東京外国語大学ロシアサークルЛЮБОВЬ(リュボーフィ)のブログ

「未知なる魅惑の国」であるロシアならではの文化から、留学や旅行のこと、東京外国語大学でのキャンパスライフのことまで。このブログでは、東京外国語大学のロシアが大好きな学生たちが様々なテーマに沿って日替わりで記事を書いていきます。ЛЮБОВЬ(リュボーフィ)とは、ロシア語で「愛」を意味します。

とある島から始まる東西冷戦 in my mind

こんにちは、Здравствуйте!(ズドラーストヴィチェ!)

 

「私がロシア語を選んだ理由」の連載企画は今回で終わりです。

ロシア語科はとてもちょっと変わった人が多いなあと感じることがありますが、みんなの経歴を読んでいると本当に多岐に渡っていて、その理由も納得します。

 

最後はわたし、りお東京外国語大学でロシア語を学ぶに至った経緯をお話しします。

 

アメリカかぶれ女のルーツ

私はどちらかというと、確固たる夢や目標ができるまでは行動を起こせないタイプだと思います。なんとなく…でロシアの世界へ飛び込めるほどの勇気はありません。

というか、一念発起しないと私の学力(センター世界史53点)では、東京外大なんて受かりませんでした(笑)

 

 

高校時代の私はもともと、「外国」(当時の私の頭の中では、ほぼ=「アメリカ」を指す)のフリーダムな空気感に憧れた所謂「海外かぶれ」でした。

毎日のように、勉強そっちのけで洋楽ヒットチャートを聴いては海外ドラマを見漁り、高校1年の冬には短期のアメリカ留学に行かせてもらったりもしました。

 

そんなこんなで高校2年の夏、たまたま北方領土での青少年交流事業の参加者募集の話を聞いて興味本意で応募したところ、北方領土色丹島を訪れることになりました。

北方領土は日本とロシアが主権を巡って70年以上争っている島です。)

 

同じ北海道で暮らす私の祖父は、かつて色丹島に暮らし、小学校5年生のときに侵攻してきたソ連軍に島を追い出されサハリンで抑留されたのちに、やっとの思いで北海道へたどり着きました。

私は戦時中の話を祖父からしばしば聞いていましたが、なんとなく「昔のこと」として捉えてあまり気に留めていなかったのです。

 

 

しかし、この時に訪れた島での体験が、私の考えやその後の進路を大きく変えたのでした。

 

 

イメージとのギャップ

 

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島の高台から見下ろした様子

 

根室港を船で出発しておよそ丸一日。

 

船酔いもそこそこに辿り着いた色丹島で目にするものは、馴染みのない色や形の建物、読めそうで読めない不思議な文字。

 

全て日本では見慣れないものばかり。私にとっていわば「完全なる異国の地」でした。

 

(あれ…日本が主権を訴えてるからには昔の日本人が住んでた形跡とか残ってるのかなって漠然と思ってたけど…。 なにここ…? 完全に違う国みたいじゃん…?)

 

 

さらに戸惑いは続きます。

 

 

島で暮らすロシア人(現島民)と来訪した日本人との交流パーティー

ロシア人の子どもたちは、絶妙な中毒性のあるロシア語の歌や踊りを何曲も披露してくれました。

聞けばこの日のために何度も練習してきたのだそう。

 

ロシア人の家庭へ訪問させてもらった際には、バナナのジュースや水餃子のようなもの(あとでペリメニというロシア料理だとわかる)をたくさん振舞ってくれました。

 

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訪れた家で暮らす30代くらいの女性とその小学生の娘に、島での暮らしや日本のことについて話を聞くと、目を輝かせてこのように話してくれました。

 

「日本はとても綺麗な国だと聞いているので、いつか行ってみたい。」

「日本人とロシア人はもっと仲良くなれると思う。」

 

島での慎ましい暮らしの中で、訪れた人を歓迎するというただ純粋な思いやりが伝わってきたのでした。

 

(日本とロシアってあんま仲良くないんじゃなかったっけ…? 目の前の人に真正面から向き合うことができないのは私の方かもしれないな…)

 

 

そして奥さんが最後に笑顔で語ってくれた言葉が、私は今も忘れられません。

 

 

「ここ色丹島は、豊かな自然に囲まれた美しい島です。私たちはこのふるさとが大好きです。」

 

 

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子どもが作ったという「未来の色丹島

 

  とても複雑な気持ちに駆られました。

 

ロシアという国や北方領土に対してのイメージが覆された衝撃もあり、かつてソ連に侵略された日本人というアイデンティティを持つ者としての戸惑いもあり、図らずもロシア人の心の温かさに触れた感動もあり…

 

でもおそらく一番大きかったのは、「一体、ロシアと日本の間で何が起こっているんだ?」という計り知れない好奇心でした。

 

 この時は様々な思いで胸がいっぱいになりながらも、消化できないまま帰船することになりました。

 

 

 マルタ会談 in my mind

この3日間の異次元体験を通じて痛感したことは、日本での北方領土に関するニュースの伝えられ方や、一般に持つロシアという国のイメージが的外れであることでした。

(なんてカッコよく書いていますが、島を訪れて何年も経ってやっと分かってきて言語化できるようになってきたことも多いです。)

 

さらにこれをきっかけに、私はロシア人の考え方ロシア独自の文化にも興味を持ちました。

 

私の中での興味対象はアメリカから一転、かつて冷戦時代に世界の覇権を争ったロシアへとシフトしたのです。東側の圧勝でした。

 

 

北方領土問題に関しては、現在の元島民の平均年齢は84歳、無念にも多くの人が亡くなっている一方で、平和条約の締結や日露共同経済活動へと話が進んだり進まなかったりしています。北方四島に少しだけ縁のある私としても、これについては様々な考え方があって構わないと思います。むしろ関心を持ち、考えを持つことが大切だと思っています。)

 

 

そんなわけで、大学ではロシア語を専攻し、日々勉強中です。

 

 

ここまでダラダラと書いておいてさらに余談ですが、「国」や「人」についても、小さな脳みそながら考えるきっかけになりました。

もちろん、私が自分を日本人だと認識するように、当たり前に「国籍」というのは自分のアイデンティティ(自分自身を特徴づけるもの)となっていますが、それよって本来もっと自由であるべきミクロな人間単位の交流が制限されていることもあるのではないかと思ったりします。

そんなことから「人」に対して興味を持ち、北方領土なら政治関係だし国際社会…と思いきや「人間を形づくるのは言語と文化や!」という安直な考えから言語文化学部を選びました。 

 

 

はい!調子に乗って本当に長くなりましたが、読んでくださってありがとうございます。

様々な経歴を持つ私たちが、ロシア語を通じて巡り会えたのも何かの縁かなと思っています。

 

 

次回からは、ЛЮБОВЬ(リュボーフィ)のメンバーが実際に留学や旅行でロシアとその周辺国を訪れた際の体験記を連載します。

 

お楽しみに。

 

 

それでは。

 

 

りお

 

 

*今日のロシア語*

 

Мир(ミール)

意味:平和、世界