東京外国語大学ロシアサークルЛЮБОВЬ(リュボーフィ)のブログ

「未知なる魅惑の国」であるロシアならではの文化から、留学や旅行のこと、東京外国語大学でのキャンパスライフのことまで。このブログでは、東京外国語大学のロシアが大好きな学生たちが様々なテーマに沿って日替わりで記事を書いていきます。ЛЮБОВЬ(リュボーフィ)とは、ロシア語で「愛」を意味します。

『世界でただ一人のママのところへ』赤ちゃんマンモスの冒険

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Здравствуйте! (ズドラーストヴィチェ/こんにちは)

なかなか外出できない夏休みとなってしまいましたが、いかがお過ごしでしょうか?読書、映画鑑賞、勉強、バイト…などと過ごし方は人それぞれですが、充実した長期休暇にしたいものです。

 

さて、東京外大の学生にとって最も離れがたい存在と言えば「専攻語」ですよね~!!!

コツコツ復習している方もいれば、夏休みに入ってからほとんど専攻語に触れていない方もいるのではないでしょうか。教科書や問題集に取り組むことは勿論大切ですが、ロシアが舞台だったりロシア語が使われていたりする作品に触れるのも楽しいですよね。

 

そこで今回はソ連のアニメーション作品«Мама для мамонтёнка(赤ちゃんマンモスのためのママ)» を紹介します!

 

«Мама для мамонтёнка»について

1981年にオレグ・チュルキン監督によって制作された8分ほどの短い映画です。

内容を簡単にまとめると、長い間氷の中で眠っていた赤ちゃんマンモスがお母さんを探しに大冒険をするお話です。

 

実際の作品はこちらです。

www.youtube.com

(ちなみにこの動画は2019年度東京外大オープンキャンパスでのロシア語科の模擬授業で紹介されました。見たことのある方もいらっしゃるかもしれません!)

 

可愛いキャラクター達とコミカルな動きは、見ているだけで楽しくなりますね!

ちなみに高校生の時の私は、セリフがほぼ聞き取れず雰囲気だけで楽しんでいました(笑)改めて観てみると少し意味が分かるようになっていて嬉しかったです!!

 

この映画の魅力の一つはキャッチーな歌です。

可愛らしい声で歌われている挿入歌 «Песенка мамонтёнка(赤ちゃんマンモスの歌)»を作曲したのはウラジーミル・シャインスキーさんですが、実はこの方、同じくソ連アニメの «Чебурашка(チェブラーシカ)»の曲も作っています!どちらの作品の曲も素朴なかわいらしさの中にほのかな寂しさを漂わせている感じがクセになりますね。

 

 «Мама для мамонтёнка»とロシア語

唐突ですが、言語学習において文法を把握することは必要不可欠ですよね。ロシア語を学び始めた人の中には格変化に苦しめられた(あるいは苦しめられている)方もいらっしゃるのではないでしょうか。

(格変化については過去の記事でも触れられています!)

ロシア語?なにそれおいしいの - 東京外国語大学ロシアサークルЛЮБОВЬ(リュボーフィ)のブログ

 

この作品のセリフでも、至るところに格変化した単語があります。今回は「名詞の格変化」の1例として «мама(マーマ/ママ・お母さん)»という単語に注目してみたいと思います。ロシア語の文法を勉強したことのない方は「なんのこっちゃ…」となるかもしれないので(私もなっていますが)「こんなのがあるんだ、ふ~ん」という感じで読み飛ばしていただいても大丈夫です!

 

*名詞の格変化の基本ルール*

そもそも「格」とは、その単語が文の中で持つ役割を示すものです。日本語では「てにをは」などの助詞で文法上の意味を区別しますが、ロシア語では語尾の変化によって区別します。

 

ロシア語の名詞の格変化は全部で6つあり(主格、生格、与格、対格、造格、前置格)さらに単数形―複数形、名詞の性によって異なる変化をします。一見覚えることが多くて大変そうですが、変化にはある程度のルールがあるので覚えてしまえば(きっと)大丈夫です!

 

それぞれの格の大まかな意味と«мама»の格変化は

主格 主語(~が)、述語 «мама»

生格 所有・所属(~の) «мамы»

与格 間接目的語(~に) «маме»

対格 直接目的語(~を) «маму»

造格 道具・手段(~で)、様態(~として、~のように)、述語 «мамой»

前置格 (前置詞によって意味が変化) «[前置詞]+маме»

…というような感じです。

 

ここでセリフを抜粋して名詞の変化を見てみます。(ちなみに «мама»は女性名詞単数形の活動体です!)ロシア語に触れたことのある方は、是非どの格が使われているか予想してみてください!!

  1.  Пусть мама придёт. (プースチ マーマ プリジョート/ママに来てほしい。)
  2. Я не видел твою маму. (ヤー ニ ビーデル トゥバユー マーム/僕は君のママを見なかった。)
  3. Мамы нет. (マームィ ニェット/ママがいない。)
  4. Я скажу маме. (ヤー スカジュー マーミェ/僕はママに言う。)
  5. Я иду к маме. (ヤー イドゥー ク マーミェ/僕はママのところに行く。)
  6. Он маму ищет. (オン マーム イーシェット/ 彼はママを探している。)

 

【答え】

  1.  «мама»という変化をするのは主格です。訳文は「ママに」となっていますが、日本語の助詞とは必ずしも一致するわけではないそうです。
  2. «маму»と変化するのは対格です。「ママを」という訳からも分かりますね。
  3. この文の主語は「ママ」だから主格…ではないんです!ロシア語で「~がない、いない」を表すとき、主語は「否定生格」という形をとります。 «мамы»となっていることからも生格です。
  4. ここでの «маме»は「ママに」なので与格です。
  5. 「前置詞の «к(~のところで)»があるから前置格!」と思いがちですが、 この«к»、実は後ろに与格をとる前置詞なので(!) «маме» は与格なんです。前置格には前置詞が必須ですが、前置詞の後ろは必ずしも前置格ではないんです…理不尽ですね。
  6. ここでの «маму»は「ママを」という意味なので対格です。

 

いかがでしたか?ロシア語の理不尽さも垣間見えましたが、パズルを解いていくみたいで楽しいですね。もっと詳しく知りたい方は是非自分で調べてみてください!

 

今年は家で過ごす時間がかなり長くなりました。こんな時だからこそ、普段は忙しくて手を付けられなかったことに取り組んでみるのもいいですね!!

それでは、До свидания! (ダスヴィダーニャ/さようなら)

 

 

文責:Ах

 

 

【参考書籍】

『大学のロシア語Ⅰ』東京外国語大学出版会

 

*今日のロシア語*

мамонтёнок (ママンチョーナク)

 意味:マンモスの子

искать(イスカーチ)

 意味:捜す、捜し求める