東京外国語大学ロシアサークルЛЮБОВЬ(リュボーフィ)のブログ

「未知なる魅惑の国」であるロシアならではの文化から、留学や旅行のこと、東京外国語大学でのキャンパスライフのことまで。このブログでは、東京外国語大学のロシアが大好きな学生たちが様々なテーマに沿って日替わりで記事を書いていきます。ЛЮБОВЬ(リュボーフィ)とは、ロシア語で「愛」を意味します。

ロシア人にとっての三つ編みって何?

Добрый вечер!(ドーブルイ ヴェーチェル)こんばんは!川又です。

1月はテスト期間などがあったためリュボーフィのブログはお休みしていたのですが、2月から再開します!私は数週間後に留学先のカザフスタンに渡航予定で、今週からオンライン授業にはすでに参加しているので少しバタバタしていますが、今日秋学期の成績も発表されて一息ついたところです。

今日は、最近気になっていたロシア人の伝統的な髪型「三つ編み」について記事を書きたいと思います。

 

 

ロシアの農民の間では、結婚前の娘は「純潔」を意味する1つの三つ編みを背中に垂らす髪型をして、結婚すると2つの三つ編みにし、さらに頭を覆い隠すためにココーシニクという被り物を被るという伝統がありました。(ココーシニクには未婚女性用の頭を完全には覆わない形のものもありました。)

 

もし既婚の女性が髪を隠さずに歩いていれば、ドモヴォイ(家に住むロシアの精霊)が髪を掴んで屋根裏へ引っ張って行くとも言われたそうです。また、ロシア語の単語に«опростоволоситься»という動詞があり、これは「ヘマをする」「しくじる」といった意味を持ちます。長い動詞に見えますが、о-просто-волос-ить-сяという部分に分けることができます。простоは「簡素な」、「волос」は髪という意味で、元々この単語は「頭髪をむき出しにする」という意味でも使われていたようです。頭髪をむき出しにして歩くことが恥であるとされていたことがわかりますね。

 

ずっと昔に農民の間で始まったこの伝統ですが、民族衣装を着る時などは身分の高い人でもこの伝統に従ったものと思われます。

現代ではそもそも民族衣装を着たロシア人女性の姿を見かけることも少ないし、どんな格好だったのか想像しにくいかもしれませんね。ここで、実際にこれらの髪型についての伝統がよく反映されている絵画をいくつか紹介したいと思います。

 

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(Филипп Будкин «Девушка перед зеркалом»(鏡の前の少女)、1848年)

 

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https://www.culture.ru/materials/51485/po-odezhke-vstrechayut

(伝統衣装を着たアレクサンドラ・パブロヴナの肖像、作者不明、1790年)

 

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(Константин Маковский «Под венец»(婚礼)、1890年)

結婚が決まると式の前日に三つ編みをほどく儀式が行われ、結婚式当日には2つの三つ編みに結いなおす儀式が行われる。その儀式の様子を描いた作品。

 

 

また、結婚相手したい相手が現れるとこの三つ編みに明るい色のリボンを編み込み、さらに結婚が両親に許されると2本目のリボンを編み込むという伝統もあったようです。髪の毛を見るだけでここまでわかってしまうのというのは面白いですね。下の写真では右から2番目、そして3番目の女性がリボンを1本編み込んだ状態なのでしょう。

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https://runivers.ru/gallery/photogallery/photo/40601/original/

(撮影者不明、1906-1907年)

 

ちなみに、『赤いサラファン』という日本語バージョン(津川主一訳)も存在する有名なロシアの民謡(ニコライ・ツィガーノフ作詞)があるのですが、この歌の歌詞(2番)にもロシア人女性の髪型に関する伝統が反映されています。

 

Рано мою косыньку

На две расплетать!

Прикажи мне русую

В ленту убирать!

 

私の三つ編みを2つに分けるのはまだ早いわ

亜麻色の三つ編みをリボンに仕舞わせて

 

この歌は、「まだ結婚なんかしたくない」と言う娘と結婚を勧める母との対話のようになっています。ここでは2番の歌詞を紹介しましたが、1番は「お母さん、赤いサラファン(婚礼衣装)なんか縫わないで」という歌詞から始まっています。この歌詞に出てくるリボンは結婚が決まった時に編み込むものを指しているのではなく、単に三つ編みの先に飾りとしてつけていたリボンのことなのではないかと思います。結婚すると三つ編みを2つに分けるという伝統も現れていますね。

 

また、«Коса – девичья краса» 「三つ編みは乙女の美しさ」というロシアの格言もあります。ロシア人にとって三つ編みというものが若い娘の象徴だったということがよくわかります。

 

 

 

いかがでしたか?調べている中で、私もロシア人女性のような三つ編みができるようにあと30cmくらい髪を伸ばしたくなりました。どうせいつも切りたくなってしまうのですが、いつかちゃんと伸ばしてみたいものです。

 

 

《今日のロシア語》

коса(カサー)

意味:三つ編み

свадьба(スヴァーヂバ)

意味:結婚式

 

 

参考文献

岩本眞樹、「ロシアの装飾的な冠物「ココーシニク」 その歴史と特徴」(2021)(https://sapporo-u.repo.nii.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=7807&file_id=22&file_no=1

РУССКИЕ ПЕСНИ Н. ЦЫГАНОВА (http://a-pesni.org/popular20/novikova6.htm

https://runivers.ru/gallery/photogallery/photo/40601/original/