東京外国語大学ロシアサークルЛЮБОВЬ(リュボーフィ)のブログ

「未知なる魅惑の国」であるロシアならではの文化から、留学や旅行のこと、東京外国語大学でのキャンパスライフのことまで。このブログでは、東京外国語大学のロシアが大好きな学生たちが様々なテーマに沿って日替わりで記事を書いていきます。ЛЮБОВЬ(リュボーフィ)とは、ロシア語で「愛」を意味します。

ロシアの文豪たちの恋文を翻訳してみる

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Всем привет(フセム プリヴィエート/みなさんこんにちは)!

東京外大ロシア語専攻3年のりおです。

今回は「翻訳特集」ということで、「ロシアの作家・詩人たちの残した恋文(ラブレター)」を日本語に翻訳してみます。翻訳は勉強中で意訳している部分もあるので、ぜひ大まかにつかみながら読んでください!

 

アレクサンドル・プーシキン

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出典:

https://w.histrf.ru/articles/article/show/pushkin_alieksandr_siergieievich

…初めて彼女を一目見たとき、光の中で彼女の美しさにほとんど気づきませんでした。私は彼女に恋に落ちました。私はふと我に返って、結婚を申し出ました。あなたの返事、そのあらゆる曖昧さに、私は瞬く間に夢中になりました…

ナターリア・イヴァノヴナ・ゴンチャロワ(ナターリア・ゴンチャロワの母)へ

1830年4月5日モスクワにて。

 

…Когда я увидел ее в первый раз, красоту ее едва начинали замечать в свете. Я полюбил ее, голова у меня закружилась, я сделал предложение, ваш ответ, при всей его неопределенности, на мгновение свел меня с ума…

 

ナターリア・ゴンチャロワ(結婚後はナターリア・プーシキナ)はロシアの国民詩人プーシキンの最愛の妻でした。絶世の美女であり社交界の姫だった彼女にプーシキンはメロメロだったようです。(最期はナターリアに言い寄ったフランス人将校との決闘で命を落としました…)

こちらはナターリア本人ではなく彼女の母に宛てられた手紙ですが、一目惚れの瞬間の初々しさがよく感じられますね。

 

イヴァン・トゥルゲーネフ 

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出典:

https://www.m24.ru/articles/iskusstvo/10112018/154041

今日、私は7年前に初めてあなたと楽しく会話を交わした家を見に行きました。この家はアレクサンドリンスキー劇場の向かいのネフスキー通りにあります。あなたのアパートはその角にありましたが、覚えていますか?私の人生の中で、あなたとの思い出ほど大切な思い出は私のこれまでの人生にありません。

7年経ち、あなたに捧げられた深く真正で不変の思いの全てを感じることができて、私は喜ばしいです。この感覚は、太陽の明るい光のように、善良かつ直向きに私に働きかけます。どうやら、あなたの人生の輝きが私の人生と混じり合わせることができるなら、私は幸せになる運命にあるようです!生きている限り、そのような幸せに値するよう努めます。私はこの宝物を手に入れて以来、自分自身を尊重するようになりました。 

ポリーナ・ヴィアルドへ

1850年11月13日ペテルブルクにて。

 

Я ходил сегодня взглянуть на дом, где я впервые семь лет тому назад имел счастье говорить с вами. Дом этот находится на Невском, напротив Александринского театра; ваша квартира была на самом углу, - помните ли вы? Во всей моей жизни нет воспоминаний более дорогих, чем те, которые относятся к вам...

Мне приятно ощущать в себе после семи лет все то же глубокое, истинное, неизменное чувство, посвященное вам; сознание это действует на меня благодетельно и проникновенно, как яркий луч солнца; видно, мне суждено счастье, если я заслужил, чтобы отблеск вашей жизни смешивался с моей! Пока живу, буду стараться быть достойным такого счастья; я стал уважать себя с тех пор, как ношу в себе это сокровище…

 

この手紙が宛てられたポリーナ・ヴィアルドはトゥルゲーネフがペテルブルクのホテルで出会ったフランス出身のオペラ歌手らしいのですが、詳しいことは現在調査中です。

手紙使われている単語や表現は平易なものが多いので、そのまま暗記してここぞというときに使えそうですね(?)

 

フョードル・ドストエフスキー

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出典:

https://writers.fandom.com/ru/wiki/Фёдор_Михайлович_Достоевский

君は昨日何をして過ごしたのだろうか?私は夢の中で君に会おうとしたが、叶わなかった。本の中で君のことを考えた。つまり、本を開いて右ページの初めの行を読んだ。都合いいことに大事なことが書かれていたんだ。 <…> 

可愛いお前よ、また会えるときまで。君の手と唇に何度も何度もキスしよう。(その感触をよく覚えているよ。)<…> 

君のすべて、君の誠実性、忠実性、不変性。私の未来を思うように君を信じて期待している。幸福から離れると、君は幸福をもっと大切にするだろう。これまでにないほど君を強く抱きしめたい。

アンナ・グリゴーリエヴナへ

1866年12月29日ペテルブルクにて。

 

Как-то ты проводила вчерашний день? Думал тебя во сне увидеть - не видал. Загадал о тебе на книге, то есть развернуть книгу и прочесть первую строку на правой странице; вышло очень знаменательно и кстати. <…> 

Прощай, милочка, до близкого свидания. Целую тысячу раз твою рученьку и губки (о которых вспоминаю очень). <…> 

Твой весь, твой верный, вернейший и неизменный. А в тебя верю и уповаю, как во всё мое будущее. Знаешь, вдали от счастья больше ценишь его. Мне теперь несравненно сильнее желается тебя обнять, чем когда-нибудь.

 

この手紙が宛てられたアンナ・グリゴーリエヴナはドストエフスキーの2番目の妻です。アンナは20歳の時に当時45歳のドストエフスキーと結婚しました。(すごい年の差婚!)

ギャンブル好き・女好きのドストエフスキーを巧みに手玉に取り、彼の生涯を通じてアンナは忠実な妻であり続けました。

 

イヴァン・ブーニン

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出典:

https://nacion.ru/478414a-ivan-alekseevich-bunin-biografiya-pisatelya

親愛なるかけがえのない私の友人へ — なんていうのは君にとって愚かで疑わしいものに思えるだろうが、お願いだ — この手紙についてはそうは思わず、何も考えないでくれ。思考の必要はない、私自身も何も考えてはいない — これは気分だ、これは私の心の穴から表現できないほど優しい何かが突然吹き出した瞬間であり、君への私の狂った愛の響きである…

ヴァルヴァーラ・パシェンコへ

1895年7月初旬ポルタバにて。

 

Дорогой мой, бесценный друг мой, — тебе покажется и глупо, и подозрительно это, но прошу тебя — не думай так и вообще ничего-ничего не думай об этом письме; тут не нужно дум, я и сам ничего не думаю — это настроение, это минута, когда из тайников сердца вдруг поднялось что-то невыразимое нежное, отзвук моей безумной любви к тебе…

 

これは手紙の初めの部分ですが、手紙の書き出しを「私の心の穴から表現できないほど優しい何かが突然吹き出した瞬間」や「君への私の狂った愛の響き」と例えるのが素敵ですね。

しかし、手紙が宛てられたヴァルヴァーラと作家ブーニンとの恋愛関係は、家族関係のもつれや金銭問題によってあまり上手くいきませんでした。

 

ウラジーミル・マヤコフスキー

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出典:

https://ria.ru/20100414/222139246.html

親愛なる僕の可愛い僕の最愛の僕のリーリャ!

君を愛してる。君を待ってるよ、キスするよ。

君がいなくてすごくすごく寂しい。

リーリャ・ブリークへ

1922年1月モスクワ、リガにて。

 

Дорогой Мой Милый Мой Любимый Мой Лилятик!

Я люблю тебя. Жду тебя целую тебя.

Тоскую без тебя ужасно ужасно.

 

「え、かわいすぎか」の一言に尽きます。原文の甘々な雰囲気を翻訳にも出せるように頑張りました。

ご覧のように、未来派の詩人マヤコフスキーは年上で人妻の女優リーリャ・ブリークにベタ惚れでした。(しかし彼女の方はマヤコフスキーを翻弄してばかり…)

実はこのような甘々のラブレターの他にも、彼は愛について哲学的に書かれた手紙を書いていたりもしてかなり面白いので、また別の機会に訳してみたいと思います。

 

ウラジーミル・ナボコフ

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出典:

http://www.kultpro.ru/item_290/

このにぎやかな駅で、君はどれほど素敵で善良で気さくな女性だっただろうか…。私はこの幸せをあなたに何も話すことができなかった。しかし、馬車の窓から私はあなたを見た。 <…> どういうわけか、そのとき、私がどれほどあなたを愛しているか気づいたのだ。列車が動き出すと、あなたはにっこり微笑んだのだった。

ヴェラ・ナボコフ

1923年12月30日

 

Какая ты была прелестная, хорошая, легкая на этом суматошном вокзале... Ничего я не успел сказать тебе, счастье мое. Но из окна вагона я видел тебя, <…> почему-то именно тогда я понял, как я люблю тебя, — и затем ты так хорошо улыбнулась, когда заскользил поезд. 

 

ヴェラ・ナボコフは作家ナボコフの妻であり、自身も作家でした。有名なロシア作家の中でも、ナボコフとヴェラのおしどり夫婦はよく知られています。

ナボコフも「妻がいなかったら、本なんて一冊も書けなかっただろう」というほど、妻を信頼し愛していたそうです。

 


 

いかがでしたか?

ラブレターなんて今の時代では古いのかもしれませんが、文豪たちの色褪せないピュアなドキドキ感が今も文面に滲んでいます。現在でもこうやって私たちが彼らの胸を熱くした恋心の一端を覗き見できるのは、とっても嬉しいことですね。

それでは、До свидания(ダ スヴィダーニヤ/さようなら)!

 

 

文責:りお

 

 

*今日のロシア語* 

письмо(ピシモー)

 意味:手紙

Я люблю тебе(ヤー リュブリュー チビェー)

 意味:「君を愛している」