東京外国語大学ロシアサークルЛЮБОВЬ(リュボーフィ)のブログ

「未知なる魅惑の国」であるロシアならではの文化から、留学や旅行のこと、東京外国語大学でのキャンパスライフのことまで。このブログでは、東京外国語大学のロシアが大好きな学生たちが様々なテーマに沿って日替わりで記事を書いていきます。ЛЮБОВЬ(リュボーフィ)とは、ロシア語で「愛」を意味します。

東京外大生にインタビュー!第9弾【英語科編】〈後編〉

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英語科たっちゃんさんへのインタビュー

 

↓インタビュー前編はこちらよりどうぞ

tufs-russialove.hatenablog.com

 

【カナダ留学】

たっちゃんさんは留学に行かれたことはありますか?また、どこの大学に行きましたか?

カナダのサスカチュワン州にあるレジャイナ大学に2年生の秋から1年間留学していました。現地のTheatre Department(演劇学部)に所属し、演劇を専攻していました。

 

(多くの外大生は3年次のタイミングで留学に行くため)2年で留学に行くのはかなり珍しいことかと思いますが、よく決断されましたね。なぜこのタイミングだったのでしょうか?

そうですね。外大には3年生から国家公務員を目指す人向けの外交官プログラムというものがあるんです。僕の場合は、それに3年生になってから参加するという理由で、2年生から行かせてもらいました。結局のところ帰国してからすぐこのプログラムに入ったわけではなかったのですが、その後参加して今に至るという感じです。

 

たっちゃんさんは北西ヨーロッパ地域専攻ですが、カナダの大学に行かれたんですね。ご自身の選考地域の大学を選ばなかったのは何か理由があったんですか?

もちろんイギリスの大学にも行きたかったのですが、派遣留学の選考の結果そのような流れになりました。ただ、長期留学後にロンドン大学のサマースクールにも参加することができたのでよかったと思います。

 

英語科の学生の中には自分の専攻地域以外の地域に留学する方も多いんですか?

そうですね、多いと思いますよ。

 

たっちゃんさんの留学は、語学留学(言語習得を目的とした留学形態)だったのですか?

いえ、語学留学ではなく、英語で自分の学びたいことを勉強する「学部生」として留学するという形で行きました。派遣留学で英語圏の大学に行くとなると、基本的には学部生として留学することになると思います。

 

留学先では寮で生活されていたんですか?生活の上で困ったことなどはありましたか?

そうです、寮に住んでいました。生活で困ったことは特にありませんでしたね。なぜかというと、これは日本にはほとんどありませんが、大学の寮に住んでる人が大学の中で生活が完結するような作りになっているんです。特にカナダでは、冬場はとても寒いので多くの人はあまり外に出ないんですよ。大学の中に大きなジムがあるし、カフェや軽食屋などの飲食店も10個ほどあったし、そういう意味で困ることはほとんどありませんでした。ただ、クリスマスになると営業が全てストップするんですよね。僕は幸いにもクリスマスパーティーに呼んでもらったので生き延びたのですが。

 

それは面白いですね!大学のキャンパス内で全ての生活ができるなんて憧れます。

 

現地での思い出深いエピソードがあれば教えてください!

現地の友達がたくさんできたことや演劇の経験はもちろんそうなんですが、気温が−45度まで下がったのはびっくりしました。僕も外に出てみたんですが、寒すぎて死にそうになったのですぐに部屋に戻りました。

 

たっちゃんさんは留学中に旅行などには行きましたか?

行きましたよ。僕の大学のあるサスカチュワン州の隣にアルバータ州という大きな州があって、山がちなところなのですが、2月頃に友達と車を借りてスキーをしに行きました。

 

カナダでスキーなんて最高ですね!

そうですね、最高でした。

 

現地の人々はどのような様子でしたか?カナダは多種多様の民族が暮らす国というイメージが勝手にありますが。

私のいた地域は、ファーストネイション(原住民)の数がカナダの中でも多く、中国、韓国など東アジア系やインド、パキスタンバングラデシュなど旧英連邦の南アジア系などがマイノリティの大多数を占めています。また、ウクライナ系の移民の子孫も多いです。ですから、ロシアに絡めて言うと彼らの対露感情はあまり良いとは言えないかもしれません。

(注:ウクライナとロシアは近年クリミア問題などにより対立が続いている。)

大学のそばにカナダで最も治安の悪い地域があり、原住民系のギャング集団がいました。カナダは多文化に寛容なイメージがありましたが、必ずしも理想的な社会ではないと気づき、自分の多文化に対する考えを深めることができました。

 

なるほど…。現地に行ったからこそ気づくこともたくさんありますよね。

 

ところで、石堂さんが訪れた地域の音楽や映画等で有名なものはありますか?

北米という意味では、私はヒップホップやジャズなどの音楽が好きです。またハリウッド映画も好きです。有名人ではジャスティンビーバー、アヴリル・ラヴィーン、ドレイク、セリーヌディオンなど、エンタメが強いですね。

 

【演劇との出会い】

それでは、先程からちらちらと話に上がっている演劇についてお聞きしたいのですが、たっちゃんさんはどのような経緯で演劇を始めたのですか?

留学先で何か新しいことを始めたいと思っていたときに、大学に演劇学部があって演劇のクラスが開講されていることを知り興味を持ったので、そこの学部に入って授業を受けることにしました。学部では、一年に一回ショーケース(公演)をやるんですよ。毎回オーディションがあって人が選ばれる仕組みになっていて、通常は前の学期にオーディションをして公演をやるんですが、たまたま僕が留学していた学期にキャストの欠員が出て人を探しているという話があったんです。それで半ばスカウトのような形でキャストに入れていただき、初めて出演しました。その次は正式にオーディションに参加し、計2回公演に出演しました。

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そんなに本格的なんですね!たっちゃんさんは役者専門なんですか?

そうです。語劇(外大の文化祭「外語祭」で二年生が専攻語で行う劇)では、脚本や演出もみんなで協力して作っていくと思うのですが、僕の所属していた演劇学部は半ばプロ養成コースのような感じで将来の職業とも密接に結びつくので、ショーケースのディレクターはプロの方が行います。衣装や小道具などもプロの方です。そこに学生がアシスタントという形で参加することもありますが。ですから、学問として演劇を学びつつ、実地経験を積みながらプロを養成するコースという感じなんですね。

北米の総合大学にはかなり幅広い分野の学部があって、特に芸術系は多いですね。ビジュアルアート(絵画、彫刻、版画、写真などの芸術)や映画製作など、幅広いジャンルに富んでいます。

 

役者として舞台の上に立つ感覚ってどんな感じなんでしょう?

僕は役者を始める前は台本を触ったことすらなくて演劇に関する何も知識がなかったんですが、演劇が僕自身にとても合っていたと思う部分もあります。舞台に立つ前にすごく緊張する人が多いのですが、僕は全く逆で、ステージに立つことが本当に楽しかったんです。本番の前は監督に怒鳴られたりとか、下準備は色々と大変なんですけど、それすらも僕は楽しめたなと思います。

 

素晴らしいですね!お話を聞いていて私もワクワクしてしまいました。

実は、留学して1年目の頃は思い切って演劇の道で生きていくことも考えたこともあったんです。でもそれは年を取ってからでもできることだと割り切って、演劇で学んだスキルを別の形で生かそうと思い、高校生の頃から興味があった国家公務員の道を選びました。

 

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カナダでスタンドアップコメディに挑戦

【イギリスとロシアの関係など】

たっちゃんさんの専攻地域であるイギリスと、私の専攻するロシアとの関わりについてご存知のことがあればお聞きしたいです。

そうですね、昔は皇室同士の交流などはありましたが、それ以降は世界大戦時も冷戦時も敵同士なので、親密な関係を目指しているというよりは敵対する中でどう関係を築いていくかという問題がありますよね。特に冷戦時代はイギリスがソ連の亡命スパイをかくまうなど、諜報合戦がありました。現在では、ロシアは国際社会の安全保障上の脅威であるのは間違いありません。国際関係的な話をすると、イギリスなど西ヨーロッパの国は、離れているロシアよりもむしろ西側と東側の板挟みになっているハンガリーポーランドとの関係に気を遣っていると思います。ロシアはどちらかというと中国との関係に敏感ですよね。ロシアの場合、中国に対して同じ側にいそうでいないというような微妙な関係にあると思います。

 

ほうほう… 私は国際関係に疎いのでとても勉強になります。

 

ロシアの民族紛争といえばチェチェン紛争ですが、これについて国際関係を学ばれているたっちゃんさんの立場から何か感じることはありますか?

(注:チェチェン紛争とはロシア連邦内のチェチェン共和国に暮らすイスラーム系民族チェチェンロシア連邦からの分離独立を目指す紛争のこと。)

僕がチェチェン紛争について多く知っているわけではありませんが、ロシア側からすれば対イスラームテロ紛争ですよね。一方でチェチェン人からすれば対帝国主義と言いますか、自分たちの文化や主権を守りたいという話ですよね。

現在、グローバルスタンダードとなっているポリティカル・コレクトネスやBLMなど色々な思想や活動があります。

(注:ポリティカル・コレクトネスとは人種や民族、宗教、性別などについて寛容であろうとする考え方のこと。)

(注:BLMとはBlack Lives Matterの略で、アフリカ系アメリカ人に対する警察の残虐行為をきっかけにアメリカ内外で広がった人種差別抗議運動のこと。)

マイノリティーにフォーカスするのであれば、自分たちの文化を守るという主張は最もなのですが、ただ、やはりテロなどの暴力行為に走ると世論的に味方につけにくいという点は懸念すべきです。例えばウイグル人問題はもちろん中国政府に虐げられている面もあるのですが、ウイグル人の一部がISに入ってしまったりとか、どっちがどうとはっきり言えない状態にありますよね。チェチェン紛争に関しても、チェチェン人がテロに走ると、ロシア国内の世論をチェチェン側又はロシア政府側のいずれかに定めることができず、紛争が長期化・泥沼化する原因となっているのだと思います。

 

なるほど。紛争の原因はケースバイケースだと思いますが、解決のためには世論を固めることはやはり重要なんですね。

 

【外国語を学びたい・外大を目指す皆さんへ】

たっちゃんさんはもうすぐ大学を卒業されるということですが、大学生活を振り返って今考えていらっしゃることはありますか?また、自分の後輩になる外大生にはどのようなことを期待されますか?

受験生や今後外国語を学びたいと考えている方に言うのであれば、とりあえずいろんな本を読んで、自分の意見を外国語で発信できる人になってほしいと思います。

政府に対して自分の意見を言うというのは、民主主義として真っ当なことなのでどんどん言えばいいと思うのですが、ただ、それが同調圧力のようになって一部の人を追い詰めることもあるんですよね。

言語を勉強している人の中に、その言語話者の考え方や感じ方と似たものを自分の中に刷り込んでしまう人がけっこう多いのではないかと思います。僕の専攻する英語に関して言えば、英語話者の中には「自分の国を批判していればかっこいい」という風に考える人も一定数いる気がしています。「リベラルにあらずんば人にあらず」というような、まさにそのような空気がBLM運動などになっているわけで。

これから自分たちが生きていく社会をどうしていきたいのかを考えるときに、このような一辺倒な考え方では、どうしても学問的にも思考的にも不十分な点が出てくると思います。そういう中で、自分としての国際感覚というか、自分としての知識の集積に基づいて外国語で発信することはとても重要なことだと僕は考えています。

 

最後に、受験生や新入生に向けてメッセージをお願いします!

大学はあっという間ですが、いろいろなことにチャレンジしたり、人生でやりたいことや生きがいを見つけたり、好きなこと(嫌いなことももちろんですが)を精いっぱい勉強したり、また生涯を通じて親しくできる友達にであったりなどイベントがたくさんあります。新入生やこれから外大を志望する皆さん、是非学生生活や受験、頑張ってください!

 

たっちゃんさん、今回は本当にありがとうございました!

 

 

文責:りお

(インタビュー実施日2020/9/15)