ロシア語劇団コンツェルト団員インタビュー【三輪さん編】
Здравствуйте (ズドラーストヴィチェ)!こんにちは!
東京外国語大学ロシア専攻3年の芝元です!
リュボーフィは、12月25日(金), 26日(土), 27(日)にトルストイ原作の『生ける屍』を上演するロシア語劇団コンツェルトを応援しよう!ということで、今月コンツェルトさんとのコラボ企画を絶賛実施中です。このコラボでは12月の本公演の魅力を皆さんにお伝えしたいと思います。
今回、私は早稲田大学1年の三輪さんにインタビューをさせていただきました。
三輪さんとはインタビューで初めてお話をさせていただいたのですが、とても魅力的で素敵な方でした!この記事にはそんな三輪さんの良さが詰まっていると思うので、ぜひ最後までお読みください!
【三輪さんについて】
早稲田大学法学部の1年生で、今年の春にロシア語劇団コンツェルトに入団。今年の12月の本公演『生ける屍』では主人公のフェージャを演じます。高校では文芸部に所属しており、演劇はコンツェルトに入団してから始めたそうです。
-初めまして!今日はよろしくお願いします!では早速ですが、ロシアに興味を持ったきっかけを教えてください。
とあるアニメでロシア民謡の「カチューシャ」という曲がかかっている時があって、それを聞いて、歌えるようになるうちに興味を持ちました。
-なるほど!法学部でロシアに興味があるとなると、ロシア語を第二外国語として学んでいるのですか。
そうですね。文法の授業が週に2回でネイティブの授業が週に1回あります。この前の授業では形容詞の短語尾を学びました。
-法学部でロシア語選択というのは珍しいですか。
珍しいですね。早稲田大学では第二外国語によってクラスが作られるのですが、中国語とかはクラスが9つあるって聞きますけど、ロシア語は1つしかないです。
-そうなんですか!ところで、今回の作品『生ける屍』は「裁判」がキーポイントになってくると耳にしたことがあり、法律の知識が役に立つのではないかなと思ったんですけど、実際のところはどうですか。
ぎりぎりネタバレにならないラインで話すと、この作品では結婚制度とか離婚の話の中で裁判が起きるんですね。現代の家族法の知識と当時のロシアの家族,結婚,離婚の法律が全然違ったりして、そこの比較も出来て面白いです。
-法律を学んでいるからこそ、また違った楽しみ方が出来ていいですね!
-次にロシア語劇団コンツェルトに入団した理由を教えてください。
Twitterの新歓の情報を見てコンツェルトを知りました。確か4月の末に、新歓公演をYouTube Liveでやられていたんですね。それを見させていただいたのですが、その時の演出のセンスがあまりにも刺さってしまって、「これ入るしかないわ」って思いました。
-そうだったんですね!では次に、コンツェルトでの役職を教えていただきたいです!
コンツェルトでは役者をやらせていただいております。今回の本公演では、主演をやらせていただきます。
-主人公を演じることが決まった時の心境を教えてください。
求められている答えと違うかもしれませんが、一番は「やっぱりな」と思いました。今回、公演で『生ける屍』をやるということがキャスト発表の前に決まっていたんですね。なので、作品が決まってからワークショップを何回かやって配役決定に至るっていう流れでした。そのワークショップの中で自分も何役かやらせていただきましたが、一番やり易かったのが主人公のフェージャ(フョードル・ワシーリエヴィチ・プロターソフ)だったので、ここらへんになるんだろうな、と思っていました。
-それは何だか運命的ですね。フェージャのこういうところ良いな、嫌だなっていうのはありますか。
嫌だなって思うけど、そこが良いっていうのはありますね。憎めないやつなんですよ。フェージャは色々な悪い人間と関わっていって、そのコミュニティに良くも悪くも溶け込んじゃうんですよね。本当であればそんなところにいるはずの人間じゃないのに、その場所でしか生きられないと思ってしまうフェージャがある意味可愛いなって思いますね。生きもがいてるなって。
-フェージャがどうなってしまうのかとても気になります…!
-また、実は今回主演を務められる三輪さんの魅力を知りたくて、練習風景の動画を拝見させていただいたのですが、本当にびっくりしました。狂気じみてる感じがめちゃくちゃ出ていて、数分の動画を見ただけなのにとてもゾワッとしました。表情の作り方とか臨場感が溢れる感じが凄いと思ったのですが、そのためになにか工夫をしていることはありますか。
自分が狂気じみた演技をする時に気を付けているのは「呼吸」ですかね。呼吸を意図的に速くして、過呼吸の手前みたいな状態にして演技しています。映像でわかるかはわからないんですけど、芝元さんがご覧になった動画で演じていたシーンでは凄い過呼吸になって顔が真っ赤になっちゃったんですよね。
-す、凄い!家ではどのように「狂気」を出す練習をしているんですか。
目をかっぴらいたりする練習をしています。他の団員の皆さんは狂気とは程遠い優しい方が多いので、そういうところだったら自分も戦えるのかなと思って、そこは磨くようにしてます。
-流石です。狂気じみている役って結構難しいと思うのですが、感情移入はどのようにやられていますか。
まずは脚本を頂いて、演出家さんと色々とお話をして、どういった人物なのかしっかりと理解したうえで、あとはもう自己暗示ですね。目をつぶって「自分はそういうキャラクターだ」って思ったり、唱えたりしながら、自分の中にもう1人自分を作るみたいなことをします。
-凄くかっこいいですね!ところで、練習していてどこが難しいですか。
まず練習をする前に自分で脚本を読んで、その部分を1人で練習してから劇団の練習に行くんですけれども、自分と演出家さんの間に解釈の違いというものがあるんですね。「この場面でフェージャはこういう感情を持っているはずだ」と思って稽古に行って、「それちょっと違う」って言われると直すのが難しいです。
-解釈が違う時は演出家さんの指示に従うのが主ですか?
そうですね。演出家は神様なのであらがうことは許されません!
-名言ですね!
-次に、コンツェルトの公演で最も思い出深い演目を教えていただきたいです。
7月の終わり頃に新入生公演でやらせていただいたチェーホフの「タバコの害について」という作品がやっぱり思い出深いです。自分が出演したというのも一つなんですけど、実は「タバコの害について」は1人の人間を4人で演じるっていう作品だったんですね。つまり、4人1役っていう。その特殊な状況で演技をして演劇を作っていくというのはなかなか思い出深かったです。
-それはユニークですね!その「タバコの害について」が1作目で、今回が2作目の出演作品だと思うのですが、自分の中の心の変化といいますか、何か違いはありますか。
1作目はzoom上での演劇だったのですが、zoomって胸から上しか映らないじゃないですか。だから、やっぱり実際の舞台に立って演技をするってなると、身体全体の演技が要求されてくるので、例えばzoomだと手や足をブラブラさせていても大丈夫ですが、そこら辺の甘えが通用しないと思うと気を引き締めなきゃなと思うようになりました。
-なるほど!1年のうちからオンラインとオフライン、どちらも経験できるというのは貴重ですね。
-『生ける屍』の三輪さんだけが知っている見どころを教えてください。
私だけが知っているかどうかはちょっとわからないんですけれども、私が演じるフェージャというキャラクターは言ってしまえば、家庭を捨てて放蕩の限りを尽くす、今風に言えばダメ夫なんですけれども、ダメ夫はダメ夫なりの心の中の葛藤がありまして、その葛藤を抱えながら色々な悪い人間のコミュニティに入っていくんですね。そこで自分の内面からも崩れていって、外面からも崩されていきます。なんというか趣味は悪いですが、人の壊れていく過程を生々しく観るっていうのが見どころかなと思います。
-なんだか現代社会を生きる私達にも通じるものがありそうですね。
-話が変わりますが、好きなロシア文学についてお聞かせください。
あまりロシア文学を沢山読んでいたわけではないので、有名どころになってしまうのですがドストエフスキーの『罪と罰』が好きですね。
-『罪と罰』ですか!難しいとよく聞くのでまだ手を出せていません。
確かに簡単では無かったです。今回の『生ける屍』を書いたのはトルストイですが、『罪と罰』を書いたドストエフスキーは割と民衆を主人公や登場人物においた作品が多いので、ロシア貴族社会を想像するよりは民衆社会を想像するほうがとっつきやすいのではないかなと思うのでお勧めです。
-わかりました。今度読んでみたいと思います。
-次に、もしよろしければロシアサークルのブログ記事で最も面白いと思ったものを教えてください。
『可愛い女』についての記事が面白かったです。
嬉しくて悲しくて愛しい物語『可愛い女』 - 東京外国語大学ロシアサークルЛЮБОВЬ(リュボーフィ)のブログ
特に妄想パートの部分が面白くて、結構大きな声で笑いながら読ませていただきました。それと、この記事を読んでいて、主人公のオーレニカと役者は似ているところがあるなと思いました。オーレニカって夫に合わせて自分の趣向とか主張が変わるキャラクターじゃないですか。それってある意味その時々に求められている人になりきる、つまり全く別の人間になるっていうのは役者のやっていることと似ているのかなと思いながら読ませていただきました。
-えええ、嬉しいです。役者視点の感想は貴重すぎます。ありがとうございます!
-最後にインタビュー記事を読んでくだっている方々にメッセージをお願いします。
インタビューを読んでくださり、みなさま誠にありがとうございます。今回私たちが行う本公演『生ける屍』はロシアのことを全く知らない方から「ロシア大好き!」という方まで幅広く楽しめる内容となっております。私が言うのはなんですが、色々な要素が詰まっていてかなり面白いものになるかなと思っております。団員一同みなさまに楽しんでいただけるよう、全力で準備しておりますので、ぜひお越しください。また、この機会を設けてくださったリュボーフィさんのこともどうぞよろしくお願いいたします。
三輪さん本当にありがとうございました!作品を観るのがとても楽しみになりました!
12月の公演が成功することを心から祈っております!
文責:芝元さや香
(インタビュー実施日:2020年11月4日)
ロシア語劇団コンツェルトは創立50周年を迎える歴史ある演劇サークルで、早稲田大学、東京外国語大学、お茶の水女子大学等様々な大学の学生が集まって構成されています。普段は早稲田大学戸山キャンパスで週2,3回のペースでお稽古をしているそうです。
記念すべき50回目の今年の本公演ではトルストイ原作『生ける屍 «Живой Труп»』を上演されます。ぜひあなたも足を運んで、ロシア語劇の魅力を堪能してくださいね!
●日程:12月25日(金)〜27日(日)
公式HPやSNSでも日々のお稽古の様子や公演情報を掲載されています!要チェック!
コンツェルト公式HP:https://www.kontsert.jp
Twitter:https://twitter.com/theatrekontsert