東京外国語大学ロシアサークルЛЮБОВЬ(リュボーフィ)のブログ

「未知なる魅惑の国」であるロシアならではの文化から、留学や旅行のこと、東京外国語大学でのキャンパスライフのことまで。このブログでは、東京外国語大学のロシアが大好きな学生たちが様々なテーマに沿って日替わりで記事を書いていきます。ЛЮБОВЬ(リュボーフィ)とは、ロシア語で「愛」を意味します。

東京外大生にインタビュー!第20弾【ペルシア語科編】〈後編〉

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ペルシア語科あまねさんへのインタビュー

 

↓前編はこちらよりどうぞ

tufs-russialove.hatenablog.com

 

【留学について】

ー留学や旅行に行ったことはありますか?

旅行は小学校の4年生くらいまでは比較的頻繁に行っていました。そこから10年くらい行っていなかったのですが、大学1年生の夏にショートビジットの前乗りを含め2カ月ほど滞在しました。メインのプログラムはシーラーズという都市の大学で受けていましたが、首都テヘランやヤズド、それから「世界の半分」という文句で有名なイスファハーンなど様々な場所を訪れました。

 

ー特に印象に残った思い出や場所はありますか?行ってみて印象が変わった点はありますか?また、その地域を知らない人が聞くと驚くであろう風習などはありますか?

やはりペルセポリスは感動しました。いまは廃墟しか残っていませんが、それでもなお何千年も前の威光を忍ばせる形跡が残っていました。写真で見ると全く伝わりませんが実際に行ってみると自分の想像の何倍もスケールがあり圧倒され、自分にイラン人の血が入っていることに誇りを感じましたね。

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ペルセポリス


大学生となって訪れた際に衝撃的だったのは、様々な技術が発展していたことです。小さい頃の印象より空港のゲートや地下鉄などが整備されていましたし、電子マネーの普及などの一部の分野では日本よりも先を行っているなと感じるものもありました。街中のガソリンの臭いも改善されているような気がします。

イランは厳格なイスラーム国で怖い国というイメージが持たれがちです。確かに厳格にイスラームを信奉するという一面は否定出来るものではありません。しかし、それがイランのすべてではなくて世俗的な考えを持った人々も少なからず存在します。例えばイランでは女性が頭にヴェールを被ることが法律で決められていますが、できるだけ自分の髪の毛を見せるように工夫してヴェールを被る女性はとても多いです。法律的にアウトかセーフかというゾーンで警察とチキンレースを繰り広げる若者もとても多く、そちらの一面はあまり知られていないと思います。

 

ー現地の人々の様子を教えてください!どのような人が住んでいますか?(多国籍?優しい?怖い?治安は良い?など)

イラン人は善人と悪人の差が激しいと思いますね。いい人は徹底的にいい人ですが、悪い人はよくもそんなことを、と思うようなことを平気でします。そういう人を判断して見分けるのが大事になってきますね。ただ全体的には治安は欧米と比べても良いと思います。外国だということを意識して最低限の警戒をすれば危険な目に合うようなことはあまりないのではないでしょうか。

またイランは多民族国家であり様々な人がいてとても面白いですね。場所によって聞こえてくる言語が違ったりもします。民族ごとに着ている服装が異なるのでよく観察すると面白いです。

そしてイランはとてもフレンドリーな人が多い国です。しかし、人によってはそれが鬱陶しくなりイラン人のことが嫌いになってしまうことも少なくありません。また、イラン人は非常にプライドが高い民族ですが、歴史の荒波にもまれて中々のコンプレックスを抱えているのでイラン人の心象は複雑で面白いと思います。 

 

ー外大にはクルド語やパシュトー語などペルシア語以外のイラン語派に属する言語の授業もありますが、何か履修されていたものはありますか?

クルド人に興味があり、クルド語は履修していました。自分の国を持たず歴史的に悔しい思いをしてきていることもあり、彼らの言葉で話しかけると心理的な距離が近くなると先生から聞いたので受けてみようと思いましたね。パシュトー語に関しては自分の興味範囲からは外れていたため取っていませんでした。

 

【地域について】

ーイランについて勉強する最初の一冊となるようなおすすめの本はありますか?

イランを勉強する最初の一冊は、『イランを知るための65章』か『言葉の国イランと私』ですね。前者はシリーズ本ということもあり、言語や民族、政治、経済、日本との関係など、表面的な物から少し掘り下げたものまでイランについての情報が体系的に書かれています。後者は、テヘラン大学で日本人初の博士号を取得した岡田恵美子先生のエッセイ本となっており、より直接的な視点で等身大のイラン人たちを見てみたい人におすすめです。この本が好きになった人はきっとイランに向いていると思いますよ。 

 

イランを知るための65章 エリア・スタディーズ | 岡田 恵美子, 鈴木 珠里, 北原 圭一 |本 | 通販 | Amazon

言葉の国イランと私: 世界一お喋り上手な人たち | 恵美子, 岡田 |本 | 通販 | Amazon

 

ーイランの音楽や絵画、文学、映画、アニメで有名なものはありますか?

イランは近年映画産業が非常に優秀でいくつも国際的な賞を取っています。日本でも有名なのは「僕の友達はどこ」や「運動靴と赤い金魚」などが挙げられますね。難しい映画ではありますが何度も見るうちに面白さがわかってくるので、映画好きの方ほどはまる映画だと思います。 他のイラン映画も深く考えさせるものが多く、どちらかと言えば悲劇や暗い話が多い印象はありますね。

 

ーイランの著名人といえばどのような方がいますか?

イラン出身の有名人は非常に多く枚挙にいとまがありませんが日本人が知っている人は少ないように感じられます。あえて日本人が知っている人を上げるとすれば女優のサヘル=ローズさんなどでしょうか。 彼女は自分の出自をテレビでも公表していますし、そういった自身のアイデンティティと向き合うような番組やコーナーも持たれています。その他、レスリングやバレ

 

ーボール、サッカーなどが好きな方は選手の名前を一人二人くらいは知っているかもしれませんね。

出身に限らずイランにも出自を持つ方、ということでいうと、歌手のMay J. さんやプロ野球選手のダルビッシュ有選手なんかもそうですね。

 

ー近年のイランの政治・経済の状況を教えてください。

非常にまずいと思います。近年イランは2015年に結ばれたイランの核開発を制限するイラン核合意の瓦解によって政治的にも経済的にも波乱が巻き起こっています。トランプ政権が一方的に合意を離脱し経済制裁をかけたことによりイラン経済は大きなダメージを受け、政治面では欧米協調路線が弱まってきているようです。現在のバイデン新政権とイランのロウハニ大統領が6月の大統領選挙というタイムリミットがある中でどのように落としどころをつけるのか、目が離せない状況です。イランが反欧米路線を辿るのか、はたまた国際協調路線を辿るのか、今が一番重要な分かれ目ですね。

 

【ロシア×イラン】

ーイランとロシアの関わりについて知っている情報はなにかありますか?

イランとロシアは近代に入ってから何度も戦争を繰り返すなど大きなかかわりを持っています。昨今起きた紛争の当事国であるアルメニアやアゼルバイジャンを含むカフカ―スの多くの国はロシアが戦争によってイランから獲得したものです。また、現在ロシアとイランは対アメリカの利害が一致していることから軽い協力関係にありますが、互いが互いを心の底から信頼しているということはありません。またロシアのイランに対する文化面の影響では、ソ連に影響されてイラン国内でも革命前には大きな共産主義勢力が存在しました。 

 

ー2020年9月末からナゴルノ=カラバフを巡ってアルメニアとアゼルバイジャンが戦争をしていましたが、イランはどちら側の姿勢を示していたのでしょうか?

これは難しい問題で、歴史的にはアルメニアの方に支持があったのですが、近年のアゼルバイジャンの経済発展に伴う利益の面やイラン国内にかなり多くのアゼルバイジャン人がいることなどから、中立から若干アゼルバイジャン寄りの姿勢と言えるかもしれません。ただアルメニアに武器を輸出するという話もあるなど、どっちつかずな感じではありますね。

 

ーその地域の人の対露感情はどのようなものでしょうか?

一概には言えませんが歴史的な経緯からか、あまり良い感情を持っておらず、ロシア人は信用できないと考えている人が多いようです。帝政時代には他国とともにイラン国内のテヘラン近郊まで侵略をしに来て虐殺などを行っていました。レーニンの時代には不平等条約の撤廃など協調路線が取られ対露感情は良好だったのですが、スターリンの時代には再びソ連が侵略的な姿勢を取るようになるなど時代によってかなりばらつきがあります。そのせいもあって現在対米路線で一致してはいるものの信頼をし合っているわけではない、という状況になっていますね。

 

ーお付き合いいただきありがとうございました。最後に何か一言お願いします。

このようなインタビューは受験生が外大や、それぞれの地域に興味を持つうえでとても重要なので本当に良いものだと思います!また選んだ語科がイメージと違って後悔する、ということを防ぐうえでも大事なものだと思います!

 

ーありがとうございます。今回は貴重な、そして非常に含蓄に富んだお話を聞けてとても為になりました。また機会があればぜひいろいろなお話を伺いたいです。以上、ペルシア語科のあまねさんのインタビューでした。

 

 他にも、イランで撮影された写真をたくさんいただきました!

 

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以上、カーシャーン

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以上、エスファハン

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以上、ヤスド

 

文責:そーにゃ

(インタビュー実施日:2月27日)