東京外国語大学ロシアサークルЛЮБОВЬ(リュボーフィ)のブログ

「未知なる魅惑の国」であるロシアならではの文化から、留学や旅行のこと、東京外国語大学でのキャンパスライフのことまで。このブログでは、東京外国語大学のロシアが大好きな学生たちが様々なテーマに沿って日替わりで記事を書いていきます。ЛЮБОВЬ(リュボーフィ)とは、ロシア語で「愛」を意味します。

東京外大生にインタビュー!第15弾【ビルマ語科編】〈後編〉

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ビルマ語科 Sさんへのインタビュー

 

↓前編はこちらからどうぞ

tufs-russialove.hatenablog.com

 

【教職と、それに関わるゼミについて】

―所属しているゼミと、入った理由、勉強している内容を教えてください。

英語教育学のゼミに所属していて、英語のテストの仕方、評価方法などをメインに英語教育全般について学んでいます。例えば「TOEICは本当に英語力を測れているのか」とか、CEFR-J(CEFRをベースに構築された日本独自の英語能力の指標)とか、センター試験の共通テストへの移行で何が変わったのか…ということについて学んでいます。この学習者の英語能力ならこういうことができるよ、という指標である「CAN-DOリスト」を元に、あるレベルに合わせて実際にテスト問題を作成したりもしています。あと、ゼミの先生は結構雑談の好きな方で、ゼミの最初に30分ほど英語と関係のないテーマで軽くディスカッションをしたりしたこともあります。もともと教育に興味があり、英語の評価方法・テスト方法などが非常に世間でも話題になっていたため、このゼミに入りました。

 

―面白そうですね!英語の授業そのものではなくテストに注目するのはなぜなのでしょうか?

生徒の中には高尚な目的を持って英語学習に取り組んでいる人もいますが、それ以上にテストで点を取ることを目標にしている生徒が多いと思うので、その目標であるテストの内容をより良いものにすることで英語のスキルを上げていこうというのが私たちのゼミ全体としての目標です。特に、テストでありがちな「こんなの日常生活で使わなくない?」と思ってしまうようなタスクではなく、「生きたシチュエーション」を学べるもっと実践的なテスト作りを目指しています。例えば、文法問題を出す時にも、「この文法を問うています!」みたいなあからさまな問題にするのではなくて、自然な会話文の中に組み込んだりする感じです。共通テストの英語でも、今までのセンター試験にはなかったチャット形式の問題が出題されたりしていますね。

 

―なるほど。テストを最終目標にしていれば自然と英語が身につくテストを目指しているんですね!卒論のテーマはどのような内容にするつもりですか?

中学・高校の定期試験で、既習の教科書本文ではなく、未習のテキストを用いてリーディング・スキルを測る方法について研究しています。既習のテキストをテストに出すと「記憶力テスト」になりがちなので、その課で学んだ文法やリーディング・スキルを本当の意味で測るためにはどうしたらいいのか、ということについて、データを分析しながら研究しています。

 

―英語教育についてのゼミ、楽しそうですね!私も勉強になりました。

副ゼミ(所属するゼミの他に任意で履修できるゼミ)は取っているのですか?

ビルマ語の教員免許を取るために語科ゼミ(自分の専攻する地域の文化、言語、政治経済などについて深く研究できるゼミ)を取っていました。実は私たちの代がビルマ語の教職を取れる最後の学年だったのですが(ビルマ語教職を生かせる学校が日本にたったの1校しかない)、他の授業と被ったりしたことから結局諦めてしまいました。ただ、語科の先生は1年生の頃から私のことをよく知っているので、居心地はとても良かったです。ちなみに、私は新潟出身なのですが、新潟市はロシアの東方のハバロフスクやウラジオストクと姉妹提携を結んでいて、学生同士の交流の一環として友人がロシア留学に行ったりもしていました。逆にロシアから来日した学生とも、学校の授業を一緒に受けたり、習字を教えたりなどして交流しました。だから、新潟でならロシア語の教員免許は生かせそうですね。あと札幌とか。

 

―確かに!私もロシア語の教職取っておけばよかったかな…(笑)まあ教職はノリで取れるものではないですね。

 

【留学について】

―ところで、長期留学は一般的に3年次の夏から1年間渡航する人が多いですが、Sさんは2年次の夏から行かれたのですね。

そうなんです。4年次の春まで長期留学に行くと、卒論の提出や就活などで卒業直前にバタバタしてしまうので、4年で卒業することを目標にしていた私は早め早めに行動しようと2年次からの留学を決めました。ですが、4年間での卒業は結局ギリギリ間に合わなかったので、今年の7月に卒論を提出し、9月に卒業予定です。私は無事に留学を終えることができたのですが、私と同じ年に入学した人たちの多くはコロナの影響で途中帰国をせざるを得なかったり、今の3年生も多くは留学が中止になってしまったので、少し申し訳ない気持ちでいます…。ミャンマーに留学していた同期も、「ミャンマーは感染者が少ないから大丈夫だろう」と思っていたら急に「ヤンゴン空港を閉鎖します!」ということになって途中帰国でしたね。

 

―やるときはビシッとやるの、ロシアとも似ているかもしれませんね(笑)ロシアも急に「明日から国境閉めます!」と決まり、留学組はギリギリに日本に帰ってきていました。

Sさんは長期留学でイギリスに行かれていますが、専攻地域であるミャンマー留学とではやはり迷いがありましたか?

1年生の割と最初の段階で「やっぱり英語科の教員になりたい」と決意したのですが、それにしては英語力が足りていないと感じたため、専攻地域のミャンマーではなく英語圏であるイギリスに留学に行きました。ただ、ビルマ語の学習も続けたかったため、「ビルマ語科」が存在するロンドン大学の東洋・アフリカ研究学院を留学先に選び、英語の授業と並行してビルマ語の授業も週に4コマ受けていました。ビルマ語の授業を一緒に受けていたのは私を除いて3人だけで、私のクラスはイギリス育ちで英語しか知らないミャンマー人、マレーシア人とタイ人でした。みんな英語が母語でSVOの語順に慣れているため、日本語や韓国語と同じSOV語順のビルマ語にはなかなか慣れないようでした。ビルマ語は日本語と同じように主語を省略することも多いのですが、そこも英語とは異なるのでみんな戸惑っていましたね。ロンドン大学に言語教育を学びに行ったわけではなく、向こうで教育系の授業を取ることもなかったのですが、こういうところでゼミでの学習にも通じるちょっとした学びがありました。

 

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ロンドン大学ではビルマ舞踊も学んでいたそう。

 

―なるほど、計画性がある…。そしてそういう学びのある留学、素敵ですね!

長期留学はイギリスでしたが、1年次のショートビジットではミャンマーに行かれているんですね。ミャンマーのお話も聞きたいです!

テレビもネット環境も十分でなく、水シャワーなどで暮らし、市場などで買った食べ物を食べるという生活は、とても新鮮でした。水シャワーと行っても、ミャンマーはめちゃくちゃ暑いので、実際にやってみるとそこまで気にならなかったです(笑)ちなみに、私の代からかなり寮の環境が改善されたらしく、それ以前はシャワーどころか水の入った浴槽みたいなところから桶で水を汲んで、男女一緒の空間で服を着たまま水浴び!みたいな感じだったらしいです。あと、ミャンマーには雨季と乾季があり、私が行ったのは雨季だったので、ひどい時にはふくらはぎまで水に浸かった状態で歩いてました。日本からスニーカーを持って行ったのですがほぼ使わず、サンダルで生活していましたね。

行く前は不思議に思った風習(寺院では敷地内すべて土足厳禁など)や食べ物も、現地に行けば特に何も違和感なく、楽しく味わうことのできたことを覚えています。ただ、先生に「都市部なら病院はあるし犬も狂犬病にはかかってないから大丈夫だよ〜」と言われワクチンを打たずに行ったのですが、野良犬がたくさんいてやっぱり怖かったです。ゴキブリは意外と出ませんでした。

3週間という短い期間だったので私は楽しい思いをして終われたのですが、ある同期の女の子は食べ物が口に合わなかったことと空気があまりきれいではなかったせいで、途中から「帰りたい〜」と繰り返してましたね。

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ヤンゴン市内の様子

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ヤンゴン大学の学食

―ミャンマー留学のリアルな話が聞けました…(笑)ちなみに私は行ったことがないのですが、ロシアやカザフスタンでは毎日ゴキブリとの格闘らしいですね。

ミャンマーの治安や現地の人々の様子はどんな感じでしたか?

ミャンマーの人はとても人懐っこくてあたたかく、困ったときにはすぐ助けてくれる人たちが多かったです。女子寮では夜6時という早い門限が設定されていたので治安に関しては昼のことしか分かりませんが、当時は比較的安心して暮らせるところでした。また、ミャンマーと一言でいっても、都市部と地方部では生活様式も大きく異なります。今回のデモの広がり方も地域差がありますし、賃金格差についても、ヤンゴン市内などでは物乞いを生業としている人が目につく一方、水シャワーとは無縁のリッチな生活を送っている人もいます。

 

―なるほど、地域差や賃金格差はどこの国にもあるものですね。

 

最後に何かメッセージがあればお願いします!

東アジアだけでなく東南アジアの国々とも、アジアの一員として互いに協力し、良好な関係を築いていくことが重要です。東南アジアで起こっていることについて、あまり他人事と思わず、署名活動に参加していただいたり、新聞を読んでいただいたりと少しでも気にかけていただけると嬉しいです。

 

―実は今までミャンマーとはほとんど縁のない人生を送ってきましたが、今回お話が聞けてとても勉強になりました!

ご協力いただき、ありがとうございました!

 

文責:川又

(インタビュー実施日:2021年2月23日)