みなさんこんにちは。
今日は、クラシック音楽特集パート2をお送りします。
5月の特集では、ラフマニノフのピアノ協奏曲第二番、ハチャトゥリアンの仮面舞踏会「ワルツ」、そしてボロディンの「中央アジアの草原にて」が紹介されました。
ロシアのクラシック音楽 - 東京外国語大学ロシアサークルЛЮБОВЬ(リュボーフィ)のブログ
今度はチャイコフスキーの作品を中心に、有名どころもマイナーなものもさまざま取り入れて10曲紹介いたします!劇場などから公式に上がっている動画のみYoutubeのリンクを貼りました。その他については、興味を持ったら是非ご自分で調べてみてください。
でも、今回紹介する音楽のCDやバレエのDVDは簡単に地域の公共図書館で無料で手にすることができますよ!便利な時代ですね。余談ですが、紹介する曲のCDを借りるついでにわたしはロシア(ソ連)アニメの「雪の女王」も図書館で借りました。
① チャイコフスキー「くるみ割り人形」より「金平糖の精の踊り」
軽やかな音楽がほんとうに美しく、これぞ妖精さんの踊り、という感じがします。バレエと共に観ると楽しさ倍増です。かなり有名な曲なので知っている方が多いでしょう。
②チャイコフスキー「白鳥の湖」より「四羽の白鳥の踊り」
こちらは「白鳥の湖」の中でもかなり有名な踊りの一つではないでしょうか。四人のバレリーナが手を組みながら踊っている姿を見るのはなかなか楽しいですよ。
パリ・オペラ座のバレエだと思われます。
③ チャイコフスキー「白鳥の湖」より「スペインの踊り」
カスタネットがとても良いアクセントとなっています。これぞスペインと言う感じ。「白鳥の湖」の第三幕では様々な国の人々が各国の踊りを披露します。(ちなみにそれは、各国の王女様が主人公である王子様のお妃候補として呼ばれているからです。)
「スペインの踊り」のほか、「ナポリの踊り」、「ハンガリーの踊り(チャルダッシュ)」、「マズルカ」(つまりポーランドの踊り)があります。
ペルミ劇場の「スペインの踊り」です。今回調べて初めて知りましたが、ペルミはエカテリンブルグの左隣にある町です。(さらに言うと、エカテリンブルグはモスクワから東に約1600㎞進んだところにある町です。)
④ チャイコフスキー「白鳥の湖」より「パ・ド・ドゥ」(黒鳥の踊り)
これは絶対に映像と共に見てください!!!「白鳥の湖」一番の見せ場である、黒鳥オディールの32回転が見られます。先ほどの「スペインの踊り」、「ナポリの踊り」、「チャルダッシュ」、「マズルカ」ときてこちらの「黒鳥の踊り」に続きます。
こちらもペルミ劇場の映像です。32回転の部分のみ。
⑤ チャイコフスキー「眠れる森の美女」より「ダイヤモンドの精のヴァリエーション」
曲の方向性としては「くるみ割り人形」の「金平糖の精の踊り」と似ていると思います。こちらも精ですし…。この踊りは、金の精、銀の精、サファイアの精の踊りに続いて踊られるソロです。曲も踊りも軽やかで、明るい気分になります。
The School of Classical Russian Ballet というバレエ学校の映像です。ロシアと入っていますが、どうやらロンドンにあるバレエ・スクールのようです。
ダイヤモンドの精のヴァリエーションは3:52から見られます。
⑥ チャイコフスキー「子供のアルバム」より「魔女」
こちらはバレエ音楽ではありません。1分に満たない、ほんとうに短い、子供向けのピアノ曲です。ONTOMOピアノピース・ファイルの解説によると、「短いスタッカート、激しいリズムが、魔女の恐ろしげなさまを描写する」とのことです。
邦題がピアノピースでは「魔女」ですが、原題は«Баба-Яга»です。「ババ・ヤガ」と訳されている邦題もあります。つまり、チャイコフスキーはロシア民話に登場する老婆「バーバ・ヤガー」を想像してこの曲を書いたのですね。バーバ・ヤガーに思いを馳せながら(?)聴いてみると良いかもしれません。
この曲に登場する魔女は、「眠れる森の美女」に登場する邪悪な妖精カラボスのことではないのがポイントです。チャイコフスキーは他にもロシア民話にヒントを得た作品を生んでいますが、彼が表現するロシアのファンタジーと他国のファンタジーにはどのような違いがあるのか比べてみると面白いかもしれませんね。そんな論文があったりするのでしょうか。無知なものでわかりません…。どなたかもしご存知でしたら教えてください。
⑦ ハチャトゥリアン「少年時代の画集」より「エチュード」
こちらもピアノ曲。テンポが速いため、飽きません。なんとなく焦燥感に駆られる曲なので、試験前や課題に追われている時に聴くと作業が捗るかもしれません…。
ハチャトゥリアンはロシア人ではありませんが(アルメニア人)、ソ連人ということでピック・アップしました。
⑧ ムソルグスキー「ゴパーク」
「ゴパーク」というのはウクライナ地方の民俗舞曲なのだそうです。ポーランドにおけるマズルカのようなものなのでしょうか。
ちらっとYoutubeで検索をかけたところ、このムソルグスキーのゴパークを踊っている動画は見当たりませんでしたが、他のゴパークはありました!興味のある方はぜひ。
⑨ ボロディン「イーゴリ公」より「韃靼人の踊り」
「イーゴリ公」といえば、「イーゴリ軍記」ですよね。この話を基に作られたオペラですから。今年の春学期の授業で少しイーゴリ軍記に触れたため、「そういえば…」と思い至り選んでみました。長いので、作業用bgmとしてなんとなく流すのがおすすめです。何度か聴いているうちにきっと好きになっているはずです。
洗足学園音楽大学のオーケストラによる演奏です。
⑩ ストラヴィンスキー「ペトルーシュカからの3楽章」
「ペトルーシュカ」だけではピンと来ない方も、「のだめカンタービレ」でのだめが演奏中に「きょうの料理」を誤って弾いてしまったコンクールの課題曲だ、と聞けば分かる方も多いのではないでしょうか?
これは、ストラヴィンスキーの三大バレエ音楽「火の鳥」、「ペトルーシュカ」、「春の祭典」のうち、「ペトルーシュカ」をピアノ曲として編曲したものです。難曲中の難曲と言われているそうなので、動画でピアニストの手の動きを眺めながら鑑賞するとより楽しめるかもしれません。その超人的な技巧に驚くはずです。
おわりに
いかがでしたか?
今回特にバレエ音楽を中心に調べたり聴いたりして気付いたのは、「バレエ音楽はストーリー性が強いから聴いていて楽しいし分かりやすい」ということでした。子供みたいな感想ですが…。
「ああそうか、この音楽はこの情景を表しているのだな」という想像がしやすいため、オーケストラのコンサートで交響曲を「いつになったら、これ、終わるのかな」なんて退屈した思いで聴くような事態にはならないはずです。(もっとも、後者のような感想はわたしの芸術的センスに欠陥があるために抱くのかもしれませんが。)
わたしはオペラを全く見ませんが、きっとオペラも同じなのだと思います。おそらくミュージカルも。音楽だけ聴くのも良いですが、踊りを合わせて観ることで一層楽しめるのがこれらの芸術の魅力です。
今回は特にチャイコフスキーの音楽を中心に取り上げましたが、もちろんロシアには他にも様々な優れた作曲家がいますから、興味を持たれた方は是非調べてみてください。
厳しい暑さが続きますが、妖精の踊りでも見て、せめて心だけでも軽やかさを保ってお過ごしくださいね。いつだってファンタジーはあなたを救ってくれますから。
文責:R
*今日のロシア語*
балетная музыка (バレートゥナヤ ムーズィカ)
意味:バレエ音楽
композитор(カンパズィートゥル)
意味:作曲家
【参考文献・リンク等】
アデル・ジュラス(神戸万知訳)(2011)「バレエものがたり」、岩波少年文庫
音楽之友社編「ONTOMO ピアノピース・ファイル⑥ルーマニア民俗舞曲」
音楽之友社編「ONTOMO ピアノピース・ファイル⑧人形のセレナーデ」
ピティナ・ピアノ曲事典「ストラヴィンスキー:ペトルーシュカからの第三楽章」
https://enc.piano.or.jp/musics/3055 最終閲覧日2020/8/7
ピティナ・ピアノ曲事典「チャイコフスキー :子供のアルバム-24のやさしい小品 Op.39」
https://enc.piano.or.jp/musics/2430 最終閲覧日2020/8/7