『ロシアゴスキー』がイチバンスキー!!!! ~Eテレ『ロシアゴスキー』を知っていますか?~《前編》
皆さんこんにちは。「『ロシアゴスキー』がイチバンスキー!!!!」の記事を書かせていただいている市薗雅貴です。さて、今日紹介するものは題名にある通り、Eテレのロシア語講座番組『ロシアゴスキー』(火曜24時~24時25分 再放送 火曜5時半~5時55分)です。この番組のHPによると、「『ロシアゴスキー』は、現地の最新映像とアニメで学ぶスタイリッシュなロシア語番組」だそうです。番組リポーターのロシア人ターニャとヴィーカがロシアの街を紹介しながら、旅で役立つロシア語の単語や表現を教えてくれます。 この説明だけでも大体分かるかと思うのですが、実際の番組がどんな内容なのか、当然「具体的には」掴めないですよね。
ということで、今回はこの番組、『ロシアゴスキー』の内容を紹介していきます。ターゲット別にそれぞれ、
①ロシアを観光したいと思っている方 ②ロシア語中・上級者 ③ロシア語初学者 とし、当記事を読んでくださっている読者の皆様のニーズに応えられるようにしました。 前編では、①と②を取り上げます。
① ロシアを観光したいと思っている方へ
さて、まず『ロシアゴスキー』を、ロシアを観光したいと思っている方に向けた視点で見ていきます。
『ロシアゴスキー』はモスクワとサンクトペテルブルクというロシアの二大都市を舞台にした番組ですが、どんな観光地を紹介しているのでしょうか?
モスクワ編(リポーター:ターニャ)
第1回 |
赤の広場からこんにちは! |
赤の広場 クレムリン →レーニン廟 聖ワシーリー聖堂 ウスペンスキー大聖堂 露大統領官邸 |
第2回 |
スーパーマーケットでラクラクお買い物 |
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第3回 |
話題の個性派レストランへ |
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第4回 |
地下鉄を乗りこなそう |
モスクワ地下鉄 →コムソモーリスカヤ駅 革命広場駅 エレクトロザヴォ―ツカヤ駅 ノヴォスロボーツカヤ駅 |
第5回 |
気軽に楽しむロシアの味 |
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第6回 |
老舗デパートでお土産探し |
グム百貨店 |
第7回 |
憧れのボリショイ劇場 |
ボリショイ劇場 |
第8回 |
モスクワは芸術の都 |
トレチャコフ美術館 ノヴォデヴィチ修道院 |
第9回 |
ホテル滞在を楽しもう |
ホテル・メトロポール ウクライナ・ホテル |
第10回 |
クルーズ船でモスクワ新発見 |
救世主キリスト聖堂 クレムリン 芸術家アパート(クルーズ船より) |
第11回 |
情熱の詩人に会いに行く |
コンスタンチノヴォ(=詩人エセーニンの故郷) |
第12回 |
雀が丘にて~モスクワの旅を振り返って |
雀が丘展望台 |
サンクトペテルブルク編(リポーター:ヴィーカ)
第1回 |
ネフスキー大通りでショッピング! |
ネフスキー大通り →エリセーエフスキー商店 カザン大聖堂 |
第2回 |
サンクトペテルブルクの新名所へ |
ノーヴァヤ・ゴランディヤ(=新オランダ島) |
第3回 |
華麗なる噴水の競演!ぺテルゴフ |
ぺテルゴフ宮殿 |
第4回 |
ダーチャで乾杯! |
(サンクトペテルブルクの近郊) |
第5回 |
サンクトペテルブルクでニッポン探し! |
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第6回 |
美の宮殿 エルミタージュ美術館へ |
国立エルミタージュ美術館 |
第7回 |
ロシア民謡の世界へ キジ島を巡る |
キジ島 →ブレオブラジェンスカヤ教会 ポクロフスカヤ教会 一本柱の風車小屋 |
第8回 |
ロシアのロック音楽を体感! |
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第9回 |
サンクトペテルブルクを食べつくす |
ストロガノフ宮殿のレストラン |
第10回 |
国民詩人プーシキンを訪ねる |
プーシキンの家博物館ツァ―ルスコエ・セロー 決闘の地 |
第11回 |
ロシア・バレエの殿堂へ |
バレエ・アカデミー マリインスキー劇場 |
第12回 |
サンクトペテルブルクの旅を振り返って |
ペトロパウロスク要塞 |
『ロシアゴスキー』で紹介されている観光地は、世界遺産も多いんです。表の赤字部分は全て世界遺産なんです。世界遺産がお目あての方も、旅のためのロシア語を学びつつ十分に楽しめる作りになっていますよ。また、この番組のサンクトペテルブルク編第6回「美の宮殿 エルミタージュ美術館へ」では、一般公開されていない資料館にある、日本に関する貴重な古書も見られます。さらにショッピングやレストランでの食事風景も楽しめる構成であるほか、サンクトペテルブルク編第4回では、ロシアのダーチャ(菜園付き週末別荘)が紹介されています。ロシアの人達の生活風景を見ることができる必見の回です。ロシア旅行を考えている方、是非とも参考にしてくださいね!
② ロシア語中上級者へ
さて、次はロシア語中上級者の皆さんへ向けた『ロシアゴスキー』を見ていきましょう。「NHKの語学番組って初級者向けでは…。」と思う方もいるでしょうし、その考えは間違っていないのですが、何も「初心者だけしか相手にしていない」という訳ではありません。ロシア語をある程度以上に学んだ方の 学習にも、この番組は素晴らしいものになるのですよ!では、具体的な内容を見てみましょう。
1. ロシア語で聞いてみよう!
まず、「ロシア語で聞いてみよう!」のコーナーがお勧めです。このコーナーでは、この番組の日本語ナレーションもしていらっしゃる、声優のジェーニャさんがロシア語でお話をしています。テーマは、「サンクトペテルブルクの歴史」・「ノーヴァヤ・ゴランディヤの歴史」・「ピョートル1世が作った博物館」・「サンクトペテルブルク大学に潜入!」(それぞれ、サンクトペテルブルク編1.2.3.5話)です。前半3つは各々の歴史が、サンクトペテルブルク大学のはロシアで日本語を専攻している学生さん方の生のお話が聞ける、リスニング教材として非常に価値があるものになっていますよ!……え?ジェーニャのロシア語はゆっくりだし、声が綺麗で聞き取りやすすぎる?…確かにそうかもしれません。ですが、ほかにも『ロシアゴスキー』には中上級者向けの教材としての側面がありますよ。
2. インタビュー
次に挙げられるのは、インタビューです。このインタビューというのは、モスクワ編6.7.8.9.11話、サンクトペテルブルク編11話にて放送されていて、モスクワ編6話以外はロシア語でインタビューが答えられています。インタビューに応じて下さっているのはいずれの方も文化人で、バレエ、美術、文学、音楽の第一線で活躍されている、もしくはしていらっしゃった方々です。勿論これらのインタビューはロシア語学習に非常に有用です。しかし、これは「文化人へのインタビュー」としても非常に貴重な資料なんです。特に注目すべき方を1人挙げるとすれば、元プリマ・バレリーナのウリヤーナ・ロパートキナです。世界中のバレエ・ファンの間では、彼女の名を知らない者はいないと言っても過言ではないでしょう。彼女は、世界三大バレエ学校のひとつであるワガノワ・バレエ・アカデミーを卒業後、世界屈指のバレエ団であるマリインスキー・バレエ団で、20年以上もプリンシパル(最高位)を務めました。引退後はメディア露出が減った彼女が、日本の語学番組で自らの芸術理論を語るというのは異例のことと言えます。(また、ここでの彼女のお話は、我々の人生においてのことにも繋がるよう思えます。)彼女が出演した約6分間の映像は、ロシア語学習者のみならず、世界中の舞台芸術愛好家にとって大変貴重なものなのです。勿論、彼女のほかにも様々な著名人がこの番組に出演しています。
3. 「今日の街歩き」でのロシア語
最後に、中上級者向けとして「今日の街歩き」のロシア語を挙げます。これはどういうものかというと、単純に言えばターニャやヴィーカが説明・会話している際のロシア語音声のことです。特別なコーナーとしては設けられてはいませんが、これは先程1.2で挙げさせてもらったコーナーと違って毎回あります。おまけに、ここでのロシア語は量が多く、NHK出版『ロシアゴスキー』のテキストにおけるこの部分のスクリプトは、約68ページにも及びます。1.2のコーナーは一人語りによるロシア語なのですが、ここでは会話が行われている場面も多く、映像がついていることもあって、ロシア語の会話聞き取りの教材としてとっても有用です。コロナ禍のせいで「今迄行ったことないけど、専攻しているロシアに行きたい…!」という夢が一旦頓挫してしまっているロシア語専攻の学生さん方も、モスクワとサンクトペテルブルクの街を味わいつつロシア語を学べますし、きっとそれが実際に行く際のための準備にもなりますよ!
前編ここまでです。当記事を楽しんで読んでいただけたでしょうか?次回は後編をお送りします。後編はロシア語初学者向けの『ロシアゴスキー』を伝えるものにしておりますが、『ロシアゴスキー』の魅力を伝える記事には変わりないので、是非引き続きお読みになって下さいね!
文責:市薗雅貴
参考文献:
前田和泉(2021)『NHKテレビ ロシアゴスキー』NHK出版
西中村浩 朝妻恵里子(2020)『ロシア語をはじめよう』朝日出版社