東京外大生にインタビュー!第9弾【英語科編】〈前編〉
英語科たっちゃんさんへのインタビュー
こんにちは!東京外国語大学ロシア語専攻3年のりおです。
今回は「東京外大生にインタビュー」企画として、英語科4年生5回生のたっちゃんさんに、大学を選んだ理由・語科の授業・ゼミの専門・カナダ留学などについてインタビューをさせていただきました!
【外大を選んだ理由】
―本日はインタビューを受けていただきありがとうございます!はじめに、たっちゃんさんがご自身の専攻語と学部を選んだ理由を教えてください。
高校生の頃から英語に興味があり、国際関係について勉強したいと思ったからです。
―国際関係に興味を持ったきっかけは何だったのでしょう?
僕は小学生の頃から「国際関係ってかっこいいな」というふうに漠然と思っていたのですが、学問としてしっかり学びたいと思ったきっかけは2015年パリの同時多発テロ事件でした。一連のニュースを見て、当時高校生ながらもテロ対策に関心を持ち、治安やテロ対策について大学で学んでみたいと思ったのが大きな理由ですね。
―実際に外大に入学して、何か感じたことはありますか?
少人数かつグローバルな環境な校風が自分に合っていたのでよかったと思います。
【英語科の授業】
―言語の学習について、高校での英語学習と大学での英語専攻には大きな違いがあるような印象が私にはあるのですが、たっちゃんさんはどうでしたか?
大学の授業に関して、もとのイメージと違うということはそれほどありませんでした。高校の英語の授業からもっと発展してアカデミックなことを英語で議論するなど、「英語専修」のようなイメージを抱いていたので、かなり期待通りでした。
―英語科の授業についていくのは大変ではありませんでしたか?
そうですね。入学年度によってカリキュラムに多少違いがあるのかもしれませんが、単位をとるのがなかなか大変な授業もいくつかあります。あとは、英語科は高いGPAをとるのが結構大変かもしれませんね。他の言語はみんなゼロから学び始めますが、英語科はもともと英語ができる人たちばかりなので。
(注:GPAとは大学の成績のことで、派遣留学の選抜の基準などに用いられる。)
―英語科は成績によってクラス分けがされると聞いたことがあるのですが、それは本当ですか?
1,2年次のネイティヴの授業では1組から4組までクラス分けがされています。1年次は入学時のTOEICの点数、2年次は1年次の成績と1月頃のTOEICの点数で自分のクラスが決まるという仕組みだったと思います。
―言語の授業はどのように進みますか?
1年次は英語の足腰を鍛えるカリキュラムです。日本人教師の授業では講読、和訳、文法、音声学など暗記や作業系がメインで、ネイティヴ教師の授業はレポートやディスカッション、簡単なプレゼンなどアウトプットがメインですかね。
2年次は応用で、日本人教師の授業はいきなりレベルが上がります。週に50ページくらいのアメリカの大学の教科書を読み、内容に関して1時間のテストをする授業や、シェイクスピアの和訳の授業などがありました。ネイティヴ教師の授業では、APAスタイルのような学術レポートの書き方などを学びます。
(注:APAとはAmerican Psychological Associationの略で、アメリカ心理学会が定めている標準的な論文のフォーマットのこと。)
3年次以降は自分の好きな科目を取れるようになります。
―2年次からかなりレベルが高くなるのですね。具体的にどのような点で難しくなるのでしょうか?
まず1年次と格段に異なるのは、英語で読む題材も書くテーマも明らかに大きくレベルが上がるということですね。
例えば、ライティングでは1年次は「とりあえず英語で何か書いてみよう」というところから始まり、徐々に英文を書くことに慣れていけばいいのですが、2年次からは学術論文を書かなければいけないので、高いレベルの語彙で洗練された文章を書くことが求められます。
スピーキングのレベルはぶっちゃけそんなに変わらないと思います。1年で習う基礎の応用といった感じです。
問題はリーディングと和訳ですね。これはなかなか地獄でした。僕は2年生秋学期から留学に行っていたので春学期しか受けていないのですが、先ほども言ったように毎週数十ページのテクストを読むというようなスケジュールでした。そして題材はアメリカの大学の政治学の教科書など、専門的かつ難しいものばかりでした。授業内のテストは教科書等の持ち込みはOKなのですが、やはりかなり難しいのでみんなビシバシ低い点数をつけられていましたね。
和訳の授業は2年生で2パターンあるのですが、一つは英米文学を読むというもの。書かれている表現が何を言いたいのか全然わからなかったり、背景知識がないと理解できないものであったり、とにかく必死こいて予習しなきゃいけないという感じでしたね。もう一つはシェイクスピアの1600年代の英語を和訳するという授業がありました。僕は3年になってとったのですが、これも苦労しました。
※語学授業の内容やカリキュラムは入学年度によって変化する可能性があります。
―なるほど…。それはなかなか大変そうですね。
シェイクスピアの小説で使われている英語は現代のと比べて古いものなんですか?
全然違いますよ。日本でいうところの枕草子を英語で読んでいるような感覚です。あとは、やはり西洋と東洋では価値観が違うので、例えばキリスト教的背景を知っていないと理解できないこともあります。
―英語科の授業の中で3,4年生は好きな科目を取れるということでしたが、たっちゃんさんはどのような授業をとっていらっしゃったのですか?
僕は社会学の内容を扱う授業をとっていました。英語で社会学の理論を学んだり、ディスカッションをしたり。アクティブラーニングでは任意の映画を見て、習ってきたことと関連づけて論じなさいという課題が出されました。
(注:アクティブラーニングとは学習者の能動的な学びを目指した授業課題のこと。外大でも各授業で独自の課題が設定されている。)
―たっちゃんさんが取られた授業以外には、どのようなものが選択可能なのでしょうか?
例えば各々の学生が本を持ち寄ってそれについて新たな発見や感じたことを話し合うといった授業や、自分たちでショートフィルムを作るという授業もあると聞いたことがあります。
―地域基礎の授業は、英語科の中でも専攻地域ごとにかなり分かれているんですか?
(注:地域基礎とは専攻地域の政治経済や歴史について扱う授業のこと。)
僕の場合は、1年の春学期はイギリスのことを学びました。秋学期はイギリスとアメリカのこと両方についてでしたね。専攻地域が北西ヨーロッパだからイギリスのことしか学べない、なんてことはないと思います。
―東京外大で英語を学ぶメリットや他の大学とは異なる強みというと、何かあると思いますか?
英語を専攻することに限りませんが、英語科の学生としてもっと英語を活用したいと思った際に、ELCは、アウトプットの練習や英語での発信の機会を無料で提供してくれます。
(注:ELCとはEnglish Leaning Center(英語学習支援センター)の略。大学内にあり、本学生は誰でも利用できる。)
これは英語を学ぶ学生にとってとても便利なサービスだと思うので、僕はフルに活用させてもらいました。
(注:GLIPとはGlobal Linkage Initiative Program(グローバル人材育成プログラム)の略。英語の授業のこと。)
また、人によりますが、僕の場合は授業などで留学生と交流する機会が多く、友人を作ることもできました。英語科であるからこそ英語を使ってコネクションを作りやすいのかもしれません。そのような強みが外大にはあると思います。
【平和紛争ゼミって?】
―たっちゃんさんは何を専門としたゼミに所属していらっしゃるのですか?また、そのゼミを選んだ理由を教えてください。
I先生の平和紛争ゼミに所属しています。テロや紛争に興味があったのは先ほど話した通りなのですが、それに加えて担当教員のI先生は国連の武装解除のミッションでアフガニスタンに行った経験を持つ方で、世界で唯一民兵での武装解除に成功した方なんですよ。そういう体験をされた方のゼミなら、面白いことを学べるのではないかと思い、このゼミを選びました。
―世界で唯一ですか、すごいですね!
ゼミ生の出身語科は様々なんでしょうか?私の所属するロシア文化ゼミはやはりほとんどがロシア語科の学生なのですが。
そうですね、僕のゼミには色々な語科の学生がいます。僕の他にはペルシャ、フランス、カンボジアなどの地域を専攻している人がいました。ゼミではグループ発表もあるので、比較的学生同士の距離は近いゼミかもしれません。
―紛争や平和構築について学ぶってあまり想像ができないのですが、ゼミはどんな感じ進むのでしょうか?
ゼミというと論文を読んだり理論について学んだり…というイメージがあるかもしれませんが、僕のゼミは全然そういうことはしないんですよ。「平和紛争ゼミ」という名称ですが、ゼミのコンセプトとしては「実務家として実地の仕事をされていた先生と一緒に様々な問題について考えよう」といった感じです。ですから、例えば国際法ゼミのように法学系のそのものを学ぶようなゼミと比べると、アカデミックなものからは遠いゼミかもしれません。
そもそも「平和紛争」というものが新しい分野なので、学問として体系化されているわけではないんです。いろんな分野の学問を総合したものですから、例えばゼミの発表会では、以前に「日本社会の日常の同調圧力について考える」というテーマがありました。そのような社会的なことも含め、とにかく幅広いことを学べるゼミです。
―なるほど、新しい学問だからこそ様々な考えができそうですね。
平和紛争ってそもそも答えがないんですよ。何か問題が起きた時に、法学の分野ではここにこう書かれているからこうという風にすれば終わってしまうけれど、実地でどうにかしようと考えると、もちろん法律を守るべきところは守らなきゃいけませんが、そうしていたら何も行動を起こせずじまいかもしれません。僕のゼミは、将来JICAなどに入って第一線で国際支援に携わりたいと考えている人などには向いているかもしれませんね。
―そもそも平和紛争のゴールというのは、紛争をやめさせることにあるんですか?
そうですね、起きている紛争をやめさせることもそうですし、これから起こる可能性のある紛争を未然に防ぐこと、また紛争が起きた後にどうやって平和構築していくのか、というのも含まれると思います。可能なことはすべてです。
―先ほど「日本社会」をゼミ発表会のテーマとしたことがあるとのお話がありましたが、紛争というと日本にはあまり縁がないようにも思えてしまいます。日本国内の問題についてゼミではどのように扱っているのでしょうか?また、たっちゃんさんはそれらについてどのようにお考えですか?
「戦争」というと、戦車が出てきたり銃撃で人が死んだり…と思い浮かべるとかもしれませんが、利害の異なる者同士が存在して、何かしらでぶつかりあえばそれは紛争なんですよ。
例えば在日朝鮮人の場合、アイデンティティは韓国にあり、でも長期間住んでるのは日本…というように複雑な境遇にあり、さらに日本の永住権や日本国籍の所有も個人の状況によって異なります。他にも、沖縄の民族問題、アイヌの民族問題、被差別部落など、日本国内にも色々な問題がありますね。
こうやって日本も多様化してきている中で、改めて今の日本の人種問題について考えようという内容でした。日本の社会の中にも、目に見えない紛争というのはたくさんあると思います。
☆次回!英語科後編!
―勉強、寮、日常生活、友達付き合い…カナダ留学について!
―「ステージに立つことが本当に楽しかった」と語るたっちゃんさんと演劇の出会いとは?
―イギリスとロシア、そして紛争について。
外大を目指す人、外大で学ぶ人へのメッセージも掲載します!明日更新です!ぜひご覧ください!
文責:りお
(インタビュー実施日:2020年9月15日)
↓後編はこちらよりどうぞ
tufs-russialove.hatenablog.com