東京外国語大学ロシアサークルЛЮБОВЬ(リュボーフィ)のブログ

「未知なる魅惑の国」であるロシアならではの文化から、留学や旅行のこと、東京外国語大学でのキャンパスライフのことまで。このブログでは、東京外国語大学のロシアが大好きな学生たちが様々なテーマに沿って日替わりで記事を書いていきます。ЛЮБОВЬ(リュボーフィ)とは、ロシア語で「愛」を意味します。

東京外大生にインタビュー!第16弾【ウルドゥー語科編】〈前編〉

f:id:tufs_russialove:20210313141918p:plain

ウルドゥー語科 たつきさんへのインタビュー

 

たつきさんについて 2018年4月に東京外国語大学言語文化学部ウルドゥー語科に入学。2023年3月に卒業予定。3年次からデリー大学にオンライン留学中。趣味はバスケットボール🏀現在はウルドゥー語教材の開発に取り組んでいる。

 

ウルドゥー語科について

ウルドゥー語科は言語文化学部、国際社会学部合わせても15人程度の小語科。男女比は入学年度によって異なるがたつきさんの学年は1:3。落ち着いている人が多く安定した学生生活を送っている印象。

 

【学生生活について】

Na:外大に入った理由と、なぜその語科にしたか、学部はどうやって決めたかを教えてください。

たつき:上京したかったので学費の安い国立で英語を活かせる外大に決めていました!スワヒリ語、ウルドゥー語をやりたかったのですが、外大にはスワヒリ語はないのでウルドゥー語一択で現役浪人共にウルドゥー語を受験しました。スワヒリ語は、中学校の頃に「アフリカの子供を救いたい」というようなありがちな漠然とした憧れを抱いていたことから候補にありました。歴史的にウルドゥー語とイスラームの繋がりが強いことを世界史で知って、ウルドゥー語をやろうと思いました。

Na:そうだったんですね~。ちなみに、ウルドゥー語は一般的に「マイナー」と言われることが多いと思いますが、話者数がかなり多いとも聞いたことがあります。実際のところどうですか?

たつき:インド・パキスタンでは人口が大幅に増加しているので、ヒンディー語とウルドゥー語を合わせると、今後、世界3位の話者数になるといわれています。ウルドゥー語も話者数が多いことは多いですが、圧倒的にヒンディー語の話者数が多い感じですね。

Na:知名度が低い割に話者数が多いってことは、ウルドゥー語の学習者の活躍のチャンスもそれだけ多くなるのではないでしょうか?有名な言語だと他にもできる人がたくさんいますが、学習者の少ない言語は、学習者としての自分の価値を高めやすい環境にあると思います。

たつき:そうですね。学校の方から、大使館やメディア関係の大規模な活動に関する案内が来たりするので、活躍のチャンスは多いと思います。さっき言い忘れましたが、ウルドゥー語を選んだ理由としては、最低点が低く比較的楽に入れることもありますね。そして入ったら色んな経験をさせてもらえるのが良いことだと思います。

Na:ウルドゥー語をやっていると、ペルシア語・アラビア語などが理解しやすくなりそうなイメージですが、たつきさんはそれらの言語もやっていますか?私はロシア語専攻で、ロシア語をやってたら、ブルガリア語やウクライナ語は学びやすいなあって思うんですが…

たつき:ヒンディー語・ペルシア語・アラビア語は、地域言語Cで、ほぼほぼ必修みたいな感じで皆とっています。普通の方々がいきなりそれらの言語やるより、やっぱりウルドゥー語履修者の方が理解しやすくアドバンテージがあると思います。

地域言語C:専攻語に近い言語を履修するためにある科目。)

 

Na:実際に入ってみてどうでしたか?思っていたことと違った!ということはありましたか?(いい意味でも悪い意味でも)

たつき:基本的に、いい意味で変わりませんでしたね。勉強勉強勉強!って感じで。僕は、地域基礎で落単したのが辛かったですね(笑)でも 語学の授業自体は辛くないんです。先生が「ウルドゥー語を嫌いになってほしくない」「卒業後も継続してウルドゥー語を続けてほしい」と思っているみたいです。なので、授業は厳しくなく楽しく受けられました。

あとは、これも自分の話なんですが、部活で骨折して入院したのが、日常生活を過ごすのも大変になって辛かったですね。それと、ウルドゥー日本語辞書が高いのは驚きました。約7万円もします。最後に、「ウルドゥー語をやってる」と話すと、“変わった奴”みたいな風に思われるのが少し辛いですね。まあでも話が良い風に転べば、それが面白かったりもすることはありますね。

Na:その気持ちはわかります!私も「ロシア語やってる」と言ったら“変わった奴”扱いされるととがあります。最近は、それを覚悟でというか、その宿命を背負って楽しんでる感はありますね。

 

【語科について】

Na:語科の雰囲気を教えてください!

たつき:全体的にゆるい雰囲気があると思います。ただしっかり専攻語をやる人はしっかりやって、また先生も質問するとちゃんと丁寧に教えてもらえる、メリハリのある語科だと思います(笑)

Na:それはいいですね!ウルドゥー語科に入って良かったことは何ですか?

たつき:この話は完全に個人の価値観になりますが、私は、自分で語学をやるものだと思っています。自分でどう言語をモノにするか、ですので自分で勉強する時間が必要だと思います。言語の予習復習時点でしんどくなってしまうようなキツい語科に比べると、その点ウルドゥー語は余裕を持ってガンガン自分で進めていけます。わからないことがあれば質問し放題ですし、それが入学してからよかったとずっと感じていることです(笑)

Na:それは私も同感です!でも、自分で進めるのって、何かモチベーションとかがないと続けにくいと思うんですけど、どうやってモチベーションを保っていますか?

たつき:ネイティブと会うことで、楽しみながら話す機会を作ることを心掛けています。

ネイティブと話すと、やっぱりネイティブはスピードが速いな、と思うじゃないですか。発音も自分が思っていたのとネイティブの発音は違うな、とかも。なので、ネイティブと話すことで、速さとか発音とか、自分に今足りない能力を明確にできるんです。そうやって、「もっとウルドゥー語を頑張ろう!」とモチベーションを保っています。

Na:なるほど~。確かにネイティブと話して見えてくることはたくさんありますね!たつきさんは、外大以外で、どうやってネイティブと触れ合う機会を作っていますか?何かウルドゥー語のコミュニティーはありますか?

たつき東京ジャーミィで知り合った友達と遊びに行ったり、以前はバイト先でパキスタン人のアナウンサーの人と話してたり。あとはコロナ禍でも会話アプリを使うと、どこにいても誰とでも話せます。でも一番はなんといっても、現地に行ってネイティブと話すことですね!発音をやっぱり伸ばさないとですね。 

東京ジャーミィ:渋谷区代々木上原にある、日本最大のイスラム教寺院(モスク))

Na:そうですね。受け身じゃなくて自分から探して動かなきゃですね。

 

Na:逆に、ウルドゥー語科に入って後悔したことや辛かったことはありますか?

たつき:特にないですが、留学できなかったことは辛かったですね。それまではずっと専攻語を勉強していたのですが、留学がおじゃんになったときはその努力が無駄になった気分でした。

 

Na:言語の勉強はどのように進みますか? 

たつき:一年は文法でネイティブを含めて3人の教授がそれぞれ教えてくれます。2年は日本人教授の授業ではほぼ全て購読、ネイティブは会話がメインです。3年次は映画を見ながら口語表現を学んだり、メディア翻訳が始まったりとそれぞれの先生の強みの領域を通じてウルドゥー語に触れます。先生の強みの例で言うと、言語学出身のネイティブの先生は会話の授業で発音を鍛えてくれます。3人しか先生がいらっしゃらないので先生は大変かと思いますが、それだけ高い専門性を持つ先生方に教えて頂いています。

   

Na:ウルドゥー関連で最も面白い授業は何ですか?

たつき:私が思う一番面白い授業は地域言語Cのウルドゥー語です(笑)一年の時に落単したので、その代わりに履修したんです。授業担当の外部の先生が個性的で、面白くウルドゥー語を学べます。実はこの授業は裏コマと呼ばれています。必修のウルドゥー語を落としてしまっても、この地域言語Cウルドゥー語を取れば留年を回避できます。モジュール語科だからこそできることですね。僕はこれで危機を免れました。

モジュール語科:学期ごとに授業を開講し、1 単位ごとに認定する言語の語科のこと。つまり、専攻語の単位認定が一括ではない語科のこと。一方で、非モジュール語科だと10授業のうち1授業でも落とすと進級できなくなる)

 

Na:また、語科と関係なく、外大の授業で面白かったものを教えてください!

たつき:O先生の「男らしさ」の授業はとても面白かったです!第一次・第二次世界大戦や近代化で、ドイツの歴史を通して形成された男らしさを取り上げています。外大では女性中心のジェンダーが語られることは多くありますが、男性にまつわるジェンダーはほぼ聞いたことが     なく、新鮮でした。男として生きるのにも知らないうちに辛いこともあるんだなと思いました。

 

Na:今現在、その言語や地域に関わる活動や仕事をしていますか? 

たつき:以前、NHK国際放送のウルドゥー語放送で、ラジオのADバイトをしていました。 ADなのでずっとウルドゥー語を話せるわけではないですが、パキスタン人のアナウンサーさんが翻訳して話すウルドゥー語を聞いて、ウルドゥー語を頭の中で訳してウルドゥー語脳を鍛えていました。

 

Na:ウルドゥー語科の卒業生はどのような進路に進む方が多いですか。また、将来やってみたい仕事や夢はありますか。

たつき:様々ですね。院進してウルドゥー語を極める人もいます。就職でも、「ウルドゥー語をやってる」と言うと企業によって反応が分かれるかと思います。普通にウルドゥー語を使わない企業に就職する人もいます。一方で、インドには日産やスズキなど最近多くの日系企業が進出しているので、そうしたグローバル企業に就職する人もいるみたいです。外大生あるあるですが、商社系で駐在員を目指す人も少なからずいるみたいですね。

Na:インドだと就職の需要はこれから伸びていきそうですね~!

 

【学びについて】

Na:所属しているゼミと、入った理由、勉強している内容を教えてください。 

たつき:入っているゼミは社会言語学のゼミです。社会的にどんな現象があって言語が生まれるのかといったことを学んでいます。ウルドゥー語を専門とするゼミがここしかなかったのでこのゼミ一択でした。現在は日本におけるウルドゥー語教育を勉強しています。ゼミの先生がウルドゥー語の音声など情報をたくさん持っているので、質問にもとても協力的です。ゼミの先生はのほほんとした先生で、ウルドゥーなら何でもやらせてくれる良いゼミだと思います。その割には人気のない言語情報コースなので、同期は僕を入れて3人のゼミです。ウルドゥー好きな人にはおすすめです。

Na: 少数言語では特に、その言語の第一人者から教えを頂けるのは貴重な経験ですね。

 

Na:ゼミで勉強しているテーマや、その面白さを教えてください。

たつき:ウルドゥー語の教材を開発し、それを卒業制作とする予定です。具体的には、ウルドゥー語語彙学習サイトを製作しました。この背景には、ウルドゥー語の単語帳がなく、ウルドゥー語を身につけたいのにうまく勉強ができないという問題意識があります。日本でウルドゥー語の教育が開始されてから110年以上経ちましたが、これと言った良い教科書がありません。そこで、外大生をはじめとしたウルドゥー語学習者のために、語彙学習サイトを開発しました。もうすぐリリース予定で、来年度から外大の公式カリキュラムの中に教材として組み込まれます。今まで参加してきたカリキュラムを変えられるワクワク感がやりがいとして感じられました。。卒業論文はほとんど誰も読まないけど、ウルドゥー語語彙学習サイトは皆に使ってもらえます。後輩もウルドゥー語を勉強しやすくなるし、僕もウルドゥー語を極められるし、先生は負担を減らせるし、Win-Win-Winな卒業制作だと思います。ちょっとサイトを見てみてください。

Na:クオリティーが高すぎてびっくりしました...!!!たつきさんがウルドゥー語教育の新たなパイオニアとなりそうですごいと思います!ウルドゥー語科の人はもちろん、他語科でウルドゥー語を学んでいる人もぜひ使ってみてください!こちらのウルドゥー語語彙学習サイトについては後半の記事でも少し紹介するので、是非次回もみてください。

 

☆次回!ウルドゥー語科後編!

-濃い写真が盛りだくさん!インド・パキスタンでのホームステイについて!

-ロシア人の意外な職業?ロシアとウルドゥー語圏の繋がりについて!

 

文責:Na

(インタビュー実施日:202133日)

 

↓後編はこちら

tufs-russialove.hatenablog.com