東京外国語大学ロシアサークルЛЮБОВЬ(リュボーフィ)のブログ

「未知なる魅惑の国」であるロシアならではの文化から、留学や旅行のこと、東京外国語大学でのキャンパスライフのことまで。このブログでは、東京外国語大学のロシアが大好きな学生たちが様々なテーマに沿って日替わりで記事を書いていきます。ЛЮБОВЬ(リュボーフィ)とは、ロシア語で「愛」を意味します。

くるみ割り人形

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Здравствуйте! (ズドラーストヴイチェ)(こんにちは!)

言文3年の長谷川公樹です!

 

早くも12月も半ばになり、クリスマスが近づいてきましたね。

世界の劇場には、クリスマスになると盛んに上演される演目があります。

バレエ「くるみ割り人形」です!

チャイコフスキー三大バレエの1つで、冬の風物詩として知られています。

 

<あらすじ>

第一幕

舞台は、シュタールバウム家のクリスマス・イヴ。多くの客人たちを呼び、クリスマス・パーティーが催されている。そこで、少女マーシャ(クララという名前も一般的ですが、今回はロシア版に合わせてマーシャで統一)は、名付け親のドロッセルマイヤーから、くるみ割り人形をプレゼントされる。

その日の真夜中、マーシャはくるみ割り人形のことが気になって寝付けない。12時の鐘が鳴ると、ドロッセルマイヤーの魔法によって、不思議なことが起こり始める。クリスマスツリーがどんどん大きくなり、マーシャは小さくなって、おもちゃの世界に入ってしまう。そこでは、くるみ割り人形率いるおもちゃの兵隊と、ネズミの群が戦いを始める。最後に、くるみ割り人形はネズミの王様に倒されそうになってしまうが、危機一髪のところでマーシャがくるみ割り人形を救う。すると、くるみ割り人形は、美しい王子に変身し、マーシャにお礼を言う。そして、2人は雪の精たちが舞う銀世界を通って、お菓子の国へ向かう。

 

第二幕

マーシャたちは、お菓子の国へ到着するが、そこに、再びネズミたちが追撃してくる。今度は、王子がネズミの王様を見事成敗する。

すると、世界各国の人形たちが現れ、次々に踊りを披露する。最後に、王子とマーシャは2人で華やかに踊る。

気づくと、マーシャは自分のベッドで目を覚ましていた。素晴らしい夢から覚めたマーシャは、くるみ割り人形をしっかりと抱きしめる。

 

 

この作品は、少女マーシャが、くるみ割り人形と旅する夢を経て、成長する姿を描いた物語です。

チャイコフスキーの名曲に合わせて展開される、小さい子供から大人まで楽しめるストーリーと、華やかで多彩な踊りの数々が魅力です。

 

この作品は、チャイコフスキーが「白鳥の湖」「眠れる森の美女」に続いて最後に作曲した全幕バレエで、1892年に現在のマリインスキー劇場で初演されました。

 

実は、サンクトペテルブルグのワガノワ・バレエ・アカデミーとマリインスキー・バレエ団によるワイノーネン版「くるみ割り人形」がなんとYouTubeで全編観れます!

Tchaikovsky - The Nutcracker, Ballet in two acts | Mariinsky Theatre (HD 1080p) - YouTube (YouTubeのページに飛ぶと観れます)

こちらのワイノーネン版は、初演されてから85年以上経過した現在でもマリインスキーで上演されている超人気演目で、癖のない正統派演出は、「くるみ割り人形」のスタンダードと言えます。

 

<みどころ>

ここからは、「くるみ割り人形」のみどころを6箇所ご紹介していきます。せっかくなので、次は、ボリショイ・バレエ団のグリゴローヴィッチ版「くるみ割り人形」の映像を使ってご紹介していきます。

 

ひとつ目は、クリスマスツリーが大きくなる場面です。ドロッセルマイヤーの魔力の大きさと、どんどん自分が小さくなって、おもちゃの世界に引き込まれていくマーシャの不安でいっぱいな気持ちが、チャイコフスキーの音楽に詰まっています。素晴らしい音楽に加えて、舞台装置の大転換の見せ場の一つでもあります。

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ふたつ目は、マーシャが王子に変身したくるみ割り人形と出会う場面。少女マーシャが、精神的に成長を遂げるとともに、お菓子の国への旅に出発するときめきが、弾けるようなチャイコフスキーの音楽とともに、表現されています。

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この場面はシンプルなパ・ド・ドゥ(2人の踊り)でまとめることが主流ですが、このグリゴローヴィッチ版では、バックにいろんな人形を配列させ、その手前で王子に勢いのある跳躍をさせることで、チャイコフスキーのスケール感と釣り合いのとれた迫力のある振り付けとなっています。特に[1:00〜]のパートが秀逸です。

 

三つ目は、「雪片のワルツ」です。児童合唱団の歌声が加わったとても幻想的な音楽に乗せて、雪の精たちが踊る場面です。そして、何より高度な群舞の精度が求められる場面でもあります。ここでダンサーたちがどれくらいラインを揃えられるかで、そのカンパニー全体の実力が分かってしまいます。

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四つ目は、「花のワルツ」です。この場面は、まず音楽が超有名です。誰しも街のどこかで耳にしたことがある旋律だと思います。コンサートでも、バレエ抜きでオケが独立した一つの曲として演奏することも多くあります。

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この場面も、雪片のワルツ同様に、高い水準の群舞の踊りが求められます。ただし、雪片のワルツは基本女性のみですが、花のワルツは男女のカップルたちによって踊られます。このグリゴローヴィッチ版では、男性の逞しい群舞のパート[2:07〜]を強調してある点が特徴的です。

 

五つ目は、お菓子の国で披露される各国の踊りです。スペイン(チョコレート)、アラビア(コーヒー)、中国(お茶)、ロシア(トレパック)、フランス(葦笛)と、個性豊かな踊りが次々と繰り広げます(バレエ用語で、「ディベルティスマン」)。

では、その中からロシアの踊りを見てみましょう。

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民族色を全面に出した衣装と、愉快な音楽、そしておもちゃという設定に因んだ角ばった手足の使い方が特徴です。

 

最後は、マーシャと王子のグラン・パ・ド・ドゥ(2人の踊り)です。

グラン・パ・ド・ドゥは、クラシック・バレエ作品の中では、最大の見せ場となる主役の2人による踊りです。10分程に及ぶ場面ですが、その中でも「金平糖の精の踊り」と呼ばれるマーシャの単独パートが重要です。

※元々は、マーシャではなく金平糖の精というキャラクターが踊っていたことから、このように呼ばれている。なお、現在でも、イギリスを中心に、一部の演出では、マーシャではなく金平糖の精が踊っている。

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まずは、聞き馴染みのある曲だ!ということではありませんか?この曲も、色々なCMに使われている古今東西に及ぶ名曲です。

この動画で踊っているのは、現在のモスクワで最高にキュートなマーシャを演じられるプリマの1人、アンナ・ニクーリナです。往年のボリショイの大スター、マクシーモワ仕込みの、可憐で伸びやかなマーシャを演じてくれます。静かな曲ではありますが、非常に繊細で高度なテクニックを長時間求められるので、主役のダンサーにとっては最も重要な場面です。

 

 

では、今回の記事を読んで、生で観たくなったそこのあなた!まだ間に合います。

都内にお住まいの方にお勧めの公演は、新国立劇場の「くるみ割り人形」です。

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12/18(土)〜1/3(月)まで毎週末上演しています。新国立劇場は、世界屈指の精度を誇る群舞による「雪片のワルツ」や「花のワルツ」がみどころだと思います。

 

 

では、地方にお住まいの読者の方、年末は地元に帰られる方は….?こちらも、観るチャンスがあります!今年は、東京バレエ団が、東海地方から西日本にかけて、全国8都市で「くるみ割り人形」を上演します。ロシアの工房で製作された美しく温かみのある舞台装置や、ロシア系の演出、高い技術力を誇る実力派ダンサーたちによる個性豊かなお菓子やおもちゃの踊りがみどころです。

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長くなってしまいましたが、今回の記事を読んで、「くるみ割り人形」を観に行ってみたくなってもらえれば幸いです。

 

では、いつか読者のみなさんと劇場でお会いできる日が来るのを楽しみに待ってます!До встречи(ダ フストレーチ)!(またお会いしましょう!)

 

 

文責:長谷川公樹

 

今日のロシア語

щелкунчик(シェルクーンチク)

意味:くるみ割り人形

вальс снежных хлопьев(ワリス スネージュヌイフ フローピエフ)

意味:雪片のワルツ

вальс цветов(ワリス ツヴェトフ)

意味:花のワルツ