東京外国語大学ロシアサークルЛЮБОВЬ(リュボーフィ)のブログ

「未知なる魅惑の国」であるロシアならではの文化から、留学や旅行のこと、東京外国語大学でのキャンパスライフのことまで。このブログでは、東京外国語大学のロシアが大好きな学生たちが様々なテーマに沿って日替わりで記事を書いていきます。ЛЮБОВЬ(リュボーフィ)とは、ロシア語で「愛」を意味します。

東京外大生にインタビュー!第14弾【ヒンディー語科編】〈後編〉

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ヒンディー語科 誤訳流通センターさんへのインタビュー

 

↓前編はこちらよりどうぞ

tufs-russialove.hatenablog.com

 

【インドについて】

―インドについて勉強する最初の一冊となるようなおすすめの本はありますか?

学術書でなければ『地球の歩き方 インド』(ダイアモンド社)、よりアカデミックな本なら長谷川明氏の『インド神話入門』(新潮社)がオススメです。

 

―音楽や絵画、文学、映画、アニメで有名なものはありますか?

やはりボリウッド映画でしょうか、アーミル・カーン主演の「きっと、うまくいく」などは有名どころかと思います。

 

―ボリウッド映画いいですよね!問答無用で明るい気持ちにさせてくれるので私も大好きです。ちなみにインドの著名人といえばどのような人がいますか?

上記のボリウッド映画に出演する美男美女の俳優女優達は有名で、他に日本絡みで知られている人物ではブッダとか、独立運動家のスバス・チャンドラ・ボースか、最近だとナレーンドラ・モーディー首相が有名ですね。

 

―近年のインドの政治・経済の状況を教えてください。

政治に関してはいつも問題だらけで、最近は農業法の改正に伴い、農民によるデモや一揆が話題です。コロナ禍でかなり被害が出て、感染者数は世界で2位になってしまいましたが最近落ち着いてきているようです。さらに、インドがいち早くワクチンを製造、接種開始をして近隣諸国へと無償提供しているニュースは記憶に新しく、国際社会上での影響力も経済もこれから育つ国であると思います。

 

【インド留学】

―それでは、留学のことをお聞きしたいと思います。誤訳さんがインドへ留学に行かれたのはいつの時期ですか?

2019年春休みにインドの首都デリーへショービジ(ショートビジット:外大と協定を結んでいる大学への短期留学)で訪れたのと、2019~2020年にタージマハルのあるアーグラーへ長期留学に行きました。長期留学は本当は10ヶ月ほど滞在する予定だったのですが、新型コロナウイルス感染拡大の影響でやむなく1,2ヶ月ほど期間を短くして帰国しました。


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―インドの気候ってとても暑くてジメジメしたイメージがありますが、実際はどうでしたか?

北インドは3月〜4月から気温が40度以上になるので、ショービジで行った2月はまだまだマシでしたね。長期留学に行った8月はインドの雨季だったので、常に蒸し暑く、蚊が多くて大変でした。ショービジで訪れたデリーの時よりもアーグラーでは滞在していた寮がボロかったので、エアコンもなくて扇風機だけで雨季のジメジメした時期を過ごして正直参りましたね(笑) 今思い返せばそれもいい思い出ですが、エアコンのありがたみを感じました。

 

―暑さも一つの洗礼ですね…。長期留学の際は、現地の大学に通っていらっしゃったんですか?

インドの文科省が管轄しているヒンディー語学校に通っていました。インド政府がヒンディー語を勉強している外国人向けに提供している奨学金をいただいて、現地の学校の寮に滞在していました。学校にはヒンディー語の先生志望のインド人の生徒もいました。北インド以外の地域から来た人が学校でヒンディー語を勉強して、各々の地域で先生になろうとしているのだと思います。ですから、そのような先生志望の生徒と外国からヒンディー語を勉強しに来ている生徒、二種類の学生のいる学校でした。

 

―なるほど…。普通の大学とまた少し異なる雰囲気がありそうですね。

そうですね。とにかくヒンディー語に打ち込めるのがこの学校のメリットだと思います。

 

―インドの風習について驚いたことはありましたか?

風習については、インドはお祭りが皆大好きらしく、爆竹や花火で楽しむディーワーリーや色粉をぶつけ合うホーリーなどのお祭りはパワーが凄くて圧倒されました。

 

誤訳さんも実際にそのお祭りに参加されたんですか?

僕は窓から見て雰囲気を味わうだけで止めておきましたけど、インドの人はお祭りがとても好きらしいんですよね。もちろん宗教的行事のお祭りもありますが、ディーワーリーやホーリーでは宗教やカースト身分は関係なくみんなで楽しもうといった雰囲気があります。ディーワーリーは「光の祭典」とも呼ばれています。夜に小さなろうそくを灯して、幸運の神や福の神を招くという行事です。みんなでお菓子を贈り合ったり、爆竹や花火を鳴らし合ったりします。

 

ディーワーリーについて(解説は英語ですが雰囲気はよく伝わります)

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ホーリーは、たしか昔の説話が元になっていて、春の訪れを祝うお祭りです。友人知人や知らない人も巻き込んで「ハッピー・ホーリー!」なんて言って顔に色粉をぶつけ合います。

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ホーリーの様子 出典:https://www.travelbook.co.jp/topic/15345

 

―破茶滅茶で楽しそうですね!インドの熱気が感じられますね。

では現地の人々の様子を教えてください。どのような人が住んでいますか?

インドの人々は世話焼きというか、人懐っこい人が多い印象です。アーグラーのあるウッタル・プラデーシュ州は決して治安がいいとは言えませんが、寮の近辺や市街地はそこそこ安全です。デリーやムンバイのように、ある程度なら英語が通じる場所なら日本人でも住めそうですが、片田舎のアーグラーはなかなか難易度が高いです…。

 

―誤訳さんは現地で何かトラブルに巻き込まれる経験はありませんでしたか?

僕自身はスリや暴力沙汰に合うこともなかったので恵まれていました。

ただ、僕がインドに行っていた時期はインドの情勢がちょうど揺れていたときだったので、少し不安はありました。初めてショービジに行ったときはパキスタンとの間で激しい争いが起こっていて、長期留学の間もインドのカシミール強制併合が原因で、宗教対立のあるところで警察が頻繁に動いていたり、移民法改正による抗議デモが多発していたり、コロナが世界的に流行り始めたり…と本当に何度もいろんなことが起こって、日本大使館から緊急メールが来るような事態がたくさんありました。僕の住んでいた地域(ウッタル・プラデーシュ州)はデリーやムンバイの都市部とはまた違って、超巨大な田舎なんですね。確かにレイプや殺人など凶悪な事件が多くて治安面では良いとは言えないのですが、まあ僕の住んでいたアーグラーはタージマハルがあるおかげでまだマシだったと思います。    

 

―そうでしたか…。防犯意識が鍛えられそうですね。ちなみに現地で印象に残ったことはありますか?

ベタですが、いろんな人の価値観や文化に触れることができたのがとても良かったと思います。インド文化に触れたというのはもちろんそうなんですが、とくに思い出深いのは寮でのことですね。外国人寮で僕はタイ出身の学生と一緒に同居していました。あとは韓国やバングラデシュ出身の人たちもいました。寮ではある程度協調して生活しなければいけないので、多文化共生を間近に体験できて、価値観を少しアップデートできたと思います。

 

―インド留学に行きたいと思っている人へ向けて、誤訳さんからアドバイスはありますか?

そうですね、「インド留学は慣れと忍耐が全て」ってことですかね。インドの生活に耐えられず、1,2週間で帰ってしまったヨーロッパの学生も見ました。でも「忍耐」ってずるい言葉じゃないですか。我慢しろとか、他人から言われるととてもずるい使われ方をしますよね。それでも、ある程度自分の中で定まった目標だったり、その環境に飛び込んで溶け込める力を持っていれば、もしかしたらインド留学はハマる人にはハマるし、もちろんそうじゃない人もいるかもしれませんが、ハマる人にとっては何にも代えがたいすっごく楽しい経験になると思います。

 

―インドって日本とあまりにも文化が違いますし、その違いを受け入れて自分から楽しんでやる!くらいの心構えというかスタンスを持つことは大事かもしれませんね。誤訳さんは現地で比較的うまく適応されたのでしょうか?

いやあ、僕も苦労しましたよ。本当にいろんなバックグラウンドを持つ人たちが集まる環境だったので、全体としての「和」というのはいついかなる時もなかなか形成されなくて…他国から来た学生の言動がなかなか理解できず、悶々としたこともたしかにありました(笑) 時には迷惑をかけ合い、時には助け合い…というような関係でした。

 

―本当に貴重な経験ですね。

ところで、誤訳さんは現地での食事はどうしていたんですか?

寮で提供されていたご飯もありました。定番は芋のカレーとナンですね。味が薄いのでスパイスをケチってるのかなあなんて思いましたが(笑) 他にも、屋台で買ったりレストランで外食したりすることもありましたよ。

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インド人の定番スナック「パニプリ」

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カレーソースのかかったコロッケ「アールー・ティッキー」

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タンドリーチキン、蒸し餃子「モモ」、インド風中華焼きそば

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現地のバーガーキングにて マトン(羊)の肉を使ったハンバーガー

―美味しそうなものがたくさんあっていいですね!でも腹痛は覚悟していかなきゃですね(笑)

 

【ロシアとインド】

―ここからは、誤訳さんが研究されているインドと私の専攻しているロシアとの関わりについて考えていきたいと思います。

そういえばBRICSという言葉はもうあんまり聞かなくなりましたよね。国力としては中国がズバ抜けてしまいましたし。

 

―確かにそうですね(笑) 国際関係ではインドとロシアは反中国として共通しているという面がありますよね。

インドはやっぱりカシミール問題で国境を接している中国とも張り合うことが多いので、インド、パキスタン、中国はいつも三つ巴の戦い状態になってます。僕の留学時期以降、顕著だったのは、おそらくコロナウイルスの不安もあってか、インドでTik Tokなどの中華製アプリが禁止になったり、中国製品の打ちこわしが始まったりということが起きました。ですから今はかなり反中感情が厳しい状態だと思います。

一方で、インドのロシアに対する感情は友好的とも敵対的とも取れず…あんまりピンときませんね。全く接点がないわけではありませんが。特に以前は、政治指導者ネルーが親ソ連派の経済政策をとっていたので、立場や人によっては思うことはあるかもしれないですけど。

 

―なるほど…。ロシアとしては、例えば武器の輸出に関してインドはとても重要な相手国だと思います。

そうですよね。インド軍はロシアからミグやスホーイなどの戦闘機を購入しているんですよね。あと、リゾート地のゴアには毎年ロシア人の観光客が沢山来るらしく、街にはロシア語で書かれたレストランやバーの看板もあったりします。

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ゴアにあるチベット料理のレストランの看板 英語とロシア語でメニューが書かれている

ゴアを歩いていたら、お店の人が「プリヴィエート」(ロシア語でこんにちは)と声をかけてきたりもしました。「僕のどこがロシア人だろう」と思いましたが(笑) あと、ニューデリーの日本食レストランに入った時にも、他のテーブルからロシア語が聞こえてきて、「なんで彼らはインドに来て日本料理を食ってるんだろう」なんて色々考えてしまいましたが、小さい男の子に「ヴィー ルースキエ?」(君たちはロシア人なの?)と聞くと、「ダー」(そうだよ)と答えてくれました。そのあと、ロシア人家族に僕が大学でロシア語をちょっと勉強していることをなんとかロシア語で伝えたりして、会話を楽しみました。

 

―すごいですね!それは留学に行かれた誤訳さんならではの経験ですね。

そうなんです。先ほどお話した、僕が住んでいた寮にもウズベキスタンやウクライナから来ていた人もいました。ウズベキスタンの女性がウズベキスタン料理のディムラマとロシア料理のピロシキを作ってくれたこともありました。

 

―私もインドとロシアのつながりについて、少し調べたのですが、現在よりはソ連の時代に遡ると色々と見えてきそうですね。

そうかもしれませんね。実は外大図書館には、ロシア語とインド諸言語の辞書がものすごい数あるんですよ。ソ連のアカデミーが出版したものなのですが、さすがソ連ですよね。

 

―それは知らなかったです!その辞書を揃えている外大もすごいですね(笑)

あと、ソ連でインド映画が流行っていたっていう記事を読みました。それこそ社会主義を学ぶためにインドのエリートがソ連に留学して、その際にもらたされたインド映画が一部の界隈で爆発的に人気になったそうです。

そうでしたか!へえ〜、たしかにインド映画って惹きつけるものがありますよね。誰が字幕をつけてるんだろう…。

 

―ロシアってあまり字幕の文化が馴染んでいなくて、外国映画は基本吹き替えなんですよね。だからおそらくインド映画もロシア語に吹き替えられて上映されているんだと思います。ラージ・カプールの出演していた「放浪者」という映画なんかは特に大ヒットしたそうです。

へえ〜、そうですか。地理的には距離が離れているので多くはありませんが、インドとロシアの繋がりも探せば意外と見つかりますね。

 

―そうですね。私ももっとインドについて知りたくなりました!

最後に、外大を目指している高校生やこれから外国語を勉強したいと思っている人に向けて、誤訳さんから何かメッセージを頂いてもいいですか?

「新しいことにチャレンジしてみよう」「新しい世界に飛び込んでみよう」ということに尽きますね。新型コロナのパンデミック後は様々な分野で変化が起きていて、ニューノーマルな世界なんて言われるように、なかなか外国へ行きにくい状況ではありますが、いつかまた海外へ往来できるようになる日が来るはずです。僕も今までインドのことを全然知らずに飛び込んだけれども、こんなに楽しかったですし、全く後悔はありません。もし仮に自分の選んだ専攻語でくじけて嫌だなって思うことがあったとしても、違う地域に行ってみたり、違う言語を学んでみたりすると、自分に合うものが見つかるかもしれないので、なんでも恐れずに飛び込んでみようということを伝えたいです。

 

―経験に裏付けされた重みのある言葉ですね。誤訳さん、今日は本当にありがとうございました!

いえいえ、僕もまだまだ未熟ですが頑張ります。こちらこそありがとうございました!

 

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ガンジス川上流

文責:りお

(インタビュー実施日:2021年2月11日)