難や収まらぬ感染状況に触れつつ国民への感謝と希望を伝えています。

未だ高い感染者数や国産ワクチンへの不信、最近ではウクライナとの国境付近で緊張を抱えるプーチンのロシアが今年はどのような内容で演説するのかに注目が高まります。

 

あと、新年のあいさつは字幕付きのものがロシアのテレビ局РБКをはじめとしてネット上にもアップされているのでロシア語の練習にもなりますよ。

 

それではよいお年を!С наступающим!

 

文責:りん

 

今日のロシア語

новогоднее обращение президента РФ(ナヴァゴードニエ アブラシェーニエ プリズィヂェーンタ エルエフ)

意味:ロシア大統領の新年の演説

С наступающим! (ス ナストゥパーユシム)

意味:よいお年を

ロシア民謡界の星 Белое Злато

こんばんは!言語文化学部3年の川又です。

今日は«Белое злато»というロシア人とウクライナ人女性6人組のアンサンブルを紹介したいと思います!

Белое злато(ベーラエ ズラート)は、日本語で「ホワイトゴールド(金を主体をした合金)」という意味です。グループ名は知らなくても、YouTubeのおすすめに出てきて見たことがある方がいるかもしれません。

 

こちらは現時点(2021/12/6)で約190万回再生されている動画です。2014年に公開された少し古めの動画で、ほとんどのメンバーが当時20歳〜21歳だったのではないかと思われます。

Заболела Дунина головка

www.youtube.com

Russian music that will make you thrillという英語のタイトルが付けられた動画もあり、そのような動画には特にロシア国外からのコメントが多く集まっています!

 

結成から数年間は、上の動画のように街中で私服で歌う様子を撮影したのが一般的なスタイルでした。

しかし最近(ここ1年くらい)は、都市部ではなく郊外の農村と思われる場所で、本当に素朴な衣装で撮影をしているのが印象的です。化粧もほぼしていないように見えます。そして、メンバーの1人がバラライカで伴奏を弾きながら歌うスタイルが多いです。例えばこんな動画↓

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このようにYouTubeでの動画投稿が週1ペースで(!)行われているのですが、彼女たちは結婚式などイベントでの演奏も行なっています。このご時世ではわかりませんが、ロシアだけでなく国外での演奏も行なっているようです!飛行機に乗って日本まで来てもらうことを考えると費用が恐ろしいことになるような気もしますが、大勢でパーティーなどを開く予定のある方は利用してみてはいかがでしょうか。

 

ところで、こんな才能溢れる彼女たちはどのようにしてアンサンブルの結成に至ったのでしょうか?

公式サイトでは写真&メッセージとともにメンバー紹介を見ることができます。そのメッセージによると、1993年生まれのダーリャ・ルネーエワがノリリスク芸術大学・民族合唱専攻4年生の時に州のコンサートのために創設した4声アンサンブルが、Белое Златоの元となっているようです。

マリア・バラネンコも同じ大学の同級生で、結成当時のメンバーの1人です。

エカチェリーナ・ラディーギナワレーリヤ・シェルビーナワレーリヤ・グリゴーリエワの3人はスモレンスク国立芸術大学やハバロフスク国立文化芸術大学で学んでいましたが、ロシア民謡を世界へ発信するБелое Златоの活動に惹かれ、ともに活動を始めました。

 

YouTube上ではやはり「私たちの国の文化を守ってくれてありがとう!」というコメントをよく見かけます。特に若い人たちに歌ってもらえるというのは重要なことなのかもしれませんね。

 

ここでは全ての曲を紹介することはできませんが、テンポが良く定期的に聴きたくなる曲ばかりです!合唱っていいですね。私も混ざりたくなります(笑)

SpotifyやApple musicでは6つリリースされているもののうち1つのアルバムの曲を聴くことができます!それらの音楽サービスを利用している方はぜひ聴いてみてください。目覚ましにもぴったりの曲ですよ。

 

最後に、12月!クリスマス!ということでこちらの動画を紹介したいと思います。今年のクリスマスはまだなので去年公開されたものです。

「ジングルベル」の替え歌(コロナ禍バージョン)

www.youtube.com

 

文責:川又

 

今日のロシア語

народный хор(ナロードヌイ ホール)

意味:民謡合唱団

外語祭の思い出2021

皆さんこんにちは。1年生のぐっちーです。もう早いもので、今年も残りわずかですね。

東京外国語大学にて11月19日から23日まで開催された、第99回外語祭が終わってしまいました…。お越しになった皆さん、ありがとうございました!皆さんは思う存分楽しみましたか?

 

さて、私は、新型コロナウイルス流行前の外語祭に参加したことが1度も無いため、今年の外語祭の思い出を書いていこうと思います。個人的なエピソードばかりになってしまうのですが、お許しください。

 

残念ながら、私たち1年生は、新型コロナウイルスの影響で例年通りに料理店を出すことができませんでした。しかし、代替措置として、物品販売やワークショップ、料理動画の作成などを行うことができました。(ただし、今年はロシア語科と中央アジア地域は催しを行っていなかったそうです。)

 

ワークショップを行っていた語科は、クイズ、トランプ遊び、チェコビーズを自分の好みのビーズで作る、タトゥーシールを手の甲に貼る、伝統的衣装を着て写真撮影、アラビア語などで自分の名前を書くなどの企画を行っていました。また、外語祭実行委員の方は、手の甲に国旗の絵を描くという企画などを行っていました。どれも面白そうですね。ちなみに、私たちトルコ語科は、ワークショップを行い、伝統的なトルコの遊びであるバックギャモンとヘビゲーム(ペットボトルキャップや王冠を、地面にかかれた蛇のように曲がりくねったコースを外れることなくゴールまではじいていく遊び)をお客さんに体験していただきました。

 

物品販売をしている語科もあり、私自身は、マレーシア語科からはマンゴーティーとレトルトチキンカレーを、ペルシア語科からは刺繍がしてある手帳を、パキスタン語科からはチャーエとスィーフカバーブが作れるスパイスを、チェコ語科からは既製のチェコビーズを、アフリカ地域からはマラウイコーヒーを、Femme Café(フェアトレードのコーヒーを売るボランティアサークル)からはルワンダコーヒーを、中央ユーラシア研究会からはマトリョーシカのキーホルダー、髪飾り、ソ連バッジ(ウクライナやウズベキスタンで仕入れた本物!)を買いました。普段自分の専攻の語科や地域以外の名物品に触れる機会がなかなか無いので、外語祭でまさに「世界のどこかはここにある」を実感できました。さらに、国旗バッジがもらえるガチャガチャを試したのですが、マリの国旗バッジが出てきました。知らない国のバッジが出てきたら、その国について調べて、学びの機会になると思いました。

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(外語祭で買ったものの一部)

 

残念ながら、2年生が披露した語劇はスケジュールの都合上1つも観ることができませんでしたが、例年のごとく、ロシア語劇は特に大人気だったそうです。生で観たかったな~。

 

このように、今年の外語祭は、例年とは異なるハイブリッド形式で開催されました。もう2度と無いかもしれない外語祭の形式でしたので、料理店ができないことを悲しむよりは、少し変わった形式の外語祭を徹底的に楽しめたと思います。今回外語祭に来られなかった方は、オンラインコンテンツで語劇やサークル企画などの一部の企画が楽しめるので、ぜひぜひチェックしてみてくださいね。来年は、記念すべき第100回外語祭が開催されます。来年は完全な形式で外語祭が行われることを願っています。

それではさようなら~。

 

文責:ぐっちー

 

今日のロシア語

традиционный костюм(トラヂツィオーンヌイ カスチューム)

意味:伝統衣装

государственный флаг(ガスダールストヴェンヌイ フラーク)

意味:国旗