東京外国語大学ロシアサークルЛЮБОВЬ(リュボーフィ)のブログ

「未知なる魅惑の国」であるロシアならではの文化から、留学や旅行のこと、東京外国語大学でのキャンパスライフのことまで。このブログでは、東京外国語大学のロシアが大好きな学生たちが様々なテーマに沿って日替わりで記事を書いていきます。ЛЮБОВЬ(リュボーフィ)とは、ロシア語で「愛」を意味します。

東京外大生にインタビュー!第18弾【ラオス語科編】〈前編〉

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ラオス語科 ラオ科の元店長さんへのインタビュー

 

Здравствуйте!国際社会学部3年のももです。他語科とのコラボ企画(アジア編)ということで、今回私はラオス語科の「ラオ科の元店長」さんにお話を伺いました!

 

「ラオ科の元店長」さんについて

東京外国語大学国際社会学部東南アジア第二地域ラオス語専攻3年。東南アジア地域研究ゼミに所属。趣味は漫画を読むことやアイドルの追っかけ など。外語祭でラオス語科の料理店の店長を務められました。1年生の春休みに外大の短期海外留学プログラムでラオスへ行かれたそうです。

 

ラオス語科について

ラオス語科には言語文化学部・国際社会学部合わせて10人前後の学生が所属しています。男子の数は毎年1~3人で、女子が多数を占めている学年が多いようです。語科の雰囲気は、学年によって異なりますが、「ラオ科の元店長」さんの学年は、程よい距離感で穏やかな人が多いそうです。

  

―外大に入った理由と、なぜ東南アジア地域のラオスを選んだのか、また学部はどうやって決めたのか教えてください。

元々声優になりたくて、その学校に通うためにはどうしても東京に来る必要があったんです。それで、国立しかダメで、英語が得意だったので、結構安易に外大って決めました(笑)。ラオスにした理由は、高校の地理の授業でラオスが出てきたときに、ほんとに直感なんですけど、多方面にまだ可能性が残ってる国だと感じたんです。後々考えると、ほかの東南アジアに比べて日本人の知名度が低いところやGDPが最も低くて開発が遅れているところ、日本企業や外国企業が比較的進出していないところなどに開発の余地があると感じたのかなって思います。

声優を志したのは中学くらいなんですけど、どうせなれないだろうってずっと悩んでたんです。でも高2の時に、一回チャレンジしないと絶対後悔するだろうなと思って、東京に行くことを決めました。だからまず東京に来ることを決めて、後から外大を決めた感じです。

また、言語それ自体ってよりは経済や文化方面への興味が強かったため国際社会学部にしました。

 

―実際に入ってみてのギャップなどはありましたか?

忙しいと聞いていたので、予習復習にかける時間とか課題の量とかはイメージ通りでした。ただ、言語漬けの生活を送ると思いきや、それは春と秋だけで、夏休みと春休みが結構長いんだなと思いました。その間何にもしなかったらラオス語もどんどん忘れるし。英語も1年の時にちょっとやっただけだからあんまりできなくなってて…。自分の言語力を高3の自分が見たらびっくりするだろうなというギャップはあります。

 

―語科の雰囲気を教えてください

私の学年は割と淡白で、行事の時はすごく盛り上がるのですが、プライベートで遊んだりはあまりないです。ただみんな穏やかで雰囲気はいいです。ラオス語科は、絶対ラオスじゃないといけないとか、これをやりたいと思って入った人が、大語科に比べて少ないかなと思います。なので緩い雰囲気はありますね。

 

 

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ラオスの民族衣装である巻きスカートの「シン」

―先輩との交流はありますか?

年に一回先生が開くラオス語のスピーチコンテストがあって、基本全員参加なので、そこで先輩や後輩と話したりはします。顔と名前が一致しないなんてことはないんですけど、めちゃめちゃ交流の場が設けられてるわけではないですね。みんな一人二人の仲いい先輩がいる感じです。

 

―ラオス語科に入ってよかったこと、逆に後悔したことを教えてください

正直なところ、よかったところはあまり見いだせていないです。2年生の途中で、何でラオス語やってるんだろうって思いました。ラオスで手に入る商品やテレビ番組はタイから買ったものがほとんどなので、ラオス人はタイ語がしゃべれるんですよ。あとラオス語の単語もタイ語と似てて、タイ語やっとけばよくない?って思っちゃいました。あと、大都市に住んでるのはほぼラオ族なんですけど、国全体で見るとラオ族の人口は6割か7割らしくて。ラオス語を使うのはラオ族だけなので、結局そんなに使われてないんですよ。公用語はラオス語なんですけど。

そういえばそれに関連して、小学校の授業をラオス語でやるからラオ族以外の子がついていけなくて離脱しちゃうという話をよく聞きます。進級試験の国語ができなくて、進級できないとか。ラオスは教育が充実していないため、そこが課題なんです。

語科の話に戻すと、たださっきも言ったとおり、語科の雰囲気はいいし、先生方も親身になってくれます。私のような学生も過去にいたみたいで、あまりラオスに興味がないというような悩みに対しても親身になって答えてくれます。

 

―言語の勉強はどのように進みますか?

一年の春学期は、文字・子音の持つ声調・声調記号や末子音による声調の変化をひたすら覚えます。(声調とは一種の高低アクセントのことで、同じ発音でも声の高さが上がる場合や下がる場合、平たんな場合など様々な種類があります。声調記号とはどの抑揚のパターンかを表す記号)

あとは初歩的な文法と、聴解と、会話の授業です。秋学期からは文法が一コマになって代わりに読解の授業になります。二年生から文法と聴解がなくなり翻訳・作文の授業が始まります。

 

―ラオス語にも声調があるんですね。

はい、中国語とほぼ一緒ですが、中国語より一つ多い5つの声調があります。子音が持つ声調はそれぞれ決まってるんですけど、声調記号がつくことによって声調が変わってくるのでそれを覚えるのがすごい大変でした。

 

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抑揚によって同じ「ムー」でも意味が異なる

 

―ロシア語では発音ってそこまで正確にしなくても通じたりするんですけど、ラオス語はかなり音声が重要な言語なんですね。

そうですね、声調によって意味が変わるので。一年生のときは聴解で発音と声調の聞き取りをひたすらやっていました。

 

―文法についても教えていただきたいです

ラオス語は格変化や動詞の活用が全くないんですよ。だから格変化とかを覚えなくていいのは楽なんですけど、逆に訳すのがとても難しくて…。動詞が活用しないので、例えば「買いに行く」という文だと「買う」と「行く」という動詞をただ並べてたりします。修飾語がどこに係るかも明確じゃなかったり、語順は決まってても動詞の場所が割と自由だったり。だから和訳のときに、この単語は前の目的語に係るのか?それとも両方動詞として訳すのか?といった判断が最初はかなり難しかったです。最近は感覚で訳しています。文法はあるんですけど感覚の部分が多いって感じです。去年まではそれが嫌できつかったんですけど、今年やっと綺麗にラオス語が訳せるようになってきたかなって思います。私は結構意訳を嫌う性格なので、機械的に訳していく方が楽なんですよ。そういう人にとっては最初は感覚を手に入れるのが大変かもしれないです。でも翻訳とか作文の演習を通してこういった感覚は養われていきます。

 

―ロシア語は文法がきっちりしているので真逆かもしれないですね。

はい、そうかもですね。でも東南アジアってそういう言語が多いのかなって気はします。文法がきっちりしてない分声調に厳しいっていうか。その点上手いことできてるのかもしれないですね。覚えることの多さって結局同じというか…。ラオス語は声調がめちゃめちゃ大変だけど、別に動詞は活用しないし。逆にロシア語とかはあんま発音とか気にしないっておっしゃってましたけど活用を覚えるのが大変ですよね。

 

―どの言語を選んでも何かしらの苦労はあるってことですね。ちなみにラオス語の文字が可愛いという話を聞いたことがあります。 

はい、一時はそれだけをモチベーションにしてました(笑)。絶対文字の一か所に丸が一か所あるし直線がないので可愛いんですよね。子音、母音、末につく子音があって文字の構造はハングルに近いですかね。ただ韓国語は規則があって、一文字一文字同じ大きさなんですけどラオス語はどこに母音がつくかがバラバラなので、最初はどこまでが一文字かわからなかったです。

 

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ラオス文字 どれも一文字だそうで、確かにわかりづらい…!

 

語科の卒業生はどのような進路に進む方が多いですか?また、ラオ科の元店長さんが将来やってみたい仕事や夢はありますか?

普通に就活して、一般企業に入られる方が多いです。報道関係にラオス語の通訳・翻訳枠がないこともないんですが、一度誰かが入ると次にその枠があくまで十数年~数十年かかるので、タイミングの問題だと聞いたことがあります。私は出版業界希望です。

 

―所属しているゼミと入った理由、勉強している内容を教えてください

東南アジア地域研究ゼミに所属しています。外大でやりたいことがはっきりしていなかったため、語科ゼミ (基本的にその地域専攻の学生のみが所属する、地域研究のゼミ)に入りました。ゼミ生の興味に沿って論文を読んで話し合ったり、ASEAN内の自分の専攻地域の立ち位置を考えたり、ということをしています。

 

―ラオ科の元店長さんが感じるゼミでの面白みは何ですか?

地域研究をして、当時の価値観や現状が見えてくるのが楽しいです。

 

―卒論ではどのような内容を書く予定ですか?

まだ具体的に決まっていないのですが、東南アジアのポップカルチャーについて書く予定です。

 

―最初にも話に上がりましたが、学生生活では部活動などよりも声優の学校に通うのがメインだったんでしょうか

はい、そうですね。部活動は、中学のとき陸上部に入っていて、どうしてももう一回陸上をやりたくなったので、期限を決めて陸上部に入りました。陸上を辞めてからは声優のほうにもう少し集中してって感じで過ごしていました。

 

―あんまりイメージが湧かないんですけど、声優の学校は時間が決まってて、自分で授業を取っていく感じなんですか?

そうです、夜間の週一のコースで、学生とか社会人とかが通っていました。でもそれだけじゃ少ないから、毎日自主練とかをしていました。私は別で、社会人の演劇団体にお稽古に参加させてもらっていて、そこでアクションとか演技とか、殺陣とかダンスとかをやっていました。なのでほぼ毎日そこに行きつつ、声優のほうは週一回決まった日に通っていました。

 

―では相当忙しかったんですね。学校行きながら語学の勉強って結構大変ですよね。

そうですね、忙しかったです。それでめちゃめちゃ単位を落とした時があって、一回やばくなりました。そこからは真面目に勉強したので大丈夫でしたけど(笑)。この夏色々オーディションに落ちて、普通に就活すると決めた時からが、コロナの影響もあって暇すぎたので、学生生活忙しかったなという感覚はもうあんまり残ってないです(笑)。

 

―でも打ち込めることがあったの羨ましいです。

今はもう声優を目指していなくて普通に就活してるんですけど、やって後悔とかは一切ないです。めっちゃ忙しくて単位落としたけど、そこに対する後悔とか、声優になれなかったから学校に通ってたお金とか時間とかが無駄だったみたいな後悔はほんとに全くないですね。やっていてよかったなとは思います。

 

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声優を目指して演劇活動をしていたとき

 

☆次回!ラオス語科後編!

-屋台!寺院!凱旋門!ラオス留学について!

-政治は社会主義だけど…?ラオスの今について!

 

文責:もも

(インタビュー実施日:2021年2月8日)

 

↓後編はこちら

tufs-russialove.hatenablog.com