東京外国語大学ロシアサークルЛЮБОВЬ(リュボーフィ)のブログ

「未知なる魅惑の国」であるロシアならではの文化から、留学や旅行のこと、東京外国語大学でのキャンパスライフのことまで。このブログでは、東京外国語大学のロシアが大好きな学生たちが様々なテーマに沿って日替わりで記事を書いていきます。ЛЮБОВЬ(リュボーフィ)とは、ロシア語で「愛」を意味します。

『さあ帰ろう、ペダルをこいで』

今回は、さあ帰ろう、ペダルをこいでという、旧ソ連圏・ブルガリアの映画を紹介したいと思います!

私はブルガリア語の授業を履修していて、その授業でこの映画を知り、鑑賞しました!

ステファン・コマンダレフというブルガリア出身の方が監督となって2008年にこの映画を制作されました。

簡単にまとめると、この映画は、記憶喪失した少年が祖父との旅を通して記憶を取り戻し、自身を見つめ直す物語です。

 

文字で説明するより見てもらった方が興味が湧くと思うので、まずこの映画の予告編をYoutubeで見てみてください!


映画『さあ帰ろう、ペダルをこいで』予告編

 

面白そうだな~って思いましたよね。

では、この映画のストーリーを起承転結に分けて説明していきます!

 

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主人公の青年サショは、両親と車で移動中、事故に遭い、両親を亡くしてしまいました。サショは無事でしたが、大きな怪我を負い入院しました。それを知ったサショの祖父バイ・ダンは、サショのいる病院に駆けつけました。しかし、サショは「あなたは誰?」と自身の祖父に向かって話しました。サショは事故の衝撃により、自身のことも家族のことも、今までの記憶を全てなくしてしまっていたのです。バイ・ダンは大きなショックを受けました。

 

バイ・ダンは、ドイツにあるサショと両親の家を訪れ、思い出にふけっていました。そこで、バックギャモンというボードゲームを見つけました。
これがバックギャモンです。↓

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バイ・ダンは昔バックギャモンのチャンピオンでした。バイ・ダンは昔バックギャモンをサショに教え、よくサショとバックギャモンで遊んでいました。これでなんとか孫の記憶を取り戻そうと考え、病室にいるサショに「バックギャモンをしよう。」ともちかけます。

最初は、誰かもよく分からないバイ・ダンに対してサショは「出て行け。」と言っていましたが、あまりにもバイ・ダンがしつこく詰めかけてくるため、バックギャモンをすることになりました。バイ・ダンはサショにルールを教え、何回もゲームを繰り返しました。

すると、サショは記憶喪失でバックギャモンのコツを忘れているのにも関わらず、バイ・ダンといい勝負をしました。バックギャモンでサショの記憶は戻りませんでしたが、バックギャモンがサショの心を開くきっかけになりました。

 

サショはバイ・ダンと距離を近づけていく中で、思い出せない家族や自身のことについて深く悩むようになります。バイ・ダンはそんなサショの様子を見て、昔2人が住んでいた故郷のブルガリアに帰ろうと言います。そして2人は、ドイツからブルガリアまで、タンデム自転車で、記憶を取り戻す旅に出ます。

これがタンデム自転車です。↓

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道中では強く雨が降ったり、ブレーキが故障してガードレールに突っ込んだり、マリアという女の子に出会って一目惚れしたりと波瀾万丈な旅でした。バイ・ダンは、途中でサショをイタリアの難民キャンプに連れて行きます。実は、昔サショは両親と故郷のブルガリアを出発して、イタリアの難民キャンプを経由して、ドイツに亡命して暮らしていたのです。ブルガリアを出なければいけなかった理由には、共産党による強い支配が関係していました。サショの父が働くために過去の経歴を仕方なく偽っていたことや、バイ・ダンがゲームを闇市で売っていた疑惑があったことから、共産党は彼らに目をつけ、始末しようとしていたのです。このため、一家はイタリアの難民キャンプを経由し、ドイツに亡命することにしたのです。

しかし、イタリアの難民キャンプの待遇は劣悪でした。毎食パスタが食事に出され、プライバシーがなく狭い寝床で暮らしていました。かなり不自由な生活でしたが、子供の頃のサショは難民の女の子と仲良くミニカーで遊んで楽しく暮らしていました。そんなイタリアの難民キャンプを大人になって記憶喪失したサショが訪れ、何か思い出せることはないかと考えながら歩くも、なかなか何も思い出せないまま座り込んでしまいます。すると、座り込んだ先にミニカーを見つけます。サショは、ミニカーを見て事故を思い出し、そして全ての記憶を取り戻します。

 

バイダンは、サショがイタリアの難民キャンプにいる間に、先に1人で列車に乗って帰り、アレックスは1人、自転車でブルガリアを目指します。サショは、道中で出会って一目惚れしたマリアに会いに行きます。実は、マリアは、サショがイタリアの難民キャンプで一緒にミニカーで遊んでいた女の子だったのです。運命的な出会いを再び果たしたサショは喜んで、ついにブルガリアに到着します。そしてサショは、記憶を取り戻した状態で初めてバイ・ダンとバックギャモンで勝負をすることになりました。勝負は決着がつかずに、2つのサイコロの目の大きさで決めることになりました。バイ・ダンは、2つのサイコロを降ると6と6の12という最大の数字を出します。アレックスが降ると、1つのサイコロが割れて、6と6と1の13という目が出る奇跡が起こり、アレックスがチャンピオンになりました。

 

 

こんな感じのストーリーです!

私がこの映画を見た感想としては、家族の絆、故郷の大切さを実感し、とても心温まる感情になりました。バックギャモンやミニカーがサショの心を開き、サショは思い出を取り戻しました。思い出をつなぐ形見は人の心に影響を与える大事な役割を持つのだと改めて実感しました。また、最初は辛い過去を思い出したくないと後ろ向きなサショでしたが、祖父の助けを受け、徐々に思い出と向き合い始めました。このサショの心の変化を見て、悲しい現実に向き合うのは辛いことですが、それに向き合い受け入れることで、新たな道を切り開くことができると思いました。

歴史的背景から考えると、旧ソ連圏の支配や、難民の生活について知ることができた点が印象に残りました。社会主義時代に当局による国民に対する支配があったことは知っていましたが、今回映画を見ることで、具体的に共産党による支配がどのようなものであったか、歴史の背景を深く理解することができました。

個人的に、サショが記憶を取り戻して初恋の女の子・マリアと再会したシーンはキュンときました!あと、最後のバックギャモンのシーンでは、いやサイコロ割れるんかーいwwwって思いました。今度、バックギャモンを買ってやってみたいと思います!

長くなってしまいましたが、映画で見るともっと面白いので、皆さんもぜひ見てみてください!

 

 

文責:Na

 

 

*今日のロシア語*

Болгария(バルガーリヤ)

 意味:ブルガリア

Велосипед(ヴェラシピェード)

 意味:自転車