東京外国語大学ロシアサークルЛЮБОВЬ(リュボーフィ)のブログ

「未知なる魅惑の国」であるロシアならではの文化から、留学や旅行のこと、東京外国語大学でのキャンパスライフのことまで。このブログでは、東京外国語大学のロシアが大好きな学生たちが様々なテーマに沿って日替わりで記事を書いていきます。ЛЮБОВЬ(リュボーフィ)とは、ロシア語で「愛」を意味します。

東京外大生にインタビュー!第18弾【ラオス語科編】〈前編〉

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ラオス語科 ラオ科の元店長さんへのインタビュー

 

Здравствуйте!国際社会学部3年のももです。他語科とのコラボ企画(アジア編)ということで、今回私はラオス語科の「ラオ科の元店長」さんにお話を伺いました!

 

「ラオ科の元店長」さんについて

東京外国語大学国際社会学部東南アジア第二地域ラオス語専攻3年。東南アジア地域研究ゼミに所属。趣味は漫画を読むことやアイドルの追っかけ など。外語祭でラオス語科の料理店の店長を務められました。1年生の春休みに外大の短期海外留学プログラムでラオスへ行かれたそうです。

 

ラオス語科について

ラオス語科には言語文化学部・国際社会学部合わせて10人前後の学生が所属しています。男子の数は毎年1~3人で、女子が多数を占めている学年が多いようです。語科の雰囲気は、学年によって異なりますが、「ラオ科の元店長」さんの学年は、程よい距離感で穏やかな人が多いそうです。

  

―外大に入った理由と、なぜ東南アジア地域のラオスを選んだのか、また学部はどうやって決めたのか教えてください。

元々声優になりたくて、その学校に通うためにはどうしても東京に来る必要があったんです。それで、国立しかダメで、英語が得意だったので、結構安易に外大って決めました(笑)。ラオスにした理由は、高校の地理の授業でラオスが出てきたときに、ほんとに直感なんですけど、多方面にまだ可能性が残ってる国だと感じたんです。後々考えると、ほかの東南アジアに比べて日本人の知名度が低いところやGDPが最も低くて開発が遅れているところ、日本企業や外国企業が比較的進出していないところなどに開発の余地があると感じたのかなって思います。

声優を志したのは中学くらいなんですけど、どうせなれないだろうってずっと悩んでたんです。でも高2の時に、一回チャレンジしないと絶対後悔するだろうなと思って、東京に行くことを決めました。だからまず東京に来ることを決めて、後から外大を決めた感じです。

また、言語それ自体ってよりは経済や文化方面への興味が強かったため国際社会学部にしました。

 

―実際に入ってみてのギャップなどはありましたか?

忙しいと聞いていたので、予習復習にかける時間とか課題の量とかはイメージ通りでした。ただ、言語漬けの生活を送ると思いきや、それは春と秋だけで、夏休みと春休みが結構長いんだなと思いました。その間何にもしなかったらラオス語もどんどん忘れるし。英語も1年の時にちょっとやっただけだからあんまりできなくなってて…。自分の言語力を高3の自分が見たらびっくりするだろうなというギャップはあります。

 

―語科の雰囲気を教えてください

私の学年は割と淡白で、行事の時はすごく盛り上がるのですが、プライベートで遊んだりはあまりないです。ただみんな穏やかで雰囲気はいいです。ラオス語科は、絶対ラオスじゃないといけないとか、これをやりたいと思って入った人が、大語科に比べて少ないかなと思います。なので緩い雰囲気はありますね。

 

 

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ラオスの民族衣装である巻きスカートの「シン」

―先輩との交流はありますか?

年に一回先生が開くラオス語のスピーチコンテストがあって、基本全員参加なので、そこで先輩や後輩と話したりはします。顔と名前が一致しないなんてことはないんですけど、めちゃめちゃ交流の場が設けられてるわけではないですね。みんな一人二人の仲いい先輩がいる感じです。

 

―ラオス語科に入ってよかったこと、逆に後悔したことを教えてください

正直なところ、よかったところはあまり見いだせていないです。2年生の途中で、何でラオス語やってるんだろうって思いました。ラオスで手に入る商品やテレビ番組はタイから買ったものがほとんどなので、ラオス人はタイ語がしゃべれるんですよ。あとラオス語の単語もタイ語と似てて、タイ語やっとけばよくない?って思っちゃいました。あと、大都市に住んでるのはほぼラオ族なんですけど、国全体で見るとラオ族の人口は6割か7割らしくて。ラオス語を使うのはラオ族だけなので、結局そんなに使われてないんですよ。公用語はラオス語なんですけど。

そういえばそれに関連して、小学校の授業をラオス語でやるからラオ族以外の子がついていけなくて離脱しちゃうという話をよく聞きます。進級試験の国語ができなくて、進級できないとか。ラオスは教育が充実していないため、そこが課題なんです。

語科の話に戻すと、たださっきも言ったとおり、語科の雰囲気はいいし、先生方も親身になってくれます。私のような学生も過去にいたみたいで、あまりラオスに興味がないというような悩みに対しても親身になって答えてくれます。

 

―言語の勉強はどのように進みますか?

一年の春学期は、文字・子音の持つ声調・声調記号や末子音による声調の変化をひたすら覚えます。(声調とは一種の高低アクセントのことで、同じ発音でも声の高さが上がる場合や下がる場合、平たんな場合など様々な種類があります。声調記号とはどの抑揚のパターンかを表す記号)

あとは初歩的な文法と、聴解と、会話の授業です。秋学期からは文法が一コマになって代わりに読解の授業になります。二年生から文法と聴解がなくなり翻訳・作文の授業が始まります。

 

―ラオス語にも声調があるんですね。

はい、中国語とほぼ一緒ですが、中国語より一つ多い5つの声調があります。子音が持つ声調はそれぞれ決まってるんですけど、声調記号がつくことによって声調が変わってくるのでそれを覚えるのがすごい大変でした。

 

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抑揚によって同じ「ムー」でも意味が異なる

 

―ロシア語では発音ってそこまで正確にしなくても通じたりするんですけど、ラオス語はかなり音声が重要な言語なんですね。

そうですね、声調によって意味が変わるので。一年生のときは聴解で発音と声調の聞き取りをひたすらやっていました。

 

―文法についても教えていただきたいです

ラオス語は格変化や動詞の活用が全くないんですよ。だから格変化とかを覚えなくていいのは楽なんですけど、逆に訳すのがとても難しくて…。動詞が活用しないので、例えば「買いに行く」という文だと「買う」と「行く」という動詞をただ並べてたりします。修飾語がどこに係るかも明確じゃなかったり、語順は決まってても動詞の場所が割と自由だったり。だから和訳のときに、この単語は前の目的語に係るのか?それとも両方動詞として訳すのか?といった判断が最初はかなり難しかったです。最近は感覚で訳しています。文法はあるんですけど感覚の部分が多いって感じです。去年まではそれが嫌できつかったんですけど、今年やっと綺麗にラオス語が訳せるようになってきたかなって思います。私は結構意訳を嫌う性格なので、機械的に訳していく方が楽なんですよ。そういう人にとっては最初は感覚を手に入れるのが大変かもしれないです。でも翻訳とか作文の演習を通してこういった感覚は養われていきます。

 

―ロシア語は文法がきっちりしているので真逆かもしれないですね。

はい、そうかもですね。でも東南アジアってそういう言語が多いのかなって気はします。文法がきっちりしてない分声調に厳しいっていうか。その点上手いことできてるのかもしれないですね。覚えることの多さって結局同じというか…。ラオス語は声調がめちゃめちゃ大変だけど、別に動詞は活用しないし。逆にロシア語とかはあんま発音とか気にしないっておっしゃってましたけど活用を覚えるのが大変ですよね。

 

―どの言語を選んでも何かしらの苦労はあるってことですね。ちなみにラオス語の文字が可愛いという話を聞いたことがあります。 

はい、一時はそれだけをモチベーションにしてました(笑)。絶対文字の一か所に丸が一か所あるし直線がないので可愛いんですよね。子音、母音、末につく子音があって文字の構造はハングルに近いですかね。ただ韓国語は規則があって、一文字一文字同じ大きさなんですけどラオス語はどこに母音がつくかがバラバラなので、最初はどこまでが一文字かわからなかったです。

 

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ラオス文字 どれも一文字だそうで、確かにわかりづらい…!

 

語科の卒業生はどのような進路に進む方が多いですか?また、ラオ科の元店長さんが将来やってみたい仕事や夢はありますか?

普通に就活して、一般企業に入られる方が多いです。報道関係にラオス語の通訳・翻訳枠がないこともないんですが、一度誰かが入ると次にその枠があくまで十数年~数十年かかるので、タイミングの問題だと聞いたことがあります。私は出版業界希望です。

 

―所属しているゼミと入った理由、勉強している内容を教えてください

東南アジア地域研究ゼミに所属しています。外大でやりたいことがはっきりしていなかったため、語科ゼミ (基本的にその地域専攻の学生のみが所属する、地域研究のゼミ)に入りました。ゼミ生の興味に沿って論文を読んで話し合ったり、ASEAN内の自分の専攻地域の立ち位置を考えたり、ということをしています。

 

―ラオ科の元店長さんが感じるゼミでの面白みは何ですか?

地域研究をして、当時の価値観や現状が見えてくるのが楽しいです。

 

―卒論ではどのような内容を書く予定ですか?

まだ具体的に決まっていないのですが、東南アジアのポップカルチャーについて書く予定です。

 

―最初にも話に上がりましたが、学生生活では部活動などよりも声優の学校に通うのがメインだったんでしょうか

はい、そうですね。部活動は、中学のとき陸上部に入っていて、どうしてももう一回陸上をやりたくなったので、期限を決めて陸上部に入りました。陸上を辞めてからは声優のほうにもう少し集中してって感じで過ごしていました。

 

―あんまりイメージが湧かないんですけど、声優の学校は時間が決まってて、自分で授業を取っていく感じなんですか?

そうです、夜間の週一のコースで、学生とか社会人とかが通っていました。でもそれだけじゃ少ないから、毎日自主練とかをしていました。私は別で、社会人の演劇団体にお稽古に参加させてもらっていて、そこでアクションとか演技とか、殺陣とかダンスとかをやっていました。なのでほぼ毎日そこに行きつつ、声優のほうは週一回決まった日に通っていました。

 

―では相当忙しかったんですね。学校行きながら語学の勉強って結構大変ですよね。

そうですね、忙しかったです。それでめちゃめちゃ単位を落とした時があって、一回やばくなりました。そこからは真面目に勉強したので大丈夫でしたけど(笑)。この夏色々オーディションに落ちて、普通に就活すると決めた時からが、コロナの影響もあって暇すぎたので、学生生活忙しかったなという感覚はもうあんまり残ってないです(笑)。

 

―でも打ち込めることがあったの羨ましいです。

今はもう声優を目指していなくて普通に就活してるんですけど、やって後悔とかは一切ないです。めっちゃ忙しくて単位落としたけど、そこに対する後悔とか、声優になれなかったから学校に通ってたお金とか時間とかが無駄だったみたいな後悔はほんとに全くないですね。やっていてよかったなとは思います。

 

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声優を目指して演劇活動をしていたとき

 

☆次回!ラオス語科後編!

-屋台!寺院!凱旋門!ラオス留学について!

-政治は社会主義だけど…?ラオスの今について!

 

文責:もも

(インタビュー実施日:2021年2月8日)

 

↓後編はこちら

tufs-russialove.hatenablog.com

 

東京外大生にインタビュー!第17弾【タイ語科編】〈後編〉

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↓前編はこちらよりどうぞ

tufs-russialove.hatenablog.com

 

【学びについて】

―所属しているゼミと、選んだ理由、勉強している内容を教えてください。

タイ語科ゼミです。私は言語文化学部の学生ですが、勉強していくうちにタイの経済に興味が湧きました。しかし、もし経済を専門的に勉強するなら国際社会学部のゼミにしなければならないので、そのことをゼミの先生に相談しました。先生から、タイに関連することならここで研究してよいという返答を頂けたので、私は今のゼミを選びました。

3年生のうちは基本的にタイの様々な文化について、各ゼミ生が自分の興味、関心に基づいてプレゼン行います。ゼミ生の興味が多様なため、講義のように学生全員がおなじ内容について学ぶ機会はないです。

 

―なるほど。柴田さんはどのようなテーマで発表しましたか?事前にお伺いしたところ卒論のテーマが未定ということですが、具体的な内容は決まっていませんか?

 前に述べたように(※[3])最初はタイ国内の発展途上な分野に興味があったのですが、その分野が教育、福祉、医療、経済格差など多岐に及ぶ上、それについても先行研究も多くなされています。発展途上な分野と一口にいっても内容が大きく深すぎるため、具体的には決めていません。

今関心のあるテーマの1つに、物乞いがあります。タイでは食べ物やお金の施しが日本に比べて一般的です。その背景にある人々の意識や、仏教との関わり合いに興味があります。もし施しがなければ物乞いの数は自然に減っていくはずですが、しかし実際は一定数を保っています。つまり物乞いの方に食事や生活資金の提供者がいることになります。その提供する意識はどこから来るのか、を調べてみたいです。

逆にタイと日本の経済関係を見ていたりもするので、また詳しく決めていません。

 

―物乞いは興味深いテーマですね。勉強になりました

※[3]前半の記事で「タイ語を選んだ理由」の回答に、該当箇所があります!

 

【留学について】

―タイに留学や旅行に行ったことはありますか?

はい。1年生の冬に短期留学でタイに行きました。バンコクのシーナカリンウィロート大学に1か月間、語科の人全員で留学していました。タイの文化と言語について教えてもらうことが中心でした。

プログラムに観光も組み込まれていて、泊まりでタイのビーチに行きました。動物園に行ったり、ゾウやトラのショーを見たりもしました。

 

※ゾウによるショーの写真を頂きました!奥で人が風船をつけていたに押さえつけられているのを見ると、どきどきしますね…。 

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―特に印象に残った思い出や場所はありますか?行ってみて、タイの印象が変わりましたか?

先に述べたように物乞いの人々が多く、首都バンコクでもそれが日常的だったことです。施しでギリギリの生活をしていても、物乞いの方々が生きていける環境であることが驚きでした。

また日本になくてタイにあるという点で、船が印象的でした。船は日本でいうバスのイメージで、10分程度おきに同じルートを航行していました。

 

※船の内部です。とても地元感があふれている印象です!

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―東南アジアの交通というと、バイクのイメージが強いですね。

バイクも多いです。バイクについて留学先の方から、「普通の四輪タクシーは密室で何かあったときにすぐ助けを呼べないから、気にならないならバイクタクシーを代わりに使うのも手」と言われました。

 

―なるほど、参考になります!

 

―現地の人はどのような雰囲気ですか?

優しいです。ショッピングモールで携帯電話を落としたのですが、それがちゃんと戻ってきたという経験があります。モールの受付センターに届けられていました。

またバンコクや観光地での話になりますが、英語が大体通じます。また日本語や朝鮮語など、何か海外の言語を第二外国語として習得している人も多いイメージです。韓国映画がタイでブームだからか、朝鮮語の読み書きのできる人が一定数いると感じます。

 

―そういう点では、タイは観光に力を入れている印象がありますね!少し安心して観光できそうです。

それからタイの方に、日本人は見分けやすいとも言われました。目が特徴的で、横幅が広めだとのことです。ぱっと見て分かるそうです。

またタイ人は明確な約束をせずに、また会おうと言って結局会わないことが普通のようです。タイ人はフットワークが軽く、急に電話で今予定がないか聞いてきて、もし空いていたらその日にその人と会う約束をする、ということはよくあります。そのため気持ちを濁すなとも言われました。日本人ならある程度会う時間や場所を決める、相手の会えるタイミングについて事前に知ったうえで聞くこともあると思いますが、タイではいつか会おうといっても、本当にいつ会うかは分からないのです。

 

―ほお、それは初耳です!

 

【タイについて】

―タイを勉強する最初の1冊となるような本はありますか?

私が今も使っている、『表現を身につける初級タイ語』です。ネイティブの先生がお書きになった本です。説明が日本語で読みやすいのでお勧めです。

 

―タイの音楽、絵画、文学、映像作品などで有名なものはありますか?

 BNK48という音楽グループが有名だと思います。

 

―なるほど、お恥ずかしながら私は正直タイの文化で思い当たる節がありませんでした。文化的な傾向はありますか?

タイ特有の傾向というと、一般にBL関係のドラマがあります。またとあるタイ映画を見たとき、仏教的思想が織り込まれていると感じました。例えば、生まれ変わりの理解がされていること、ご先祖様の幽霊が映画の前面に押し出されていることなど、タイの日常に仏教がしみ込んでいることが分かりました。

 

―お国柄が出ていますね。タイは仏教のイメージが強いです。

9割以上が仏教徒です。その他、タイ南部ではイスラム教徒が多数いたり、バンコクにもクリスチャンの教会があったりします。

 

―やはりそうなのですね。お恥ずかしながらこれも私は思い浮かばないのですが、タイの著名人と言えばどのような方がいますか?
Jリーガーのチャナティップ・ソングラシンが思い浮かびました。今も北海道コンサドーレ札幌に所属されています。

 

※チャナティップ選手は「タイのメッシ」とも称されているそうです!

公式サイトのプロフィール

https://www.consadole-sapporo.jp/team/topteam/detail/13/

 

―続いて、近年のタイの政治・経済の状況を教えてください。

国王が変わったことやコロナによる不況の蔓延などによって、政治的に安定している状況が続いているとは言い難いです。

 

―確かに、ニュースでも政局が不安定だとしか聞いていない気がします。同時にデモのイメージがあります。デモ隊がとっとこハム太郎を歌っていたのは覚えています。

歌の中で、「お金が好き」というふうに揶揄されています。

 

※「とっとこハム太郎」の主題歌を歌うデモ隊に関するニュース映像

https://www.youtube.com/watch?v=pvadEO3zsgc

 

―それから軍政のイメージもあります。

形の上では民主主義で、しかし元軍部出身の人が政治の中心にいるといった方が正確です。これには、選挙制度が正しく機能していないという背景もあります。

 

―日系企業の進出も多いので、何かあると不安になりますね。コロナと一緒に収まってほしいところです。

 

【ロシア×タイ】

―ロシアとタイの関わりについて何か知っている情報はありますか?

パタヤという観光地があって、そこにロシア人街があると聞いたことがあります。私は行ったことがないですが、ロシア語の看板が立っていたり、ホテルの案内板にロシア語が併記されていたりするそうです。

 

※実は東南アジア地域は、リゾート地としてロシア人に人気があります。都市によってはロシア人街が形成されていて、ロシア料理店もあります。ロシア人観光客を受け入れる態勢が整えられているようですね。ちなみにタイを訪れたロシア人は、2019年でおよそ150万人でした。同年の訪日ロシア人は12万人なので、いかに多いかが分かると思います。

        

訪日ロシア人の数についてはこちら

日本政府観光局 国籍/月別 訪日外客数(2003年~2021年)

https://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/since2003_visitor_arrivals.pdf

 

タイを訪れるロシア人の数に関する記事(ロシア語)

https://ratanews.ru/news/news_9012020_20.stm

 

【お知らせ】

─今回はインタビューをお引き受けくださってありがとうございました!最後に、柴田さんが所属している女子サッカー部についてお知らせします!

 

サッカー初心者・経験者・マネージャーさんも大歓迎です!!😊

ぜひ私たちと一緒にサッカーしましょう!⚽️🤝

SNSもぜひチェックしてみてください🥰

インスタ: https://www.instagram.com/tufswfc/

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匿名質問箱: https://peing.net/ja/tufswfc?event=0

 

文責:りゅう

(インタビュー実施日:2021年2月12日)

 

(※本記事に掲載している全てのURL 最終アクセス日2021.3.13)

 

*今日のロシア語* 

Таиланд(タイラーンド)

 意味:タイ 

слон(スローン)

 意味:ゾウ

судно(スードナ)

 意味:船

 

 

東京外大生にインタビュー!第17弾【タイ語科編】〈前編〉

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タイ語科 柴田さんへのインタビュー

 

こんにちは、来年度から4年生になります、言語文化学部ロシア語専攻のりゅうです。3月からオンライン留学とオンライン就活が並行しており、家でも忙しい学生生活を送っています。

 

引き続きの他語科とコラボ企画、今回はサークル内の人を通して、タイ語科の柴田さんにお話を伺いました。文化から経済的側面、タイについて幅広く目を凝らしておられるそうです。ここにいらした皆さんは、ぜひタイを知ろう! Поехали(パィエーハリ、行くぞ)!

 

柴田さんについて 2018年4月に東京外国語大学言語文化学部タイ語専攻に入学。現在3年生3回生。1年生の冬学期に、タイへ短期留学。大学では女子サッカー部に所属しており、現在は引退されています。

 

タイ語科について

柴田さんの代は、言語文化学部、国際社会学部を合わせて男女比4:13の合計17人。1人1人が自分の興味に取り組める環境だそうです!

 

【外大生活】

―今回はインタビューをお引き受けいただきありがとうございます。早速お伺いしますが、外大を選んだ理由は何ですか?

外国語を学ぶのが好きだったからです。小学生のときに4つ上の姉が英会話を習っていたのを見て、それが面白そうだと思いました。

 

―きっかけは英語なのですね

はい。『ハリー・ポッター』シリーズも好きでした。その映画について、「日本語吹き替え版と英語版」のセリフが結構違うと言われ、それから英語版も見てみたいと思いました。それも英語に興味を持ったきっかけです。

 

―なるほど。確かに両者は声も内容も異なりますね。英語版の映画から私も言語に興味を持ったので、映画は外国語への入り口という感じがします。

それでは、タイ語を選んだ理由は何ですか?

昔タイで働いていたという経験を叔父から聞いて、興味が湧いたからです。そのとき、タイの食べ物や生活様式のことも教えてくれました。一番印象的だったのが、日常的に屋台があるということです。子供のときはお祭りやその屋台が好きで、屋台がある雰囲気に憧れてタイ語にしました。

初めは外大の英語専攻を考えていたのですが、発展途上の国々にも興味があったので東南アジア地域やアフリカ地域も考えていました。それで東南アジア地域を選んだのは、近い将来も実際に日本と関わりが深くなるだろうと考えたからです。その中で今でも日系企業の進出が著しいタイにしました。タイに詳しい人材は今後も需要があるだろうと思ったことも選んだ理由です。

 

―ご自身の将来について、非常によくお考えですね!

 

―それでは、実際にタイ語科(1に入ってみてどうでしたか? 

※[1]現在では、専攻言語が同じ学生の集団を指します。ちなみにかつて本当に語科(外国語学部~語学科がもとか)があったそうです。

タイ語が想像以上に難しいと感じました。実は先に述べたタイの経済的側面からタイ語を選んでしまい、そのため言語についてはよく考えておらず、授業が始まってから初めに文字から覚えなければいけないことに気づきました。それでも法則やルールを覚えてしまえば、分かるようになってきました。

  

―私もタイ語について少し調べてみました。ロシア語専攻の私から見ると、タイ語は時制の区別や動詞が活用(変化)しないという点で、非常に簡単そうだという偏見があります。タイ語で難しいと感じた点は何ですか?

確かにロシア語専攻の友達からはロシア語は変化が多いと聞き、またスペイン語専攻の友達からはスペイン語は時制の数が多いと聞きます。タイ語の難しさは、規則を外れる例外が非常に多いことです。タイ語では1音を表すために、その多くは3種類の記号(母音、子音、声調記号)の組み合わせを使います。そしてまた次の組み合わせが別の1音を表します。しかし時々、前の文字のこの記号は次の単語を読むときにも必要であったり、書いてあっても読まない文字があったりといった例外があります。タイは植民地支配されたことがないので、タイ語に昔からの影響が多く残っており、バーリ語やサンスクリット語の特徴を引き継いでいる部分が多く、しかし文字が異なるため読み方の例外が多くなっています。

 

―読むのが大変そうです

 

※後でさらに調べてみたところ、例外の数が思った以上に多いです。しかもタイ語は分かち書きをしない、つまり単語を覚えていないと区切りが分からないので、文章を読めるまでに相当の慣れが必要でしょう。ロシア語の読みのバリアントは英語より少ないのでありがたいと感じます。

「タイGOリアン」というサイトに例外を含めたタイ文字の読み方について解説があるので、お手すきの際にご覧ください。

https://thaigorian.com/taigo-kiso1/

 

※インタビュイー紹介にタイ語で「愛」を表す文字がありますが、タイ文字のサンプルをもう1つ頂けました!柴田さんがお好きな「アザラシ」、タイ語で「メーオナム」と言うそうです。

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―次は語科の雰囲気を教えてください。

一人一人がそれぞれ自分のやりたいことに取り組める環境です。また2つの学部の学生が一緒に同じ授業を受講するので学部間での差や違いはあまりありません。全体で17人の小さな語科なので、特に1~2年生の間はずっと一緒だったと言えます。食事も、学部に関係なく語科の人と一緒に行きます。

私の代にはほぼいませんでしたが、タイ語科は毎年2~3人、タイ在住歴のある人、親がタイをルーツにもつ人がいます。他の学生に教えられるほどにタイ語が堪能で、そういった人が学生間で教え合うことでタイ語を頑張る学生が増えたそうです。

 

―教えてもらえるのは確かに励みになりますね。他にも○○が特に好き、○○に興味があるといった人はいますか?例えばロシア語科なら、ロシア以外の旧ソ連諸国に興味がある、とにかく言語が好きといった人がいますね。

ロシア語科はそういうイメージがあります(笑)。私の代はタイ語にばかりコミットしているというよりは、むしろサークルやダンスの団体に入っている人が多いです。

 

―なるほど。逆にタイ語科に入って後悔したことや辛かったことはありますか?

少しでもタイ語の文字や挨拶などを、予め知っておくべきだと思いました。

 

―ロシア語学習もキリル文字を覚えるところから始まるので、確かに初めに文字を知っておくと気が楽ですね。

 

―関連して、タイ語の授業はどのように進みましたか?

1年生のときはタイ語の授業が週5コマあり、読む・書く・聞く・話す能力を同時並行で磨きました。当初から日本人の先生とネイティブの先生に教わり、教科書を使う授業、先生が用意したテキストを使う授業など様々です。講読の授業ではタイの文化、政治、経済、歴史に関する文章を読みます。

 

―ネイティブの先生の授業はどうでしたか?

ネイティブの先生は2人いらっしゃいます。そのうち1人はテキストをお書きになっており、それを使って授業が進められました。1年生の春学期は、通年とは異なる別の先生から英語でタイ語を教わりました。秋学期では、タイ語でタイ語を学ぶ授業も増えました。

ネイティブの先生による一番印象的だった授業があります。それは2年生冬学期のときの授業で、テキスト内の堅い表現ではなく日常会話で使える簡単な表現を、時間をかけて学びました。

 

―会話表現を教えてもらえるのは嬉しいですね。私は授業で時間をかけて教えてもらうことは少なかったので、覚えるのに苦労しています。先生の雰囲気はどうでしたか?

1人は第一印象では威圧感を覚えますが、とても面倒見の良い先生で、自分のやりたいことや興味を持ったことに対してレスポンスを頂けます。もう一方の先生も学生をたいへん大切に思っていらっしゃいます。厳しいことを仰ることもありますが、授業で分からないことは丁寧に解説していただけますし、授業外でも学生の健康に気を配られています。

 

―とても温厚で堅実な先生方ですね!

 

―次は言語以外の授業についてお伺いします。東南アジア地域関連でもっとも面白い授業は何ですか?

東南アジア地域基礎です。リレー講義(※[2])で東南アジア諸国の様々な文化の側面に、俯瞰的に触れることができます。例えば、ベトナムのこういう文化について、島嶼部では他のこういった地域でも同様の風習が見られる、などです。

※[2]リレー講義では複数の先生方それぞれが学期中1週間もしくは数週間だけ、それぞれの専門分野をテーマに講義を展開されます。

 

―タイについてはどのように紹介されていましたか?

タイというくくりではありませんでしたが、仏教について紹介されていました。仏教神話について、孫悟空の話も触れながら、その風習や托鉢について教わった記憶があります。

 

―なるほど。また、語科と関係なく、外大の授業で面白かったものを挙げてください

 「感染症と医学」です。授業では、留学する際にどのような予防接種を受ける必要があるか、また現地では何がきっかけでどのような病気や怪我を患う可能性があるか、ということを学びました。実際にそれを知っておくだけでも少し心づもりができます。

 

―タイではどのような病気に注意するべきですか?

タイに限りませんが、やはり注意すべきは狂犬病です。致死率が高いうえ、野良犬や野良猫も多いので、気をつけるように言われました。

 

―実際にタイに行って、野良の犬猫は多かったですか?

当時泊まったホテルの前でいつも犬が寝ていました。タイ人にとってそれは当たり前の光景でしたが、最初、日本人はびくびくしているようです。

授業はおすすめですよ!

 

―アドバイスありがとうございます!私の周りの人も受けていたので、私もその授業を受けてみたくなってきました。

 

☆次回!タイ語科後編!

-柴田さん所属のタイ語科ゼミについて!

-○○がたくさん?タイの留学について!

-タイにロシア語表記!?意外な二国の関係について!

 

文責:りゅう

(インタビュー実施日:2021年2月12日)

 

↓後編はこちら

tufs-russialove.hatenablog.com

 

東京外大生にインタビュー!第16弾【ウルドゥー語科編】〈後編〉

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ウルドゥー語科 たつきさんへのインタビュー

 

↓前編はこちらよりどうぞ

tufs-russialove.hatenablog.com

 

【留学について】

Na:留学や旅行に行ったことはありますか?

たつき:インドのハリヤナ州とパキスタンのカラチで1ヶ月ずつホームステイをしました。パキスタンと北インドはウルドゥーとヒンディーと言語的に大別されますが、口語的にはほとんど同一の言語となっています。それにもかかわらず違う言語として扱われていることに違和感があり、文化的な側面から内実を知るためにホームステイを選びました。結局訪れてみて、ウルドゥー語とヒンディー語の違いとしては、パキスタンとインドという母国への思いの強さから生まれたアイデンティティ的な側面よるものが強いのかなと思いました。

 

インドのハリヤナ州に行った時は州の中でも田舎の地域に行ったのですが、そこでは、なんと初めての外国人が僕でした!その地域は「古典的なインド」という感じでした。文化人類学をやるには、この地域はもってこいだと思います。 

 

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たつき:この写真は、パキスタン・カラチのアラビア海です。

Na:意外と都会的なんですね。

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たつき:この写真は、パキスタンのバローチスターン 州の現地人しか知らないような天然リゾートの写真です。パキスタンの陸軍の人と一緒でした。

Na:濃ゆい写真が多いですね(笑)

 

Na:ちなみに、現地に行って見掛けた日本製品はありましたか?

たつき:ユニチャームのおむつなど、日本の生活用品が販売されていました。でも日本のものばかりではなく、メインとしては中国の製品が販売されていましたね。日本製品がある理由としては、安い労働力を求めて日本企業が積極的に進出していることが主なものみたいで、現地のニーズというよりかは日本企業からの訴求が大きいみたいです。 

 

Na:特に印象に残った思い出や場所はありますか?行ってみてどういう印象を持ちましたか? 

たつき:見る景色一つ一つが印象に残っているのですが、特に皆さんにもわかるような場所だとモヘンジョ=ダロですね!今まで教科書で何度も出てきたインダス文明を探検したのは一生忘れません。「俺はこれを作るの絶対無理だな」と思うくらいに大規模な計画都市と治水システムで圧倒されました。あと、「三大文明のうちの1つ、しかもその中でも1番行くハードルの高そうなモヘンジョ=ダロに行けた俺、すごい」と思いました。(笑)

これがモヘンジョ=ダロで撮った写真です。

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Na:確かに、誇らしくなりそうですね!(笑)三大文明全部制覇してみたいです!

 

Na:ところで、その地域を知らない人が聞くと驚くであろう風習などはありますか? 

たつき:皆、夜型だったことですね。2時とか、だいぶ遅い時間に寝てます。それで、翌朝起きるのは10時とかで遅い方でした。なので、生活リズムが合わないのが大変でした。夜10時から遊びに連れて行かれることも多くて。だから夜になっても明かりが点いていて、「光の街」と言われているほどです。あと、女性が顔を隠すのはヒンドゥー教徒も同じなのだと気づきました。宗教関係なく、インドのハリヤナでは女性が顔を隠すことが社会規範となっているようです。

 

Na:現地の人々の様子を教えてください!どのような人が住んでいますか?

たつき:パキスタンのカラチにはいろんな人がいます。現在は比較的安定した治安で、特別注意が必要な感じではないです。人はみんな優しくて、日本人と言うととても嬉しそうにもてなしてくれました。戦前からの日本企業の進出も理由みたいです。僕は最初パキスタン行こうとしてた時めっちゃビビってたんですけど、女子の語科の同期もこの前全然ビビらずに行ってました。なので、行って後悔することはないですよ👍

 

【地域について】

Na:インドやパキスタンについて勉強する最初の一冊となるようなおすすめの本はありますか?

たつき:インドだったら『ヒンドゥー教: インドの聖と俗』、パキスタンなら『パキスタンを知るための66章』ですね!

Na:『○○を知るための△章シリーズ』 は、私も中央アジア版のものを読んだことがあります。読みやすくて好きです。ちなみに『パキスタンを知るための66章』って教科書なんですか?

たつき:教科書ではないです。勝手に自分で読んで勉強する入門書みたいな感じですね。地域基礎の授業では、教科書を使わずに、先生が作成したレジュメを使っていました 。でもどうやらこれから教科書が出てくるって噂があるので、もしかしたら地域基礎の授業が楽になるかも!

Na:これからの後輩に有益な情報ですね!

 

 

Na:その地域の音楽や絵画、文学、映画、アニメで有名なものはありますか?

たつき:やっぱりウルドゥー語、ヒンディー語ならボリウッドは勉強にも使うほど聞き取りやすく有名なものが多いです! 

(ボリウッド:インド・ムンバイの旧称「ボンベイ」の頭文字「ボ」と、アメリカ映画産業の中心地「ハリウッド」を合わせてつけられた。つまりインド映画のこと。)

Na:ボリウッドといえばとにかく踊りまくってるイメージがあるのですが、どの映画にもダンスシーンはありますか?(笑) 

たつき:最近は踊ってるのが少なくなってきたみたいですけど、普通に踊るシーンはあると思います(笑)それがボリウッドの面白さですね。 

Na:ボリウッドはどういうテーマが多いんですかね?

たつき:学歴競争・教育問題など、インドの社会問題が多く取り上げられていると思います。Netfrixには、“Dear zindagi“という映画があり、感動的で、僕はこの映画が好きです。

”Zindagi”は「人生」という意味で、この映画には、「人生を大切にしていこう」というメッセージが込められています。ところで、ロシア映画はどうですか?見ますか? 

Na:ロシア映画、比較的暗いのが多い ので、私はあまり見ないです。インド映画って、暗い社会問題を取り上げても、最終的にはハッピーエンドになること多いと思うんですけど、私が見てきたロシア映画は最初から最後まで暗い感じで…(笑)それがある意味「らしさ」があって良いとも思うんですが。

 

Na:やや前の質問と被りますが、インドやパキスタンの著名人といえばどのような方がいますか?

たつき:アーミルカーンという素敵な俳優さんがいます!ちなみに弊学のネイティブの先生の名前もアーミルカーンです!

Na:アーミルカーンと調べたところ、その俳優さんと先生が出てきて二大有名人ですね。

たつき:俳優のアーミルカーンはインド人だけど、外大の先生はパキスタン人です。その名前が多いみたいですね。イスラム教徒の名前みたいです。

 

Na:知っている範囲で、インドやパキスタンの政治・経済の状況を教えてください。

たつき:面白いなと思ったのはパキスタンでの徴税率が30%強しかなく、パキスタン人がメッカの聖地巡礼で落とした金額が徴税額を上回ったことがあるということですね(笑)国民が脱税しているというよりは、政府の徴税システムがちゃんとしていないために、国民は税を納めないようになり、政府の財源が少なくなっています。 まだまだ政府の税制整備が必要そうです。僕はメディア翻訳でこのテーマの記事を訳しました。

 

Na: 現地の食べ物ってどんな感じですか?

たつき:宗教によって食べ物は違ってきます。パキスタンはイスラム教だから羊肉やチキンを食べます。一方で豚を食べるのはダメです。ダメなんですが、都市部では、豚や牛を食べている 人もいます。

Na:他国の影響が及んでいる地域では、意外にも、食と宗教の関係が柔軟になっている ところもあるんですね。

たつき:ちなみに、僕のインドのホームステイ先で出てくる食事は全部野菜でした!おかげで、肌がきれいになりました(笑)

Na:それは大変そうですが、結果的に良かったですね(笑)

たつき:カラチではビリヤーニーっていうチャーハンみたいな食べ物がめっちゃ美味しいので、ぜひ食べてみてください。シディークパレスというパキスタン料理店も四谷にあるのでぜひ行ってみてください。

 

【ロシア×ウルドゥー語圏】

Na:たつきさんの語科の地域とロシアの関わりについて、知っている情報はなにかありますか?

たつき:インドのオーケストラとかはロシア人が多いって聞きますね。インドのオーケストラって聞くとインド人をイメージすると思うんですが 、ほとんどロシア人かカザフスタン人らしいです。

Na:ロシアでオペラなどが有名ってところからインドのオーケストラにもロシア人が流れたんですかね?

たつき:どうですかね…真相は分からないんですけど、かつてのインドにおける社会主義の風潮や中印戦争の影響もあって、そうした時に、ロシアとの交流が多くあったのかもしれません。

 

Na:パキスタン人の対露感情はどのようなものでしょうか? 

たつき:基本的に冷戦時代のイメージが強いと思います。「強国の一つ」「先進国」というイメージで語る人が多いです。パキスタンの人にとっては、ロシアは日本と同じくらい進んでいるイメージみたいです。なので、米国英国に次いで留学先としてロシアを選ぶ人が多いイメージはあります。ちなみに私のパキスタンのホストファザーは、ロシアで医学を10年も学んだそうです。 

Na:ロシアの医学部留学は意外でした。また、冷戦時代のイメージでロシアを語るのは、日本の特に高齢者世代の感覚に近いと思いました。

 

Na:もうそろそろおしまいなので、先ほどのウルドゥー語教材について、皆さんに宣伝お願いします。

たつき:ウルドゥー語語彙学習サイト(ディルパル)を製作中です!これまで単語帳がなく思うようにウルドゥー語学習が進まなかった人も初学者の人も使えるようなサイトなのでお楽しみに!2021年4月1日、もうすぐリリース予定です!

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↑こんな感じでウルドゥー語教材アプリを使えます!

 

Na:教材の取り組み、頑張ってください!応援しています!長々と質問にお付き合いいただきありがとうございました!最後に何か一言あればお願いいたします。

たつきウルドゥー語しか勝たん!! 卍

 

文責:Na

 

(インタビュー実施日:2021年3月3日)

 

東京外大生にインタビュー!第16弾【ウルドゥー語科編】〈前編〉

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ウルドゥー語科 たつきさんへのインタビュー

 

たつきさんについて 2018年4月に東京外国語大学言語文化学部ウルドゥー語科に入学。2023年3月に卒業予定。3年次からデリー大学にオンライン留学中。趣味はバスケットボール🏀現在はウルドゥー語教材の開発に取り組んでいる。

 

ウルドゥー語科について

ウルドゥー語科は言語文化学部、国際社会学部合わせても15人程度の小語科。男女比は入学年度によって異なるがたつきさんの学年は1:3。落ち着いている人が多く安定した学生生活を送っている印象。

 

【学生生活について】

Na:外大に入った理由と、なぜその語科にしたか、学部はどうやって決めたかを教えてください。

たつき:上京したかったので学費の安い国立で英語を活かせる外大に決めていました!スワヒリ語、ウルドゥー語をやりたかったのですが、外大にはスワヒリ語はないのでウルドゥー語一択で現役浪人共にウルドゥー語を受験しました。スワヒリ語は、中学校の頃に「アフリカの子供を救いたい」というようなありがちな漠然とした憧れを抱いていたことから候補にありました。歴史的にウルドゥー語とイスラームの繋がりが強いことを世界史で知って、ウルドゥー語をやろうと思いました。

Na:そうだったんですね~。ちなみに、ウルドゥー語は一般的に「マイナー」と言われることが多いと思いますが、話者数がかなり多いとも聞いたことがあります。実際のところどうですか?

たつき:インド・パキスタンでは人口が大幅に増加しているので、ヒンディー語とウルドゥー語を合わせると、今後、世界3位の話者数になるといわれています。ウルドゥー語も話者数が多いことは多いですが、圧倒的にヒンディー語の話者数が多い感じですね。

Na:知名度が低い割に話者数が多いってことは、ウルドゥー語の学習者の活躍のチャンスもそれだけ多くなるのではないでしょうか?有名な言語だと他にもできる人がたくさんいますが、学習者の少ない言語は、学習者としての自分の価値を高めやすい環境にあると思います。

たつき:そうですね。学校の方から、大使館やメディア関係の大規模な活動に関する案内が来たりするので、活躍のチャンスは多いと思います。さっき言い忘れましたが、ウルドゥー語を選んだ理由としては、最低点が低く比較的楽に入れることもありますね。そして入ったら色んな経験をさせてもらえるのが良いことだと思います。

Na:ウルドゥー語をやっていると、ペルシア語・アラビア語などが理解しやすくなりそうなイメージですが、たつきさんはそれらの言語もやっていますか?私はロシア語専攻で、ロシア語をやってたら、ブルガリア語やウクライナ語は学びやすいなあって思うんですが…

たつき:ヒンディー語・ペルシア語・アラビア語は、地域言語Cで、ほぼほぼ必修みたいな感じで皆とっています。普通の方々がいきなりそれらの言語やるより、やっぱりウルドゥー語履修者の方が理解しやすくアドバンテージがあると思います。

地域言語C:専攻語に近い言語を履修するためにある科目。)

 

Na:実際に入ってみてどうでしたか?思っていたことと違った!ということはありましたか?(いい意味でも悪い意味でも)

たつき:基本的に、いい意味で変わりませんでしたね。勉強勉強勉強!って感じで。僕は、地域基礎で落単したのが辛かったですね(笑)でも 語学の授業自体は辛くないんです。先生が「ウルドゥー語を嫌いになってほしくない」「卒業後も継続してウルドゥー語を続けてほしい」と思っているみたいです。なので、授業は厳しくなく楽しく受けられました。

あとは、これも自分の話なんですが、部活で骨折して入院したのが、日常生活を過ごすのも大変になって辛かったですね。それと、ウルドゥー日本語辞書が高いのは驚きました。約7万円もします。最後に、「ウルドゥー語をやってる」と話すと、“変わった奴”みたいな風に思われるのが少し辛いですね。まあでも話が良い風に転べば、それが面白かったりもすることはありますね。

Na:その気持ちはわかります!私も「ロシア語やってる」と言ったら“変わった奴”扱いされるととがあります。最近は、それを覚悟でというか、その宿命を背負って楽しんでる感はありますね。

 

【語科について】

Na:語科の雰囲気を教えてください!

たつき:全体的にゆるい雰囲気があると思います。ただしっかり専攻語をやる人はしっかりやって、また先生も質問するとちゃんと丁寧に教えてもらえる、メリハリのある語科だと思います(笑)

Na:それはいいですね!ウルドゥー語科に入って良かったことは何ですか?

たつき:この話は完全に個人の価値観になりますが、私は、自分で語学をやるものだと思っています。自分でどう言語をモノにするか、ですので自分で勉強する時間が必要だと思います。言語の予習復習時点でしんどくなってしまうようなキツい語科に比べると、その点ウルドゥー語は余裕を持ってガンガン自分で進めていけます。わからないことがあれば質問し放題ですし、それが入学してからよかったとずっと感じていることです(笑)

Na:それは私も同感です!でも、自分で進めるのって、何かモチベーションとかがないと続けにくいと思うんですけど、どうやってモチベーションを保っていますか?

たつき:ネイティブと会うことで、楽しみながら話す機会を作ることを心掛けています。

ネイティブと話すと、やっぱりネイティブはスピードが速いな、と思うじゃないですか。発音も自分が思っていたのとネイティブの発音は違うな、とかも。なので、ネイティブと話すことで、速さとか発音とか、自分に今足りない能力を明確にできるんです。そうやって、「もっとウルドゥー語を頑張ろう!」とモチベーションを保っています。

Na:なるほど~。確かにネイティブと話して見えてくることはたくさんありますね!たつきさんは、外大以外で、どうやってネイティブと触れ合う機会を作っていますか?何かウルドゥー語のコミュニティーはありますか?

たつき東京ジャーミィで知り合った友達と遊びに行ったり、以前はバイト先でパキスタン人のアナウンサーの人と話してたり。あとはコロナ禍でも会話アプリを使うと、どこにいても誰とでも話せます。でも一番はなんといっても、現地に行ってネイティブと話すことですね!発音をやっぱり伸ばさないとですね。 

東京ジャーミィ:渋谷区代々木上原にある、日本最大のイスラム教寺院(モスク))

Na:そうですね。受け身じゃなくて自分から探して動かなきゃですね。

 

Na:逆に、ウルドゥー語科に入って後悔したことや辛かったことはありますか?

たつき:特にないですが、留学できなかったことは辛かったですね。それまではずっと専攻語を勉強していたのですが、留学がおじゃんになったときはその努力が無駄になった気分でした。

 

Na:言語の勉強はどのように進みますか? 

たつき:一年は文法でネイティブを含めて3人の教授がそれぞれ教えてくれます。2年は日本人教授の授業ではほぼ全て購読、ネイティブは会話がメインです。3年次は映画を見ながら口語表現を学んだり、メディア翻訳が始まったりとそれぞれの先生の強みの領域を通じてウルドゥー語に触れます。先生の強みの例で言うと、言語学出身のネイティブの先生は会話の授業で発音を鍛えてくれます。3人しか先生がいらっしゃらないので先生は大変かと思いますが、それだけ高い専門性を持つ先生方に教えて頂いています。

   

Na:ウルドゥー関連で最も面白い授業は何ですか?

たつき:私が思う一番面白い授業は地域言語Cのウルドゥー語です(笑)一年の時に落単したので、その代わりに履修したんです。授業担当の外部の先生が個性的で、面白くウルドゥー語を学べます。実はこの授業は裏コマと呼ばれています。必修のウルドゥー語を落としてしまっても、この地域言語Cウルドゥー語を取れば留年を回避できます。モジュール語科だからこそできることですね。僕はこれで危機を免れました。

モジュール語科:学期ごとに授業を開講し、1 単位ごとに認定する言語の語科のこと。つまり、専攻語の単位認定が一括ではない語科のこと。一方で、非モジュール語科だと10授業のうち1授業でも落とすと進級できなくなる)

 

Na:また、語科と関係なく、外大の授業で面白かったものを教えてください!

たつき:O先生の「男らしさ」の授業はとても面白かったです!第一次・第二次世界大戦や近代化で、ドイツの歴史を通して形成された男らしさを取り上げています。外大では女性中心のジェンダーが語られることは多くありますが、男性にまつわるジェンダーはほぼ聞いたことが     なく、新鮮でした。男として生きるのにも知らないうちに辛いこともあるんだなと思いました。

 

Na:今現在、その言語や地域に関わる活動や仕事をしていますか? 

たつき:以前、NHK国際放送のウルドゥー語放送で、ラジオのADバイトをしていました。 ADなのでずっとウルドゥー語を話せるわけではないですが、パキスタン人のアナウンサーさんが翻訳して話すウルドゥー語を聞いて、ウルドゥー語を頭の中で訳してウルドゥー語脳を鍛えていました。

 

Na:ウルドゥー語科の卒業生はどのような進路に進む方が多いですか。また、将来やってみたい仕事や夢はありますか。

たつき:様々ですね。院進してウルドゥー語を極める人もいます。就職でも、「ウルドゥー語をやってる」と言うと企業によって反応が分かれるかと思います。普通にウルドゥー語を使わない企業に就職する人もいます。一方で、インドには日産やスズキなど最近多くの日系企業が進出しているので、そうしたグローバル企業に就職する人もいるみたいです。外大生あるあるですが、商社系で駐在員を目指す人も少なからずいるみたいですね。

Na:インドだと就職の需要はこれから伸びていきそうですね~!

 

【学びについて】

Na:所属しているゼミと、入った理由、勉強している内容を教えてください。 

たつき:入っているゼミは社会言語学のゼミです。社会的にどんな現象があって言語が生まれるのかといったことを学んでいます。ウルドゥー語を専門とするゼミがここしかなかったのでこのゼミ一択でした。現在は日本におけるウルドゥー語教育を勉強しています。ゼミの先生がウルドゥー語の音声など情報をたくさん持っているので、質問にもとても協力的です。ゼミの先生はのほほんとした先生で、ウルドゥーなら何でもやらせてくれる良いゼミだと思います。その割には人気のない言語情報コースなので、同期は僕を入れて3人のゼミです。ウルドゥー好きな人にはおすすめです。

Na: 少数言語では特に、その言語の第一人者から教えを頂けるのは貴重な経験ですね。

 

Na:ゼミで勉強しているテーマや、その面白さを教えてください。

たつき:ウルドゥー語の教材を開発し、それを卒業制作とする予定です。具体的には、ウルドゥー語語彙学習サイトを製作しました。この背景には、ウルドゥー語の単語帳がなく、ウルドゥー語を身につけたいのにうまく勉強ができないという問題意識があります。日本でウルドゥー語の教育が開始されてから110年以上経ちましたが、これと言った良い教科書がありません。そこで、外大生をはじめとしたウルドゥー語学習者のために、語彙学習サイトを開発しました。もうすぐリリース予定で、来年度から外大の公式カリキュラムの中に教材として組み込まれます。今まで参加してきたカリキュラムを変えられるワクワク感がやりがいとして感じられました。。卒業論文はほとんど誰も読まないけど、ウルドゥー語語彙学習サイトは皆に使ってもらえます。後輩もウルドゥー語を勉強しやすくなるし、僕もウルドゥー語を極められるし、先生は負担を減らせるし、Win-Win-Winな卒業制作だと思います。ちょっとサイトを見てみてください。

Na:クオリティーが高すぎてびっくりしました...!!!たつきさんがウルドゥー語教育の新たなパイオニアとなりそうですごいと思います!ウルドゥー語科の人はもちろん、他語科でウルドゥー語を学んでいる人もぜひ使ってみてください!こちらのウルドゥー語語彙学習サイトについては後半の記事でも少し紹介するので、是非次回もみてください。

 

☆次回!ウルドゥー語科後編!

-濃い写真が盛りだくさん!インド・パキスタンでのホームステイについて!

-ロシア人の意外な職業?ロシアとウルドゥー語圏の繋がりについて!

 

文責:Na

(インタビュー実施日:202133日)

 

↓後編はこちら

tufs-russialove.hatenablog.com

 

東京外大生にインタビュー!第15弾【ビルマ語科編】〈後編〉

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ビルマ語科 Sさんへのインタビュー

 

↓前編はこちらからどうぞ

tufs-russialove.hatenablog.com

 

【教職と、それに関わるゼミについて】

―所属しているゼミと、入った理由、勉強している内容を教えてください。

英語教育学のゼミに所属していて、英語のテストの仕方、評価方法などをメインに英語教育全般について学んでいます。例えば「TOEICは本当に英語力を測れているのか」とか、CEFR-J(CEFRをベースに構築された日本独自の英語能力の指標)とか、センター試験の共通テストへの移行で何が変わったのか…ということについて学んでいます。この学習者の英語能力ならこういうことができるよ、という指標である「CAN-DOリスト」を元に、あるレベルに合わせて実際にテスト問題を作成したりもしています。あと、ゼミの先生は結構雑談の好きな方で、ゼミの最初に30分ほど英語と関係のないテーマで軽くディスカッションをしたりしたこともあります。もともと教育に興味があり、英語の評価方法・テスト方法などが非常に世間でも話題になっていたため、このゼミに入りました。

 

―面白そうですね!英語の授業そのものではなくテストに注目するのはなぜなのでしょうか?

生徒の中には高尚な目的を持って英語学習に取り組んでいる人もいますが、それ以上にテストで点を取ることを目標にしている生徒が多いと思うので、その目標であるテストの内容をより良いものにすることで英語のスキルを上げていこうというのが私たちのゼミ全体としての目標です。特に、テストでありがちな「こんなの日常生活で使わなくない?」と思ってしまうようなタスクではなく、「生きたシチュエーション」を学べるもっと実践的なテスト作りを目指しています。例えば、文法問題を出す時にも、「この文法を問うています!」みたいなあからさまな問題にするのではなくて、自然な会話文の中に組み込んだりする感じです。共通テストの英語でも、今までのセンター試験にはなかったチャット形式の問題が出題されたりしていますね。

 

―なるほど。テストを最終目標にしていれば自然と英語が身につくテストを目指しているんですね!卒論のテーマはどのような内容にするつもりですか?

中学・高校の定期試験で、既習の教科書本文ではなく、未習のテキストを用いてリーディング・スキルを測る方法について研究しています。既習のテキストをテストに出すと「記憶力テスト」になりがちなので、その課で学んだ文法やリーディング・スキルを本当の意味で測るためにはどうしたらいいのか、ということについて、データを分析しながら研究しています。

 

―英語教育についてのゼミ、楽しそうですね!私も勉強になりました。

副ゼミ(所属するゼミの他に任意で履修できるゼミ)は取っているのですか?

ビルマ語の教員免許を取るために語科ゼミ(自分の専攻する地域の文化、言語、政治経済などについて深く研究できるゼミ)を取っていました。実は私たちの代がビルマ語の教職を取れる最後の学年だったのですが(ビルマ語教職を生かせる学校が日本にたったの1校しかない)、他の授業と被ったりしたことから結局諦めてしまいました。ただ、語科の先生は1年生の頃から私のことをよく知っているので、居心地はとても良かったです。ちなみに、私は新潟出身なのですが、新潟市はロシアの東方のハバロフスクやウラジオストクと姉妹提携を結んでいて、学生同士の交流の一環として友人がロシア留学に行ったりもしていました。逆にロシアから来日した学生とも、学校の授業を一緒に受けたり、習字を教えたりなどして交流しました。だから、新潟でならロシア語の教員免許は生かせそうですね。あと札幌とか。

 

―確かに!私もロシア語の教職取っておけばよかったかな…(笑)まあ教職はノリで取れるものではないですね。

 

【留学について】

―ところで、長期留学は一般的に3年次の夏から1年間渡航する人が多いですが、Sさんは2年次の夏から行かれたのですね。

そうなんです。4年次の春まで長期留学に行くと、卒論の提出や就活などで卒業直前にバタバタしてしまうので、4年で卒業することを目標にしていた私は早め早めに行動しようと2年次からの留学を決めました。ですが、4年間での卒業は結局ギリギリ間に合わなかったので、今年の7月に卒論を提出し、9月に卒業予定です。私は無事に留学を終えることができたのですが、私と同じ年に入学した人たちの多くはコロナの影響で途中帰国をせざるを得なかったり、今の3年生も多くは留学が中止になってしまったので、少し申し訳ない気持ちでいます…。ミャンマーに留学していた同期も、「ミャンマーは感染者が少ないから大丈夫だろう」と思っていたら急に「ヤンゴン空港を閉鎖します!」ということになって途中帰国でしたね。

 

―やるときはビシッとやるの、ロシアとも似ているかもしれませんね(笑)ロシアも急に「明日から国境閉めます!」と決まり、留学組はギリギリに日本に帰ってきていました。

Sさんは長期留学でイギリスに行かれていますが、専攻地域であるミャンマー留学とではやはり迷いがありましたか?

1年生の割と最初の段階で「やっぱり英語科の教員になりたい」と決意したのですが、それにしては英語力が足りていないと感じたため、専攻地域のミャンマーではなく英語圏であるイギリスに留学に行きました。ただ、ビルマ語の学習も続けたかったため、「ビルマ語科」が存在するロンドン大学の東洋・アフリカ研究学院を留学先に選び、英語の授業と並行してビルマ語の授業も週に4コマ受けていました。ビルマ語の授業を一緒に受けていたのは私を除いて3人だけで、私のクラスはイギリス育ちで英語しか知らないミャンマー人、マレーシア人とタイ人でした。みんな英語が母語でSVOの語順に慣れているため、日本語や韓国語と同じSOV語順のビルマ語にはなかなか慣れないようでした。ビルマ語は日本語と同じように主語を省略することも多いのですが、そこも英語とは異なるのでみんな戸惑っていましたね。ロンドン大学に言語教育を学びに行ったわけではなく、向こうで教育系の授業を取ることもなかったのですが、こういうところでゼミでの学習にも通じるちょっとした学びがありました。

 

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ロンドン大学ではビルマ舞踊も学んでいたそう。

 

―なるほど、計画性がある…。そしてそういう学びのある留学、素敵ですね!

長期留学はイギリスでしたが、1年次のショートビジットではミャンマーに行かれているんですね。ミャンマーのお話も聞きたいです!

テレビもネット環境も十分でなく、水シャワーなどで暮らし、市場などで買った食べ物を食べるという生活は、とても新鮮でした。水シャワーと行っても、ミャンマーはめちゃくちゃ暑いので、実際にやってみるとそこまで気にならなかったです(笑)ちなみに、私の代からかなり寮の環境が改善されたらしく、それ以前はシャワーどころか水の入った浴槽みたいなところから桶で水を汲んで、男女一緒の空間で服を着たまま水浴び!みたいな感じだったらしいです。あと、ミャンマーには雨季と乾季があり、私が行ったのは雨季だったので、ひどい時にはふくらはぎまで水に浸かった状態で歩いてました。日本からスニーカーを持って行ったのですがほぼ使わず、サンダルで生活していましたね。

行く前は不思議に思った風習(寺院では敷地内すべて土足厳禁など)や食べ物も、現地に行けば特に何も違和感なく、楽しく味わうことのできたことを覚えています。ただ、先生に「都市部なら病院はあるし犬も狂犬病にはかかってないから大丈夫だよ〜」と言われワクチンを打たずに行ったのですが、野良犬がたくさんいてやっぱり怖かったです。ゴキブリは意外と出ませんでした。

3週間という短い期間だったので私は楽しい思いをして終われたのですが、ある同期の女の子は食べ物が口に合わなかったことと空気があまりきれいではなかったせいで、途中から「帰りたい〜」と繰り返してましたね。

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ヤンゴン市内の様子

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ヤンゴン大学の学食

―ミャンマー留学のリアルな話が聞けました…(笑)ちなみに私は行ったことがないのですが、ロシアやカザフスタンでは毎日ゴキブリとの格闘らしいですね。

ミャンマーの治安や現地の人々の様子はどんな感じでしたか?

ミャンマーの人はとても人懐っこくてあたたかく、困ったときにはすぐ助けてくれる人たちが多かったです。女子寮では夜6時という早い門限が設定されていたので治安に関しては昼のことしか分かりませんが、当時は比較的安心して暮らせるところでした。また、ミャンマーと一言でいっても、都市部と地方部では生活様式も大きく異なります。今回のデモの広がり方も地域差がありますし、賃金格差についても、ヤンゴン市内などでは物乞いを生業としている人が目につく一方、水シャワーとは無縁のリッチな生活を送っている人もいます。

 

―なるほど、地域差や賃金格差はどこの国にもあるものですね。

 

最後に何かメッセージがあればお願いします!

東アジアだけでなく東南アジアの国々とも、アジアの一員として互いに協力し、良好な関係を築いていくことが重要です。東南アジアで起こっていることについて、あまり他人事と思わず、署名活動に参加していただいたり、新聞を読んでいただいたりと少しでも気にかけていただけると嬉しいです。

 

―実は今までミャンマーとはほとんど縁のない人生を送ってきましたが、今回お話が聞けてとても勉強になりました!

ご協力いただき、ありがとうございました!

 

文責:川又

(インタビュー実施日:2021年2月23日)

 

東京外大生にインタビュー!第15弾【ビルマ語科編】〈前編〉

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ビルマ語科 Sさんへのインタビュー

 

こんにちは!川又です。

あっという間に3月で、新学期もあと少しという感じですね。やっぱり長期休み中は時間が過ぎるのが早く感じます。そして自分がもう3年生になるというのもなかなか信じがたいです…。特に2年生の1年間はあっという間でした。

 

今月は他語科とコラボ企画をお送りしていますが、私は言語文化学部ビルマ語科4年生のSさんからお話を伺いました!Sさんは教職課程(教員免許を取得するために必要な授業課程)を履修しながら2年次から長期留学でイギリスへ渡った経歴を持つ、ユニークな外大生です。少人数の語科の方からお話を聞くと、ロシア語科とは全然違う世界が見えて楽しかったです。

 

Sさんについて 2017年4月に東京外国語大学言語文化学部ビルマ語科に入学。教員免許取得を目指しつつ、2年次夏から1年間イギリスへ長期留学。1年次にはショートビジット(長期休暇を利用した短期間の留学)でミャンマーへ3週間の滞在経験もあり。今年9月に卒業予定。

 

ビルマ語科について

例年10人に満たない少人数の語科。Sさんの学年は、一般的に女性の比率が高い外大では珍しく男女比が2:1!それ以降の学年でも男子は比較的多いそう。先生方もとても親切でアットホーム。縦のつながりや留学生との関わりもあり、柔らかく自由な価値観を持った人たちも多く、非常に暖かな雰囲気です。

 

【大学生活】

―まず、外大のビルマ語科に入ろうと思った理由を教えてください!

中学校時代から英語が得意教科で語学が好きだったため、外国語教育に特化している大学で、家庭の経済状況的にも国立で、そして色々な刺激のある東京で(私は新潟出身です)、と考えたときに、外大がその条件に当てはまったためです。また、東南アジアに行ったことはないけれども興味があり、その中でも民主化(今は軍政復古中ですが…)されたばかりで様々な将来性を持つミャンマーの言語を学びたいと思ったため、ビルマ語科にしました。学部は、絶対に英語教員の免許を取りたいと思っていたため、言語文化学部にしました。(※国際社会学部でも英語科免許は取れないことはないのですが、基本的には社会科免許となります。)

 

―外国語大学で教職を取るのってすごく大変なことですが、他の大学の教育学部への入学も考えていたのですか?

実は最初から「教員になるぞ!」と決めていたわけではなくて、当初は外務省専門職などを考えていたんです。ですが、両親が教員をしていて教員の仕事が面白そうだと思ったこと、また在学中に何か資格が欲しいと思ったことがきっかけで教職を取ることを決めました。かといって、教育学部に進学して専門性を狭めることもしたくなかったため、外大で教職を取るのが一番だと考えました。

 

―なるほど、そういう訳だったのですね。

ビルマ語科の学年を超えた仲の良さにはどんな秘密があるんですか?

毎年、先輩と新入生が「縦飲み(語科内で学年を超えて行われる飲み会。飲み会だけど私の頃のロシ科縦飲みは普通にジュースでした)」を通して親交を深めています。今年はコロナの影響で残念ながらなくなってしまったのですが、毎年恒例の、高田馬場にあるミャンマー料理店に連れて行ってもらったりするイベントもあります。あとは、留学生とのつながりも深いですね。私たちがショートビジットでミャンマーのヤンゴン大学へ行くのと交換するような形で、ヤンゴン大学の日本語科からも留学生が1週間ほど日本にやってくるんです。その期間に、一緒に両国にある江戸東京博物館に行くなどして交流します。そして1週間の「お試し期間」を経て、留学生たちがまた日本に来たいな〜と思ってくれたら、今度は1年間外大に留学に来ることになり、その時「あっ!あの時会ったね!」とまた仲良くなって、長い付き合いになるということもあります。一緒にビルマ語の会話の授業に参加してくれたり、外語祭の語劇や料理店に協力してくれたりもしましたね(笑)

 

―それは素敵!ビルマ語科って留学生との交流もあったんですね。

ところで、2/1にミャンマーで起こった軍事クーデターに関しても、ビルマ語科内で協力してネット上での署名活動を立ち上げたそうですね。

はい。私の一つ下の、現在3年生の後輩たちが中心となってアクションを起こし、それから院生の先輩の専門知識もお借りして、いろいろな学年で協力しあって生まれた活動です。

(2/1に、ミャンマーの国軍が2020年に行われた選挙に不正があったと主張して軍事クーデターを起こし、NLD(国民民主連盟)党首のアウン・サン・スーチー国家顧問やウィンミン大統領らを拘束した。さらに、国軍が全権を掌握したと声明を出し、平和的に抗議する国民を武力で鎮圧している。)

「ミャンマーを軍事クーデターから守るための日本政府の適切な対応を求める活動」の署名活動のページはこちらから→ www.change.org/standwith_myanmar

もしくはこちらのURLからサイトに飛べると思います。http://bit.ly/3kOMn5L

3/5時点で4万人以上が署名しています。

 

―またミャンマーの人々が平和に暮らせることを私も祈っています。

他にもミャンマーに関することで何か活動を行なっていたことはありますか?

ビルマ語科は学生団体ともいろいろ繋がりがあるんです。例えば、ミャンマーでは体育の授業がないのですが、ミャンマーの学校のために日本式の手作り「運動会」を開催しようという活動もしていました。今は日緬友好を図る交流会の企画など、できるところから始めています。また、私は以前までNHKラジオの国際放送でビルマ語班スタッフをしていました。これも語科つながりで得た仕事で、先輩が3〜4年次の留学をきっかけに辞めたりするので、そのタイミングで先輩に推薦してもらうような形で始めました。ラジオでの地震情報や在日ミャンマー人の交流のための番組をやっているのですが、それに関してたまに翻訳記事を書いたり、リスナーの方からのお手紙に返信したり、アナウンサーさんが間違えた部分を編集してカットしたりという仕事をしていました。普通に給料も発生するし、そのご縁からNHKに就職した先輩もいます。半分「インターン」的なバイトですね。NHKの国際放送局は外大出身の人がとても多いです。

 

―NHKの国際放送局でも活動なさってたんですね!ビルマ語科っていろんなところとつながりがあるんだなあ…。ビルマ語科の人は、卒業後はどんな仕事に就くことが多いですか?

ビルマ語を使う人ばかりではなく、様々です。私自身、ビルマ語を使う仕事ではなく英語の教員を目指しています。他には、JICAなどの国際協力機関、商社、観光業、教育関連、メディア、外務省、ミャンマー関係の仕事、インフラ整備などに従事する人がいます。でも、ビルマ語は使わないつもりで一般企業に就職したら、その後たまたまミャンマーとの接点ができてミャンマーに飛ばされた先輩もいたりします(笑)

 

―後になって飛ばされる話はロシア語科でも聞いたことがある…(笑)割とあるあるなことなのでしょうか。

ビルマ語科に入ってみて大変だったことはありますか?

ビルマ語は語順が日本語と同じSOVなので、文法は楽だろうと考えていました。ですが、実はビルマ語って過去と現在を表す動詞の形に違いがなくて、文脈でどっちなのか判断しないといけないんです。講読の時も、しっかり前後関係を把握できてないと過去と現在を読み間違えます。それ以外にもいろいろ曖昧なところがある言語で、簡単なように見えてそのせいで逆に難しく感じることはありますね。

あと、初めは文字を覚えることに苦労しました。今でも同期や今までの自分の英語学習と比べると単語を覚えることなどの一つ一つの過程に非常に時間がかかってしまいます。でもそのおかげで、自分の言語に対する弱点と向き合い、それがゼミの専攻である言語教育を考える上でとても役に立っています。私は教育実習で定時制の工業高校に行ったのですが、アルファベットにも不安があるとか、英語の一般動詞の過去形がわからないという生徒に教えていたので、もしビルマ語をやって苦労する経験がなければ、「なんでわからないの?」と言いたくなってしまっていたかもしれませんね(笑)

 

☆次回!ビルマ語科後編!

-外大の英語教育学って?Sさんのゼミについて!

-環境改善で水シャワー!ミャンマー留学について!

 

文責:川又

(インタビュー実施日:2021年02月23日)

 

↓後編はこちら

tufs-russialove.hatenablog.com