東京外国語大学ロシアサークルЛЮБОВЬ(リュボーフィ)のブログ

「未知なる魅惑の国」であるロシアならではの文化から、留学や旅行のこと、東京外国語大学でのキャンパスライフのことまで。このブログでは、東京外国語大学のロシアが大好きな学生たちが様々なテーマに沿って日替わりで記事を書いていきます。ЛЮБОВЬ(リュボーフィ)とは、ロシア語で「愛」を意味します。

公演レポート「第16回世界バレエ・フェスティバル」

Привет(プリヴィエット)!(こんにちは!)、ロシア語科のバレエ担当、長谷川公樹です!

 

前回に引き続き、この夏のバレエ公演レポートをお届けします!

(前回の記事はこちら!)

tufs-russialove.hatenablog.com

 

今回取り上げるのは、日本中のファンが待ち望んでいた「第16回世界バレエフェスティバル」です。

f:id:tufs_russialove:20210930200052j:plain

この公演は3年に1度だけ世界各国のトップ・バレエ団のスーパースターたちが一同会するバレエの祭典です。今回は、この公演に出演したロシアのダンサーに絞ってお届けします。

 

 

 

1組目は、人気のボリショイ・バレエ団カップル、ウラディスラフ・ラントラートフ&マリア・アレクサンドロワ。

 
 
 
 
 
View this post on Instagram
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

A post shared by NBS([公財]日本舞台芸術振興会) (@nbs_japan)

www.instagram.com

この2人は、公私共にカップルで、親密で強い信頼関係を感じさせる踊りを見せてくれます。

 

披露してくれた演目は「ライモンダ」と「two rooms」です。

 

ライモンダは、ラントラートフ演じるジャン・ド・ブリエンヌが癒し系のジェントルマンで素敵でした。ジャンプや回転といったテクニックも清潔感がありとても好感度が高かったです。

 

「two rooms」はコロナ後に製作されたコンテンポラリー作品です。

 
 
 
 
 
View this post on Instagram
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

A post shared by Ilia Jivoy (@jivoy_dance)

www.instagram.com

クラシック作品中心の2人が、最新のコンテンポラリー作品を踊っている姿を見れたのは、大変貴重でした。照明やプロジェクションを駆使した現代的演出は、ダンスが好きな人であれば誰でも楽しめるものだったと思います。

 

 

 

2組目は、ワガノワ出身ペア、ウラジーミル・シクリャローフ&オリガ・スミルノワ。

 

「ロミオとジュリエット」と「ジュエルズ」の”ダイヤモンド”という超人気演目を披露してくれました。

 

「ロミオとジュリエット」では、まずシクリャローフが挑発的な笑みを浮かべて、舞台袖から登場した瞬間に鳥肌が立ちました。

約10分の演技の終盤、ジュリエットとともに客席側を向いて天を仰いでいるときの彼の吐息が客席まで聞こえていました。いかに彼が情熱的にロミオを演じていたのかがよく分かりました。

 
 
 
 
 
View this post on Instagram
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

A post shared by Vladimir Shklyarov (@vladimir_shklyarov)

www.instagram.com

スミルノワは、夜空の遠くを見つめて物思いにふけるような大人のジュリエットを見せてくれました。(バレエ通向けにコメントすると、もともと彼女はジュリエットを演じることがほとんどないので、マリインスキーのラブロフスキー版ジュリエットを披露するのは今回が初めてでした!ファンとしては、必見の演目だったと言えます。)

 

「ダイヤモンド」では、シクリャローフはスミルノワを支える脇役に徹していた印象があり、主役は明らかにスミルノワでした。

 
 
 
 
 
View this post on Instagram
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

A post shared by NBS([公財]日本舞台芸術振興会) (@nbs_japan)

www.instagram.com

彼女の非現実的で硬質な美しさは、まさに宝石でした。そして、遠くを見つめるような眼差しからは、ダイヤモンドに当たって煌めく光すら感じられました。しかし、ただ無機質な宝石なのではなく、光の当たり方が変わると輝き方が変わるように、僅かな表情の変化も感じさせる叙情的なダイヤモンドでした。(私は、その瞬間しか楽しめない彼女のタイヤモンドの方が、実物のダイヤモンドよりも価値があるのではないかと思います。)

 

 

 

3組目は、マリインスキー&ボリショイのテクニシャンペア、キミン・キム&エカテリーナ・クリサノワです。

 
 
 
 
 
View this post on Instagram
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

A post shared by EKATERINA KRYSANOVA (@ekaterinakrysanova_official)

www.instagram.com

キミン・キムは、比類ないテクニックを武器に、アジア人初のマリインスキーのプリンシパルに上り詰めました。

クリサノワは、生粋のボリショイ・ダンサーで、可愛げのある快活なパフォーマンスが魅力です。

今回2人が披露してくれたのは、「海賊」と「ドン・キホーテ」というトップクラスで盛り上がる2演目でした。

両演目でこの公演一番の拍手を浴びていたのは、キミン・キムでした。初日の「海賊」のアダージオは慎重に踊っていましたが、ヴァリエーションで素晴らしい高さと切れ味のあるジャンプを披露して、喝采を浴びると、一気に勢いづき、コーダでも素晴らしく元気溢れるパフォーマンスを見せてくれました。彼が、観客からの拍手を受け取って、それに応えるようにパワーアップしたパフォーマンスを見せるという舞台と客席のコミュニケーションがそこにはありました。」千穐楽の大トリもこのペアが務め、キミン・キムの剣のような足さばきと、クリサノワの可憐で元気な演技で、このバレエの祭典を締めくくってくれました。

 

 

そして最後にご紹介するのは、ロシア・バレエ界の女帝スヴェトラーナ・ザハーロワです。このブログでも何度もご紹介させていただいております。先月お届けした公演レポートでは、ザハーロワと彼女の夫によるバレエ公演をリポートしました。

tufs-russialove.hatenablog.com

この世界バレエフェステイバルでも「瀕死の白鳥」を披露してくれました。

 
 
 
 
 
View this post on Instagram
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

A post shared by Cветлана Захарова (@svetlana.zakharova_fans)

www.instagram.com

ザハーロワ本人が、「この演目はその時のコンディションや感情によって踊り方が変わってくる」ととあるインタビューの中で答えていました。今回、ふたつの別々の公演で同じこの演目を見たことで、このことが本当であることが分かりました。例えば、両腕を天高く振り上げる振り付けがありますが、そこの音のとり方が絶妙に変えてありました。

他のダンサーたちは、ほとんどがペアで10分ほどの演目を披露していたのに対し、彼女は1人で5分弱の演目を1つだけ披露するだけでした。しかし、演目が始まったときの客席の緊張感、そして拍手の大きさは、「別格」でした。いかにバレエ・ファンの間で彼女が人気か、いかに今回彼女の踊りを楽しみにしていたのかがよく分かりました。

 

 

そして、公演の最後は華やかなカーテンコール!1976年の第一回から、毎回チャイコフスキー「眠りの森の美女」より”アポテオーズ”と言う曲に合わせて、出演したダンサー全員が登場する恒例行事です。

第一回から前回の第15回のカーテンコールまでを一気に振り返れる動画がこちらです。

www.youtube.com

(ザハーロワが出演すると、必ず中心で最後に挨拶をします。名実ともに世界のバレエ界全体の女王的存在であることが伺えます。)

 

今回は感染症対策のため、「ブラボー」の禁止など、多くの制約がありましたが、その一方で、最後には花火のプロジェクションマッピングという新しい試みもありました。

 
 
 
 
 
View this post on Instagram
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

A post shared by NBS([公財]日本舞台芸術振興会) (@nbs_japan)

www.instagram.com

 

千穐楽の公演では、さらにその後、ダンサーたちが法被と扇子を持って、歌舞伎のような挨拶を披露してくれるというサプライズもありました。

 
 
 
 
 
View this post on Instagram
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

A post shared by EKATERINA KRYSANOVA (@ekaterinakrysanova_official)

www.instagram.com

 

この公演は、コロナ禍初の海外ダンサーを招聘した大規模公演だったので、開催自体がギリギリまで危ぶまれていました。そのこともあり、千穐楽のカーテンコールでは、無事に全公演が完走できたことに本当に感無量で、筆者は拍手しながら号泣してしまいました。

 

公演を主催して下さったNBS日本舞台芸術振興会の方々、来日して下さったダンサーの方々をはじめ、この公演を支えて下さった全ての方々にバレエ・ファンを代表して深く感謝申し上げます。Спасибо большое!!(スパシーバ・バリショーエ)

 

では、いつか読者のみなさんと劇場でお会いできる日が来るのを楽しみに待ってます!До встречи!(ダ フストレーチ)!(またお会いしましょう!)

 

文責:長谷川公樹

 

今日のロシア語

бриллиант(ブリリヤーント)

意味:ダイヤモンド

королева(カラリェーヴァ)

意味:女王