東京外国語大学ロシアサークルЛЮБОВЬ(リュボーフィ)のブログ

「未知なる魅惑の国」であるロシアならではの文化から、留学や旅行のこと、東京外国語大学でのキャンパスライフのことまで。このブログでは、東京外国語大学のロシアが大好きな学生たちが様々なテーマに沿って日替わりで記事を書いていきます。ЛЮБОВЬ(リュボーフィ)とは、ロシア語で「愛」を意味します。

「ロシア軍」とはなにか?「ソ連軍」とはなにか?

 現在の国防大臣を知らない人はいても、「ロシア軍」という言葉を耳にしたことのない人間はいないはずだ。だが、ロシアには軍がいくつもあると聞けば多くの方は目を見開くはずである。この記事がそんな方々のために「ロシア軍」という概念を理解していただける端緒となれば幸いである。

 ことの起こりは赤軍の創設にある。設立当初の「赤軍」(正確には名前が異なるが)は実に単純であった。ボリシェビキの軍事部門は一つにまとまっていたのである。そもそも、着の身着のままの被服のこの若き軍隊に、兵科や部局以上に多種多様な組織を揃える必要も余力も無かったのである。しかし内戦が終わり、国家運営を本格的に行う段になると、やはり分野別に分ける必要が出てくる。そこで大祖国戦争までには武力組織は赤軍と内務人民委員部(以下:NKVDと表記)管轄下の軍とに分けられた。ちなみに、NKVDといえば秘密警察であるというような言説が一般に広まっているが、これは大分誤解のある表現である。ここで言う秘密警察とは国家保安総局であり(特殊科、通称スメルシの離散集合についてはNKVDの権勢をそぐ狙いを含め初心者向け記事のため気にしないこととする。)、この総局はNKVD内の国内軍、国境軍(なお、大祖国戦争中にはこの2つは統合され後方保安軍という単位が設定された。)、民警(警察)といった組織と同列の組織であり、決してNKVD自体が秘密警察であったという訳ではなく、そのような認識は国家防衛委員会防諜部などの存在を無視することになる。更に言えば、41年に短期間、43年から53年まで、54年以後においてはNKVDから保安部門が独立しており、この期間のNKVD、内務省を秘密警察的に評価することは大きな誤謬であると言える。話がそれたがここでソ連、ロシア軍の認識において重要な概念を述べたい。それは「外敵の撃退、国外での戦闘を主眼とする軍隊」と「国内での戦闘を主眼とする軍隊」という枠組みの概念である。前者には赤軍が、後者には国内軍や国境軍が当てはまる。この構図は赤軍がソ連国防軍になっても、NKVD内の武力組織が最終的にKGB(国境軍)と内務省(国内軍)になっても続いた。現在でもこの「外敵の撃退を主眼とする軍隊」と「国内での作戦(治安維持)を主眼とする軍隊」という枠組みの概念は変わらず、前者には連邦軍が、最近までは後者には内務省国内軍、ロシア連邦保安庁(FSB)国境軍、連邦非常事態省が相当していた。なお、現在では2016年以降、後者のうち国内軍の所属が変わり、内務省内の民警内の治安維持任務を行う武装組織ごと新設の国家親衛軍の管轄下に移動。治安維持系組織の指揮系統の一本化、合理化が断行されている。

 この記事では初心者向け記事のためあくまで「外敵の撃退を主眼とする軍隊」と「治安維持を主眼とする軍隊」という枠組みでのみ単純化して書いたが、もちろんソ連民間防衛部隊、ロシア非常事態省や内務省武装警備員サービスなども存在する。また、公的武力組織ではないものの退役軍人等で構成され、戦車や戦闘爆撃機まで運用し、前線任務を行う「民間軍事会社」、ワグナー社もロシア政府との強いつながりがあるという点である種公的な存在である。ここに出てきた組織の名称は多くの読者にとってさして覚える必要もないものであろう。しかし、今後「ロシア軍」という言葉を耳にした際、「外敵の撃退を主眼とする軍隊」と「国内での作戦(治安維持)を主眼とする軍隊」という概念を思い出していただければ認識に深みがでるはずで、記憶の片隅にでもとどめておいていただければ幸いである。

 

文責:S

 

今日のロシア語

истребитель-бомбардировщик(イストレビーチェリ バンバルヂローフシク)

意味:戦闘爆撃機

государственная граница(ガスダールストヴェンナヤ グラニーツァ)

意味:国境

 

公演レポート「第16回世界バレエ・フェスティバル」

Привет(プリヴィエット)!(こんにちは!)、ロシア語科のバレエ担当、長谷川公樹です!

 

前回に引き続き、この夏のバレエ公演レポートをお届けします!

(前回の記事はこちら!)

tufs-russialove.hatenablog.com

 

今回取り上げるのは、日本中のファンが待ち望んでいた「第16回世界バレエフェスティバル」です。

f:id:tufs_russialove:20210930200052j:plain

この公演は3年に1度だけ世界各国のトップ・バレエ団のスーパースターたちが一同会するバレエの祭典です。今回は、この公演に出演したロシアのダンサーに絞ってお届けします。

 

 

 

1組目は、人気のボリショイ・バレエ団カップル、ウラディスラフ・ラントラートフ&マリア・アレクサンドロワ。

 
 
 
 
 
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この2人は、公私共にカップルで、親密で強い信頼関係を感じさせる踊りを見せてくれます。

 

披露してくれた演目は「ライモンダ」と「two rooms」です。

 

ライモンダは、ラントラートフ演じるジャン・ド・ブリエンヌが癒し系のジェントルマンで素敵でした。ジャンプや回転といったテクニックも清潔感がありとても好感度が高かったです。

 

「two rooms」はコロナ後に製作されたコンテンポラリー作品です。

 
 
 
 
 
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クラシック作品中心の2人が、最新のコンテンポラリー作品を踊っている姿を見れたのは、大変貴重でした。照明やプロジェクションを駆使した現代的演出は、ダンスが好きな人であれば誰でも楽しめるものだったと思います。

 

 

 

2組目は、ワガノワ出身ペア、ウラジーミル・シクリャローフ&オリガ・スミルノワ。

 

「ロミオとジュリエット」と「ジュエルズ」の”ダイヤモンド”という超人気演目を披露してくれました。

 

「ロミオとジュリエット」では、まずシクリャローフが挑発的な笑みを浮かべて、舞台袖から登場した瞬間に鳥肌が立ちました。

約10分の演技の終盤、ジュリエットとともに客席側を向いて天を仰いでいるときの彼の吐息が客席まで聞こえていました。いかに彼が情熱的にロミオを演じていたのかがよく分かりました。

 
 
 
 
 
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スミルノワは、夜空の遠くを見つめて物思いにふけるような大人のジュリエットを見せてくれました。(バレエ通向けにコメントすると、もともと彼女はジュリエットを演じることがほとんどないので、マリインスキーのラブロフスキー版ジュリエットを披露するのは今回が初めてでした!ファンとしては、必見の演目だったと言えます。)

 

「ダイヤモンド」では、シクリャローフはスミルノワを支える脇役に徹していた印象があり、主役は明らかにスミルノワでした。

 
 
 
 
 
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彼女の非現実的で硬質な美しさは、まさに宝石でした。そして、遠くを見つめるような眼差しからは、ダイヤモンドに当たって煌めく光すら感じられました。しかし、ただ無機質な宝石なのではなく、光の当たり方が変わると輝き方が変わるように、僅かな表情の変化も感じさせる叙情的なダイヤモンドでした。(私は、その瞬間しか楽しめない彼女のタイヤモンドの方が、実物のダイヤモンドよりも価値があるのではないかと思います。)

 

 

 

3組目は、マリインスキー&ボリショイのテクニシャンペア、キミン・キム&エカテリーナ・クリサノワです。

 
 
 
 
 
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キミン・キムは、比類ないテクニックを武器に、アジア人初のマリインスキーのプリンシパルに上り詰めました。

クリサノワは、生粋のボリショイ・ダンサーで、可愛げのある快活なパフォーマンスが魅力です。

今回2人が披露してくれたのは、「海賊」と「ドン・キホーテ」というトップクラスで盛り上がる2演目でした。

両演目でこの公演一番の拍手を浴びていたのは、キミン・キムでした。初日の「海賊」のアダージオは慎重に踊っていましたが、ヴァリエーションで素晴らしい高さと切れ味のあるジャンプを披露して、喝采を浴びると、一気に勢いづき、コーダでも素晴らしく元気溢れるパフォーマンスを見せてくれました。彼が、観客からの拍手を受け取って、それに応えるようにパワーアップしたパフォーマンスを見せるという舞台と客席のコミュニケーションがそこにはありました。」千穐楽の大トリもこのペアが務め、キミン・キムの剣のような足さばきと、クリサノワの可憐で元気な演技で、このバレエの祭典を締めくくってくれました。

 

 

そして最後にご紹介するのは、ロシア・バレエ界の女帝スヴェトラーナ・ザハーロワです。このブログでも何度もご紹介させていただいております。先月お届けした公演レポートでは、ザハーロワと彼女の夫によるバレエ公演をリポートしました。

tufs-russialove.hatenablog.com

この世界バレエフェステイバルでも「瀕死の白鳥」を披露してくれました。

 
 
 
 
 
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ザハーロワ本人が、「この演目はその時のコンディションや感情によって踊り方が変わってくる」ととあるインタビューの中で答えていました。今回、ふたつの別々の公演で同じこの演目を見たことで、このことが本当であることが分かりました。例えば、両腕を天高く振り上げる振り付けがありますが、そこの音のとり方が絶妙に変えてありました。

他のダンサーたちは、ほとんどがペアで10分ほどの演目を披露していたのに対し、彼女は1人で5分弱の演目を1つだけ披露するだけでした。しかし、演目が始まったときの客席の緊張感、そして拍手の大きさは、「別格」でした。いかにバレエ・ファンの間で彼女が人気か、いかに今回彼女の踊りを楽しみにしていたのかがよく分かりました。

 

 

そして、公演の最後は華やかなカーテンコール!1976年の第一回から、毎回チャイコフスキー「眠りの森の美女」より”アポテオーズ”と言う曲に合わせて、出演したダンサー全員が登場する恒例行事です。

第一回から前回の第15回のカーテンコールまでを一気に振り返れる動画がこちらです。

www.youtube.com

(ザハーロワが出演すると、必ず中心で最後に挨拶をします。名実ともに世界のバレエ界全体の女王的存在であることが伺えます。)

 

今回は感染症対策のため、「ブラボー」の禁止など、多くの制約がありましたが、その一方で、最後には花火のプロジェクションマッピングという新しい試みもありました。

 
 
 
 
 
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千穐楽の公演では、さらにその後、ダンサーたちが法被と扇子を持って、歌舞伎のような挨拶を披露してくれるというサプライズもありました。

 
 
 
 
 
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この公演は、コロナ禍初の海外ダンサーを招聘した大規模公演だったので、開催自体がギリギリまで危ぶまれていました。そのこともあり、千穐楽のカーテンコールでは、無事に全公演が完走できたことに本当に感無量で、筆者は拍手しながら号泣してしまいました。

 

公演を主催して下さったNBS日本舞台芸術振興会の方々、来日して下さったダンサーの方々をはじめ、この公演を支えて下さった全ての方々にバレエ・ファンを代表して深く感謝申し上げます。Спасибо большое!!(スパシーバ・バリショーエ)

 

では、いつか読者のみなさんと劇場でお会いできる日が来るのを楽しみに待ってます!До встречи!(ダ フストレーチ)!(またお会いしましょう!)

 

文責:長谷川公樹

 

今日のロシア語

бриллиант(ブリリヤーント)

意味:ダイヤモンド

королева(カラリェーヴァ)

意味:女王

ロシアのひんやりアイスはいかが?

Здравствуйте (ズドラーストヴィチェ)! こんにちは!

 
ロシア専攻4年の芝元です!
 
今週のブログテーマは「ひんやりロシア」ですが、みなさんはこの言葉を聞いて何を思い浮かべましたか?
 
私の場合、真っ先にアイスが頭に浮かびました✨
 
ということで!今回は!モスクワのスーパーで買ったアイス3種についてレビューをしたいと思います!
 
それではスタート⭐️
 
 
 
① радуга (ラードゥガ)
 
まずは袋に描かれたカラフルなアイスが目を引くрадуга (ラードゥガ)というアイスをご紹介します!

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前面
 

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裏面
 
このアイスはЧистая Линия (チースタヤ リーニヤ)というブランドの商品です。
 
радуга (ラードゥガ)にはいくつか種類があるのですが、私が買ったのはстаканчик (スタカーンチク)というバージョンです。
 
Чистая Линия (チースタヤ リーニヤ)公式HPのрадуга (ラードゥガ)の商品ページ↓
 
ちなみにスーパーで109ルーブル(2021/9/27 5:00時点で約166円)で買いました。(実際は値引きがされていて76ルーブル(2021/9/27 5:00時点で約116円)で買うことができました!)
 
気になる実際のアイスがこちら。

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上から見た写真

 

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横から見た写真
 
思っていたより淡い色でしたが、カラフルなことに変わりはないですね。
 
ちなみにパッケージの裏に4つの色についての説明がありました!
 

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黄色はにんじんジュースのカロテン、ピンクはビーツのジュースを濃縮させたもの、黄緑は緑野菜のジュースの葉緑素と粉末状のウコンを混ぜたもの、水色はスピルリナという藻のエキスだそうです!
 
色ごとに食べてみましたが、違いはよくわかりませんでした。
 
ただ、ぱっと見て身体にあまり良くなさそうなアイスとは思えないほど濃厚な味がして驚きました。コーンは柔らかめでした。
 
 
 
② сахарная трубочка КАКТУС (サーハルナヤ トルーバチカ カークトゥス)
 
次に紹介するのはこのアイスです↓

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このアイスもрадуга (ラードゥガ)Чистая Линия (チースタヤ リーニヤ)というブランドのもので、同じくいくつか種類があるようです。
 
Чистая Линия (チースタヤ リーニヤ)公式HPのКАКТУС(カークトゥス)の商品ページ↓
 
ちなみにスーパーで106ルーブル(2021/9/27 5:00時点で約161円)で買いました。
 
実物がこちら。

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率直に言って、結構毒々しい見た目をしていて驚きました。が、食べてもびっくり。このアイスもとても濃厚で、コーティングのチョコに付いているイチゴのフレークが良いアクセントになっていました。
 
中身はバニラアイスとイチゴのジャムのようなものでした。

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※食べかけで申し訳ありません。
 
ただ、パッケージに描かれているほどイチゴのジャム(?)は入っていませんでした。でも美味しかったのでオールオッケーです。これもコーンは柔らかかったです。
 
 
 
③ пломбир (プロムビール)
 
最後にご紹介するのはこのアイスです!

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前面
 

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裏面
 
このアイスは48 копеек(カピェーク)というブランドの商品です。
 
これも色々な種類があったのですが、今回は無難にバニラ味を選んでみました。
 
ちなみにスーパーで59ルーブル(2021/9/27 5:00時点で約90円)で購入しました。
 
実物はこちら。可愛い見た目ですよね☺

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味はもちろん濃厚で美味しかったです!このアイスもコーンは柔らかめでした。
 
 
いかがだったでしょうか?
 
ロシアで売っているアイスは美味しいものばかりなので、訪れる際はアイスを食べることをお勧めします✨
 
また、みなさんのオススメのアイスもぜひ教えてください!
 
それでは!さようなら!Пока (パカー)!
 
 
文責:芝元さや香
 
 
*今日のロシア語*
 
мороженое (マロージナエ)
意味:アイスクリーム
 
радуга (ラードゥガ)
意味:虹
 
кактус (カークトゥス)
意味:サボテン
 
пломбир (プロムビール)
意味:アイスクリーム
 
 

【恐怖】背筋が凍る…!?ロシアにまつわる都市伝説5選

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みなさんこんにちは!東京外大ロシア語科4年のりおです☺️

 

今週のリュボーフィのブログテーマは「ひんやりロシア」(五感を使ってひんやりするロシアを感じよう)!ということで、今回はひんやりを通り越してゾクゾクが止まらない!?ロシアの恐怖系都市伝説を調べてまとめてみました!

一緒にゾクッと体験をしてみましょう😂(やや怖い内容も掲載しているので、心臓の弱い方は閲覧注意です!)

 

① ソ連とアメリカの権力争いに利用されたテトリス

ゾッとレベル:★☆☆☆☆

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誰もが一度はプレイしたことがあるであろう「テトリス」がロシア発のゲームであることは知っている人も多いかと思います!ソ連の科学者アレクセイ・パジトノフらが1980年代前半に教育用ソフトウェアとして開発した、ごくシンプルなパズルゲームです。

テトリスの開発以降、実はこのゲームにハマりすぎたあまり中毒症状が現れる人がロシア国内で続出しました。アメリカ率いる西側とソ連率いる東側がバチバチに対立していた当時、ソ連当局はテトリスの中毒性を利用して西側の生産性を落とそうとしていた…との噂があります。世界的にゲームが大流行したのちも、テトリスのゲームライセンス獲得による莫大な利益を狙って様々な企業が争っていました(そのうちの一つが任天堂です)。

世界中の人々から愛されるゲームの背景に大人たちの汚い目論見があったとは、少々ひやっとしますね…(笑)

 

 

② 40年以上謎の放送を続ける無人ラジオ局

ゾッとレベル:★★☆☆☆

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ロシアには、1970年代後半から40年以上もの間、24時間365日ずーっと不可解なノイズ音を流し続ける幽霊ラジオ局があるそうです…。「UVB-76」や「The Buzzer」と呼ばれるこのラジオの放送元はサンクトペテルブルク近郊の沼地のどこかという説が有力で、その目的は分かっていません。せっかくなので実際に放送音源を聞いてみましょう。

youtu.be

うーん、よくわからない…。けどなんか怖い…。

実はこの無人ラジオ放送は世界的に最も有名な都市伝説の一つだそうで、「ロシア軍の暗号通信なのではないか」「ロシア政府が宇宙人と交信しているのではないか」…など様々な憶測が飛び交っています。さらには「このブザー音が途切れたときがロシアが世界に核ミサイルを発射する合図だ」という説もあります(笑) 仮説の信憑性は低いですが、だんだん都市伝説っぽくなってきましたね!

 

 

③ バイカル湖に眠る25万人の凍死死体

ゾッとレベル:★★★☆☆

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シベリアにある広大で世界一深い湖・バイカル湖には、なんと25万もの人々の死体が沈んでいるとの都市伝説があります…。時は今から100年以上前の1917年、帝政ロシアで革命が起きてロマノフ王朝は崩壊しました。新政権を握ったソビエト政府の革命軍(赤軍)と、ロシア国内で帝政ロシアの復活を目指す白軍との激しい戦いが起こっていた頃、窮地に追い込まれた白軍とその家族や貴族たち総勢約125万人はシベリアの奥地へと逃げようとします。イルクーツクに辿り着いた時にはすでに約100万人が亡くなり、残った25万人は冬の凍ったバイカル湖を横断しようとしました。しかし激しい猛吹雪と寒波で気温は氷点下70度まで下がり、湖上で一人残らず全員が死に絶えてしまった…という噂です。

125万人が一斉に逃亡したなんて本当なのか怪しい気がしますが、悲しい都市伝説の一つですね。

 

 

④ 雪山で遭難した大学生9人の不審死

ゾッとレベル:★★★★☆

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1959年、真冬のウラル山脈で登山をしていた若いロシア人の男女9人が遭難し、全員が後日死体となって発見されたというこの恐ろしい事件は、ディアトロフ峠事件と呼ばれています。実際に起こったこの事件の不可解な点は、当時氷点下30度の中で服や下着を身につけていない遺体や放射能に汚染された遺体があったことです。あまりにも矛盾の多い現場状況ですが、当時の捜査機関は彼らの死因を「未知の自然な力」によるものとし、ソ連当局はそれ以降口を閉ざしました…。ソ連という秘密主義の国で発生した衝撃的な事件は世界中で話題となり、今日に至るまでさまざまな陰謀論が囁かれたのでした。

 

実は、最新の調査によって9人は特殊な雪崩現象に巻き込まれた可能性が高いことが判明しましたが、エイリアンによる誘拐説や原住民による襲撃説まで、笑ってしまうようなトンデモ仮説が生まれています(笑) 人間の想像力はすごいですね。この事件も興味のある方は是非詳細を調べてみてください!

 

 

⑤ 人体実験により2週間眠らなかった男

ゾッとレベル:★★★★★

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このロシアの睡眠実験は都市伝説界隈ではかなり有名なものなので、知っている方も多いのではないでしょうか?

人体実験が盛んに行われていた1940年代のソ連。ガス室に閉じ込められ、興奮剤によって眠ることができない状態にさせられた五人の囚人は、実験が終われば釈放してもらうことを条件に「人は眠らないとどうなるのか」を検証する実験に参加させられていたのです。

被験者たちは最初の数日間は通常通り振舞っていたものの、5日が経過すると重度の偏執病の症状が現れ、さらに9日目には被験者の一人が叫び声をあげて声帯を壊してしまいました。実験を開始して15日目、研究者が興奮剤の供給をやめてガス室の扉を開けようとすると…(この後の経過はあまりにも怖いので割愛します!気になる方は調べてみてください)。

 

実はこの都市伝説…作り話なんです!逆になんか安心です(笑)

しかしこのフェイクストーリーが作られた背景には、当時のソ連で実際に動物実験が行われていたり、不眠でも戦場で戦える兵士を薬によって作ろうとしていたり…という恐ろしい事実があります。そう考えるとやはりゾッとしてしまいますね。

 

 

さて、今回はロシアにまつわる5つの都市伝説を紹介しましたが、ひんやり…どころではなく、恐怖のあまり震え上がってしまうレベルのものもありましたね。ロシアはなんとなく怖くてミステリアスな国というイメージのせいか、さまざまな都市伝説が誕生しやすい気がしています(笑) 楽しんで読んでくださったのなら幸いです😁

 

それではまた!

 

文責:りお

 

*今日のロシア語*

городская легенда(ガラツカーヤ リゲーンダ)

意味:都市伝説

ужасный(ウジャースヌィー)

意味:恐ろしい、苦しい、ひどい

 

《参考》全て最終閲覧:2021年9月22日

・Gigazine「世界的パズルゲーム「テトリス」の知られざる歴史とは?」

https://gigazine.net/news/20180205-story-of-tetris/

・ロシアビヨンド「UVB-76の謎めいた信号の意味」

https://jp.rbth.com/science/2017/08/14/821822

・カラパイア 不思議と謎の大冒険「凍死した数十万人の魂が眠る。バイカル湖にまつわる悲劇の都市伝説(ロシア)」

https://karapaia.com/archives/52036037.html

・NIKKEI STYLE 「9人怪死「ディアトロフ峠事件」 科学が迫る真相」

https://style.nikkei.com/article/DGXMZO68742440S1A200C2000000/

・Wikipedia「ロシア睡眠実験

https://ja.wikipedia.org/wiki/ロシア睡眠実験

 

「ロシア怪談集」をひらく ―死してなお人間は、死んで…これ死んでる?-

Доброй ночи(ドーブライ ノーチ)(こんばんは)...りん です...

今回は“ひんやりロシア”ということで、あの文豪たちが書いたホラーを集めた一冊「ロシア怪談集」から極限の恐怖、選りすぐりの奇譚怪談を紹介いたします。

 

 

まず最初は国民詩人プーシキン(Александр Сергеевич Пушкин)による「葬儀屋」

葬儀屋のアドリアンは新居に引っ越したところ近所の靴屋からパーティーに招かれます。様々な職業の人々が集まるパーティーではお互いがお客様同士。乾杯のスピーチ代わりにそれぞれ挨拶してゆきますが、彼らの生業はパン屋や仕立て屋など生者を相手にするものばかり。ただ一人亡者を相手にするアドリアンは“挨拶すべき相手”がいないことをからかわれてしまいます。

 

すっかり気分を悪くした彼は怒ったまま帰宅、酒も入っていてついついとんでもないことを口走ってしまいます。新宅祝いに亡者どもを俺の家に呼んでやる、と。

 

その夜、急な葬儀に呼ばれたアドリアンは仕事を済ませて帰りつきますがどうも家の様子がおかしい。なんと家は彼の口にした通り、今まで弔った亡者でいっぱいでした。肉の残っている者、骨のそろっている者、動ける体のある者は皆アドリアンに招待されてやって来たのでした。彼に口々に挨拶する亡者たちは様々な職業の人たちばかり、軍曹や旅団長までいます。肩書だけなら昼間の宴席にも負けていませんね。

 

 

あまりの恐怖に気を失ってしまったアドリアンですが、目を覚ましたところ部屋は空っぽ。使用人から昨夜は何もなかったと聞かされます。アドリアンがすっかり安心したところでお話は終わりますが、果たしてこの出来事は夢なのか現なのか…

と、いうのもこの本にはもう一編、死してぬけがらとなったはずの死者の肉体が“まだ生きている”お話がありますから…

 

 

続いてはロシア最大の文豪の一人、ドストエフスキー(Федор Михайлович Достоевский)が描く「ボボーク」

 

あちこちの編集部に持ち込みをするしがない物書きのイワンは葬式に出くわし、そのまま墓場で物思いにふけります。長い間そうしていると次第に色んな声が聞こえてきました、冷たい墓石の下から。枢密参事官や陸軍少将に上流のご夫人から商人まで、様々な人々が屍のまま口も動かさず言葉を交わしていたのです。話題も多様なもので、自分たちの身の上話から哲学の持論とひまつぶしの小話、そしてなぜ自分たちが死後も意識を保っているのかまで...

 

彼らの話によれば、人間は死後も意識が肉体と一緒に数か月は残り続けるらしいです。しかしそれもだんだんとあいまいになっていき最後には意味のある言葉は発せなくなるとのこと。

 

真偽のほどはいかにせよ、とにかく命のロスタイムを自覚している亡者たちは来るべき二度目の死が訪れるまでひたすらにお喋りを続け、イワンは耳をそばだてます。短い時間を楽しく愉快にすごそうと提案する者もいればひたすら生前を後悔する者もいます、いずれにせよ身じろぎもできずに迫る死の恐怖から狂気に浮かされているようです。

場が盛り上がってきたところでイワンはくしゃみをしてしまい死者たちは一気に静まり返ります。墓地を後にすることにしたイワンはそれでも再びそこを訪れ、聞いた話を編集部に持ち込むことを決心します。

 

 

以上、死者の肉体と魂に関する二編でした。冒頭に極限の恐怖とか書きましたがホラーというよりは不思議の側面が強かったですね。これらの話に共通していたのは死後も肉体に魂が宿っている描写でした。昔のロシアは土葬だったのでそういうこともあるんですかね。少し違うところは「葬儀屋」では死者が墓を動いて抜け出した(ように見えた)けれど「ボボーク」では死後間もない遺体でも動けなかったあたりでしょうか。ただどちらの作品においてもあまりに風化してしまった亡者は動くこともしゃべることもかなわなかったので、肉体が魂をとどめて置ける損壊には限度があるのでしょうか。興味深いですね、来年卒論のテーマにでもするか。

 

ちなみに「葬儀屋」のアドリアンは自分に挨拶に来た骸骨が怖すぎて突き飛ばしたところばらばらに崩してしまいそのことを他の亡者たちから詰められ、怖すぎて気絶します。「ボボーク」のイワンは死者たちの楽しいお喋りに水を差して中断させてしまいます。前者からは生死は分っても礼儀や態度を変えてはいけない、後者からは生者と死者は住む世界が違うのでうかつに踏み込んではいけない、といったことがうかがえます。現世の人付き合いも大変なのに幽世でも人付き合いに気を使わないといけないのは果てしなく面倒な話ですね。

 

うまいこと紹介する力がなくて諦めましたが本書は他にも傑作的怪奇が11本収録されています。ぜひご鑑賞ください。

 

文責:りん(国際社会学部ロシア地域ロシア語専攻3年)

 

今日のロシア語

Душа(ドゥシャー):魂

Тело(チェーラ):肉体

Смерть(スミェールチ):死

 

参考:「ロシア怪談集」、2019年、沼野充義、河出書房新社

氷点下での沐浴はロシア正教徒の試練??

こんにちは!東京外国語大学3年の川又です。

あと10日で夏休みが終わってしまうので少し寂しいです。

 

今週のブログのテーマは「ひんやりロシア」です。面白いテーマですね。

最近の東京は、昼はまだ暑さが残るものの夜はかなり肌寒く感じます。今回の記事はこのちょっと冷えてきたこの時期に読むと「ひえっ」となる記事かもしれません。

 

今回はロシア正教の伝統儀礼である沐浴についてお話しします!

 

youtu.be

まずはこちらのプーチンによる沐浴の映像をご覧ください。今年1月20日放映のテレ東のニュースです。再生回数が50万回近くまで伸びているので、普段からロシアに関するニュースに注目している人は見たことがあるかもしれませんね。

この日の気温はなんと氷点下15℃!そんな中でこの凍った水の中に入るなんて、想像するだけで体が霜焼けを起こしそうです。

f:id:tufs_russialove:20210921220109p:plain



この沐浴は、伝統的に例年1月19日の洗礼祭の日に行われます。冷水に3度浸かって穢れを清め、無病息災を祝うそうです。

この日は、イエス・キリストがヨルダン川で洗礼者ヨハネの洗礼を受けた日であることから祭日とされています。ユリウス暦を採用しているロシアでは1月19日に当たりますが、その他の国では1月6日に祝われているようです。

 

プーチン大統領の沐浴の映像が日本でもプチバズ(ちょっと流行)していて、「ロシア正教ってこんなことしないといけないの怖い!」と思われる方もいるかもしれません。しかし、「伝統的」と書いたように、実はこの冷水に飛び込む危険な沐浴はロシア正教会が決定している絶対の規則ではないようです。ロシア正教会における洗礼祭のメインイベントは教会での祈祷と聖水の奉献であり、沐浴については正教会も「危ないから推奨はしない」という態度を取っているようです。

確かに、救急隊員に見守られながらするような沐浴が正教徒の絶対の規則だったら嫌ですね(笑)

https://www.gazeta.ru/social/photo/kak_proshli_kreshenskie_kupaniya_v_rossii.shtml?updated

↑こちらのサイトからロシア各地での沐浴の写真が見られますが、左から5枚目の写真はがっちり救急隊員の人に支えてもらいながら水に浸かる女性の写真です。水着姿の女性と帽子と手袋までバッチリの救急隊員とのギャップが面白いです。

そこまで対策するということはこれまでに心臓発作とか何か事故があったのかな…と考えずにはいられません。

例年の参加人数がどれくらいなのかははっきりとはわかりませんでしたが、ある記事によると、2020年の洗礼祭では首都モスクワだけで46箇所の沐浴場が設置されたようです。結構多い!

 

また、調べていく途中でпрорубь(プロールピ)という単語を知りました。「氷に開けた穴」という意味らしいです。ロシア文化を反映した単語!って感じがしていいですね。また、この穴は「ヨルダン」と呼ばれることもあるようです。もちろん、イエス・キリストが洗礼を受けたヨルダン川の名に由来しています。

 

「ロシア人ってぶっ飛んでるなあ」「やっぱり寒さに強いんだなあ」というステレオタイプなロシア人の姿がより強く印象付けられてしまいそうです(笑)が、実際寒さには強い人が多いのでしょうね。すごいですロシア人。

 

文責:川又

 

今日のロシア語

крещенские купания(クレシェンスキエ クパーニヤ)

意味:(洗礼祭の日の)沐浴

пропубь(プロールピ)

意味:氷に開けた穴

 

 

参考サイト

https://tass.ru/obschestvo/10471387

https://www.gazeta.ru/social/photo/kak_proshli_kreshenskie_kupaniya_v_rossii.shtml?updated

https://www.mos.ru/news/item/68198073/

 

公演レポート ザハーロワ&レーピン

Привет(プリヴィエット)!(こんにちは!)、ロシア語科のバレエ担当、長谷川公樹です!

今回のシリーズのテーマは「外大生の夏休みの過ごし方」ということで、僕はこの夏に観たバレエ公演についてお届けします。

 

僕は、先月(2021年8月)ロシアのバレエダンサーが出演する公演を観てきました。

ザハーロワ&レーピン パ・ド・ドゥ前橋公演(8/11)

 
 
 
 
 
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ロシア・バレエ界の女帝スヴェトラーナ・ザハーロワと、その夫で世界的バイオリニストであるワディム・レーピンが共演する公演でした。

 

スヴェトラーナ・ザハーロワについては以前に出した記事で紹介しています。
https://tufs-russialove.hatenablog.com/entry/2021/08/31/202005

 
 
 
 
 
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ワディム・レーピンについても軽くご紹介しましょう。

 
 
 
 
 
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彼は、ノヴォシビルスク生まれで、5歳でヴァイオリンを始めると、わずか7歳にしてオーケストラと共演。その後も、数々のコンクールで優勝し、17歳のときに国際的な演奏活動を始めました。

 

この公演は、レーピンが主催する「トランス=シベリア芸術祭」の一環として、コロナ前は毎年関東から関西圏にかけて、全国の数カ所で開催されていた公演です。今年は、都内での開催がなかったため、はるばる群馬県の前橋まで観に行きました。
席は、なんと3列目中央✨。それも、今回はオケがステージ上にいたので、オーケストラピットもなし!これまでのバレエ人生の中で、こんなに間近でバレエを観れたのは初めてでした。

同公演の様子は、2人のインタビューも合わせて、こちらの動画でわかります。英語字幕もついていますよ。
https://www.youtube.com/watch?v=1I08MIN5FEw

www.youtube.com

この公演では、レーピンらの演奏に合わせて、レーピンがソロで演奏するパートと、ザハーロワをはじめとしたボリショイ劇場のダンサーたちが踊るパートが交互に展開される構成でした。

 

レーピンの演奏では、サン=サーンスの「序曲とロンド・カプリチオーソ」が素晴らしかったです。時には紳士的に、時には険しく、時には繊細に、時には渋く、音楽的な意味で、レーピンの表情の豊かさがよく分かる作品でした。3列目だったので、実際に演奏中のレーピンの顔の表情も切り替わっているのもよくわかりました。

 

バレエの方では、ザハーロワのさまざまな側面を見せてくる公演でした。
「ライモンダ」「カラヴァッジオ」では、相手を包み込むような母性的な姿を見せてくれました。彼女は、映像で見ると気高くクールな印象があるので、生で観て初めて母性的なオーラに気付かされました。

 
 
 
 
 
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有名な「瀕死の白鳥」は、長く美しい手で舞台上の空気を導いているようでした。

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彼女が最後、天高く両腕を振り上げて止めた瞬間に、空気もそこで静止し、白鳥の上体とともに、地に向かってゆっくりと沈んでいく場面が心に残っています。
そして、間近だったので、彼女の肩甲骨の細かな動きがよく観て取れたのもよかったです。

 

とてもインパクトがあったのは、「Revelation」です。

www.youtube.com


これは、有名な「シンドラーのリスト」の曲に合わせて作られたコンテンポラリー・ダンスです。振り付けは、平山素子さんという日本人のダンサーです。

 

僕は、初めて振り付けという概念を感じさせない踊りに出会いました。
もちろん振り付けは決まっているのですが、ザハロワが「シンドラーのリスト」の音楽と共鳴して発生した感情によって、衝動的に動いているように見えました。つまり、音楽と感情表現そしてムーブメントが至って自然にマッチしていたのです。

そして小道具として登場した椅子の使い方も秀逸でした。椅子に乗ったときのバランスの悪さからは、生命の繊細さ、危うさ、儚さが感じられました。特に最後、横倒しになった椅子の上に立っているザハーロワが僅かに揺れている姿が脳裏に焼き付いています。
そして、一度消えた照明が再びつき、拍手を受けているときのザハーロワの表情も心に残っています。演技中に高ぶった感情の余韻を感じさせる表情をしていました。

 

締めくくりは、「レ・リュタン」より「妖精の踊り」というコメディ・バレエでした。初めに、レーピンとボリショイの男性プリンシパル、ミハイル・ロブーピンが日本語も交えたコントを披露してくれました。実は、僕は2019年にも同演目を観ているのですが、そのときとはコントのネタが変えてあり、今回はコロナに関連したネタとなっていて、おもしろかったです。


これは、ザハーロワの明るくコミカルな一面を見れる超貴重な作品です。いくらコミカルでも、絶対に品性を損なわないところは、さすがザハーロワです。

 
 
 
 
 
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カーテンコールのときに、彼女が「アリガトウ」と囁いているのも分かって嬉しかったです。

また、ご夫妻で日本にいらっしゃることを願わんばかりです。

 

 

では、次回はバレエ・ファン待望のバレエの祭典「第16回世界バレエ・フェスティバル」の公演レポートをお送りします!

 

 

文責:長谷川公樹

 

今日のロシア語

оркестр(アルキェーストル)

意味:オーケストラ

хореография(ハリアグラーフィア)

意味:振り付け