東京外国語大学ロシアサークルЛЮБОВЬ(リュボーフィ)のブログ

「未知なる魅惑の国」であるロシアならではの文化から、留学や旅行のこと、東京外国語大学でのキャンパスライフのことまで。このブログでは、東京外国語大学のロシアが大好きな学生たちが様々なテーマに沿って日替わりで記事を書いていきます。ЛЮБОВЬ(リュボーフィ)とは、ロシア語で「愛」を意味します。

トルストイに脱帽!『カフカースのとりこ』

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Здравствуйте (ズドラーストヴィチェ)! こんにちは!

ロシア専攻3年の芝元です。

 

つい先日、一緒に暮らしているおばあちゃんから「コンビニで売ってるこれ美味しかったからあなたの分も買ってきたよ〜」と言われました。

 

貰ったのは、な、なんとジョージア料理のシュクメルリ。

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「これ!ジョージア料理だよ!」と言うと「へぇ〜、ジョージアの!知らなかった!」といった反応が返ってきました。

 

ジョージア料理が私達にとって身近な料理となる日はそう遠く無いような予感。

 

また、以前「スッキリ」を見ていた時もジョージアが特集されていたり、SNSで駐日ジョージア大使の方の投稿が結構な頻度で回ってくるようになったりしていて「ジョージアが流行ってきている!」と感じています。

 

そんな巷で噂のジョージアは「コーカサス(カフカース)」と呼ばれる地方に存在し、アゼルバイジャンアルメニアと共に「コーカサス三国」とも言われています。

 

コーカサス(カフカース)には豊かな自然や美味しいご飯、美しい建物などの魅力がたくさん詰まっています。そのため、コーカサス(カフカース)の「とりこ」だという人は多いと思います。実際に、大学の知り合いでコーカサス(カフカース)好きはいっぱいいます。

 

ここで問題です!(唐突)
みんな大好きコーカサス(カフカース)ですが、そこで1851年から1854年まで砲兵下士官として従軍していた超有名なロシアの作家は誰だか知っていますか?

 

…正解はトルストイです!

 

ちなみにトルストイは12月25.26.27日にコンツェルトさんが行う本公演『生ける屍』の作者ですね✨

 

そこで本日はトルストイの中短編集カフカースのとりこ』(青木明子さん訳、ナターリヤ・チャルーシナさん挿絵)について書いていこうと思います!

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この小説は合計で15本の短編・中編小説から成っています。

 

具体的には「ロシアの農村のくらしや動植物の不思議な力を驚きの目をもって見つめた短編」と「カフカース(コーカサス)での従軍体験をもとに書かれた中編」と裏表紙に記載されています。

 

いかんせん中短編集(しかも最も短いお話はなんと2ページ!)なので、内容にはあまり触れず、全てのお話を読んで私が感じたトルストイの特徴について述べさせていただきたいと思います。

 

※ちなみにトルストイの作品を読むのはこれが初めてです。ご理解のほどよろしくお願いします!

 

①超優れた観察眼

どのお話も描写がびっっっっくりするほど細かくてトルストイの物の捉え方の凄さが伝わってきました。

例えば1番目のお話「ブーリカとミリトン(ある士官の話)」では初めに小型猟犬(モルダーシュカ)のブーリカについて説明があります。

 

モルダーシュカという犬は、たいてい上あごより下あごのほうが長く、上の歯が下の歯に隠れるものだが、ブーリカの場合は下あごが極端に突き出ていて、上と下の歯の間に指が一本入るほどだった。顔の幅が広く、大きな黒い目がキラキラ光り、白い歯と牙をいつもむきだしにしていたので、黒人の顔に似ていた。おとなしくて、人を咬むことはなかったが、とても力が強く、いったん食いついたらけっして放さない。何かに飛びかかると、歯ではさんで締めつけて、ぼろきれのようにぶら下がったものだ。そうなるともう、ダニのようで、どうやっても引き離せなかった。(9,10ページより引用)

 

とにかく凄くないですか!?これを読んだ途端、私の頭の中にとてもはっきりとした輪郭のブーリカが現れました。しかも、静止画でなく、動き回っているブーリカが。

 

恐るべしトルストイ

 

それに加えて、ワードセンスがさすがだなと思いました。私だったら引っ付いていることをわかりやすく表すのに「ダニのように」なんて言い方は思いつきません。

恐るべしトルストイ。(2回目)
並外れた観察眼を持っているからこそ、出来る技なのでしょう。

 

このように、どのお話でもトルストイのユニークで美しい表現であらゆるものが描写されていて、文章を読むのがとても楽しかったです。

 

さらに、モノの説明のために結構な頻度で数字が使われており、トルストイの観察力の高さが伝わってきました。

 

例えば「チェリョームハ」というお話に

 

このチェリョームハは低木ではなく、幹の直径が十五センチ近くあり、高さが八メートル以上もある高木だった。(36ページより引用)

 

という描写があります。

 

他にも、40ページから始まる「蚕を飼う」というお話の中で以下の文章があります。

 

卵は濃い灰色で、とても小さく、その四グラムほどのなかに、数えてみると、五八三五粒あった。(40ページより引用)

 

これらのような、数字を用いた詳細な描写がいくつも出てきます。
このことからもトルストイが並外れた観察眼を持っていたことが伺えます。

 

恐るべしトルストイ。(3回目)

 

②「生」と「死」

この小説は、動物や植物にフォーカスしたお話が多いのですが、その中でトルストイがそれらの「生」や「死」に着眼した描写が沢山あるように感じました。

 

これはトルストイが生きた時代背景や、歩んできた道に影響を受けているのでしょうか。

 

トルストイについて詳しく調べたことがないので、理由はわかりませんが、今度調べてみたいです。

 

長々と書いてしまいましたが、以上が『カフカースのとりこ』を読んで個人的に思ったトルストイの特徴です。

 

この機会にもっともっとトルストイを読みたい!と思いました✨

 

みなさんもぜひトルストイの文章を読んでみてはいかがでしょうか。

 

また、12月のコンツェルトさんの本公演もぜひ観に行ってみてください☺️

 

それでは!Пока (パカー)!

 

文責:芝元さや香

 

【参考文献】
トルストイ, 青木明子訳, ナターリヤ・チャルーシナ絵 (2009)『カフカースのとりこ』群像社

 

◆コンツェルト本公演「生ける屍」について◆
ロシア語劇団コンツェルトは創立50周年を迎える歴史ある演劇サークルで、早稲田大学東京外国語大学お茶の水女子大学等様々な大学の学生が集まって構成されています。普段は早稲田大学戸山キャンパスで週2,3回のペースでお稽古をしているそうです。

記念すべき50回目の今年の本公演ではトルストイ原作『生ける屍 «Живой Труп»』を上演されます。ぜひあなたも足を運んで、ロシア語劇の魅力を堪能してくださいね!(席数の残りわずかだそうですので、お早めに!)

●日程:12月25日(金)〜27日(日)

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