東京外国語大学ロシアサークルЛЮБОВЬ(リュボーフィ)のブログ

「未知なる魅惑の国」であるロシアならではの文化から、留学や旅行のこと、東京外国語大学でのキャンパスライフのことまで。このブログでは、東京外国語大学のロシアが大好きな学生たちが様々なテーマに沿って日替わりで記事を書いていきます。ЛЮБОВЬ(リュボーフィ)とは、ロシア語で「愛」を意味します。

突撃インタビュー!!東京外国語大学のロシアハーフたち

Привет!(プリビェット/やあ!)

 

こんにちは、トモヒトです!最近とみに暑くなってきましたね。鬱陶しかった梅雨空ともそろそろお別れか、と思うとすこし名残惜しさがあります。

 

ともあれ、コロナで騒々しい幕開けとなった今年も、やはりちゃんと夏が来た。それだけで無上の喜びがあります。

 

海、キャンプ、開放感といったイメージが、夏の匂いに誘われて頭のなかをよぎるこの頃です。

 

さてそんな季節のご挨拶は措いておき、今回私がご紹介するテーマをお伝えします。

ずばり、

 東京外国語大学ロシア語科のロシアハーフたち

です!!!!!

 

今までなぜ誰もこのテーマをЛЮБОВЬで取り挙げなかったのだろう、そう疑問に思えるような非常に興味深いテーマです!

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(画像はイメージです)

本記事では、東京外国語大学に在学中の男女2人のロシアハーフにインタビューを行い、お話を聞いてきました!どうして外大ロシア語に入ったのか、ロシア語は話せるのか、どんな職業に就こうとしているのか…

気になりますよね?|д゚)

 

一体どんな人たちなのでしょうね?(*´艸`*)

早速みていきましょう。

 

ダンスサークルで踊ってばかりいるロシアハーフ男子・Mの場合

トモヒト:久しぶり!髪伸びたね。   

   M   :久しぶり!うん、結構伸びたねー。

トモヒト:コロナで大変だけど、まだ踊ってるの?

   M   :うん、公園で一人踊ってるよ(笑)

トモヒト:偉い(笑) 早速本題だけど、外大ロシア語科に入学したのにはどんな経緯があったの?

   M   :お父さんがロシア人で、お父さんが外大に留学時代、ロシア語科の生徒だったお母さんと知り合って結婚にまで至ったんだ。だから、もともと外大という選択肢は頭の片隅にあって。でも自分はずっと日本で育ってきて日本人としてのアイデンティティが強かったし、ロシア語も全く喋れなかったから、そこまで自分の中でロシア的な要素は強く感じていなかったんだ。それが、高校三年のとき父方の帰省でロシアに初めて行って、帰省先の親類とかと話したりしているうちに、ロシア語を勉強してみたいっていう気持ちが起こって、外大を進路に選んだんだ。言うなれば、外大で自分のなかのロシア的な要素を自己実現しようとしたって感じかな。

トモヒト:なるほど、ロシア的なアイデンティティはもともと大きくなかったけど、ロシア帰省を通して膨らんで、それを自己実現する、つまりロシア語を学ぶために、外大に入学したっていうことか。

   M   :そうそう。お父さんはロシア語を教えてくれなかったから、もともとロシア語は全く喋れなかったんだ。だから、外大に入って語学力を身に着けられればな、と思ってたよ。

トモヒト:外大に入る前までにも、ロシアと関わることはあったの?

   M   :お父さんが貿易会社をやってるから、ロシア人がお客さんとして家に来たりしてたなあ。あと、うちではイースターをやってたよ。見つけたイースターエッグを互いにぶつけて、どちらが固いエッグが競ったりしてた(笑)でも、せいぜいそんなもんだよ。

トモヒト:へえ、イースターは日本ではなかなかやらないよね。ちなみに、アイデンティティの不安とかとは一切感じてなかった?

   M   :そうだね。ロシアとのハーフなんだ、っていう事実を知っているだけ、っていう感じかな。高校では、スポーツで日本とロシアの対戦があったりすると「お前どっち応援するんだよ」とか言われてたけど、そんなに気にしてなかった。

トモヒト:そっか、そういうのってハーフあるあるだよね。外大でロシアについて勉強してみて、自分のなかのロシア的な要素に対して、見方は変わった?

   M   :もともと、お父さんとお父さんの近くのロシア人だけを見てロシアに対するイメージができていたのが、外大でロシアについて勉強したら、知らなかったロシア人の色んな側面が見えてきたな~と感じるよ。

トモヒト:なるほど。大学では何を勉強しているんだっけ?

   M   :ロシアのアヴァンギャルド建築に興味をもっています。もともと建築に興味があったから、自分が勉強している時代の建築にも興味がいったんだよね。あ、あと、大学外の話にはなるんだけど、バイト先の先輩に影響を受けてワインソムリエの資格を勉強してるよ。

トモヒト:え、かっこいい!Mとワインソムリエ、絶対似合ってるよ!アヴァンギャルド建築というのもすごく奥が深そう。将来については何か考えてる?

   M   :ロシア語を使って仕事をすることはあまり考えていなくて、今はメーカー系に興味があるよ。飲料メーカーとかを調べたりしてる。でもワインソムリエの資格をとって手に職をつけたらサービス業界に従事することになるから、悩ましいところなんだよね!(笑)

トモヒト:面白い!就活の成功を祈ってます。今日はありがとう!

   M   :こちらこそありがとう!

 

▼「ハーフ」小論考  ▼

「ハーフ」ときくと、外国人と血の混ざった人、という画一的な見方をしてしまいがちですが、もっと細分化することができます。

 以下は、『在日韓国・朝鮮人―若い世代のアイデンティティ』(福岡安則著、中央公論新社、1993年)の、日本人/非日本人という国民の範疇を探るための分類表から一部を引用したものです。

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この表において血統の欄に「-(マイナス)」がついている③と④が、いわゆる「ハーフ」です。文化をその他の「純ジャパ(純血の日本人のこと)」と共有しているかどうか、という点でまず大きく2通りに分類される訳です。

ここからが複雑ですが、文化をどの程度共有しているのか、という点に関しては、言語によってのみでも非常に多岐に分類することができます。二言語が均等に習熟された

Balanced bilingualism、不均等なAsymmetrical bilingualism、スピーキングとライティングに特化したActive bilingualism、リスニングとリーディングに特化したPassive bilingualism、後天的に二言語を操るようになったElective/Circumstantial bilingualismなど、分類型を挙げればきりがありません。また、第二言語を使用するドメイン・目的・コミュニティに応じて、十人十色の文化的背景を想定することができます。

「ハーフ」は、「純ジャパ」外の人々をすべてひっくるめたような言葉であり、ともすれば文化的な暴力性をもっています(実際、「ハーフ」とくくられてしまうことで傷ついている人たちがいます)。そのことを知ってみると、「ハーフ」はそう単純でないことがお分かりいただけるのではないでしょうか。よろしければ、本記事に登場している二人のロシアハーフたちがいかなる個性をもった「ハーフ」なのか、是非考えてみてください。

 

自然食に最近はまった!ロシアハーフ女子・Eさんの場合

トモヒト:こんにちは!コロナが続いてるけど、今は実家にいる感じ?

   E    :こんにちは!うん、実家にいる。

トモヒト:そっか、なら独り暮らしよりもましだね。ご両親と暮らしてるんでしょ?

   E    :うん、そのことなんだけど、実はお母さんがロシア人なんだけど、お母さんは私が小学校入学のころくらいから離れ離れになっちゃってずっと会ってないから、今日の話が参考になるかちょっと分からない(笑)

トモヒト:そうなんだ!知らなかった。そう、Eさんと言えば、初めて会ったとき、全然ハーフだと思わなかったんだよ。

    E   :会う人には結構ハーフなの?って聞かれることが多いから、純ジャパだって思ってくれると嬉しかったりする!アイデンティティとしてはほぼ日本人だと思う。

トモヒト:そういう人俺の知り合いにもいる!ハーフでそう感じる人は多いんじゃないかな。自分のなかのロシアの要素を感じることはあったりする?

   E    :例えばフィギアスケートを見ていたりすると、もちろん日本人も応援するんだけど、ロシア人選手も少し応援しちゃうな。生活のまわりでロシアに関する話がでてくると、敏感になる気がする。例えば学校の男の子が「ロシアの殺し屋、おそロシア」とか言ってると、私のことを言ってるのかな?って気になっちゃったし、世界史の授業でロシアが出てきたときもやっぱり意識してた。あとは、昔、学校にロシア人の子が訪問してきたとき、友達に「通訳してよ」って言われたりして、やっぱり人から言われると自分がハーフだっていうことを思い出すの。でも私のなかでの基本的なアイデンティティは日本人だな。

トモヒト:ロシア語は、全然喋れなかったんだよね?外大に入学するまで。

   E    :基本的には。実は小学校に入学する前、ロシアに住んでた時期があって、ロシアの幼稚園に2~3年通ってたらしいの。断片的な記憶しかないんだけど、流暢にロシア語を喋ってたって(笑)今は忘れちゃってるんだけど、その時の感覚が突然戻ってきてくれないかな~とか、ロシア語を勉強してて思ったりする(笑)

トモヒト:そうだったんだ(笑)外大に入学したのはどんな経緯からなの?

   E    :別にバイリンガルでないことに不満はなかったんだけど、第一志望に落ちちゃった後の選択肢として、なんとなく外大ロシア語科を思いついたの。自分の中でそれまで感じてたロシアっていう要素について勉強してみたいっていう気持ちは、少しあったと思う。

トモヒト:Mも似た感じの動機だったな。外大でロシアについて勉強してみて、その目的は叶った?

   E    :大学でロシアについて触れられたのはすごく良い影響があったなと思う。実際にロシア人の人たちと交流できたりして、ロシア人が好きになった!(笑)ひとつ後悔があるのは、自分からロシアについて勉強したいと思って入学したんだから、必修の語学の授業に、もっとモチベーションを高くもって取り組めばよかったなっていうこと。

トモヒト:語学の勉強には、ただただ苦しい時期ってのはつきものだと思うな(笑)今大学では、何に興味をもって取り組んでるの?

   E    :今はソ連時代のアニメーションとか映画に興味があるよ。あと、ESSに入部してて、ちょっとでも英語喋ろうとしてる!(笑)

トモヒト:ソ連時代のアニメっていうと、チェブラーシカとかあるよね!英語力をつけて、将来英語を使った仕事とかを考えてるの?

   E    :とりあえず、就活に役立つかなって思ってる(笑)出版とか食品業界に興味があるよ。外交官とかも考えてる。

トモヒト:なるほどね~、俺も外交官考えてるよ!こっちは留学で卒業が遅れるから、Eさんは俺の将来の上司かもね!(笑)趣味とかはあるの?

   E    :マクロビオティックスっていう、自然食品を積極的に摂ろうとする考え方の食事法があるんだけど、ダイエットとかにもなるからはまってるの!(笑)

トモヒト:今日はありがとう!体に気を付けて過ごしてね!

   E    :こちらこそありがとう!

 

 

いかがでしたか?

 

ロシア語科に勉強にきている、ということは、やはり、ハーフであるけども「ロシア語が喋られない」からでした。二人は、外大に新しい自分を見つけにきていたようです。

コラムに書いたようにハーフには本当に様々なケースがあるのでひとまとめにするつもりはないのですが、少なくとも僕がインタビューした二人は、あまり自らの出自の非凡性を気にしていないように見えました。

「ハーフ」ということを自分にあてはめて考えてみたのですが、実際に自分に外国の血が混ざっていたら、結構面白いんじゃないかと思いました(笑)しかしまた、「純ジャパ」であることも一つの面白さであり、各々が自分のアイデンティティをつくり出していけばいいのだと思います。アイデンティティが他者に決めつけられたり、自分で決めつけてしまったりするのが、一番つまらないことだと思います。

 

以上、トモヒトがお送りしました!

 

Пока!(パカー/じゃあね!)

 

 

文責:トモヒト

 

 

*今日のロシア語*

Смешанная кровь(スミシャーンナヤ クローフィ)

 意味:混血

Идентификация(イデンティフィカーツィヤ)

 意味:アイデンティティ

 

【参考文献】

 「在日韓国・朝鮮人―若い世代のアイデンティティ」、福岡安則、中央公論新社、1993年