東京外国語大学ロシアサークルЛЮБОВЬ(リュボーフィ)のブログ

「未知なる魅惑の国」であるロシアならではの文化から、留学や旅行のこと、東京外国語大学でのキャンパスライフのことまで。このブログでは、東京外国語大学のロシアが大好きな学生たちが様々なテーマに沿って日替わりで記事を書いていきます。ЛЮБОВЬ(リュボーフィ)とは、ロシア語で「愛」を意味します。

カザフスタンの国民的歌手-ディマシュ・クダイベルゲン

川又です。昨日今日と外で長時間作業をする用事があったのですが、腕と頭皮が日焼けでひりひりです。今日は水でシャワーを浴びました。

iPhoneのアプリによると体感気温は47度とかでしたね。あはは。


今回ご紹介するのはタイトルの通り、ディマシュ・クダイベルゲンです。

とにかく、彼の経歴などを書き連ねるよりも先に、実際に歌声を聴いていただきたいです。

中国の音楽コンテスト番組「I am a singer」での演奏です。

 

Dimash Kudaibergen - SOS d'un terrien en détresse


Dimash Kudaibergen - SOS d'un terrien en détresse

こちらはフランス語の曲ですが、彼が世界中で名声を得るきっかけになったコンテスト番組「スラヴャンスキー・バザール」においても彼が演奏した曲で、持ち歌の中でも人気のある一曲となっています。

優しいハイトーンにまず感銘を受けます。その次に始まるのが、これまた美しく響く低音のパート!初めて聴いた時はこのパートで何かズドーンとしたものを胸に感じました。この後も一曲の中で声色を何度も変えて(女性的な優しい声、深く低い響きのある声、シャウトっぽい声など)使い分けているのが素人目にもはっきりわかります!

今実際に曲を聴きながらこの記事を書いているのですが、何度聴いても鳥肌が立ちます……!

 

一曲お聞きしてもらったところで、ディマシュ・クダイベルゲンという人物について改めて少しだけ紹介します。

 

彼はタイトルにも示したようにカザフスタンのアクトべ出身、現在26歳(若いのにすごい!)で、現在は北京に住んでいます。

カザフスタン共和国はロシアの南に位置するとても広大な国で、ロシア語とカザフ語がともに公用語に定められています。歴史的には様々な遊牧民族が移り住んだ国ですね。

プロソプラノ歌手の母の元へ生まれた彼は、実の両親ではなく父方の祖父母の元で育てられました。

なんと、カザフスタンには「長男は祖父母が育てる」という伝統的な慣習があるみたいです!

これは調べていて初めて知ったことなのですが、6歳の時にはすでに国際ピアノコンテストで優勝してしまうという実力の持ち主だったようです…才能ってあるんだなあとひしひしと感じてしまいますね。

 

また、彼は上で述べたようにそれなりに伝統的な家庭で育てられたことも手伝ってか、祖国カザフスタンへの愛がとても大きいです。カザフスタン国内でも話せる人は60%程度と、そこまで話者数の多くないカザフ語という言語で情報を発信し続けることを重要視しており、またカザフの歴史、伝統というものを自身の歌の中で多く表現しているように思えます。世界中で愛される歌手になったことで、カザフスタンという国際的にはそこまで存在感の強くない国をPRしていく役割も果たしていますね!

今まで10以上の言語で歌を披露してきた彼ですが、私が一番心を惹かれたのは彼の母国語、カザフ語の歌でした。

 

カザフ語の曲で有名なものの一つが、«Дайдидау(ダイディダウ)»です。

この曲はカザフの民族楽器「ドンブラ」のディマシュによるソロ演奏から始まります。

 

【カザフ語】ダィディダウ (Дайдидау) (日本語字幕)


【カザフ語】ダィディダウ (Дайдидау) (日本語字幕)

この曲の歌詞は1893年生まれのカザフスタンの詩人、マグジャン・ジュマバエフによってなんと獄中で!書かれたものです。1918年、彼は人民の敵として捕えられ、牢屋に入れられました。獄中から手紙を出すも愛する妻からの返事はなく、彼は妻が自分を捨てて他の男の元へ去ったのだと知り、妻を失った悲しみを歌ったこの詩を書きました。ダイディダウというのは妻の愛称ではないかという意見もあるようです。しかし実際には妻の出した手紙は手違いで届けられていなかっただけで、妻はマグジャンの元を去ってはいませんでした。マグジャンは7ヶ月後には解放され、しばらくの間幸せにに暮らせたことでしょう…。というのも、数年後に彼は再逮捕され、処刑されてしまうのです…。

彼の歌う恋愛系の歌はなぜかこのような悲恋や失恋を扱ったものが多いです。

 

ちなみに個人的な話をすると、受験期に外大のロシア語科に出願した直後にディマシュ ・クダイベルゲンの魅力に気づき、「中央アジアに出願しておけばよかったかな…」と後悔した思い出があります(笑)

ですが、この春学期にカザフ語を履修し、なんと格変化から動詞の使い方まで文法をざっと習うことができたので、それでよかったのかなと勝手に納得しています。ディマシュのカザフ語の曲を少しずつではありますが自力で翻訳できるようになったんです、嬉しいですよね。ちなみにこちらも失恋曲、「Akkuym(私の白鳥)」という曲です。とても好きです。


Dimash Kudaibergen - Akkuym / My Swan [Official MV]

そしてその授業で聞いたのですが、「クダイベルゲン」という名前は「クダイ(ペルシャ語由来で「神」)」「ベル(与える)」「ゲン(完了)」という3つの要素に分解でき、なんと「神が与えた」という意味になるそうです。名は体を表す…!


実は今年の5/24にディマシュが来日する予定で(なんと2度目の来日です)、2月頃に「5月後半ならこの騒ぎも収まっているだろう」と踏んでチケットを購入していたのですが、全然甘かったですね…(泣)

当日はディマシュのファンの力もあったのかYouTube上でライブ配信が行われました。

でもやはり、生のコンサートに一度は行ってみたいものですね。

 

今回ご紹介した動画を見てわーーーーー感動したって方はロシア語の曲も中国語の曲もカザフ語の曲もどんどん聞いていってください。約束ですよ。

 

 

文責:川又

 

 

*今日のロシア語*

 Казахстан(カザフスターン)

 意味:カザフスタン

голос(ゴーラス)

 意味:声